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借地権を地主に買い取ってもらう流れとは?相場や注意点を解説

弁護士 福西信文

この記事の執筆者 弁護士 福西信文

大阪弁護士会所属。京都市出身。
建物の老朽化や土地活用に伴う「立ち退き」の問題は、賃貸人・賃借人双方の利害が複雑に絡み合い、解決が長引くほどオーナー様にとって大きな精神的・経済的負担となります。
円滑な明渡しを実現するためには、正当事由の精査といった法律知識に加え、妥当な立ち退き料の算定や、相手方の状況に応じた柔軟な交渉力が欠かせません。
私はIT企業や経営コンサルタントとしての実務経験を活かし、単なる法律論に留まらない「ビジネス視点での最適な解決策」をスピーディーに提示することを得意としています。 早期解決によって次のステップへスムーズに進めるよう尽力いたします。ぜひ一度ご相談ください。

PROFILE:https://vs-group.jp/lawyer/profile/fukunishi/
書籍:「事業をやり直したい」と思ったときの会社のたたみ方

借地権を地主に買い取ってもらう場合の適正相場や解体費用の負担、地主から買取拒否や更地返還を求められた際の対等な交渉方法について弁護士へ相談している借地人のイメージ画像

この記事でわかること

  • 借地権を地主に買い取ってもらう場合の相場
  • 借地権を地主に買い取ってもらう場合の流れ
  • 借地権の買取を地主に拒否された場合の対処法

借地権を地主に買い取ってもらう場合、更地価格の50%~70%程度が一つの目安です。ただし、実際の買取価格は、借地権の種類や契約内容、残存期間、建物の状態などによって変わります。

地主から提示された金額をそのまま受け入れたり、自己判断で価格交渉を始めたりすると、本来より不利な条件で合意してしまうおそれがあります。また、実際の交渉場面では、買取価格だけでなく建物の解体費用や引渡し時期なども確認が必要です。

本記事では、借地権を地主に買い取ってもらう場合の相場や流れ、交渉のコツ、拒否された場合の対処法について弁護士が解説します。

目次

そもそも借地権とは?

借地権とは、建物を所有することを目的として、他人の土地を使用する権利です。土地そのものの所有権ではなく、あなたが土地を利用するために持っている権利である点がポイントです。

借地権には財産的価値が認められるため、借地権のみを売却することも可能です。もっとも、借地上に建物を所有している場合は、借地権だけを切り離して売却するのではなく、建物とセットで「借地権付き建物」として売却するケースが一般的です。

借地権には「普通借地権」や「定期借地権」などの種類があり、それぞれ契約期間や更新の可否が異なります。第三者に売却する場合、更新によって長期間利用できる普通借地権は、契約期間満了後に土地を返還する定期借地権よりも売却しやすい傾向があります。

ただし、実際の売却価格や売れやすさは、残存期間や地代、契約内容などによって変わります。

なお、借地権を売却するコツや流れ、トラブルへの対処法については、関連記事『借地権を売却するコツは?方法や相場など注意点を解説』で詳しく解説しています。

借地権を地主に買い取ってもらうメリット

借地権を売却する場合は、主に「地主に買い取ってもらう方法」と「不動産会社などを通して第三者に売却する方法」があります。

地主に借地権を買い取ってもらう場合、主に以下のメリットがあります。

  • 地主から譲渡承諾を得る必要がない
  • 買主を探す手間を抑えられる
  • 借地契約を終了させ、借地権と建物をまとめて整理できる
  • 第三者への売却で発生する譲渡承諾料が基本的にかからない
  • 地主との合意がまとまれば、比較的スムーズに売却を進めやすい

特に、借地権が賃借権の場合、第三者への売却では地主との承諾交渉が必要になる(民法612条1項)ため、地主自身に買い取ってもらうことで、売却手続きをシンプルに進められる可能性があります。

借地権を地主に買い取ってもらう場合の相場はいくら?

