

東京弁護士会所属。東京都出身。
弁護士になる前、私は公務員として自治体業務に携わってきました。その経験から、法的な正しさだけでなく、社会的な公平性や、一人ひとりの生活に寄り添うことの重要性を深く理解しています。
立ち退き問題は、住まいや事業所といった生活の根幹に関わる問題であり、そこには多大な不安やストレスが伴います。私は「弁護士は敷居が高い」というイメージを払拭し、何でも気軽に話せる相談相手であることを常に心がけています。
複雑な法律用語を分かりやすく整理し、今後の見通しを丁寧にご説明した上で、依頼者様が「相談して良かった」と心から思える解決を目指します。公務員時代から大切にしている「誠実に向き合う」姿勢を貫き、皆様の正当な権利を守るために全力で取り組んでまいります。

賃貸物件に入居するときのクリーニング代は、国交省ガイドラインで定められており、原則貸主負担です。
一方で、実務上では特約や重要事項説明書に入居者負担と定められているケースも多くあります。
入居者負担と定めている契約書に署名した後は、合意の上とみなされ、入居者からの支払拒否は難しいでしょう。
一方で、特約の内容に不備があるときは無効を主張できる可能性もあります。
この記事では、入居時のクリーニング代を拒否できるケースや、高額なクリーニング代を請求されたときの対処法などを解説します。
目次
賃貸物件に入居するときのクリーニング代は、物件に次の入居者を受け入れる目的で行われるため、原則として貸主が費用を負担します。
クリーニング代は、国土交通省ガイドラインでも原則貸主負担と定められていますが、多くの賃貸借契約では特約で入居者負担とされているのが実態です。
ここでは、クリーニング代の費用負担について原則(ガイドライン)と例外(特約)のしくみを詳しく解説します。
国交省ガイドライン(正式名称「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」)[注1]とは、賃貸物件の費用負担に関する指針です。
国交省ガイドラインに法的な拘束力はありませんが、実務上で費用負担の範囲を決めるときの重要な参考基準となっています。
入居時のクリーニング代は、国交省ガイドラインによると通常損耗の範囲であり、借主の入居中の支払家賃に含まれるとされています。
通常損耗は貸主負担と明記されているため、貸主は次の入居者からクリーニング代を別途徴収できないのが大原則です。
クリーニング代は原則貸主負担とされる一方で、多くの賃貸借契約では入居者の費用負担とする特約が定められています。
特約の定めは、貸主と入居者が内容を理解した上で署名していると法的に有効となるため、入居者に支払い義務が生じます。
一方で、特約が有効に成立するためには次のような要件[注1]を満たさなければなりません。
入居時のクリーニング代を拒否する場合は、賃貸借契約が既に締結されているかどうかで難易度が変わります。
入居者の費用負担について説明を受け、契約書に署名しているときは原則として拒否するのは難しいでしょう。
例外として、契約後でも特約自体が無効である場合は拒否できる可能性があります。
契約の締結前にクリーニング代を拒否する場合、貸主との交渉次第ですが、入居を断られるリスクもあるでしょう。
特約でクリーニング代を入居者負担と定めている場合、貸主は入居者負担を前提に全体の初期費用を設定しているケースが多いです。
人気物件では多くの入居希望者が集まり、貸主には入居者を選ぶ権利があるため、入居前に拒否すると断られるリスクもあるでしょう。
一方で、空室の状態が続いている物件などでは、貸主との交渉を有利に進められる可能性もあります。
費用負担の特約は、貸主と入居者の交渉によって変更できるかどうかが決まるため、入居者からの一方的な要求はできない点に注意しましょう。
賃貸借契約の締結後は原則としてクリーニング代の負担を拒否できませんが、以下のケースでは拒否できる可能性があります。
契約前の交渉とは異なり、契約後であっても特約自体が法的に無効[注2]と判断される可能性があります。
ここからは、それぞれの具体的な内容を確認していきましょう。
クリーニング代を入居者負担とする場合、賃貸借契約書に明記しなければならないのが原則です。
賃貸借契約書にクリーニング代を入居者負担とする特約がない場合、入居者に支払義務は発生しません。
特約がないときは、支払義務について入居者の明確な合意がないとみなされるため、国交省ガイドライン[注1]の原則である貸主負担が適用されます。
貸主から口頭でクリーニング代の支払いを求められたときは、まず賃貸借契約書や重要事項説明書の内容を確認しましょう。
クリーニング代の入居者負担が明記されていない場合、入居者は費用負担を拒否できます。
国交省ガイドライン[注1]では、特約が有効になる基準として、入居者の負担すべき内容や範囲の明示が必要とされています。
以下のように、特約の内容があいまいな場合や、内容について説明不足だったとみなされる場合、拒否や交渉の余地があるといえるでしょう。
