立ち退き料を受け取ったときには、以下の項目が課税されます。
立ち退き料を受け取ったときにかかる税金
これらは、各項目で課税対象者が変わります。
立ち退き料を受け取る側が個人の場合は所得税が課税されるため、基本的に確定申告が必要になります。
また、受け取った立ち退き料の内容で所得税の所得区分が変わる点にも注意しましょう。
道路の拡幅などで土地や建物を明け渡した場合、拡幅された部分の土地や建物は使用できなくなります。
この「使用できなくなる」=「権利がなくなる」ことによる立ち退き料は譲渡所得です。
資産の消滅の対価補償になります。
ちなみに、借家権消滅の対価として立ち退き料をもらう場合、借家権取引の習慣がある地域であれば譲渡所得ですが、取引の習慣がない地域だと一時所得となります。
事業をしているところで立ち退きがあったとき、そこで売り上げる予定収入や従業員に支払う給与、事業の休業などの補填に充てられる立ち退き料は事業所得です。
収入金額または必要経費の補填になります。
譲渡所得、事業所得以外のものは一時所得という区分になります。
計算方法例:一時所得=(受け取った立ち退き料-立ち退きにかかった実費―特別控除50万円)×1/2
受け取る側が法人の場合は法人税が課税されます。
法人が受け取った立ち退き料はすべて益金となり、他の所得金額と合算します。
賃借人の地位の譲渡は消費税課税対象となります。
たとえば部屋を借りている人が、部屋を貸している人(大家)から立ち退き料を受け取る場合は非課税です。
この借りている人が、部屋を貸している人以外の第三者から立ち退き料を受け取る場合は課税されます。
立ち退き料を受け取った場合、立ち退き料は譲渡所得、事業所得、一時所得のいずれかの所得区分として、所得に計上しなければなりません。
そして、これらの所得区分での所得が発生した場合、確定申告義務が発生します。
確定申告は、立ち退き料を受け取った年の翌年2月16日~3月15日の1か月間実施されます。
この間に税務署に確定申告書を提出するか、電子申告により申告書を送信する必要があります。
立ち退き料に関する書類としては、立ち退き料が振り込まれた通帳があります。
このほか、計算書などを受け取っている場合は、あわせて準備しておくといいでしょう。
また、立ち退き料以外の項目もあわせて申告する必要があります。
会社員の場合は源泉徴収票、個人事業主の場合は青色申告決算書などを準備しておきましょう。
弁護士が事務所として賃借していた建物部分の明け渡しに伴い、賃貸人から立ち退き料の名目で金銭を取得し、一時所得として確定申告をしたところ、税務署が一時取得ではなく事業所得とし更生処分・追徴課税をしたことで始まった事案です。
事例受け取り側で揉めたケース
(東京地裁判決、平成23年(行ウ)第736号)
争点 | 事務所の明け渡しに伴い賃貸人から受領した立退料が、一時所得なのか事業所得になるのかの判断 |
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判決 | 裁判所は、事業に関わる行為などはその事業の本体を成すものの他多様な業務を含むことから、その事業に係る事務所等の維持や管理の業務は事業所得を生ずべき業務に含まれ、それについて生じた費用は事業所得に係る必要経費に該当すると解釈 |
今回は節税方法として6つの制度を簡単に紹介します。
これらの制度には細かな利用条件があるため、事前に関係機関や専門家に相談することをおすすめします。
この制度を利用できるのは、土地収用法やその他の法律で収用権が認められる公共事業のために土地建物を売った人です。
その他、以下の条件も必要となります。
この条件を全て満たした人が5,000万円の特別控除を利用することができます。
参照元:「No.3552収容等により土地建物を売ったときの特例」(国税庁)
土地建物を売ったときには以下のような特別控除があります。
いわゆるマイホームを売却した場合の控除制度です。
実際に生活をしており、住民票も置いてある自宅を売却した場合は、売却益から3,000万円を控除することができます。
この自宅を壊した場合でも、自宅を壊した日から1年以内に敷地の売却契約を締結し、かつ、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに所有権を移転すれば控除を受けることができます。
売買をする相手が親子や夫婦など特別な関係など控除が受けられない条件もあります。
特定土地区画整理の施工者に売却した場合の控除制度です。
国や地方公共団体などが土地の買主になり、農地法や都市緑地法などの規定に基づいた買取りの場合には、売却益から2,000万円の控除を受けられます。
区画整理事業の施工者が国や地方公共団体など決まっており、区画整理の開発面積も原則30ヘクタール以上と定められています。
特定住宅造成事業により売却をした場合の控除制度です。
特定住宅造成事業には事業範囲が決まっています。
住宅地の造成や公有地の拡大、防災街区の整備などが5ヘクタール以上施工されるなどの条件を満たした事業に土地を売却すると売却益から1,500万円を控除することができます。
2009年、2010年に土地を購入し、所有期間が5年を超えたのちに土地を売却した場合、売却益から1,000万円の控除を受けられます。
この制度については、条件に当てはまれば自宅かどうかは問われないためセカンドハウスなどでも利用できます。
また、敷地権のマンションでもその敷地権部分については適用されます。
農業を拡大したというような認定農業者へ、農業委員会の斡旋により売却した場合に利用できる制度です。
この条件に当てはまる場合は、売却益から800万円の控除を受けられます。
ここまで、立ち退き料を受け取る側の税金と節税方法、揉めた事例などを紹介してきました。
立ち退き料を受け取っても税金がかかり、もらった内容によっても税金の処理が異なる点に注意が必要です。
しかもそこで税金計算の控除ができるかどうかを判断して、確定申告も行わないといけません。
支払った側も、どこまで経費として見ればいいのか、どのように計上していけばよいか判断が難しい部分もあるでしょう。
このように、立ち退きには複雑な面が多く、一人で解決していくことには限界があります。
この記事を参考に、実際に立ち退きしてもらいたい、立ち退きを請求されたなどの場合には、弁護士など専門家に相談することをおすすめします。