借地権を地主に買い取ってもらう場合、売却価格は更地価格の50%~70%程度が一つの目安となります。

ただし、実際の買取価格は、借地権の種類や契約内容、土地の立地、建物の状態などによって変わるため、この割合だけで「いくらで売れる」と判断することはできません。

また、あなたから地主に買取りを依頼する場合と、地主から買取りを持ちかけられた場合では、交渉の進み方や価格が変わることがあります。

更地価格の50%~70%程度が一つの目安

地主に借地権を買い取ってもらう場合、更地価格の50%~70%程度が一つの目安とされています。ただし、借地権の買取りをどちらから依頼したかで、金額の目安が若干異なります。

【借地人から買取りを依頼する場合】

自分から地主にを持ちかける場合は、更地価格の50%程度が一つの目安です。地主側には必ずしも借地権を取得する必要性がないため、地主側が優位に交渉を進めやすくなる傾向にあるからです。

【地主から買取りを申し出る場合】

一方、地主から「借地権を買取りたい」と申し出てきたケースでは、更地価格の60%~70%程度を目安として考えておきましょう。地主が土地を自由に利用できる状態に戻したいなど、取得する目的が明確な場合には、借地人側が価格を交渉しやすくなるケースも多いです。

なお、借地権の評価額を算出する際には、相続税・贈与税の財産評価で用いられる「借地権割合」が参考になります。土地の評価方法には主に「路線価方式」と「倍率方式」があり、路線価や評価倍率は国税庁の「財産評価基準書」で確認できます。

たとえば、路線価をもとにした土地の評価額が5,000万円、借地権割合が60%であれば、借地権の評価額は3,000万円が一つの目安となります。

ただし、これはあくまで財産評価上の目安であり、実際の買取価格を示すものではありません。実際の取引では、建物の解体費用や引っ越し費用などを考慮して価格が調整されることもあります。提示された金額が適正か判断するためにも、契約内容や土地・建物の条件を踏まえて検討することが重要です。

なお、借地権評価額の具体的な計算方法や借地権売却にかかる費用、借地権を売却する際のポイント・増額のコツなどについては、関連記事『借地権の売却相場はいくら?増額のコツや注意点を解説』で詳しく解説しています。

借地権の買取価格は条件や交渉で変わる

地主に借地権を買い取ってもらう場合、買取価格は一律に決まるわけではありません。地主が買い取る必要性や建物の状態、借地契約の内容、費用負担などによっても変わります。

たとえば、地主が借地権を買い取った後に建物を取り壊して土地を売却したり、新たに建物を建てたりするなど具体的な利用計画がある場合は、地主にとって買取りの必要性が高くなります。このような事情がある場合は、地主が土地を取得することで得られるメリットを踏まえて、買取価格の上乗せを求めるなど条件を交渉できる可能性があります。

たとえば、以下のような状況であれば地主側との交渉を優位に進められる可能性があります。

  • 第三者への一括売却やマンション建設を計画している場合
  • 底地(借地権のついた土地)のままでは売却しづらいため、完全な所有権に戻したい場合
  • 地主自身の相続対策や資産整理を進めたい場合

借地権の買取価格はあなたの個別事情によって変わるため、自分の借地契約や建物の状況、地主が土地を取得する目的などを整理したうえで、買取価格や費用負担を交渉することが重要です。

借地権を地主に買い取ってもらう場合の流れとは?

借地権を地主に買い取ってもらう場合は、地主への相談から始め、買取価格や条件を交渉したうえで契約・決済へと進みます。自分にとって不利な条件で合意しないよう、各段階で契約内容や金額を慎重に確認することが重要です。

ここでは、借地権を地主に買い取ってもらう場合の基本的な流れを解説します。

地主に借地権の買取を相談する

まずは地主に、借地権を買い取ってもらいたい旨を伝え、買取に応じる意思があるか確認します。相談する前に、売却を希望する理由や希望価格を整理し、借地契約書や登記情報、地代の支払い状況なども確認しておきましょう。

地主が買取に応じる場合は、買取価格だけでなく、建物の解体や費用負担、引渡し時期などについても話し合うことになります。口頭で話を進めるのではなく、合意した条件は書面に残しておくことが大切です。

また、最初の相談で不用意に「いくらでもいいので買い取ってほしい」「この条件なら立ち退く」と伝えると、その後の価格交渉に影響する可能性があります。自分で地主に伝える前に、契約内容や借地権の価値を整理したうえで、弁護士に相談しておくと安心です。

買取価格や条件を交渉する

地主が買取に応じる場合は、買取価格だけでなく、建物の扱いや契約終了に関する条件も交渉します。特に、次の点は事前に確認しておきましょう。

  • 建物を解体するか
  • 解体費用を地主と借地人のどちらが負担するか
  • 明渡しの時期をいつにするか
  • 未払い地代などをどのように精算するか
  • 敷金・保証金をどう扱うか
  • 借地契約をいつ終了させるか

