70代の男性です。親も兄弟も死亡しており、子どももいませんので、身寄りのない状態です。私が死亡した場合に備えて、ここ10年身の回りの世話をしてくれているAに全財産を相続してもらう内容の遺言書を作成したいと考えています。私が保有している資産は現金、預貯金、不動産、車、有価証券などさまざまですが、これら全てをAに相続させる場合、遺言書には資産を一つ一つ列挙して明示する必要があるのでしょうか?あるいは「全財産をAに相続させる」と記すだけで足りるのでしょうか。
行政書士 本間剛
遺言書の中でも自筆証書遺言を作成する場合、作成した遺言書を誰かに確認してもらうことは稀であるため、本当に有効と認められるのか不安を感じるものです。そのため、自筆証書遺言を作成した際には、特に形式的に無効となることのないよう注意する必要があります。
自筆証書遺言を作成する際には、必ず守らなければならないルールがあります。①全体を自筆していること(2019年1月13日以降に作成する場合は、財産目録をパソコンで作成したり、登記簿謄本や通帳のコピーを添付したりすることができます)、②作成日が記載されていること、③遺言書を作成した人の署名があること、④押印があることです。また、記載内容を訂正する際には正しい方法で行われていること、遺言書に書かれた内容が誰にも理解できるものであることが求められます。
これらの要件を満たしたものが、遺言書として有効に成立します。今回のご質問のように「全財産をAに相続させる」と書かれた内容が誰にも理解できるようなものであるかが問題となるのですが、結論から申し上げると、問題なく成立するといえます。この記載方法でも、Aさんはあなたの財産を受け取ることができます。
ただし、このような記載方法による場合、財産を相続する人はどのような財産があるのか全く見当がつかない状態から、財産調査を始めなければならないため、そのすべてを把握するにはかなりの時間と労力を要します。場合によっては、相続手続きが行えないまま残ってしまう財産があるかもしれません。相続人のために遺言書を作成するという観点からすれば、遺言書に財産目録を添付しておき、その目録に記載していない財産についてもAさんに相続させる、と記載するのが望ましいかと思います。
行政書士 本間剛
相続サポートセンター(ベンチャーサポート行政書士法人) 代表行政書士。昭和55年生まれ、山形県出身。
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