

東京弁護士会所属。新潟県上越市出身。
建物の取り壊しや土地売却などに伴う立ち退き問題は、生活基盤や事業拠点に関わる重大な局面であり、金銭面だけでなく精神的にも大きな負担となります。
適正な立ち退き料を算出・獲得するためには、法律の知識はもちろん、不動産価値の評価や移転に伴う経済的損失を正確に把握する視点が欠かせません。 私は証券会社や金融機関での10年以上の実務経験を活かし、客観的なデータに基づいた説得力のある交渉を行うことを得意としています。 依頼者様の不安に寄り添い、経済的・心理的に最善の結果を得られるよう尽力いたします。まずはお気軽にご相談ください。
PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/
書籍: 他の専門家から声がかかる 事業承継弁護士養成講座

家賃滞納や契約違反など、問題のある借主に退去勧告を送付しても無視されてしまうケースもあるでしょう。
退去勧告には、借主を退去させる法的な強制力はありません。
管理会社に退去交渉を依頼しても、非弁行為として合意が無効になるリスクがあります。
借主を退去させたい場合、内容証明郵便の送付や明け渡し訴訟など法的なステップを踏まなければなりません。
できるだけ早いタイミングで弁護士に相談し、法的な解決をめざしましょう。
本記事では、退去勧告が無視されたときの対処法などをご紹介します。
目次
退去勧告とは、物件の賃貸借契約における貸主が、借主に対して物件を明け渡すように求める通知です。
退去勧告を行うためには、借地借家法に基づき、借主に立ち退いてもらうための正当事由が必要です。
違法に居座り続ける借主へ退去勧告を送付しても、原則として法的に強制退去させる効力はありません。
借主の居住権は借地借家法で保護されており、法的な手段によらない貸主の自力救済や勧告では退去を強制できないためです。
勧告しても借主が期日までに退去しない場合、法的な強制退去の手続きが必要です。
借主が意図的に居座り続けているケースでは、交渉による解決が困難な場合も多いため、弁護士に相談して明け渡し訴訟を提起しましょう。

退去勧告を無視された場合、訴訟・強制執行への移行を示唆して借主に心理的負荷を与えるために、弁護士名義の内容証明へ切り替えましょう。
内容証明郵便とは、郵送物の内容や送付先、配達日時などを郵便局が証明する制度です。
弁護士名義で送付すれば単なる勧告のみに留まらないため、貸主の本気度を伝えられます。
内容証明郵便では、以下の内容を記載した借主への通知が一般的です。
内容証明郵便を利用して勧告すると、「貸主は、猶予期間を設けて退去を求めたが、借主は応じなかった」という事実が証明されます。
後に裁判上の争いとなったときに有効な証拠として認められるため、強制退去に向けた手続きを有利に進められるでしょう。
居座り続ける借主に直接交渉をすると、双方が感情的になってしまい、冷静に話し合いを進められなくなるケースが少なくありません。
借主とトラブルに発展した場合、解決するためには時間や労力がかかるため、貸主の精神的な負担も重くなるでしょう。
弁護士に依頼すると、弁護士名義の内容証明郵便の送付のみでなく、借主との交渉や明け渡しの提起なども代行してもらえます。
借主との直接交渉を避けられ、解決までの期間も短縮されるため、できるだけ早い段階から弁護士に依頼するのがおすすめです。
管理会社は主に入退去の管理や事務手続きなどを業務として行っているため、退去交渉を行うと非弁行為に該当する恐れがあります。
退去交渉の合意が無効になるリスクもあるため、交渉や法的な判断は弁護士に依頼しましょう。
管理会社が報酬を得て借主への立ち退き交渉などを行うと、弁護士法72条[注1]の非弁行為に違反する恐れがあります。
非弁行為とは、弁護士資格を持たない者が報酬を目的として弁護士のみに認められる代理や交渉などの法律事務を業とする行為です。