買取価格については、「この金額で売りたい」という希望だけでなく、借地権の評価や建物の状態などを踏まえた適正な価格を把握しておくことが重要です。不動産会社による査定など、複数の資料を用意しておけば、価格の根拠を示しながら交渉しやすくなります。

ただし、不動産会社の査定額が、そのまま地主との買取価格になるわけではありません。地主側の事情や解体費用なども踏まえて条件を調整する必要があるため、提示された価格や条件が適正か判断できない場合は、合意する前に弁護士へ相談しましょう。

売買契約を締結する

買取価格や条件について地主と合意したら、売買契約を締結します。後から「言った・言わない」のトラブルにならないよう、口頭の合意だけで済ませず、決めた内容を契約書に明記することが重要です。

契約書には、少なくとも次の事項を明確に記載します。

  • 買取価格
  • 決済日・引渡日
  • 建物を含めて売却するのか、解体して土地を返還するのか
  • 建物の解体費用などの負担者
  • 契約解除の条件
  • 未払い地代などの精算方法
  • 借地契約を終了する時期

特に、建物の解体や費用負担について口頭で合意している場合は注意が必要です。契約書に具体的な内容が記載されていなければ、後から認識の違いが生じる可能性があります。

また、借地権の売買契約だけでなく、現在の借地契約をいつ、どのような形で終了させるのかも確認しておきましょう。複数の契約関係がある場合は、それぞれの終了時期や条件に矛盾がないか確認することも大切です。

なお、契約書は、地主側が用意するケースもあれば、借地人側が作成するケースもあります。どちらが作成する場合でも、内容を十分に確認してから署名・押印することが重要です。

借地権の引渡し・代金の決済を行う

契約内容に従って、地主から買取代金を受け取り、借地権や建物の引渡し、借地契約の終了手続きを進めます。建物の扱いによって必要な手続きが異なるため、事前に確認しておきましょう。

建物を地主に引き渡す場合は、所有権移転登記などの手続きを確認します。建物を解体する場合は、解体後に建物滅失登記を行います。あわせて、未払い地代などがあれば最終精算を行い、借地契約を終了させます。

不動産トラブルに強い弁護士であれば、提携する司法書士と連携し、売買契約から登記までワンストップで対応できる場合があります。弁護士に相談する際は、登記手続きまで含めて対応してもらえるか確認しておくと安心です。

なお、地主に借地権を買い取ってもらった場合でも、売却によって利益が生じれば、原則として譲渡所得税(住民税・所得税)がかかります。税額は取得費や譲渡費用、所有期間などによって変わるため、売却前に税負担も確認しておきましょう。

譲渡所得税に関する詳しい内容については、関連記事『借地権の売却相場はいくら?増額のコツや注意点を解説』で詳しく解説しています。

借地権を地主に買い取ってもらうための交渉のコツとは?

地主に借地権を買い取ってもらうには、希望価格を伝えるだけではなく、地主にとっても買取に応じるメリットがあることを示しながら、価格と条件を調整することが重要です。特に、価格の根拠を示したうえで、引渡し時期や解体費用なども含めて交渉すると、合意につながりやすくなります。

まずは、更地価格や借地権の評価額、周辺の取引事例などをもとに、希望価格の根拠を整理しておきましょう。「この金額で売りたい」と伝えるだけでは、地主から価格の妥当性を疑われる可能性があります。借地権の評価については、相続税・贈与税の財産評価に用いる借地権割合なども参考になりますが、実際の買取価格は個別の事情によって変わるため、評価額をそのまま売却価格と考えないことも大切です。

また、地主にとっては、借地権を買い取ることで土地を自由に利用できるようになり、今後の地代管理や第三者への譲渡をめぐる対応も不要になります。たとえば、地主が将来的に土地を売却したい、建物を取り壊して自ら土地を利用したいと考えているのであれば、こうした事情を踏まえて交渉することで、買取価格や条件について話し合いやすくなる場合があります。

地主との関係が悪化している場合や、提示された金額に納得できない場合は、自分だけで交渉を続けるのではなく、早い段階で弁護士に相談することも有効です。弁護士であれば、借地契約や建物の状況などを確認したうえで適正な条件を検討し、地主との交渉を代理することもできます。

借地権を地主に買い取ってもらう場合の注意点とは?

