アパートやマンションを借りるときには、賃貸借契約書の取り交しや重要事項の説明があります。
では、賃貸借契約書の締結前に契約書や重要事項説明書の内容に関して、確認すべきポイントはどのようなことがあるのでしょうか?
この記事では、賃貸借契約書の締結時に確認すべきことや実際に契約を結ぶ流れ、必要書類などについて解説します。
目次
賃貸借契約書とは、アパートやマンションなどの賃貸住宅を借りるときに、貸主側との間で締結する書面です。
契約を交わすと、借主は賃貸住宅を使用することができます。
また、その代わりに借主は貸主に賃料の支払いを行います。
なお、賃貸借契約は口頭での契約締結も可能です。
もっとも、手続き後に契約を巡るトラブルが起きるおそれがあるため、当事者同士の合意条件を書面化して残すのが一般的です。
また、2022年5月の宅地建物取引業法と借地借家法の改正により、電子契約が全面解禁されています。
オンラインで重要事項説明、及びWEB上のクラウドサイン契約にて賃貸借契約が締結できるようになっています。
賃貸借契約前に不動産会社から渡される書類の一つに、重要事項説明書があります。
重要事項説明書には、契約予定物件の概要や付帯設備などの詳細と、賃貸契約に関わる重要事項が記載されています。
賃貸借契約前には、宅地建物取引士が重要事項の内容について説明をすることが義務づけられています。
重要事項説明は、契約後のトラブルを防ぐための取り決めで、一般消費者を守るために行われます。
契約後に「こんなはずではなかった」と思うことがないように、内容に納得した上で契約を締結しましょう。
重要事項説明書には、主に以下の内容が記載されています。
居住のルールや特約事項、ハザードマップなどは、物件により異なるので契約前に十分確認しましょう。
また、更新や解約のなどの契約に関するルールや敷金・礼金などのお金に関することについては、不明な点がないままに契約することがないようにしてください。
なお、記載内容については、賃貸借契約書の内容と一部重複する部分があります。
賃貸借契約書を結ぶときには、確認すべきポイントがあります。
本章では、記載内容について特に注意する必要性がある項目を解説します。
では、これらのポイントについて詳しく見ていきましょう。
賃貸借契約書の冒頭部分には、物件に関する情報が記載されています。
重要事項説明書にも記載があるケースが多いのですが、契約書にも記載があります。
賃貸借契約を結ぶ予定の物件名や所在地、広さや間取り、部屋番号、築年数や建物の構造などです。
これら物件に関する事項が、借りる予定の物件情報と一致しているかを確認しましょう。
契約を仲介する不動産会社は、契約案件ごとに契約書を人の手で作成しています。
間違いがないとは言い切れないので、必ず物件情報などから細かく確認して、契約後のトラブルが起きないようにしましょう。
賃貸借契約書には、賃料などの具体的な金額が記載されています。
賃料の他にも、毎月の共益費、敷金と礼金の設定、付属施設(駐車場等)の使用料などが記載されています。
賃料と共益費、付属施設の使用料は、商談時の提示金額と一致しているかなどを確認します。
また、仲介手数料、契約更新時の金額についても必ず確認しておきましょう。
これらの項目には、契約後に異なった賃料での引き落としなど、お金に関するトラブルを避けるためにも注意が必要です。
契約期間とは、実際に賃貸借契約を結ぶ期間です。
契約期間が、いつからいつまでの期間であるのかを確認するものす。
なお、賃貸住宅の契約期間は2年間(普通借家契約の場合)に設定されることが一般的です。
賃貸借契約書には、付属品と残置物について記載されています。
付属品の代表的なものは、部屋に設置されているエアコンやキッチンのガスコンロなどが挙げられます。
貸主が設置しているものなので、賃貸住宅を借りるのと併せて使用できます。
また、残置物とは前入居者が残したものです。
たとえば、テーブルやベッドなどの家財道具や洗濯機などの電化製品が該当します。
残置物があれば、具体的にどんなものが残してあるのかを確認します。
なお、残置物を確認後、入居後に必要ないと思われるものは、賃貸人や管理会社に相談して撤去してもらうようにしましょう。
賃貸借契約では、実際に貸し借りを行う個人等の情報(氏名もしくは法人名や住所)が記載されます。
また、賃貸借契約によっては、賃貸人や管理会社の連絡先も記載もされています。
入居後のトラブルや設備の故障、劣化による修繕について相談するときに利用したりします。
これらの情報が記載されているかについて、必ず確認しておきましょう。
