

東京弁護士会所属。イギリス(ロンドン)出身。
立ち退きは、人生という演劇における「幕間のセットチェンジ」のようなものです。次の新しいステージへスムーズに、かつ最良の状態で進むためには、適切な準備とプロフェッショナルによる調整が欠かせません。
私は都内の大規模・中堅法律事務所で培った高度な法的知見を活かし、居住用から事業用まで、数多くの「立ち退き料増額交渉」や「建物明渡し」の問題に取り組んできました。
「どれくらいの金額が妥当なのか」「いつまでに明け渡すべきか」といった不安に対し、法律の専門家として明確な見通しをスピーディーに提示いたします。皆様が正当な権利を守り、納得して次の一歩を踏み出せるよう全力でサポートいたします。ぜひ一度ご相談ください。

賃貸物件の家賃を滞納すると、厳しい支払督促や連帯保証人への請求が始まり、最終的には訴訟手続きで退去の強制執行が断行されます。
強制退去後も、滞納した家賃は家賃保証会社が回収を代行して徹底的な追跡を行うため、時効の成立などで支払いを免れるケースはほとんどありません。
勤務先の給与差し押さえなど、深刻な事態が発生する前に弁護士に相談して公的な支援制度や債務整理の手続きなどを検討しましょう。
本記事では、家賃を滞納したときのリスクや対処法、相談先などを解説します。
目次
家賃の支払い義務は賃貸借契約に基づくため、放置しても原則として残り続けます。
放置するほど最大年14.6%の遅延損害金が加算され、返済が困難になるケースがほとんどです(消費者契約法9条1項2号)[注1]。
例外として法的な債務整理や和解交渉などが成立した場合のみ、家賃の支払い義務はなくなる可能性があります。
例外となるケースや滞納するリスクを見ていきましょう。
[注1]消費者契約法/e-Gov
消費者契約法9条1項2号
滞納した家賃の支払いがなくなるケースは、主に以下の4つです。
| 自己破産や個人再生などの債務整理での免責 | 債務整理の手続き前に発生した滞納家賃は原則として免責の対象となり、支払い義務がなくなる。手続き後の家賃の支払い義務は発生する。 |
| オーナーとの和解や合意による免除 | 裁判や交渉の結果、退去と引き換えに滞納分の家賃を免除してもらうなど、貸主と借主の合意で支払いが免除される。 |
| 特別な事情による減免 | コロナ禍のような社会状況による失業や災害の被災などの特別な事情がある場合、オーナーが自主的に家賃の減額や免除に応じるケースもある。 |
| 消滅時効の成立 | 滞納家賃について5年以上賃貸人から請求や法的手続きがなく、かつ借主が時効の援用(時効の完成の主張)を行えば支払い義務が消滅する。 |
消滅時効の成立は賃貸人や保証会社からの法的措置で経過期間をリセットされる可能性が高く、実務上の成立は困難です。
現実的には、弁護士を介した和解や債務整理などの手段で免責を得るケースがほとんどでしょう。
家賃滞納を放置すると、次のようなリスクが発生します。
| 連帯保証人や保証会社への請求 | 連帯保証人や保証会社に請求が及ぶ。家族などの近しい人を連帯保証人に設定している場合、関係が破綻する恐れがある。 |
| 強制退去の可能性 | 滞納が続くと賃貸人から契約解除や強制退去手続きが進められる。 |
| 信用情報への影響 | 家賃の支払いに保証会社やクレジットカードを利用している場合、滞納情報が信用情報機関に登録される。 いわゆるブラックリストに載った状態となり、登録が抹消されるまでの5~10年ほどは賃貸契約やローン審査が困難になる。 |
| 財産差し押さえのリスク | 訴訟手続きで支払い命令が出ると給与・預金などが差し押さえられる可能性がある。 |
上記とは別に、滞納家賃には遅延損害金が加算されます。
年利の上限である14.6%の場合、日割計算の請求額は家賃10万円で1カ月約1,200円です。
