

東京弁護士会所属。東京都出身。
弁護士になる前、私は公務員として自治体業務に携わってきました。その経験から、法的な正しさだけでなく、社会的な公平性や、一人ひとりの生活に寄り添うことの重要性を深く理解しています。
立ち退き問題は、住まいや事業所といった生活の根幹に関わる問題であり、そこには多大な不安やストレスが伴います。私は「弁護士は敷居が高い」というイメージを払拭し、何でも気軽に話せる相談相手であることを常に心がけています。
複雑な法律用語を分かりやすく整理し、今後の見通しを丁寧にご説明した上で、依頼者様が「相談して良かった」と心から思える解決を目指します。公務員時代から大切にしている「誠実に向き合う」姿勢を貫き、皆様の正当な権利を守るために全力で取り組んでまいります。

契約書がない場合でも、口頭の約束や家賃支払いの実態により法的な関係があると判断され、賃貸借契約が成立する可能性はあります。
契約書がないときの立ち退き要求は自由に行えるのではなく、退去を求めるための正当事由や予告通知期間などの条件を満たさなければなりません。
感情論ではなく、事実関係から法的な契約関係を再定義するための高度な判断が必要です。
本記事では、契約書がない場合の立ち退き要求について、ポイントや流れ、注意点などを解説します。
目次
契約書がない場合でも、口頭での合意や家賃支払いの実態により賃貸借契約が成立しているとみなされる可能性があります。
期間の定めのない契約となり、借主の居住が強固に保護されるケースもあるでしょう。
期間満了後に黙示更新や法定更新が成立すると、契約は継続します。
家賃の支払いがないときは使用貸借とみなされる可能性もあります。
使用貸借についての詳細は、以下の記事を参照してください。
弁護士に相談すれば、契約書がない中で「誰が、いつから、いくらで」借りているのかという法的実態を状況証拠から確定させ、事実認定できます。
賃貸借契約は、民法第601条[注1]を根拠とする諾成契約(だくせいけいやく)であり、口頭の合意のみでも契約が成立します。
たとえば、古い借家や親族・知人間では口頭の約束のみで借家を賃貸し、家賃の支払いを継続しているケースもあるでしょう。
契約書は当事者間の合意の証明となりますが、契約書がなくても借家の使用や支払いの実態で契約成立が判断される可能性があります。
契約書がないときは、通常は民法や借地借家法で定められた標準的な内容がそのまま適用されます。
特に借地借家法は弱い立場になりがちな借主の保護を目的としており、貸主にとっては立ち退き要求が難しくなるケースもあるでしょう。
貸主と借主が立ち退き交渉を行う場合、まずは事実関係を整理し、どのように組み合わせて正当事由を構成するかが重要となります。
賃貸借契約が成立していた事実を示す証拠として、実務上は家賃の振込履歴が利用されるケースが多いでしょう。
振込履歴がわかると、単なる家賃支払いの記録のみでなく、貸主が合意の上で借主の占有を認めていた証明にもなります。
一般的には、家賃の振込みは同じ通帳で長期間継続して使用されるケースが多いです。
家賃の支払いの実態を示す通帳がある場合、賃貸借契約の成立を立証する重要な証拠となるでしょう。
更新の合意がなくても、黙示更新や法定更新などで自動的に契約が継続するケースがあります。
黙示更新とは、期間終了後も借主が物件に居座り、貸主が異議を述べなかったときに契約更新が推定される民法上の規定です。
法定更新とは、借地借家法の規定により強制的に契約が更新されたとみなされる制度です。
期間満了後も更新の合意がないまま借主が物件を使用し、貸主が遅滞なく正当な理由をもって異議を述べなければ更新がみなされます。
どちらも期間の定めのない契約となり、貸主の側からすると立ち退き交渉の難易度が上がる可能性もあるため注意しましょう。

賃貸契約書の有無に関わらず、借主に立ち退きを要請するには正当事由と立ち退き料が必要です。
正当事由が弱い自己都合の場合や、立ち退き料の支払いがない場合、借主は立ち退きを拒否できる可能性が生じます。
契約書がないときは特約の定めが適用できず、すべてを法的な原則や交渉によって解決する必要があります。
立ち退き料は貸主の正当事由を補完するために交渉上で重要となり、いかに戦術的に活かすかで成否が変わるでしょう。
貸主が賃貸物件の借主に退去を求める際に正当事由がなければ、原則として認められません。
正当事由とは、借主に退去を求めるのがやむを得ないと認められる理由です。
正当事由が認められるかどうかは、貸主の退去を求める理由と借主の生活状況などが総合的に考慮されます。
