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神奈川県の横浜市を拠点に、中古住宅を自由にリノベーションする家づくりを提供している「株式会社一歩」。物件選び、デザイン、住宅ローンに至るまでワンストップで相談することができ「コストパフォーマンスの良さ」「定額制も導入している」「無垢材を利用できる」などの理由から、若い世代のお客さまを中心に支持されています。
「“一歩”ずつコツコツと」の姿勢で取り組む代表取締役の佐藤竜也様に、創業の経緯やリノベーションの魅力について伺いました。
若い頃は知人の会社でリフォーム営業のアルバイトをしていました。そんな中、親しくなったクロス職人の方から「不動産会社で働いてみたら?」とアドバイスされたことが最初のきっかけです。当時は聞き流していましたが、後に正社員として働こうと考えた際に、彼の言葉が頭をよぎって不動産業界に進みました。
横須賀市に本社のある不動産会社に入社し、17年にわたり勤務しました。例えば東日本大震災後に東京電力が売却した社宅跡地を取得し、80棟の戸建て分譲をつくって販売責任者になったこともあります。当時の横須賀エリアはマンションよりも戸建てのマーケットが中心でしたね。
一方、スケールメリットにより建材費を抑え、安価で新築分譲を販売する企業が台頭してきました。「資金が少なくても新婚で新築を買えます」とのうたい文句で集客し、私もこのような住宅の販売に携わっていました。
すると今度は「新築戸建てが当たり前」になります。そして、手間を省くために区画割りや間取りがパターン化され、設計士が建築現場に足を運ぶことも無くなりました。お客さまを物件にご案内しても、最初のうちは目を輝かせるものの、いざ購入の話になると「うーん……」と躊躇する方が多かったですね。言葉にならないこの気持ちは私も同じでした。どの家も間取りが似たり寄ったりで“玄関を開けた瞬間の感動”には出合えなくなっていましたね。
そんなある日、上司から「中古物件の瑕疵(かし)保証を行っている会社の話を聞いてほしい」と頼まれました。同じような取り組みを一緒に始めないかと営業に来られたのですね。
話を伺うと「これからは新築住宅の販売が頭打ちになり、中古住宅の流通が鍵になる」とのことで、私も誘われて国交省のセミナーに参加しました。それまで国は、景気を回復させるために「補助金も減税もサポートするので新築を売りましょう」との方針でしたが、参加したセミナーでは新築について一切触れず「どうすれば中古住宅が流通するのか」がテーマでした。時代の変化に気付き、そこから中古物件に興味を持ち始めました。
そして、モデルケースとしてみていた会社が、「中古物件を買ってリノベーションしよう!ありきたりな改装ではなく、今までにないワクワクする暮らしを提供しましょう!」と盛り上がっていました。全国展開も目指していて、一緒に活動したいという衝動に駆られましたね。
私は会社で新築住宅を販売しながらも「時が来るのを待っていたら、中古リノベーションの波に乗り遅れてしまう」と感じていました。やがて押しかけるように彼らを訪ね、仲間に入れてもらい独立しました。「株式会社一歩」は、そんなスピード感で立ち上がっています。
やはり最初のお客さまですね。若い夫婦で予算も限られていることから、再販のために購入していた横須賀市内のコンパクトなマンションを紹介しました。リノベーションも希望通りに仕上げると提案したところ、喜んで契約してくれました。
プランニングも順調に進み、最後の打ち合わせが終わって事務所に帰ろうとしたところ、なぜか奥さまが落ち込んでいたのです。「どんな家をつくるのか、夢を話したり、アイデアを聞いたりするのがとにかく楽しかった。もう着工に移るなんて寂しい」とのことで、すべて自分で決めてリノベーションするなんて想像できなかったと続けていました。
部屋が完成した際には見学会にもご協力いただきました。会社の同僚もたくさん連れてきてくれて、どなたも物珍しそうに室内を眺めていました。
引用元:株式会社一歩