給料が差し押さえられると勤務先に差押命令の公的書面が送付されるため、社会的な信用を失い、自発的な退職に追い込まれる恐れもあるでしょう。
一般的には、以下のような条件を満たすと法的な契約解除や明渡訴訟による強制退去が認められます。
過去の判例では、背信的行為による貸主と借主の信頼関係の破壊がなければ契約解除は認められないとされました(最判1953年9月25日判決[注2])。
[注2]裁判所判例検索
最高裁 第二小法廷1953年9月25日判決、事件番号:昭和25(オ)140
原則として1~2カ月の滞納では即時退去にはなりませんが、滞納が3カ月以上続くと信頼関係の破壊が認定される可能性は高くなるでしょう。
家賃が支払えなくなった場合に、最も避けたいのは「誰にも相談しないまま気がついたら状況がどんどん悪化していた」という事態です。
支払いを滞納した恐怖から電話や手紙などを放置し続けると、賃貸人が法的な強制執行の手続きを進める可能性が高くなります。
状況が悪化する前に以下の相談先へ連絡しましょう。
| 賃貸人や管理会社 | 入居者を直接把握しているため、最初に相談する。 |
| 連帯保証人 | 家賃の支払いが滞った際に借主と同等の支払い責任を負う。 滞納が続くと直接連絡される可能性が高いため、相談も兼ねて先に状況説明をするとよい。 |
| 公的な支援窓口 | 市区町村の福祉課や生活困窮者自立支援窓口などで、経済的な困難や生活全般の問題を相談できる。 役所以外にも、社会福祉協議会やNPOでも地域に根ざした生活支援や相談活動を行っている。 |
| 弁護士・法テラスなどの専門家 | 法律の専門知識を基に、アドバイスや代理交渉を行う。 すでに法的トラブルに発展しそうなときには早期に相談する。 |
滞納が続く前にできるだけ早い段階で対処すると、家賃滞納のリスクを最小限に抑えられます。
まずは賃貸人や管理会社へ事情を説明して支払いの猶予や分割払いなどを交渉し、親族などへ立替え払いを求めましょう。
解決が難しいときは公的制度の利用を検討し、弁護士へ対処法を相談するのがおすすめです。
以下で、具体的な4つの対策を解説します。
家賃の支払いが難しいと感じたら、まずはできるだけ早く賃貸人や管理会社に連絡し、事情を正直に説明しましょう。
賃貸人は、家賃が回収できないまま連絡がとれなくなる状況を最も避けたいと考えます。
収入の見込みや返済計画を提示し、誠実に支払う意思を伝えれば分割払いや支払い猶予など柔軟な対応を受けられるケースもあります。
賃貸人にとっても訴訟は時間や費用の負担が大きいため、信頼できる返済計画があれば経済的メリットから交渉に応じる可能性もあるでしょう。
自力で家賃を用意できない場合は、家族や親戚・友人に一時的な立て替えを相談する方法もあります。
支払期日までに家賃を用意できれば、督促や遅延損害金の発生、信用情報への事故情報の登録などを防げます。
親しい関係であっても、目的や返済期日、返済方法などを明記した契約書を作成すると将来のトラブル防止や税務調査時の対応に役立つでしょう。
家賃の支払いが困難になった場合、以下の公的支援制度の申請を検討しましょう。
| 制度・給付金 | 内容 |
|---|---|
| 住居確保給付金 | 廃業や離職から2年以内など、一定の条件を満たすときに最大9カ月間の家賃を国から直接賃貸人に振り込む制度 |
| 一時生活支援事業 | 緊急の生活困窮に対して一時的な宿泊や食事、生活必需品の提供、緊急小口資金の貸付などを行う制度 |
生活を再建するために、公的支援を活用してまずは家賃滞納を回避するのが重要です。
家賃滞納によって強制退去や差押さえなど法的トラブルに直面しそうな場合には、弁護士や法テラスに相談しましょう。
賃貸人との交渉や法的手続きの代理、債務整理などの専門的な支援を受けられます。
法テラスでは、収入や資産が一定基準以下の場合に無料で3回まで法律相談を受けられるほか、弁護士費用などの立替制度も利用できます。