国交省ガイドラインの他、消費者契約法第10条[注2]は「消費者の利益を一方的に害する条項は無効」と定めており、特約の無効を主張できる根拠となっています。
特約で定められたクリーニング代が、一般的な相場と比べて著しく高額なときは拒否や交渉できる可能性があります。
たとえば、ワンルームのクリーニング代の相場は2万~4万円ほどですが、10万円以上など相場の倍以上の金額となっている場合などです。
費用が相場より著しく高額なときは、金額の内訳や根拠を確認しましょう。
不当な請求である場合、消費者契約法第10条[注2]の「消費者の利益を一方的に害する条項は無効」に該当し、無効を主張できる可能性があります。
入居時クリーニング代の相場は、部屋の間取りにより変動します。
相場からかけ離れた高額な請求は、前述の通り消費者契約法第10条により無効となる可能性があります。
特約によって高額な請求をされた場合に備え、具体的な相場を確認しておきましょう。
一般的なハウスクリーニング費用の目安は以下の通りです。
| 部屋のタイプ・広さ | 相場(目安) |
|---|---|
| ワンルーム/1K | 1万5,000円~3万円程度 |
| 1LDK/2DK | 3万円~5万円程度 |
| 3LDK/4LDK | 5万円~8万円程度 |
なお、上記の費用はあくまで目安です。
地域や業者により、相場は異なる場合があります。
入居時のクリーニング費用を拒否するための交渉は、賃貸借契約を締結する前のタイミングが最も有効です。
契約の締結後に交渉したいときは、トラブルに発展する恐れもあるため、弁護士などの専門家に相談しましょう。
ここからは、クリーニング代の費用負担を求められた場合に、拒否するための確認事項や行動などを解説します。
クリーニング代を請求されたときは、賃貸借契約や重要事項説明書の特約部分を中心に入居者の費用負担が明記されているかを確認しましょう。
明記されていない場合、国交省ガイドライン[注1]の原則通り貸主負担が適用されるため、拒否できる可能性が高いです。
入居者負担の記載がある場合でも、入居者の負担すべき範囲や金額が明示されていないときは交渉の余地があります。
賃貸借契約を既に締結しているときは、締結前に入居者の負担義務について十分な説明がされていたかどうかも確認しましょう。
クリーニング代が高額なときや、費用負担に納得できないときは、他物件を探すのも現実的な解決策として有効です。
物件の選択肢は狭まる可能性がありますが、トラブルの回避策として有効な場合が多いでしょう。
たとえば、UR賃貸などは国交省ガイドラインの運用が徹底されています。
不動産会社に依頼すると、クリーニング代が不要であり、他条件も同程度の物件を比較検討できる可能性もあるでしょう。
貸主や管理会社と交渉しても解決が難しいときは、最終手段として消費生活センター[注3]や弁護士に相談しましょう。
それぞれの特徴は以下の通りです。
消費生活センター
消費生活センターは、消費者と事業者間のトラブルの解決を中立的な立場で支援する機関です。
トラブルを解決するための一般的なアドバイスや、事業者との交渉の仲介などを依頼できます。
弁護士
弁護士は紛争解決のプロであり、依頼人の利益を最大化するためのアドバイスや交渉の代行などを行ってくれます。
契約の締結後に特約の無効を主張したい場合や、高額な費用を請求されて法的な解決を求めたい場合に相談しましょう。
入居時の初期費用トラブルは、クリーニング代だけではありません。
クリーニング代と同様に、法的義務はないが特約として合意すれば支払い義務が生じる以下の項目についても、注意が必要です。
国交省ガイドラインでは原則として、破損や紛失以外で発生した鍵の交換費用は物件管理上の問題であるため貸主負担が望ましいとされています。
実態としては、特約で1万5,000円〜2万円程度の入居者負担となっているケースが多いです。
契約前であれば、クリーニング代と同様に国交省ガイドラインに基づき貸主負担にしてもらうよう交渉の余地があります。
ただし、契約後の支払い拒否は難しいため、注意が必要です。
消毒代(害虫駆除費)は、拒否できる可能性が高い費用です。
法的義務はなく、国交省ガイドラインにも記載はありません。
契約前であれば、任意のオプションという扱いで作業を断れる場合があります。
ただし、クリーニング代や鍵交換費用と同様に、契約後の拒否は難しいでしょう。
入居時のクリーニング代は、国交省ガイドラインで原則貸主負担とされています。
賃貸借契約や重要事項説明書で入居者負担とする特約の定めは有効ですが、消費者契約法などに抵触すると無効になる可能性もあります。
クリーニング代の負担を拒否するための交渉は、契約の締結前のタイミングがベストです。
費用の内訳を確認し、交渉しやすい消毒代などの項目から話し合いを進めていきましょう。
費用負担を巡って貸主とトラブルになりそうな場合は、できるだけ早く弁護士に相談するのがおすすめです。
もし契約書の内容に納得できない点や、高額な請求でお困りの際は、VSG弁護士法人にご相談ください。
[注2]消費者契約法/e-Gov
消費者契約法
[注3]消費者ホットライン