明け渡し訴訟とは、借主に賃貸物件を明け渡してほしいと貸主が起こす訴訟です。
明け渡し訴訟は借主が契約違反などを長期間放置している場合に起こされてしまいます。
そのため、明け渡し訴訟を起こされるケースなどを知っておくと、明け渡し訴訟をされる可能性は低くなります。
また、明け渡し訴訟は借主が問題行動を起こしてもすぐに起こすことはできず、一定の流れや期間が必要になります。
本記事では、明け渡し訴訟とは何か、明け渡し訴訟を起こされてしまうケースはどのようなケースか、明け渡し訴訟の流れや期間、起こされてしまったときの対処法などを解説します。
目次
明け渡し訴訟とは、契約違反をしている借主が借りている賃貸物件を明け渡してほしい貸主が起こした訴訟のことを言います。
借主が家賃滞納など賃貸借契約違反していたとしても、貸主自身で借主を強制的に退去させることができません。
そのため、貸主は裁判所に借主の立ち退きをさせるための手続きを取ります。
これが明け渡し訴訟です。
貸主が明け渡し訴訟を行っても借主と和解できず、裁判所が明け渡し訴訟を認めたときに借主を強制退去させることができます。
明け渡し訴訟が認められたときの立ち退きは強制のため、室内の借主所有家財などを貸主が借主の承諾なく撤去することや、賃貸物件の鍵を交換されることがあります。
明け渡し訴訟をされてしまう理由はいくつか存在します。
ここからは、明け渡し訴訟をされてしまうケースを紹介していきます。
家賃を半年くらい滞納していると、明け渡し訴訟を起こされてしまう可能性があります。
一般的に明け渡し訴訟は、貸主と借主との信頼関係が壊れるようなことが行われたときに認められます。
1ヶ月や2ヶ月(1回や2回)程度家賃を滞納しただけでは、信頼関係が崩れたとはみなされません。
しかし、半年程度の家賃を滞納すると、信頼関係が壊されたと判断されます。
そのため、半年くらい家賃を滞納すると、明け渡し訴訟を起こされることがあります。
近隣住民に対して、迷惑行為を半年くらい継続していると明け渡し訴訟を起こされてしまう可能性があります。
近隣に対しての迷惑行為も家賃滞納と同じく、1ヶ月や2ヶ月では認められず、半年ほど迷惑行為が続いている必要があります。
ただし、迷惑行為の度合いはどの程度で認められるかはケースにもよります。
なお、近隣住民に対しての主な迷惑行為は次のような行為が該当します。
賃貸借契約違反を継続しており、長期間放置している場合も明け渡し訴訟を起こされてしまう可能性があります。
賃貸借契約違反も長期間放置して是正しない、また違反の程度により明け渡し訴訟が認められるかどうかが変わります。
また、賃貸借契約違反の主な違反は次のとおりです。
このような事項に該当している場合、明け渡し訴訟を起こされることがあるため、すぐに上記行為を是正する必要があります。
明け渡し訴訟を起こされるときには、一定の流れが存在します。
貸主から明け渡し訴訟を起こされる流れや期間を紹介していきます。
明け渡し訴訟はいきなり起こすことができないため、まず貸主から借主に問題改善するよう口頭や書面で要求がきます。
明け渡し訴訟は時間も金銭もかかるため、貸主としては口頭や書面で問題が改善されることを希望しています。
もし、問題を解決できるようであれば、この時点で問題行動を改善し、解決するのが借主にとってもよい選択です。
なお、口頭や書面で問題改善要求が来るのは、問題行動を起こしてすぐのタイミングから1ヶ月くらい問題行動を起こし続けているときが多い傾向にあります。
口頭や書面で借主の問題行動が改善されない場合、内容証明郵便で問題行動を改善するよう要求されます。
内容証明郵便とは、郵送する手紙などの内容と送付した時期を郵便局が証明する郵送物のことをいいます。
内容証明郵便は裁判所でも有効な証拠として利用できる書面です。
つまり、内容証明郵便を貸主が送付してきている時点で、貸主は明け渡し訴訟を行うことも視野に入れている可能性があるということです。
また、内容証明郵便を郵送している時点で、貸主は借主の強制退去について弁護士に相談している可能性もあります。
なお、内容証明郵便が送付されてくるのは、問題行動を起こしてから3ヶ月~6ヶ月程度です。
この時点になると、貸主から問題の改善ではなく、建物の明け渡し要求をしてくる可能性もあります。
内容証明郵便で問題行動を改善しない場合は、明け渡し訴訟を早急に行わる可能性が高くなります。
明け渡し訴訟を起こされた場合、必ず退去しないといけないわけではなく、問題行動を改善する旨を約束して和解することも可能です。
もし明け渡し訴訟を起こされて問題行動も改善しない場合、裁判所が明け渡しを認める可能性が高くなります。
明け渡しが確定してしまうと、強制執行(強制退去)を貸主にされてしまいます。
なお、貸主が起こした明け渡し訴訟に借主が出席しない場合、借主は貸主の訴訟内容に同意したことになるケースがあり、出席しないことにより敗訴することがあります。
もし明け渡し訴訟に不服であるならば、必ず明け渡し訴訟に出席するようにしましょう。
明け渡し訴訟で明け渡しの判決が出ても、賃貸物件に借主が居座った場合、貸主は強制執行の手続きを取ります。
明け渡しの判決が出ても、貸主は強制的に退去させることができません。
明け渡しの判決は、あくまでも借主の自主的な退去を決定しただけのことです。
そのため、借主が居座った場合、貸主は強制的に借主を退去させる強制執行の手続きを取ることになります。
強制執行の手続きが裁判所に認められると、室内の家財などを同意なく搬出されて、玄関の鍵も強制的に変えられてしまいます。
また、強制執行にかかった費用は一度は貸主が負担しますが、貸主から借主に対して請求することができるため、強制執行の費用まで借主が支払う必要があります。
明け渡し訴訟をされた場合、強制執行にならないように配慮する必要があります。
ここからは、貸主から明け渡し訴訟をされたときの対処法を紹介していきます。
明け渡し訴訟をされてしまうと、強制執行につながる恐れがあるとともに、訴訟に出席するなど手間や時間がかかってしまいます。
貸主も揉めたいわけではないため、貸主と和解できそうな状況であればいち早く和解をしてしまったほうがよいでしょう。
明け渡し訴訟を起こされたときに、自分自身で対応するのは困難です。
明け渡し訴訟で反論するにも和解をするにしても、弁護士に依頼をして進めるのがよいでしょう。
弁護士に依頼することにより、有利な判決を得ることや、スムーズに和解ができる可能性が高まります。
明け渡し訴訟は、貸主が賃貸物件から借主を立ち退かせるために起こす訴訟です。
明け渡し訴訟で貸主の希望が通ると、借主は賃貸物件を明け渡さなければならなくなります。
明け渡し訴訟を起こされる原因としては、家賃を滞納するなど契約違反行為を行っている、近隣に迷惑行為を行っていることなどが挙げられます。
このような問題行為を起こしてもすぐには明け渡し訴訟を起こされませんが、問題が半年近く続くと訴訟を提起される可能性が出てきます。
明け渡し訴訟をされる前には、口頭や内容証明郵便で問題行動を改善するよう要求がきます。
この時点で問題行動を改善できるのであれば、明け渡し訴訟になる前に解決するため、改善するようにしましょう。
もし、明け渡し訴訟に発展してしまった場合には、弁護士に依頼をして解決を図るようにしなければなりません。
自身で解決するのは難しいため、専門家の力を借りることが重要です。