

東京弁護士会所属。新潟県上越市出身。
建物の取り壊しや土地売却などに伴う立ち退き問題は、生活基盤や事業拠点に関わる重大な局面であり、金銭面だけでなく精神的にも大きな負担となります。
適正な立ち退き料を算出・獲得するためには、法律の知識はもちろん、不動産価値の評価や移転に伴う経済的損失を正確に把握する視点が欠かせません。 私は証券会社や金融機関での10年以上の実務経験を活かし、客観的なデータに基づいた説得力のある交渉を行うことを得意としています。 依頼者様の不安に寄り添い、経済的・心理的に最善の結果を得られるよう尽力いたします。まずはお気軽にご相談ください。
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書籍: 他の専門家から声がかかる 事業承継弁護士養成講座

賃貸契約書を紛失してしまった場合でも、契約は有効に成立しています。
通常、契約書の紛失を理由に賃貸物件から退去させられる心配はありません。
一方で、貸主と費用負担を巡ってトラブルになった場合は、契約書の特約を確認できないなど交渉上不利になる恐れもあるでしょう。
退去費用の負担や契約更新時の条件など、契約書に定めている特約は契約自由の原則により優先的に適用されます。
行政機関で各種申請手続きを行うときも、賃貸契約書の提出が必要なときは原本でなければ受け付けてもらえない可能性があります。
契約書を紛失したときは、管理会社に写しを請求するとともに、弁護士に対応方法を相談しましょう。
ここでは、賃貸契約書を紛失してしまったときの対処法などを解説します。

賃貸契約書を紛失しても、賃貸借契約自体は引き続き有効です。
賃貸借は民法第522条に定める諾成契約であり、契約書など特別の形式を要さず、当事者間の口頭による合意の意思表示のみで成立するためです。
一方で、契約書の原本がないと特約事項の確認や行政手続きで不便になるときがあるかもしれません。
原本を紛失したときは、以下のように対応しましょう。
自宅を再捜索する
賃貸契約書とともに受領した重要事項説明書や火災保険の保管ファイルに紛れている可能性があります。
管理会社や仲介会社へ連絡する
賃貸物件を契約したときに仲介を依頼した不動産会社は、通常、契約後数年間は賃貸契約書の写しを保管しています。
写しがあれば実務上問題ないケースも多いため、提出を依頼しましょう。
賃貸借契約は当事者間の口頭の合意で成立する諾成契約です。
借主の居住権は借地借家法により保護されており、契約解除できるのは以下のように貸主から解除を求める正当事由がある場合に限定されています。
通常、賃貸契約書の紛失は契約解除事由に該当しないため、借主は物件から退去する必要はありません。
貸主から契約書の紛失を理由に退去要求があった場合でも、すぐには合意せずに弁護士へ相談しましょう。
退去時の立ち会いは、契約の終了時に借主と管理会社が同席して室内の損傷や汚れを確認し、費用負担を確定する手続きです。
室内を確認するときは、通常、管理会社のチェックリストに基づいて原状回復が必要な場所を調べます。
契約書を紛失したときは、管理会社のチェックリストを参照しながら、費用負担に関する特約についても確認しましょう。
室内の原状回復費用に不当な請求項目がある場合でも、特約の内容に基づいた反論ができないと支払いを求められる恐れがあります。
退去時の原状回復費用について問題になりやすいポイントは、クリーニング費用特約や敷金の返還条件などです。
管理会社や仲介会社から契約書の写しを取得できるときは、退去時の立ち会い前に取得できると退去に向けた準備を円滑に進められます。
賃貸契約書をなくした場合、基本的には再発行できません。
再発行が難しい理由は、単に手間や費用の問題ではなく、後から紛失した原本が発見されたときの混乱を貸主が避けようとするためです。
発見された原本について、内容が改ざんされていても新旧どちらが正しいか証明できないため、トラブルの解決が難しくなるでしょう。
通常、不動産会社は賃借物件が成約したときの契約書を保管しています。
宅地建物取引業法により、不動産会社には賃貸契約書など重要書類の保管義務があるためです。
賃貸契約書を探しても見つからないときは、まず最初に賃貸物件を仲介してもらった不動産会社に相談しましょう。
契約書を紛失してしまった事情と、契約時期や物件名などを伝えて写しの提出を依頼します。
不動産会社にとっては日常的な業務であるため、重要な書類を紛失してしまったからといって負い目を感じる必要はありません。
写しの提出するために数百円程度の手数料がかかる可能性もありますが、問題なく対応してもらえるケースが多いでしょう。
特約事項の確認などは、契約書の写しであっても実務上問題はありません。
