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初めての相続で不安な方へ

遺産の分け方と相続税の計算の関係について教えてください。

私と妻は結婚して30年になり、三人の子宝にも恵まれておりますが、最近では自分にもしものことがあった場合に、相続の問題が起こらないか多少不安に思っています。
私は大学を卒業後、出身地にある地方銀行で働いており、来年定年を迎えます。
私はこれといった趣味も持っておらず、飲み歩くようなこともあまりしませんでしたので、先日ざっと計算してみると約2億円の財産があり、それなりに蓄財しているのではと感じています。
三人の子ども達は、それぞれ独立して家庭を持っています。
一番上の子(長男)は中小企業の営業マンで妻と子どもが1人、二番目の子(長女)はシングルマザーのOLで子どもが2人、一番下の子(二男)は飲食店を営んでおり妻と子どもが3人おります。
今回、相談したいのは、私が仮に今亡くなったとすると相続税はいくらかかるのかということです。相続税は財産の分け方によって変わるそうですね。それぞれの相続税の金額を教えてください。

  • ①民法上の法定相続分(妻2分の1、子それぞれ6分の1ずつ)で分けた場合
  • ②妻にすべて相続させる場合
  • ③4人均等で分ける場合

専門家の解答

税理士 桑原弾

ご質問にあるとおり、財産の分け方によって相続税の額が変わります。そこで、パターンごとに相続税の計算をしてみます。

計算をする前に、まずは相続税の計算を行うために必要な事項を確認しておきましょう。相続税の計算には、相続財産の額と基礎控除の額という2つの金額が必要となります。相続財産の額から基礎控除の額を控除した後の金額が、課税対象となる財産の額となるためです。また、基礎控除の額が相続財産の額を上回れば、相続税は発生しません。基礎控除の額は、「3,000万円+600万円×相続人の数」として計算されるため、相続人の人数を確認しておく必要があります。
今回の内容では、相続財産の額は2億円、相続人は4人であるため、基礎控除の額は5,400万円、課税対象の財産の額は1億4,600万円となります。

相続税の額を計算する際には、まず相続人全員で負担する相続税の総額を計算します。
相続税の総額は、課税対象の財産の額を法定相続分どおりに分割したものとして各相続人の取得額を計算し、その金額に対して税額を計算します。その後、相続人ごとに計算した相続税額を合計したものが、全員で負担する相続税の合計額となります。
今回の相続人は、奥様とお子様3人であることから、各相続人の取得額及び相続税額は以下のようになります。

奥様 取得額1億4,600万円×1/2=7,300万円、相続税額7,300万円×30%-700万円=1,490万円
お子様(1人あたり) 取得額1億4,600万円×1/2×1/3=2,433万円、相続税額2,433万円×15%-50万円=およそ315万円

この結果、相続税額の総額は1,490万円+315万円×3人=2,435万円となります。

この相続税の総額を、実際の遺産分割によって取得した財産の額に応じて按分します。そのため、ここまでは、どのように遺産分割を行っても同じですが、この先は遺産分割の方法によって各相続人の納税額が変わります。また、奥様については「配偶者の税額軽減制度」を利用することで、取得した財産の額が1億6,000万円か配偶者の法定相続分相当額のいずれか多い方の金額以内であれば相続税がかからない制度があるため、実際に納税する相続税の額に大きく影響します。

それでは、それぞれの相続税額を計算してみましょう。

①民法上の法定相続分(妻2分の1、子それぞれ3分の1ずつ)で分けた場合

この場合、2,435万円の相続税額を法定相続分と同じ割合で按分します。その結果、お子様3人については、それぞれ約405万円の相続税が発生します。また、奥様の相続分については、配偶者の税額軽減制度により相続税額はゼロとなります。相続税の納税額は、合計で約1,215万円となります。

②妻にすべて相続させる場合

奥様が相続財産のすべてを相続した場合、全部で2億円の財産を取得したこととなります。また、奥様が相続税の全額を負担することとなりますが、配偶者の税額軽減制度を適用することができます。ただし、配偶者の税額軽減制度の適用を受けられる上限額1億6,000万円を超える4,000万円分の財産に相当する相続税については納税しなければなりません。この場合は、相続税487万円が発生します。

③4人均等で分ける場合

この場合、2,435万円の相続税額を4人で均等に分けて納税することとなります。ただし、奥様の分として計算された金額は、配偶者の税額軽減制度を適用することができるため、税額がゼロとなります。この場合、お子様3名にそれぞれ約608万円の税額が発生し、合計で約1,824万円を納税することとなります。

このように、遺産分割の方法によって相続税額は大きく変わります。相続税を負担することができるかどうかも考えながら遺産分割を行うと、相続がスムーズに進むため参考にしてください。

専門家プロフィール

税理士 桑原弾

税理士 桑原弾

相続サポートセンター(ベンチャーサポート相続税理士法人) 税理士。昭和56年生まれ、大阪府出身。
大学卒業後、税務署に就職し、国税専門官として税務調査に従事、税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した税理士としての知識」と「元税務調査間としての経験」を両輪として活かした相続税申告を実践中。

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昭和55年うまれ、大阪府出身。
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