我が家は、父、母、長男、長女の私の4人家族です。父は小さいながらも会社を経営していて、従業員も30人ほどいます。会社の全株式は父が保有しています。また、会社の本社の建物、土地も父の名義です。
父も、今年80歳になることから、先日、家族会議が開かれ、会社の後継者問題について話し合いが行われました。そこでは、父が会社の次期社長として兄を指名しました。
それとともに、父が死んだ場合には、父が所有する会社の株式や土地・建物はもちろん、すべての資産は、兄が相続することとされ、母と私は相続を放棄するよう求められ、相続を放棄する旨の念書の作成を求められました。
我が家では、父が絶対の権力を有しており、誰もそれに逆らうことはできないので、母も私もやむなく父が言うとおりの相続を放棄する旨の念書を作成して提出しました。
それから1年後に、父が亡くなりましたが、兄は、1年前に作成した念書を根拠に、母と私は相続を放棄したのだから、自分がすべての財産を相続すると主張しています。
本当に、1年前の相続放棄の念書は有効なのでしょうか。
司法書士 田中千尋
お父様が亡くなる前に、お父様の財産についての相続放棄を行うとする念書を作成したとのことですが、このことで相続放棄が成立しているわけではありません。
実際に相続放棄するためには、亡くなったことを知った日から3か月以内に家庭裁判所で相続放棄の申立てを行う必要があり、生前に相続人どうしで生前放棄するという約束をしているだけでは、相続放棄したことにはなりません。
したがって、1年前に作成した念書を根拠として、あなたとお母様が相続放棄しなければならないということはありません。
法定相続人であるお母様、お兄様とあなたの3人で遺産分割協議を行って、話し合いにより遺産分割を行うこととなります。
また、このケースではお父様が生前に遺言書を作成し、すべての財産をお兄様が相続することとしている可能性もあります。
しかし、このような遺言書があったとしても、法定相続人には遺留分として一定割合の財産を相続する権利が保障されています。
今回の場合、お母様は財産全体の1/4を、あなたは1/8を遺留分として相続することが保証されているため、万が一、遺言書がある場合にはどのような遺産分割方法となっているのかを確認してください。
そして遺留分に満たない場合には遺留分を主張することもできると覚えておいてください。
司法書士 田中千尋
相続サポートセンター(ベンチャーサポート司法書士法人) 代表司法書士。昭和62年生まれ、香川県出身。
大学卒業後、司法書士事務所の勤務を経て、ベンチャーサポート司法書士法人の代表司法書士に就任。相続登記や民事信託、成年後見制度の業務に従事。相談者に親身になって相談を受けることを心がけている。
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大卒後、税務署に就職し国税専門官として税務調査に従事。税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した税理士としての知識」と「元税務調査官としての経験」を両輪として活かした相続税申告を実践中。
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