法律事務による直接の報酬はなくても、仕事の斡旋や仲介手数料の上乗せなど、間接的な利益の享受によって報酬とみなされる可能性があります。
違反すると刑事罰の対象として、合意内容も無効となり、トラブルに発展するリスクがあるため注意しましょう。
借主が物件を違法に占拠しているときでも、貸主自身が無断で鍵の交換や荷物の撤去などを行うといった自力救済は禁止されています。
自力救済とは、裁判など法的な手段によらず私的な実力行使によって自らの権利を実現する行為です。
自力救済に該当すると、住居侵入罪などの刑事罰や損害賠償など民事上の請求を受けるリスクがあります。
後に裁判上の争いとなったとき、自力救済によって貸主が不利になる恐れがあるため、適法な手段で強制退去の手続きを進めていきましょう。
管理会社によっては、非弁行為を認識しながら強引な催促によって借主へ退去を促すケースもあります。
借主を強制退去させる場合、貸主と借主の事情や交渉の経緯などが総合的に考量されます。
管理会社の不適切な言動が借主に記録されていると、退去を求める正当事由の判断に影響し、裁判上で貸主が不利になる恐れがあるでしょう。
退去が認められても、立ち退き料の増額など経済的な損失につながる可能性もあるため注意しなければなりません。
[注1]弁護士法/e-Gov
弁護士法72条
立ち退き料は、引っ越し代など借主の退去費用の補填のみでなく、借主の居住権の対価や貸主の正当事由の強弱などによって増減します。
具体的な金額は客観的な根拠に基づいて算定されるため、不当な請求が含まれている場合は適切な金額となるよう交渉しましょう。
立ち退き料の算定モデルは、以下の通り借家権価格や正当事由の充足割合などから計算されます。
借家権価格とは、借りた土地の上に建物を建てて利用する権利の経済的な価値や所有権の評価額などです。
立ち退き料を算出するときは、借主の移転費用や家賃差額などの損失を積み上げて計算しましょう。
借主が店舗を営業している場合、営業補償なども含まれるため高額になるケースもあります。
建物の老朽化によって倒壊リスクがある場合、借主に退去を求める正当事由として認められる可能性があります。
正当事由は、単に築年数が経過しているのみでは認められず、耐震診断などの客観的な根拠に基づかなければ原則として認められません。
客観的な根拠によって耐震性の問題などを証明できない場合、立ち退き料の増額や、立ち退き要求が認められない可能性もあるでしょう。
専門的な知見が交渉の結果を左右するため、立ち退き交渉に精通した弁護士への依頼がおすすめです。
老朽化した建物の再生や建て替えのため、2025年改正の区分所有法が2026年4月1日から施行されるなど、制度の見直しが進められています。
法改正は退去交渉や明渡請求のチャンスとなるケースもあるため、内容を把握して賃貸経営の判断に役立てましょう。
改正後の区分所有法では、建物が耐震性不足などの条件を満たす場合、建て替え決議の要件が従来の5分の4から「4分の3以上」に緩和されました。
所在不明者の除外や共用部分の重大変更、リノベーション工事の実費なども要件が緩和されています。
背景としては、居住者の高齢化や連絡不通により古いマンションの修繕や建て替えが進まず、社会的な課題として深刻化したという要因があります。
建物の老朽化が社会問題として提起されていると、建て替えを希望する貸主にとって交渉が進めやすくなるメリットがあるでしょう。

借主が退去勧告に応じない場合、以下のような流れで最終的には裁判所の強制執行によって明け渡しを求めます。
強制執行までの流れを逆算して最短の道筋を組み立てるには、弁護士による高度な法的判断が必要となります。
まずは弁護士に契約内容や家賃の滞納状況など事実関係を伝え、強制退去に向けた手続きについてアドバイスを受けましょう。
方針が定まったら、訴訟提起の準備段階として弁護士名義の内容証明の送付を依頼します。
内容証明には、借主に立ち退きを求める理由や退去期日、応じない場合の訴訟提起などを記載します。
