大家から立ち退きのお願いをされたが、立ち退き料について説明されなかった場合、もらえないのか確認しなければいけません。
立ち退き料を支払わないことに明確な根拠がある場合は仕方ありませんが、大家都合の立ち退き要求の場合は、通常立ち退き料を受け取れます。
また、大家が払わなくてよいと勝手に判断しているケースもあります。
本稿では、立ち退き料をもらえるケースやもらえないケース、払ってもらうための手順を解説します。
目次
立ち退き料とは、賃貸住宅で大家が入居者に対して退去を求める場合に、大家が支払うお金のことです。
大家の要求に応じることとなった入居者が、実際に退去し新たな物件へと転居するためにかかる費用に充てることが目的とされています。
例えば、転居先となる物件の契約金や、引っ越し費用などがこれにあたります。
大家から入居者へ立ち退き料を払うことによって、入居者は退去に応じやすくなり、スムーズに立ち退きが進められるようになります。
立ち退き料を払ってくれるか、払ってくれないかは、法律で明確に定められているわけではありません。
また、計算方法も法律で決められていません。
しかし、裁判所の判例などで、一般的に受け取れるのかどうかの目安はわかります。
一般的な目安として立ち退き料を受け取れるケースと、受け取れないケースの代表例を紹介します。
立ち退き料を払ってくれる主なケースは、以下の通りです。
立ち退き料を払ってくれるケース
大家都合だけではなく、再開発などの公共事業として行われる事業の場合でも、立ち退き料を払ってくれます。
公共事業での立ち退きは、賃貸住宅の所有者が公共事業の施行者から立ち退きの請求を受け、賃貸住宅の所有者が賃借人へ立ち退き請求をする流れをとります。
立ち退き料を払ってくれない主なケースは、以下の通りです。
立ち退き料を払ってくれないケース
賃借人が賃貸関係者に迷惑をかけているような場合には、立ち退き料を受け取ることはできません。
具体的には以下のような場合を指します。
また、家賃を滞納している場合は、賃貸借契約違反で先に退去させられてしまうことがあります。
このような状況下にある賃借人は立ち退き料をもらえない可能性がありますので、該当する場合は早急に改善することをおすすめします。
契約違反をしていないのにもかかわらず、払ってもらえない場合は立ち退き料を請求しましょう。
賃貸人の中には立ち退きに正当な事情があれば立ち退き料を支払わなくてもよい、賃貸借契約書に立ち退き料は支払わないという記載があるから支払わなくてもよいと勝手に判断をする場合があります。
賃貸借契約書に立ち退き料を支払わないことが記載されていても、借地借家法により立ち退きの際に立ち退き料を払わないという特約事項は無効です。
それでは、立ち退き料を払ってもらうときの対処法を紹介します。
立ち退き料の交渉を始める前には、必ず弁護士に相談することをおすすめします。
賃借人1人で交渉して交渉過程で手間取ることがあると、後の交渉に影響が出てしまうからです。
そうなると、立ち退き料を受け取るまでに相当な時間がかかります。
交渉内容や交渉方法など、弁護士としっかり打ち合わせをしておきましょう。
立ち退き料を支払ってもらえない理由を大家に確認してみましょう。
そもそも立ち退きさせることに正当な理由がある場合、払わなくてもよいと思っている大家もいます。
前述したように、大家にとって正当な事情があれば立ち退きをさせる理由になります。
しかし、立ち退きさせる正当な事情だけでは、実際に立ち退きをさせることはできません。
あくまで立ち退きをさせる正当な事情に加えて、立ち退き料を払うことで立ち退きをさせることができるのです。
賃貸人から立ち退きをする理由を聞き、立ち退き料を受け取ることができる内容であれば、はっきりと立ち退き料を受け取りたい旨を伝えましょう。
内容証明郵便を大家に送付することも有効です。
内容証明郵便とは、差出人が受取人に送付する文書のコピーを保存して、送付の事実と郵送物の内容を担保する郵便です。
内容証明郵便を送付するということは、送付した内容を郵便局が保証することになるため、受け取った側は受け取っていない、郵送物の内容を知らないと主張できません。
逆に、賃借人からしても一度送った内容が記録として残るため、内容証明郵便を利用する場合には、どのような内容を記載するのかを弁護士と相談しておく必要があります。
なお、内容証明郵便は郵便局でも決まった支店などでしか作成できず、費用もかかりますので、事前に郵便局に確認しておきましょう。
大家への直接交渉や内容証明郵便の送付によっても進展がない場合は、最後の手段として裁判所を頼ることになります。
裁判では、根拠をもって立ち退き料をどの程度賃借人へ支払うのが妥当か判断をしてもらえます。
そのため、裁判に臨む場合は、弁護士と相談して立ち退き料を受け取る根拠を準備しておきましょう。
賃貸人に対して立ち退き料を支払ってもらう交渉手順を紹介します。
基本的に立ち退き請求をされた場合、立ち退きに応じることになるのですが、立ち退き料に関しては契約内容も関係してきます。
2年契約・自動更新というのが一般的な賃貸契約ですが、まれに期間が決められている場合もあります。
自分の契約内容がどうなっているのかについて、最初に確認しておきましょう。
賃貸人と交渉する場合は、簡単に退去しないという意思を伝えます。
交渉過程で立ち退きの意思がないことが賃貸人に伝わると、相手側もどのように解決をしていけばよいのか検討を始めます。
どのような問題が解消されればこちらが立ち退くのかを検討する必要性を賃貸人に伝えることが大切です。
前述したように、賃貸人によっては立ち退きしてもらう際に立ち退き料が必要ないと思い込んでいる人がいます。
仮に退去させる理由が正当な理由だとしても、基本的には賃借人に立ち退き料を払う必要があります。
立ち退き請求がなければ、賃借人は転居やそれにかかるストレスを被ることはなかったのだということを賃貸人に理解してもらうことが大切です。
お互いに気持ちよく立ち退きを完了させるために、立ち退き料の支払いは必須条件であることをきちんと理解してもらいましょう。
立ち退き料をどのくらい受け取れるかのおおよその目安は決まっています。
交渉をスムーズにするためにも、この目安を計算しておきましょう。
賃貸住宅の立ち退きの場合は、以下のような内訳が考えられます。
これらを合計した金額を立ち退き料として提示することができます。
交渉が始まったら、早い段階で提示できるように準備しておくことをおすすめします。
立ち退き料を払ってくれない場合は、弁護士に交渉の場に同席してもらうのがよいでしょう。
弁護士がいることにより、弁護士の知識や経験を基に根拠のある内容を提示できます。
弁護士が同席すると聞けば、相手も心づもりして臨むことになるでしょう。
賃貸人自身が立ち退きについて学んでくれることも期待できます。
立ち退き料はデリケートな話なので、素人には賃貸人と直接交渉をすることは難しいでしょう。
相手の状況や立ち退きの内容を把握した上で話し合いを進めていきますが、交渉には専門的な知識が必要になることもあります。
また、一度交渉がスムーズにいかなくなると、その後の交渉もが難航してしまうため、適切なタイミングで慎重に進める必要があります。
立ち退きを請求されたものの、立ち退き料を受け取れないということがわかった場合は、その時点で弁護士に相談することをおすすめします。
立ち退きの初期の段階からプロの知識や経験を活かして、立ち退き料の受領交渉をスムーズに進めていくようにしましょう。
なお、以下の記事で持ち家の立ち退き料の相場について解説しています。
持ち家の立ち退きを請求されてお困りの方は、ぜひ併せてご覧ください。