地主に借地権を買い取ってもらいたいと考えても、地主に買取義務があるわけではありません。買取を断られる可能性もあるため、地主が応じなかった場合の選択肢まで考えておくことが大切です。

ここでは、借地権を地主に買い取ってもらう場合の主な注意点を3つ紹介します。

地主が買取交渉に応じてくれないこともある

地主には、借地人から「借地権を買い取ってほしい」と求められた場合に、必ず買い取らなければならないという義務はありません。そのため、「借地権を手放したい」という理由だけで、地主に買取を強制することはできません。

たとえば、地主が土地を自分で利用する予定がなく、現在の地代収入を維持したいと考えている場合には、買取を断られる可能性があります。

地主が買取に応じない場合は、第三者への売却など、別の方法を検討する必要があります。もっとも、借地権が賃借権の場合、第三者への譲渡には原則として地主の承諾が必要です(民法612条1項)。そのため、地主から買取を断られたからといって、すぐに第三者への売却を進められるとは限りません。

希望する価格で買い取ってもらえるとは限らない

借地権を地主に買い取ってもらう際、あなたの希望どおりの価格で買い取ってもらえるとは限りません。実際の交渉では、さまざまな事情から買取価格が下がったり、条件面で折り合いがつかなかったりすることがあります。

【借地権割合はあくまで「税務上の目安」にすぎない】

前述のとおり、路線価図などに定められている借地権割合は、相続税や贈与税などの財産評価に用いる基準です。そのため、借地権割合をもとに算出した評価額が、そのまま実際の買取価格になるわけではありません。地主に評価額を示しても、土地や建物の状況などを踏まえて、別の金額を提示されることがあります。

【最終的な買取価格は地主との合意で決まる】

借地権の売買には、公定価格があるわけではありません。客観的な評価額や周辺の取引事例を示したとしても、最終的には地主との交渉によって買取価格が決まります。地主が提示された金額では買い取るメリットがないと判断すれば、価格の引き下げを求められることもあります。交渉がスムーズにいくよう、日頃から地主との関係を良好に保っておくことが重要です。

【高すぎる希望価格は交渉がまとまらない原因になる】

相場とかけ離れた金額を一方的に提示すると、地主が交渉に応じなくなったり、話し合いが長期化したりする可能性があります。そのため、「いくらで売りたいか」だけでなく、「なぜその価格なのか」という根拠を準備しておくことが重要です。不動産会社などに査定を依頼し、客観的な価格の目安を把握しておけば、地主との交渉でも価格の根拠を示しやすくなります。

建物の解体費用を負担する必要がある場合がある

借地権を地主に買い取ってもらう際は、建物を解体するのか、解体する場合に誰が費用を負担するのかを確認しておく必要があります。解体の有無や費用負担によって、最終的に手元に残る金額が大きく変わることもあります。

【「借地権の売却=必ず更地にして引き渡す」とは限らない】

借地権を地主に買い取ってもらう場合でも、必ず建物を解体して更地で引き渡すとは限りません。たとえば、地主が建物をそのまま利用したり、第三者への売却を予定したりしている場合には、建物を残したまま引き渡すこともあります。そのため、契約内容だけでなく、地主が土地や建物をどのように利用する予定なのかも確認したうえで、解体の必要性を判断することが大切です。

【更地で返還する場合は解体費用が発生する】

地主から更地での返還を求められ、建物を解体することになれば、解体費用が発生します。建物の構造や規模によっては高額になることもあるため、買取価格だけでなく、解体費用を差し引いた後にいくら手元に残るのかまで確認しましょう。

【解体費用の負担も交渉できる】

解体費用を誰がどの程度負担するのかは、地主との交渉で決めることができます。たとえば、地主が解体費用を負担する代わりに買取価格を調整するなど、買取価格と費用負担を一体として条件を決める方法もあります。そのため、「買取価格はいくらか」だけでなく、「解体費用を誰が負担するのか」を含めて、最終的な手取り額を比較することが重要です。

【建物を解体する前に地主と合意しておく】

「どうせ更地にするから」と、地主との合意や契約手続きを済ませる前に建物を解体するのは避けましょう。解体後に買取条件がまとまらなければ、建物だけを失ってしまい、かえって不利な状況になる可能性があります。解体する場合は、誰が費用を負担するのか、いつ解体するのか、解体後の土地をどのように引き渡すのかまで、事前に地主と書面で確認しておくことが大切です。

借地権の買取を地主に拒否された場合の対処法とは?