賃貸契約書には、主に下記の項目が記載されています。
それぞれの項目の内容について、見ていきましょう。
物件・契約期間などの基本情報として以下が記載されます。
賃貸契約する物件情報
物件の所在地や物件名、部屋番号、間取り、広さ、物件の種類、構造などが記載されます。
契約予定の物件と相違がないかを確認しましょう。
契約期間や更新に関する情報
契約期間は2年間のケースが多く、契約更新時期や更新料の設定も記載されています。
更新時期や退去期限は誤解しないよう、契約書で正確に把握しておくのが重要です。
貸主と管理会社、借主と同居人に関する情報
貸主の住所・氏名・電話番号、管理会社の所在地と電話番号、借主の住所・氏名・電話番号・同居親族などが記載されます。
賃貸契約書には、毎月の賃料と共益費、敷金などの金額や支払期限、支払方法などが記載されています。
特に更新料や違約金の有無は、契約書に特約として定められているケースが多く、内容の正確な確認が重要です。
敷地内駐車場や駐輪場などがある場合、付属施設の使用料も記載されているため、相違がないか確認しておきましょう。
退去時の解約条件や原状回復はトラブルが起きやすいポイントです。
以下の項目を確認しておきましょう。
付帯設備や残置物に関する情報
付帯設備とはエアコンなど備え付けの設備であり、残置物とは前入居者が残した家具や家電などです。
使用方法や修繕費用の負担、退去時の返還方法などのルールが記載されています。
途中解約と退去に関する情報
途中解約するとき、民法第617条により期間の定めのない建物賃貸借の解約予告期間は3カ月です。
通常は「退去日1カ月前までに管理会社へ連絡」と定めるケースが多いです。
違約金の有無や金額も確認しておきましょう。
退去時の原状回復に関する情報
故意や過失による損傷は借主負担、経年劣化や通常使用による損耗は貸主負担が原則です。
詳細は国土交通省のガイドラインを確認しましょう。
(参照元:国土交通省 原状回復をめぐるトラブルとガイドライン)
賃貸契約書をなくしても、日常生活で困る、契約関係で不利になるといった実害はありません。
一方で、紛失して困るケースとして以下のような場面があります。
詳しく見ていきましょう。
賃貸契約書には、居住のルールや特約事項などについて記載されています。
たとえば、ペット飼育や楽器演奏など、他の入居者に迷惑をかける可能性のある事項は契約書に可否が明記されているケースが多いです。
入居者同士でトラブルになり、迷惑行為をやめるよう注意喚起する場合、契約書の記載が根拠となるでしょう。
退去時に貸主と原状回復費用の負担を巡って金銭トラブルになる可能性もあります。
たとえば、退去時のクリーニング費用は契約書に特約がなければ原則として貸主が負担します。
契約書の特約の有無がわからないと、クリーニング費用を請求されたときに反論しにくくなるでしょう。
役所などの行政機関に各種申請をするときは、原則として原本の提出や持参が求められます。
賃貸契約書を紛失すると、たとえば以下のようなケースで提出を求められたときに受理してもらえない可能性があるでしょう。
この他、土地を借りて建てる建物に住宅ローンを申請するときは、金融機関から土地の賃貸契約書の提出を求められます。
行政機関によっては、原本がないときに「写し」と「住民票」の提出で受け付けてもらえるケースもあります。
提出先によっては、事情を説明すると重要事項説明書など他の資料の代用を認めてもらえる可能性もあるでしょう。
申請内容や自治体によって取り扱いが異なるため、事前確認が必要です。
立ち退き料とは、貸主の都合で借主に契約期間中の退去を求めるときに、損失の補填や迷惑料などの目的で支払われる金銭です。
立ち退き料の提示を受けたときは、金額が妥当かどうか判断するために契約書にある以下の項目などを確認しましょう。
立ち退き料の相場は、賃貸マンションやアパートなどで家賃の6~12カ月分、営業店舗で家賃の2~3年分ですが、双方の事情により増減します。
契約書がない場合、貸主から提示された退去費用が妥当かどうかわからず、不利な条件でも認めざるを得ないリスクがあるでしょう。
立ち退き交渉は専門的な知見が必要になるケースが多く、個人での対応は困難な場合がほとんどです。
契約書を紛失したまま立ち退き料の交渉をするのは極めて困難であるため、弁護士への相談がおすすめです。
管理会社が非協力的だった場合、賃貸契約書の再発行ができず、写しも取得できないケースもあります。
一方で、契約内容を証明できるのは契約書のみとは限りません。
契約書の原本だけでなく写しも取得できないときは、契約内容について推測できる代替書類を提出しましょう。