送付した内容証明は裁判上の証拠となりますが、一旦送付すると内容の撤回が困難なケースもあるため、文面の作成は弁護士に依頼しましょう。
内容証明を送付しても借主が退去期日までに立ち退きをしない場合、建物明け渡し請求訴訟を提起し、裁判所に法的な審判を求めます。
訴訟の提起は、実質的には借主との交渉の打ち切りと法的措置への移行を意味します。
判決の確定前であれば和解による解決も可能ですが、訴訟提起まで進んでいる段階では話し合いでの解決が難しいケースも多いでしょう。
訴訟手続きでは、弁護士によって整理された主張や証拠に基づいて弁論が行なわれ、裁判官の法的な判断により審判の結果が下されます。
貸主と借主からの弁論がすべて完了すると、裁判官から最終的な判断として判決が言い渡されます。
判決は、貸主と借主の紛争に対して下される法的な判断の結論であり、主文と理由が読み上げられます。
退去勧告に応じない借主が違法であるという判決が下されると、強制執行を申し立てるための準備が整った段階と言えるでしょう。
訴訟提起から判決までは、個別の事案によりますが、一般的には3カ月〜6カ月ほどかかるケースが多いです。
判決が確定した後は、退去の強制執行の申し立てが可能です。
強制執行の申し立てをすると、執行官が1カ月ほどの猶予期間を設けて退去期日を設定し、物件を訪問して退去期日が記載された公示書を貼り付けます。
期日内に退去しない場合、強制執行の断行日に執行官や業者が強制的に解錠し、荷物の搬出や鍵の交換が行なわれて貸主に物件が返還されます。
執行費用は貸主が立て替えなければなりませんが、本来は借主負担の費用であるため、執行後に借主へ請求しましょう。
ここからは、退去勧告のよくある質問3つについて、法律と実務上の事例を踏まえた観点から簡潔に回答します。
契約満了の6カ月前〜1年前が、退去勧告に関する通知期限の目安です。
借地借家法では、退去勧告の期限について以下の通り定めています。
借地借家法26条[注2]
期間の定めがある建物賃貸借では、期間満了の1年前~6カ月前に相手方へ更新しない旨の通知をしなければ契約更新とみなす。
借地借家法27条[注3]
期間の定めのない建物賃貸借は、貸主からの解約の申し入れから6カ月経過後に終了する。
通知期限を守らないときは、借主の物件からの退去が予定より大幅に遅れてしまう可能性もあるため期限に注意しましょう。
借主に物件からの立ち退きを要求するときは、以下のような退去を求めるのにやむを得ないと認められる正当事由がなければなりません。
貸主の退去を求める理由や借主の生活状況などが総合的に考量され、正当事由の有無が認定されます。
退去勧告を無視された場合でも、貸主の実力行使によって借主を退去させるための自力救済は認められません。
借主を退去させるには、建物明け渡し訴訟を提起して勝訴判決を得た後、強制執行の申し立てを行う必要があります。
借主の居住権は借地借家法によって保護されているため、強制退去させるには適法な手続きを行う必要があります。
借主が違法に居座り続けている場合でも、貸主が勝手に荷物の搬出や鍵の交換をすると刑事罰に問われるリスクもあるため注意しましょう。
[注2]借地借家法/e-Gov
借地借家法26条
[注3]借地借家法/e-Gov
借地借家法27条
退去勧告には、借主を退去させるための法的な強制力はありません。
退去交渉を管理会社に任せると、非弁行為とみなされて交渉結果が無効になり、解決までに時間がかかるリスクもあります。
借主を強制退去させるには、法的な手続きが必要です。
弁護士に依頼して交渉や証拠集めなどを行いながら、早期解決をめざしましょう。
退去交渉に精通した弁護士であれば、トラブルの発生や立ち退き料の支払いをできる限り抑えるための道筋を提示してくれます。
退去勧告をしても借主が応じないときは、大家側の退去交渉の解決実績が豊富なVSG弁護士法人にご相談ください。