地主に借地権の買取を断られても、売却をあきらめる必要はありません。

ここでは、借地権の買取を地主に拒否された場合の2つの対処法を紹介します。

買取業者への売却を検討する

地主が買取りに応じない場合は、借地権付き建物として買取業者や不動産会社への売却を検討しましょう。ただし、借地権が土地の賃借権である場合、第三者への譲渡には原則として地主の承諾が必要です(民法612条1項)。

地主から承諾を得られない場合でも、一定の要件を満たせば、裁判所に地主の承諾に代わる許可を求めることができます(後述)。そのため、地主に拒否されたからといって、すぐに売却を断念する必要はありません。

一方、買取業者への売却は、買主を探す手間を抑え、早期に借地権を手放せる可能性がある反面、一般の買主への売却と比べて買取価格が低くなることがあります。自分の借地権の価値や地主との交渉状況を踏まえて、どの方法が適しているか判断することが重要です。

また、第三者に借地権付き建物を売却した後、買主が地主から譲渡の承諾を得られない場合には、買主が地主に対して建物を時価で買い取るよう請求できる「建物買取請求権」が認められます(借地借家法14条)。そのため、第三者への売却では、地主の承諾を得られる可能性だけでなく、承諾を得られなかった場合に売買をどう進めるのかまで、あらかじめ整理しておく必要があります。

借地非訟手続を利用する

地主に不利となるおそれがないにもかかわらず第三者への譲渡を承諾してくれない場合は、裁判所に対し地主の承諾に代わる許可を求める申立て(借地非訟:借地借家法19条1項)が可能です。この手続きを利用すれば、地主の承諾がなくても、裁判所の許可を得て第三者への借地権の譲渡を進められる可能性があります。

ただし、「地主に買取を拒否されたから借地非訟を申し立てれば、地主に買い取ってもらえる」と考えるのは適切ではありません。裁判所は、新たな借地人の資力や信用力などを踏まえ、譲渡によって地主に不利となるおそれがないかを判断します。借地非訟はあくまで第三者への譲渡を実現するための手続きであり、地主に買取を強制する制度ではないことを頭に入れておく必要があります。

もっとも、借地非訟手続では、地主側に「介入権」が認められています(借地借家法19条3項)。借地人が第三者への譲渡許可を申し立てた場合、地主は「第三者に譲渡するのであれば、自分が借地権を譲り受けたい」と裁判所に申し立てることができます。

地主が介入権を行使すると、裁判所が相当の対価や条件を定めたうえで、地主に借地権と建物を譲り受けさせることがあります。つまり、「地主が任意の買取交渉には応じてくれなかったものの、借地人が第三者への譲渡を進めるために借地非訟手続を申し立てた結果、地主が介入権を行使し、裁判所が定めた対価で地主が買い取る」ということが実際の交渉の場面では起こり得るのです。

ただし、介入権を行使するかどうかは地主の判断に委ねられており、借地人から強制できるものではありません。地主の買取拒否に困っている場合は、借地非訟手続を利用できる状況なのか、また地主が介入権を行使する可能性があるのかを含めて、弁護士に確認することをおすすめします。

借地権を地主に買い取ってもらう際に、弁護士に相談するメリットとは?

借地権の買取交渉は、法律知識だけでなく不動産実務の専門的な判断が求められる複雑な手続きです。ご自身だけで交渉を進めると、法的に不利な条件で合意してしまったり、地主との間で深刻なトラブルに発展したりするおそれがあります。

ここでは、借地権の売却や地主との交渉を弁護士に相談する主なメリットを解説します。

借地権の適正な買取価格を判断してもらえる

地主から提示された買取価格が妥当なのか、自分だけで判断するのは容易ではありません。借地権の価格は、借地権割合をそのまま当てはめれば決まるものではなく、借地契約の内容や地代、建物の状態、解体費用など、さまざまな事情によって変わるためです。

弁護士に相談すれば、こうした個別事情を踏まえて、地主から提示された価格や条件が妥当なのかを検討してもらえます。

また、解体費用や地代の精算なども含めて、最終的に手元に残る金額を確認したうえで、どの程度の価格・条件で合意するのが適切なのかを整理できます

地主に買取を拒否された場合の対応を相談できる

地主に買取を拒否された場合でも、借地権を手放す方法がなくなるわけではありません。借地権の種類や契約内容によっては、第三者への売却や借地非訟手続など、別の方法を検討できます。

弁護士に相談すれば、地主が買取を拒否した理由や借地契約の内容を確認したうえで、どの方法が適しているのかを判断してもらえます。

また、前述したように、地主が任意の買取交渉には応じなかったものの、第三者への譲渡を進めるために借地非訟手続を申し立てた結果、地主が介入権を行使し、裁判所が定めた対価で借地権と建物を買い取ることになるケースもあります。