代替書類は、賃貸借契約を締結するときに同時に交付される書類などで、契約書と同じく契約条件などが記載されています。
具体的な代替書類については、以下で確認していきましょう。

契約書の原本や写しがないときに代替となるのは、たとえば以下のような書類です。
重要事項説明書
重要事項説明書とは、物件の状況や契約条件などの重要事項を宅地建物取引士が借主に説明するためにまとめられた書類です。
契約書と異なり法的な効力はありませんが、契約条件がほぼ網羅されているため賃貸契約の内容の推測に使用できる可能性があります。
火災保険の加入証明書
火災保険に加入した事実の証明だけでなく、対象物件の所在地や構造、面積、築年数など、物件情報も記載されています。
家賃の振込履歴(通帳)
通帳などの振込履歴からは、家賃の金額や振込の事実、振込をしていた契約期間などが証明できるでしょう。
更新通知書
更新通知書は、更新後の家賃や契約期間、契約条件、管理費など、更新後の契約内容についても記載されるのが一般的です。
契約書の写しが手元にない場合でも、代替書類を組み合わせれば法的な権利を証明できる可能性があるでしょう。
不動産会社に賃貸契約書のコピー・再発行を断られた場合は、各都道府県の窓口に相談しましょう。
相談窓口は、都道府県ごとに異なります。
東京都の相談窓口は、東京都都市整備局住宅政策推進部の不動産業課です。
他にも、全国宅地建物取引業協会連合会や全日本不動産協会、国民生活センターや都道府県の消費生活相談窓口があります。
困った状況に陥っても、さまざまな業界団体に相談して解決を目指しましょう。
費用負担や立ち退きを巡って貸主とトラブルになりそうなときは、専門家である弁護士に相談しましょう。
弁護士に依頼すると、以下のようなメリットがあります。
交渉窓口を代行してもらえる
賃貸トラブルの交渉は、解決までに時間がかかるケースや、労力や精神的負担も重くなるケースが少なくありません。
弁護士に依頼すると、貸主や管理会社との交渉窓口はすべて弁護士が行うため、借主の負担は大幅に軽減されるでしょう。
不当な要求に対して法的に反論できる
貸主からの請求が不当である場合、弁護士は過去の判例やガイドラインなどから法的な根拠をもって反論します。
弁護士から通知がくると、相手は法的な紛争に発展するリスクを回避するため、減額交渉に対応してもらえる可能性が高いです。
契約書の原本を紛失したときでも、法的な知見から妥当な条件を導き出せる可能性は十分にあります。
不当に高額な退去費用を請求されている場合でも、諦めずにまずはVSG弁護士法人へ相談しましょう。
居住権にまつわる権利を保護し、法的な手続きを円滑に行うには、契約書の原本をきちんと保管しておくのが重要です。
契約書原本は他の重要書類と共にファイリングし、可能であれば写真やスキャンなどでデジタル保存もしておきましょう。
ファイリングした原本は、目安として退去の10年後まで保管しておくのが望ましいです。
賃貸契約書はクリアファイルなどに入れ、すぐに取り出せる場所に保管してください。
可能であれば、写真やスキャンなどでデジタル保存しておくと書面を紛失したときも安心でしょう。
他の書類と一緒にすると、保管場所がわかりにくくなり、誤って廃棄する恐れがあります。
契約関係の重要書類を分別しておけば、誤って廃棄するリスクを軽減できます。
クリアファイルにも「廃棄に注意」などの文字を書き込んでおくとよいでしょう。
賃貸契約書を廃棄する場合、目安として退去から10年後のタイミングがよいでしょう。
賃貸物件の使用に関する損害賠償について、貸主は物件の返還から1年以内に請求しなければなりません(民法第600条[注1]、第621条[注2])。
貸主が1年以内に請求すると損害賠償請求権は通常の債権となり、10年の消滅時効によって消滅します(民法第166条第1項[注3])。
不測の事態に備え、すでに不要となった賃貸契約書でも、廃棄のタイミングは退去から10年後をおすすめします。
賃貸契約書の原本を紛失した場合、管理会社へ写しを請求するとともに、弁護士に対応方法を相談しましょう。
契約書は「言った」「言わない」のトラブルを防ぐ役割がありますが、紛失時も法的な知見から交渉できる余地はあるため諦める必要はありません。
契約書はいわば地図で、紛失すると道を見失ってトラブルが起きる恐れがありますが、法的な知見から正しい道筋を教えてくれる弁護士がいます。
契約書を紛失してトラブルが起きたときは、経験豊富な弁護士が在籍するVSG弁護士法人にご相談下さい。
[注1]民法/e-Gov
民法第600条(損害賠償及び費用の償還の請求権についての期間の制限)
[注2]民法/e-Gov
民法第621条(賃借人の原状回復義務)
[注3]民法/e-Gov
民法第166条第1項