契約書がない場合でも、単に貸主が物件を使用したいなどの事由では原則として正当事由とは認められません。
一方で、十分な立ち退き料の支払いがあるときは正当事由として補完され、立ち退きが認められる可能性もあるでしょう。
借地借家法第26条[注2]では、貸主から解約申し入れをするときは期間満了の6カ月前までに通知しなければならないと定めています。
一般的に、賃貸借契約の借主は貸主よりも弱い立場に置かれるケースが少なくありません。
借主が突然の退去を求められると生活に困窮する恐れもあるため、借地借家法では借主保護を目的として解約申し入れの通知期限を定めています。
解約申し入れの通知は、到達日や内容などを証拠に残すために内容証明郵便などを利用して送付されるのが一般的でしょう。
立ち退き料とは、借主が物件から退去するときに発生する損失などを補填する目的で支払われる金銭です。
補填されるのは、引っ越しによる家財の運搬や新居の契約に必要となる費用などです。
店舗などの事業を営んでいる場合、休業補償なども対象となるため立ち退き料が高額となるケースもあるでしょう。
正当事由や退去の予告期間、立ち退き料など、これらの要素が欠けると契約書の有無によらず立ち退き要請が認められない可能性が高くなります。
賃貸借契約書がなくても、立ち退きを求める正当事由がある場合は、退去が認められる可能性があります。
正当事由は総合的な判断によりますが、実務上で比較的認められやすいとされる代表的な事例を確認していきましょう。
賃貸物件が老朽化し、大地震による倒壊リスクがあるなど、非常に危険な建物を建て替えするときは、正当事由として認められる可能性が高いです。
大地震が起きて崩壊するような建物は人命に危害を加える恐れがあるため、築年数が古くなればなるほど正当事由と認められる傾向にあります。
一方で、築年数が古く老朽化が進んでいても耐震性を備えている場合には、正当事由と認められないケースもあるでしょう。
貸主の主張だけでなく、客観的に判断するための基準となる耐震診断の結果などが重要です。
立ち退きをさせないと、借主に大きな損害を与える恐れがあるときの立ち退き要請も正当事由が認められやすくなります。
主なケースは、次のとおりです。
「介護が必要」「住む場所がない」といった切実さを、法的な自己使用の必要性に落とし込んで正当事由を構成します。
上記のケースでは、立ち退きが認められないと賃貸人の生活に重大な支障をきたすためです。
単に賃貸人が家族を呼ぶために立ち退きをさせるなど、特に賃貸人に影響がないような立ち退き要請は正当事由が低いとされます。
正当事由が低い場合には、立ち退き料の増額が求められるケースや、立ち退き要請が認められないケースもあるでしょう。
賃貸契約書がなくても口約束で賃料を支払い賃貸物件を借りていたものの、賃料の滞納や契約違反行為によって立ち退き要請を受けるケースもあります。
家賃滞納のみでなく、無断転貸や用途違反なども正当事由として認められる可能性があるでしょう。
特に契約違反行為によって信頼関係が破壊され、契約が解除されたときは明け渡し請求が認められやすくなります。
契約違反行為があるときは立ち退き要請の正当事由が強いため、立ち退き料も不要と判断される可能性が高まるでしょう。
ただし、契約書がない中での滞納は「信頼関係の破壊」を立証する難易度が高いです。
催告の手順や証拠の残し方など、契約書がないからこそ弁護士に相談し、専門的な手法を用いた対応が求められます。

借主に立ち退きを求めるときは、段階的に手順を踏んで立ち退き要請を進める必要があります。
賃貸借契約書がないときでも、口頭で成立している契約内容を確認しながら条件交渉や法的な手段の検討をしていきましょう。
まずは、立ち退き要請の前提となる事実関係を整理するため、口頭で成立している契約の内容や条件などを相手方へ確認しましょう。
たとえば、家賃や契約期間、契約更新の有無や条件などです。
家賃の振込履歴や通帳などは、賃貸借契約が成立していた事実を示す客観的な証拠となります。
貸主と借主の記憶のみに頼らず、客観的な証拠などを基に契約内容を整理しましょう。
整理した契約内容は、書面などの形式でまとめ、双方で共有をしておくのが望ましいです。
契約内容や条件などを整理した後は、内容証明郵便で借主に通知をします。
内容証明郵便を利用すると、送付の日時や内容などを郵便局から公的に証明してもらえます。
相手に心理的なプレッシャーを与え、「言った」「言わない」のトラブルを防ぎ、双方が合意した事実を証明できるのがメリットです。
借地借家法第26条[注2]では、解約の申し入れについて契約満了の6カ月前までに通知しなければならないと定められています。
