半年ほど前に父が85歳で亡くなりました。
法定相続人は母と私、そして私の妹の3人でしたが、もめるようなこともなくスムーズに遺産分割協議が成立しました。
相続財産の中で一番大きな金額となったのは自宅の土地であり、ほかには預貯金と有価証券が少しずつあっただけなので、相続税が発生することもなく、相続税の申告を行う必要もありませんでした。
すべての手続きが完了したため、あとは遺産の名義変更をしようと準備を始めたのですが、自宅の土地の名義変更をする際には遺産分割協議書が必要だという情報を目にしました。
はたして、今回のようにもめごととなっていない相続であっても、遺産分割協議書は必要なのでしょうか。
自宅の土地や建物のような不動産の所有者を明らかにするのが、法務局で行う登記です。
法務局で土地や建物の所有者を登記することで、不動産の所有者以外の人も、その不動産の所有者がわかるようになっているのです。
亡くなった人が所有していた不動産については、その不動産を相続した人が新たに登記を行います。
このことを相続登記といいます。
相続登記を行うのは実際にその土地や建物を相続した人ですが、誰が相続を行ったのかを明らかにするために必要とされる書類があります。
まず、遺言書がありその遺言書にしたがって遺産分割を行った場合は、遺言書を使って相続登記を行うことになります。
遺言書にしたがって遺産分割をした場合には、遺産分割協議書を作成することはありませんから、遺言書が遺産の分割方法を明らかにし、相続登記しようとしている土地や建物の新しい所有者を明らかにする唯一の書類です。
なお、自筆証書遺言により遺産分割を行う場合は、必ず家庭裁判所による検認の手続きを受けていなければなりません。
次に相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産の分割方法を決めた場合には、その内容を記載した遺産分割協議書を使って相続登記を行います。
遺産分割協議書には、誰がどの財産を相続するのかを明記し、相続人全員の署名・押印が必要です。
遺産分割協議書は、相続に関するあらゆる手続きを行う際に必要とされ、特に相続登記を行う際には、他の相続人とトラブルになっているかどうかには関係なく提出しなければいけません。
最後に、遺産分割協議書がない場合についても確認しておきます。
法務局で相続登記を行う場合に、遺産分割協議書がなくても登記できる場合があります。
それは、登記しようとしている不動産の1つ1つについて、すべて法定相続割合で相続する場合です。
戸籍謄本など他の書類で各相続人が有する法定相続割合が確認できるため、その割合にしたがって持ち分を設定し、すべての法定相続人の共有財産とする登記ができるのです。
相続登記に遺産分割協議書が必要ないのは、不動産を法定相続割合に応じた持ち分で共有することとした場合のみです。
遺言書もなく、また不動産を共有としないのであれば、トラブルになっていなくても遺産分割協議書が必要となるため、間違えないように準備しておきましょう。
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