借地非訟手続では、申立書の作成や必要な資料の準備、裁判所とのやり取りなどが必要になるため、自分だけで対応するのは容易ではありません。弁護士にはこうした手続きを任せられるため、手続き上の負担を減らせるだけでなく、地主との交渉や裁判所への対応に伴う精神的な負担も軽減できます。

相続人同士のトラブルにも対応してもらえる

相続した借地権付き建物をどう処分すればよいのか分からず、困っている方もいるでしょう。特に、相続人が複数いる場合は、誰が借地権を取得するのか決まらなければ、地主との買取交渉や売却を進められないことがあります。

また、遺産分割協議がまとまらず、借地権付き建物が相続人の共有状態になっている場合や、売却後の代金をどのように分けるかについて相続人同士で意見が対立する場合もあります。

弁護士に相談すれば、遺産分割協議や共有状態の整理、相続人間での売却代金の分配など、借地権の買取に関連する相続問題についてもまとめて対応してもらえます。

「地主との交渉は誰に相談すればよいのか」「相続人同士の話し合いはどう進めればよいのか」と悩んでいる場合でも、現在抱えている問題をまとめて相談できるため、自分で相談先を一つずつ探す負担を減らせます。

借地権を地主に買い取ってもらうことについてよくある質問(Q&A)

地主が更地返還を求めてきたら「建物買取請求権」を行使できる?

建物買取請求権は、借地権の存続期間が満了し契約が更新されない場合に、借地人が地主に対して借地上の建物を時価で買い取るよう請求できる権利です(借地借家法13条1項)。

そのため、あなた自身が借地権を返還したいと申し出たところ、地主から「建物を解体して更地で返してほしい」と求められた場合でも、期間満了後に更新されないという要件を満たさなければ、原則として建物買取請求権は行使できません。

なお、一般定期借地権や事業用定期借地権では、建物買取請求権を認めない特約を設けることができます(借地借家法22条1項、23条1項)。一方、普通借地権では、建物買取請求権をあらかじめ排除するなど、借地人に不利な特約は原則として無効です(借地借家法16条)。

地主から買取価格を提示された場合、値上げ交渉できる?

地主から買取価格を提示された場合でも、契約を締結する前であれば価格の引き上げ交渉も可能です。

地主側から買取価格を提示されたら、更地価格や借地権割合だけでなく、建物の価格や解体費用の負担などがどのように買取価格へ反映されているのかを確認してください。必要に応じて、複数の不動産会社に査定を依頼し、提示された金額と比較することも検討しましょう。

地主との交渉では、最初から手持ちの情報をすべて提示するのではなく、査定結果などの客観的な根拠を必要に応じて示しながら、段階的に希望価格を伝えることも有効です。最初の提示額に対する地主の反応を見ながら、交渉材料を追加していくことで、より有利な条件を引き出せる可能性があります。

いったん売買契約を締結すると、基本的に、後から一方的に買取価格を変更することは困難です。価格やその他の条件に納得できない場合は、契約を締結する前に弁護士などの専門家へ相談しましょう。

まとめ 借地権を地主に買い取ってもらう前に弁護士に相談を

借地権を地主に買い取ってもらう場合、更地価格の50%~70%程度が一つの目安となります。ただし、実際の買取価格は、借地権の種類や契約内容、土地・建物の状態、解体費用の負担などによって変わります。

また、地主には借地権を買い取る義務がないため、買取を拒否されることもあります。その場合は、買取業者への売却や、一定の要件を満たせば借地非訟手続を利用した第三者への譲渡など、別の方法を検討する必要があります。弁護士に依頼して借地非訟手続を進めた結果、地主が介入権を行使し、裁判所が定めた対価で地主に買い取ってもらえるケースもあります。

VSG弁護士法人」は、借地権に関する問題について、地主との譲渡承諾交渉や契約内容の確認、相続人間のトラブルなど、さまざまな法律問題に対応しています。借地権付き建物の売却を検討しているものの、「地主の承諾を得られるか」「提示された条件で売却してよいのか」「相続人との話し合いがまとまらない」といった不安がある方は、まずは私たちの初回相談をご活用ください。

借地契約の内容や相続関係を丁寧に確認し、できるだけスムーズに売却を進められるよう、弁護士が親身に寄り添ってサポートします。

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