期間を過ぎると無効となってしまう可能性もあるため、期限内に通知を行うように注意しましょう。
立ち退きについて通知した後は、貸主と借主で退去の条件を交渉します。
立ち退き問題は、話し合いによって解決できるケースも多いです。
裁判上の争いになった場合、解決までに数カ月〜数年間かかるケースも珍しくありません。
争いが長期化すると貸主と借主の双方にかかる負担も大きくなるため、合意による解決が望ましいです。
条件で折り合わないときは、立ち退き料を交渉の材料として上乗せして支払い、早期解決を図るのも有効な方法と言えるでしょう。
話し合いでの解決が困難な場合、最終的には調停や建物明渡訴訟などの法的手続によって解決を求めなければなりません。
相手が不法でも、貸主が自ら鍵の交換や荷物の撤去などを行うと法律違反として貸主が不利になるため注意しましょう。
法的な手続きに移行すると、通常は解決までに時間と費用がかかります。
貸主が明け渡し訴訟に勝訴すると、裁判所への申し立てによって執行官による退去の強制執行が可能になります。
感情的な対立やトラブルが大きくなる前であれば和解で解決できる可能性もあるため、できる限り早期に弁護士へ相談しましょう。
立ち退き要請が認められると、借主は生活の本拠地を失ってしまう可能性があります。
立ち退きについての通知や交渉などの対応を誤ると、トラブルが拡大するケースも少なくありません。
感情的な対立に陥らないよう、慎重な対応を心がけましょう。
家賃の支払いは賃貸借契約の継続を示す要素であり、貸主と借主のどちらかが一方的に拒否をするとトラブルの原因になります。
たとえば、借主から家賃の支払いをストップする、貸主が家賃の受け取りを拒否するなどの行為です。
家賃の支払いを滞納すると、裁判などの法的な紛争で不利になる可能性があります。
家賃を受け取り拒否をした場合も、借主は供託によって支払いを行い、裁判上の争いに発展する可能性もあるでしょう。
戦略的な理由で家賃をストップする場合、事前に弁護士に相談しておくのが望ましいです。
立ち退き要請をすると、貸主と借主の双方に感情的な対立が生じやすくなります。
感情的になって相手に恐怖を感じさせるような強い言い方や一方的な要求をすると、裁判上の争いで不利になる可能性があります。
たとえば、貸主の発言が不法行為として損害賠償や立ち退き料の増額を求められるケースもあるでしょう。
借主の場合も、通常は賃貸借契約書で暴言や脅迫などの迷惑行為は禁止されています。
強い言動によって賃貸借契約を解除され、即座に退去しなければならない恐れがあります。
弁護士を介して事務的に、かつ法的に逃げ場のない交渉を行う方が自分の利益につながると言えるでしょう。
契約を締結してから数十年が経過している場合など、立ち退き要請をするときに契約書が見つからず、後になって発見されるケースもあるでしょう。
契約が見つからなくても、過去の覚書などが契約書とは別に締結されている可能性もあります。
見つかった合意書に立ち退き料を支払わない旨の特約があった場合でも、その内容が必ず有効になるとは限りません。
一方で、後から合意書が見つかったためにそれまでの交渉で話し合ってきた内容が覆ってしまう可能性もあります。
合意書が見つかったときは、書面の内容を確認した上で弁護士に対応を依頼しましょう。
立ち退き要請は、貸主と借主の双方の事情が総合的に考量されるため、個別の事情によって判断が大きく変わります。
合意内容の証明となる契約書がないときは判断が難しいケースもあるため、弁護士に相談しましょう。
特に初期対応を誤ると、感情的な対立を生み、トラブルが長期化する恐れもあります。
自己判断は避け、できる限り早く弁護士へ相談し、早期に対応をしておくと、トラブル回避のために有効です。
早期相談によって深刻なトラブルを予防できるため、結果として時間や経済的な負担の軽減に繋がるでしょう。
契約書がない場合でも、実態から賃貸借契約の成立や継続が認められる可能性があります。
貸主は、借主に建物からの立ち退きを求める場合、正当事由などの条件を満たさなければ原則として認められません。
立ち退き要求は、貸主と借主の双方にとって生活に大きな影響を与える問題です。
特に契約書がないときは、「言った」「言わない」の争いとなって深刻なトラブルに発展するケースも珍しくありません。
話し合いでの解決が難しいときは、できる限り早く専門家である弁護士に相談しましょう。
立ち退き問題でお困りの方は、問題解決の実績が豊富なVSG弁護士法人にご相談ください。
[注1]民法/e-Gov
民法第601条(賃貸借)
[注2]借地借家法/e-Gov
借地借家法第26条(建物賃貸借契約の更新等)