せっかく会社を立ち上げるのだから、子どもを名付けるのと同様に意味を持たせたいと考えました。私自身、2段跳び3段跳びで仕事を進めるタイプではないので「一歩ずつ、コツコツと」という思いを大切にして付けています。ほとんど悩むことなく、すっと最初に下りてきた言葉です。
ちなみに当社は「不動産」と「リノベーション」の両輪で成り立ち、どちらもプロフェッショナルであることから、自らを「ハイブリッドカンパニー」と呼んでいます。不動産仲介、買取再販、そしてリノベーションまで一気通貫で担当できるのが特徴です。
まずは築年数、耐震基準、税制関係について説明します。その上で、価格や立地条件を踏まえ、最終的にはお客さまの判断に任せています。購入を誘導することもなく、かといって見送りを勧めることもありません。事実を淡々と伝えるだけですね。
ちなみに、マンションのリノベーションでは管理状態が重要です。旧耐震基準でも適切にメンテナンスされている物件もあれば、築年数以上の古さを感じてしまう建物もあります。お客さまには私なりのチェックポイントを伝えて確認してもらっていますね。
例えば「管理費をいくら貯めているのか」です。マンションの世帯数が少ない場合は1世帯当たりの負担が多いので「家計を苦しめていないか」「逆に負担を減らし過ぎて掃除が行われていないのでは」などと確認しています。
また、実際に現地を訪ねてエントランスや共用部の状態を目にすると、住民による管理組合の意識が分かり「どれだけ大切に住んでいるのか」が伝わりますよね。
マンションのリノベーションにおける最大のメリットは、間取りを思い思いに決められることです。しかし、古い団地などでは配管や壁の構造が決まっているため、不可能な場合も少なくありません。
また、コンクリートや木造の老朽化した戸建てもリノベーションが難しいです。とはいえ、古くても良質な物件のほうが多数です。
私は建築士でありながら不動産を仲介し、さらに各銀行の住宅ローンについても情報を集めています。中古物件とリノベーションでお金を借りるにあたり、メガバンクを選ぶのか、より自分の返済プランに合った銀行を探すのか、あるいは固定と変動金利のどちらを選ぶのか、などもアドバイスしています。もちろん不動産調査も実施し、施工の際には管理人や近隣に住む方へのあいさつ回りもお客さまに代わって済ませます。
一人の人間が不動産もリノベーションも住宅ローンもすべて把握しているほうが、ワンストップで任せられて助かりますよね。そういう意味で「最強のなんでも屋さん」だと自負しています。
一般的な再販物件はローコストが目的なので、安く提供できる代わりに仕上がりが画一的です。そのため清潔感のある白壁や、空間を広く見せる膨張色を取り入れたリノベーションが広まっていきました。
次第に建材もプランも豪華になっていき、お金を投じて雑誌に載るような家をつくる人向けの会社が増えてきています。
対して当社は、結婚や出産を機にマイホーム取得を目指す方々のためにあります。「新築とほぼ同じ予算で、分厚いカタログの中から壁紙やタイルを自由に選べて、しかも無垢の木が香る家に住めますよ」といった提案で支持されていますね。
VRを導入したのは2018年頃です。名古屋にいる仲間がVR事業に参入し、応援も兼ねて採用しました。リノベーション後の様子を原寸大で再現し、ゴーグルを装着して室内を見渡したり、歩いたりできます。
お客様にとって、部屋が完成していないのに代金を支払うというのは、リノベーションにおける大きなハードルの一つです。車も家電も現物を見て購入するのに、リノベーションは先に支払いを済ませないと施工できません。
もちろん“ずれ”が生じないよう細心の注意を払いますが、お客さまの認識と異なる可能性もゼロではないのです。その点でVRは実際の部屋の広さや高さだけでなく、壁や天井、ドアの色などもリアルに再現できます。お客様の不安を解消してくれる、とてもありがたいツールなのです。
引用元:株式会社一歩
