行政書士 本間剛
あなたのおっしゃるとおり、遺言書が複数出てきた場合は、その作成した日が新しいものを有効な遺言書として取り扱います。そのため、亡くなる3年前に作成した遺言書ではなく、亡くなる半年前に作成した遺言書にしたがって遺産分割を行わなければなりません。
それでは、遺言書の発見が遅れたために、古い方の遺言書にしたがって遺産分割が完了してしまった場合はどのように考えられるのでしょうか。
今回のご質問の内容では、2つの遺言書に書かれた内容がそれぞれ異なると思われます。この場合、有効に成立している遺言書とは異なる方法で、相続人間の話し合いにより遺産分割を行った状態と言うことができます。
このような状態で、最初から遺言書があれば遺産分割協議の内容について合意していなかったと思われる相続人は、遺産分割に合意したのは遺言書の存在を認識していなかったからであり、遺産分割協議は無効であると主張することができます。また、今回のようなケースで訴えを起こした場合には、実際に行った遺産分割が無効と判断される可能性も高いといえます。
いったん異なる方法で遺産分割を行ったからといって最も日付の新しい遺言書の効力が失われるわけではないため、遺産分割が無効であると判断されれば、改めて遺言書にもとづいた遺産の分割を行うこととなります。
また、今回のケースでは以下のような点も確認していただくと、よりスムーズに相続手続きが進むと思われます。
①2つ発見された遺言書の中に、無効となるものはないでしょうか。
仮に遺言書の中に無効となるものがあると、そもそもその遺言書はなかったのと同じこととなります。後から見つかった日付の新しい遺言書についても、その形式面で問題がないか、まず確認してみましょう。
②相続人が遺言書を隠していた事実はないでしょうか。
相続人の中に、自分に不利となる遺言書を隠していた人がいると、その相続人は相続する資格を失うこととなります。遺言書の存在を知っていた人がいたにもかかわらず、その存在を隠していたとすれば、その人は大きなペナルティを受けることとなります。
行政書士 本間剛
相続サポートセンター(ベンチャーサポート行政書士法人) 代表行政書士。昭和55年生まれ、山形県出身。
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