賃借人が何かしらの事情で賃料の支払いを行うことが難しくなったときに、賃料の支払いを一時的に肩代わりするのが保証会社です。
もしくは、保証人方式の賃貸物件であれば、親や兄弟などの保証人が賃料の支払いを一時的に肩代わりすることになります。
賃貸借契約書には、賃料の支払いに支障があった場合に肩代わりする保証会社、もしくは保証人について記載します。
これらの賃料保証を行う法人や個人名が間違っていないかを確認しましょう。
解約条項や禁止事項及び違約金については、入居後にトラブルになりやすい事項です。特に賃貸借契約を解約したいときには、「いつまでに連絡すべきか」についてはしっかりと確認したほうがよいでしょう。
また、解約時(退去時)には原状回復と敷金の精算についてトラブルになることが多いです。
原状回復に必要な資金は、敷金から差し引かれ、敷金で賄えない場合には追加で請求されるケースがあります。
退去時の原状回復箇所の確認方法や敷金からの精算方法なども、トラブルをできるだけ避けるために確認しておきましょう。
次に、禁止事項については、賃貸住宅の居住に関するルールなどを確認しておきます。
たとえば、賃貸住宅を人が住む目的以外に使用することや、無断で転貸することが禁止事項となっている場合があります。
他にも大音量でテレビやステレオなどの操作、勝手に部屋の模様替え(DIY)を行うなども、制限事項や禁止事項となっている場合があります。
仮に禁止事項等に違反した場合の違約金の設定についても確認しておきましょう。
物件探しから、賃貸借契約を結ぶ一般的な流れは以下に示したとおりです。
なお、物件探しの前には住みたいエリアや間取り、賃料の設定金額の目安を決めておくとよいでしょう。
内見して物件を決めた後には、保証会社の審査もしくは管理会社等が行う入居審査があります。
入居審査の期間は、早ければ1日~2日程度です。
入居審査で審査される項目は、賃料の支払能力、勤務先や雇用形態、過去の賃料滞納歴などになります。
また、重要事項説明と賃貸借契約締結は、同日に行われるケースが一般的です。
本章では、賃貸借契約を結ぶときの必要書類をご紹介します。
では、こちらもそれぞれについて詳しく見ていきましょう。
まず、印鑑(銀行印)は賃貸借契約書の締結時の捺印で使用します。
また、家賃を口座引き落としで支払う場合、不動産会社が用意する「預金口座振替依頼書」に口座番号を記入して銀行印を押印します。
住民票は、身元を証明するために必要です。
原則、発行後3か月以内のものを用意します。
住民票は、現在居住する自治体の役所か、マイナンバーカードがあればコンビニの専用端末で取得できます。
なお住民票には「一部事項証明(単身者で自分の情報のみ必要な時)」と「全部事項証明(家族全員の情報が必要な時)」があります。
たとえば、家族全員で入居する場合には全部事項証明書を取得しますが、続柄ありのマイナンバー記載なしの住民票を選択しましょう。
身分証明書とは、免許証やパスポートなどが該当します。
不動産会社には原本を持参して、コピーを取ってもらいましょう。
連帯保証人が必要な物件の場合、連帯保証人に関する書類も準備します。
たとえば、住民票、実印、収入証明書等が必要です。
連帯保証人には、契約日が決まる前にあらかじめ伝えておくと準備しやすくなります。
賃貸借契約後に自己都合でキャンセルしたい場合、以下に説明するような金銭負担が発生します。
賃貸借契約は、クーリングオフ制度を適用することができません。
宅建業法37条の2では、クーリングオフ制度が規定されているものの、こちらは不動産売買時のみに適用される内容になっています。
このため、契約を白紙にはできずに、重要事項説明書又は賃貸借契約書の内容のとおりに解約の申し入れをします。
このとき、不動産会社に支払った仲介手数用は仲介業務が完了しているので戻ることはありません。
また、貸主より所定の違約金が課せられるケースがあります。
そのため、賃貸住宅の契約は後々にキャンセルとならないように慎重に手続きを進めていきましょう。
なお、賃貸借契約前であればキャンセルは可能です。
不動産会社の仲介も完了していないため、原則として金銭的なペナルティはありません。
賃貸借契約書は、アパートやマンションなどの賃貸住宅を借りるときに貸主側との間で締結するものです。
契約締結後は法的拘束力が発生するため、キャンセルはできません。
一度契約すると後戻りができないため、賃貸借契約時には以下に挙げた内容を必ず確認してトラブルがないようにしましょう。
賃貸借契約には、専門用語が沢山あります。
不明な点等は宅地建物取引士などに確認して、納得した上で契約を進めるようにしましょう。