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立ち退き料を受け取れる時期は、原則、建物の明け渡し日です。
立ち退き料の支払いが建物の明け渡し日になるのには、理由があります。
立ち退きが完了する前に立ち退き料を支払ってしまうと、賃借人が立ち退き料を受け取ったにも関わらず、退去日を守らないということが起きてしまう可能性があるからです。
立ち退き料の支払いを建物の明け渡し日にしておけば、このようなことが起きる可能性はなくなります。
ただし、立ち退き料の支払いは、建物の明け渡し日でなくても構いません。
賃貸人と賃借人の合意があれば、立ち退き料の支払日はいつでも構わないとされています。
立ち退き料の支払いが建物の明け渡し日より前になる一例として、立ち退き料の一部先払いがあります。
賃貸人から立ち退きを要求されても、金銭的に引っ越しができない賃借人もいます。
金銭的に余裕がない賃借人に対しては、引っ越し代金の実費として立ち退き料の一部を事前に支払うケースもあります。
立ち退き料を退去前に渡すケースもあるため、立ち退き料交渉のときには金額だけではなく、立ち退き料の支払いタイミングについても折衝することが重要です。
立ち退き料は、法律によって必ず支払わなければならないと定められているものではありません。
そのため、立ち退き料を受け取れるケースと受け取れないケースの両方があります。
どのような場合に立ち退き料を受け取れるのか、どのような場合には受け取れないのか、それぞれ把握していきましょう。
立ち退き料を受け取れるケースは、以下の通りです。
建物の老朽化に伴い、建物の修繕工事や建て替え工事を行うことを理由に立ち退きを求められる場合は、立ち退き料を受け取れる可能性が高いでしょう。
また、賃貸物件の所有者が、物件を自宅として使用するために立ち退きを要求する場合も、賃貸人側の都合によるものであるため、立ち退き料が受け取れます。
ほかにも、物件の所在地を含む周辺一帯で再開発が行われることにより、立ち退きをしなければならなくなる場合も、立ち退き料が受け取れるでしょう。
このように、賃借人側が立ち退きを要求される原因を作っているわけではない場合は、立ち退き料が受け取れる可能性が高いといえます。
立ち退き料が受け取れない可能性が高いのは、以下のようなケースです。
立ち退き料が受け取れないケースで特に多いのが、賃借人の家賃滞納です。
賃借人の家賃滞納が原因で立ち退きを要求されるのであれば、賃貸人が立ち退き料を支払ってくれることはまずないでしょう。
また、家賃は滞納していなくても、明らかに契約内容に違反する行為をしている場合も、立ち退き料は受け取れません。
例えば、ペット飼育不可の物件でペットを飼育していたり、単身用の物件にもかかわらず複数人で同居していたりすると、立ち退き料を受け取れずに立ち退きを要求されることになるでしょう。
賃貸人から立ち退き要求を受けてから、実際に引っ越して立ち退くまでには多くの流れがあります。
ここからは、賃貸人から立ち退き要求を受け、引っ越しをするまでの流れを紹介します。
賃貸人から賃貸借契約を解除する場合、借地借家法により賃貸借契約の更新をしない旨を賃借人に通知しなければなりません。
更新拒絶通知の期日は、賃貸借契約期間満了の日の6ヶ月前~1年前です
立ち退き要求は、更新拒絶通知が賃貸人より届いたことで開始されます。
賃貸人からの立ち退き要求をそのまま受け入れるのであれば、退去の準備を始めますが、通常は立ち退き料などの交渉をするために弁護士に立ち退き交渉の代理を依頼します。
立ち退き料の交渉は自分自身でも可能ですが、正確な立ち退き料の算出や条件の折衝技術が必要になります。
しかし、立ち退き料算出や折衝を行うことは専門家でなければ難易度が高い作業です。
より良い立ち退き条件を引き出すためにも、弁護士に依頼することをおすすめします。
また、賃貸人側はすでに弁護士を立てて立ち退き要求している可能性もあり、個人で折衝をすることによって起きる不利な言動で揚げ足を取られる恐れもあります。
賃貸人は退去をしてほしい、賃借人は退去したくないというまったく反対の意思があります。
このような正反対の考えを持つ者同士が折衝をしていかなければならないため、自分自身で折衝する場合はかなり苦労します。
そのような大変な交渉という前提を忘れず、準備をしましょう。
賃貸人に請求できる妥当な立ち退き料の金額や、立ち退き料の金額以外の折衝(立ち退き料の支払いの時期や敷金の全額返還など)をどのように行っていくのか考えておく必要があります。
また、折衝時に賃貸人との関係をこじらせてしまうと、裁判所を介して立ち退きを要求してくる可能性が高まるため、関係性を保ちつつ折衝をすることが大切です。
なお、裁判所を介した立ち退きの場合、公平な立ち退き料が算出されるため、受け取る立ち退き料は低くなる傾向があります。
できる限り、立ち退き料の折衝で立ち退きの条件を決めるようにしましょう。
賃貸人と立ち退き条件について折衝をし、あるいは弁護士に折衝をしてもらい、退去するのに納得できる条件を引き出すことができたら、立ち退きに同意します。
立ち退きを承諾するときには、賃貸人と賃借人が承諾した内容を残せるように合意書などを締結しておきましょう。
合意した立ち退き料の条件や金額・支払い時期などをすべて残すことで、お互いの主張が食い違うというトラブルを防止できます。
賃貸人と立ち退き条件について合意が得られたら、引っ越しを行います。
前述したように、退去をする日が原則、立ち退き料を受け取る日になります。
退去をして立ち退き料を受け取ったら、立ち退きは完了です。
立ち退き料を受け取ることができるのは、原則、建物の退去日=引き渡し日です。
しかし、立ち退き料を引き渡し日に支払わなければならないという法的な決まりはありません。
そのため、賃貸人と賃借人が合意をすれば、立ち退き料の支払いのタイミングを引き渡し日から変更することは可能です。
もし、立ち退きたくても金銭的に立ち退きができない場合は、賃貸人と立ち退き料を支払うタイミングについて折衝をしてみるのも良いかもしれません。
また、賃貸人から立ち退き要求が来た場合、できる限り弁護士に立ち退き交渉を代行してもらいましょう。
賃貸人から提示された立ち退き料に不満があったとしても、弁護士抜きではなかなか交渉できません。
弁護士に依頼し、できる限り有利な条件を引き出してもらうことで立ち退きをするのが重要です。