先ほど話した通り、リノベーションは完成前にお金を払います。対して当社のお客さまは若くて自己資金が少なく、フルローンを組む方も少なくありません。私はかつてリノベーションの見込み額を提示しながら打ち合わせていましたが、話が盛り上がるにつれて見積もり額も増え、せっかく夢を膨らませたのに諦めさせてしまうことを残念に思っていました。
そこで考えたのが「777HOUSE」で、定額制のリノベーションを始めました。セレクト型とは異なる完全自由プランのため「収納を増やしたい」「キッチンの場所を移したい」「部屋の数を減らしてリビングを広くしたい」「テレワークや趣味のためのコンパクトな部屋を増やしたい」といった声にも応えられます。
間取りやデザインの打ち合わせが始まっていない段階でも「専有面積に応じて税別777万円から」と料金が決まっているのでローンを組みやすいですよね。
不動産業界はコロナ特需でしょう。テレワークが浸透して都心に暮らす必要がなくなり、当社が展開する横須賀や湘南エリアでも、都内からの転居を希望する方の問い合わせが全体的に増えていると思います。
リノベーションにおいては、テレワーク専用の部屋を設ける方もいます。そもそも当社では、両親が仕事で、子どもが勉強で使える空間をリビング内に確保する事例も多いので、お客さまに提案すると「ぜひうちにも!」と希望されるケースが多いです。
そろそろ頭打ちだと予測していますが、突如として下落することはないでしょう。現在は物件の売却が停滞気味のため、需要と供給のバランスから、この先2~3年は高止まり傾向にあると思われます。これよりも価格が上昇すると、ほとんどのサラリーマンが購入できなくなってしまいますよね。
一方でウクライナ情勢により、価格が上がっていない建築材料を探すのが大変になりました。木材でもクロスでも、2022年春の時点で以前から20~30%は上昇しています。システムキッチンも半年ほど前に価格を上げたのに、再び値上がりしました。
コロナ禍であらゆる製造が止まった上、今度はロシア関連の船が来日できない状況です。加えて上海もロックダウンされたため、中国製品も届かなくなるでしょう。不動産業界にとっては心配なニュースです。
当社がサポートしているのは若い世代のお客さまなので、あまり大きな影響は受けていません。
しかし、より広い視野でみると、世代交代などで売却されたマンションや戸建を一般のエンドユーザーが直接購入するのは難しいです。築年数が経っていて見た目も古く、家具や荷物がそのままの物件もあり、なかなか手を出す気にはなれませんよね。
それでも当社であれば「手を加えていない物件を買うほうがワクワクする」と提案できます。売却の選択肢も増え、不動産の少子高齢化対策に貢献できると考えています。
少し前になりますが、興味を持っていたのはリノベーションの施工現場に定点カメラを設置することです。撮影した動画をYouTubeなどで配信し、お客さまがいつでも工事の状況を確認できれば面白いと考えていました。
「お客さまは新しい自分の家を見たい」「施工に関わる職人は安全上の理由などから気軽に訪ねてほしくない」といった矛盾も解消できるのではないでしょうか。定点カメラの導入は引き続き検討したいです。
これからも横浜市を中心として、都内など神奈川県以外に進出するつもりはありません。すでに展開している川崎市や藤沢市、湘南エリアをメインの商圏として考えていきます。
また、今以上に「自分好みのリノベーション」が物件購入時の選択肢になるよう、当社も不動産業界を刺激していきたいです。確かにお客さまにとっては、初めて家を買うのに何もかも自分で決めるのは大変かもしれません。しかし、そこに家づくりの本当の意味や価値があると、もっと伝えていきたいですね。
「中古物件+リノベーション」をワンストップで提供することを目的に立ち上げた会社なので、この想いをさらに確立できるように努めてまいります。
佐藤 竜也 様
株式会社一歩 代表取締役
■ 企業プロフィール
社名:株式会社一歩
所在地:神奈川県横浜市西区北幸2-4-5 コウノビル7F
事業内容:不動産売買・仲介/リノベーションデザイン/設計・施工、家具・インテリア販売/コンサルティング、フィナンシャルサービス/損害保険
TEL:045-534-8066