アパートの取り壊しや建て替え、再開発事業などの公共事業によって立ち退きが発生する場合、立ち退き料を支払わなければいけません。
立ち退き料を支払うということは、受け取る人もいます。
金銭の支出と金銭の受け取りが発生するため、確定申告により税務署への申告が必要となります。
この記事では、立ち退き料の勘定科目・仕訳例や立ち退き料に課税される税金を、立ち退き料を払う側、受け取る側に分けて解説します。
目次
立ち退き料を払った側(賃貸人)と受け取った側(賃借人)に分け、勘定科目や仕訳の例を挙げていきます。
確定申告で書き方に困った際の参考にしてください。
賃貸している建物や土地を売却するために立ち退き料を払った場合、譲渡費用として譲渡所得から控除します。
家賃を不動産収入として得ていた建物の賃借人に立ち退いてもらう場合の立ち退き料は、不動産所得における必要経費です。
法人の場合は両例とも経費に計上します。
また、どのような勘定科目で処理をするかについては、立ち退きの内容によって変わります。
どのような勘定科目で処理をするか、ケースごとに分けて説明します。
建物を賃貸している場合で、賃借人に支払う立ち退き料は、雑損失勘定で処理をします。
建物を転貸し転借人に立ち退いてもらうために賃貸人が支払う立ち退き料は、資産を賃借し又は使用するために支出する権利金、立ち退き料その他の費用として繰延資産とされます。
そのため、一括して費用処理することはできません。
ただし、支出の効果がその支出の日以後、1年以上に及ぶものに限ります。
立ち退き料を支出した場合の勘定科目としては、長期前払費用勘定で管理して、その後は賃貸期間または5年間で償却していくことになります。
支出する金額が20万円未満の少額なものについては、その全額を支出時に支払手数料などの勘定科目を使用して費用処理することが認められています。
建物や土地を取得する際、借家人に立ち退いてもらうために取得者が支払う立ち退き料は、当該建物の取得価額に算入します。
立ち退き料を受け取った場合、受け取った方の属性により計上方法が変わります。
個人の場合は、借家権を消滅させるような立ち退きの場合は譲渡所得、立ち退きで事業が一時停止し売り上げが減少する場合の営業補償として払う立ち退き料は事業所得、その他の立ち退き料は一時所得として計上します。
なお、受取が個人で損害賠償的な性質を有する立ち退き料は、所得税に関して以下のように区分されています。
法人の場合は立ち退き料は益金となるため、他の所得と合算します。
税金についても、立ち退き料を支払った側と受け取った側に分けて説明をしていきます。
立ち退き料を支払った側に、税金は課税されません。
立ち退き料は所得となるため、受け取った側が個人か法人かにより課税される税金が変わります。
個人が立ち退き料を受け取った場合は、所得税が課税されます。
一方、法人が立ち退き料を受け取った場合に課税される税金は、法人税です。
なお、消費税について立ち退き料は基本的に非課税ですが、立ち退き料の内容により課税対象となる場合があります。
消費税が課税されるケースは、賃借人の地位の譲渡を行った場合のみです。
賃借人の地位の譲渡を行った場合について、例を挙げて説明します。
次のような事例を想定しましょう。
大家である賃貸人Aが賃貸人Bに立ち退きを要求した場合、賃借人Bは実際に賃貸物件を使用している転借人Cに立ち退いてもらわなければいけません。
賃貸人Aから立ち退き料を受け取った賃借人Bは、転借人Cに立ち退き料を支払う必要があります。
この賃借人Bが転借人Cに立ち退き料を支払うのは、転借人Cに対する賃借権の譲渡をお願いするという意味があります。
この賃借権の譲渡を行った場合のみ、消費税が課税されます。
立ち退き料は、金銭の受け渡しのため確定申告をして所得、あるいは経費として計上しなければいけません。
立ち退き料の内容によってどの勘定項目で計上するか方法が変わりますので処理方法の確認が必要です。
処理の方法を間違えると、税務署から申告ミスによる追徴課税などをされることもあり得ます。
どのような計上方法を取ればいいか判断が難しい場合は、専門家である弁護士や税理士などに相談することをおすすめします。
立ち退き料を適切に処理して、間違いのない申告を心がけましょう。