一方で、法テラスは手続き開始に数カ月ほどかかるため、家賃滞納が数カ月続いているときは弁護士事務所の無料相談窓口に連絡しましょう。
明け渡しの判決が出ても自主的に退去しなかったときは、明け渡しの催告を経て退去の強制執行が行われます。
強制退去が執行されると、住居を失うのみでなく滞納家賃や執行費用が請求されます。
保証会社には家賃の滞納履歴が記録されているため、次の入居先を探すときに審査に通るのが困難になるでしょう。
強制退去の後に待ち受ける状況を紹介します。
強制執行では、執行官や執行補助者が室内の荷物をすべて運び出し、鍵の交換が行われて強制退去させられます(民事執行法168条)[注3]。
荷物は保管業者に通常1カ月ほど保管されますが、一括で保管料を支払わなければ返還されません。
保管期間が過ぎると、貴重品もすべて処分されます。
強制執行を避けられない場合、生活保護制度や住宅扶助制度の申請など、住居を失った後の対応を弁護士に相談しましょう。
[注3]民事執行法/e-Gov
民事執行法168条
強制退去が執行された後も滞納家賃や遅延損害金、強制執行にかかった費用などが請求されるため、返済は逃れられません。
契約内容によっては、家賃の倍額を損害賠償として請求されるケースもあります。
給与の差し押さえなどが執行されるリスクは残り続けるため、自己破産などの法的手段で免責を得なければ生活の再建は困難になるでしょう。
過去の家賃滞納や強制退去の履歴は、賃貸保証会社が利用するデータベースに登録されます。
現在はほとんどの賃貸物件で保証会社の利用が必要になるため、次の物件の入居審査に通るのが困難になるでしょう。
次の住居を確保するには、家族名義での契約や独立系保証会社を利用する物件を探すなどの方法によらなければなりません。
入居できる物件が見つかったとしても、支払いに困窮した理由が一時的でない限り、今後も家賃滞納のリスクが続きます。
経済状態の改善の目処が立たない場合には、生活保護の申請や自立相談支援機関の窓口に相談して生活の再建を図るのが望ましいです。
家賃滞納に関するよくある質問は、以下の通りです。
単なる不払いは民事上の責任であり、最初から騙す目的で契約したなどの事情がない限り、通常は刑事罰の対象になりません。
家賃滞納を放置しても保証会社は時効成立を阻止するため、逃げ得になるケースはほとんどないでしょう。
家賃を滞納しても、原則として警察に逮捕されるような刑事罰に問われる可能性は低いでしょう。
家賃の滞納は賃貸借契約に基づく債務不履行に該当し、賃貸人に対する民事上の責任が発生します(民法415条)[注4]。
例外として、最初から家賃を支払う意思なく年収を偽って契約し、家賃を滞納したなどの悪質なケースでは詐欺罪に問われる恐れがあります(刑法246条)[注5]。
[注4]民法/e-Gov
民法
[注5]刑法/e-Gov
刑法246条
滞納家賃を放置しても逃げ得になるケースはほとんどありません。
法律上、滞納家賃は支払期日から5年で消滅時効が成立します(民法166条1項1号)[注4]。
一方で、保証会社は時効成立前に住民票の追跡調査を行い、住所を特定できなくても公示送達などの手段で訴訟提起します。
判決後、時効成立まで10年経過が必要になるため、自己破産などの手続きによらなければ滞納リスクはさらに継続するでしょう(民法169条等)[注4]。
滞納家賃を放置しても、賃貸人や保証会社は住所を追跡し、訴訟提起などの手段で時効成立を阻止します。
和解交渉や自己破産などの法的手段で解決しない限り、強制執行による退去や給与差し押さえなどのリスクが継続します。
3カ月の家賃滞納が契約解除の目安となるため、滞納が続く前に専門家である弁護士へ相談しましょう。
家賃の支払いが困難になってしまった場合、一人で悩み続けずにVSG弁護士法人の無料相談窓口にご連絡ください。