この記事でわかること
- 特定建設業許可とは
- 特定建設業許可の要件
- 特定建設業と一般建設業の違い
建設業許可とは、建設業を営む事業者が、500万円以上の建設工事を請け負うときに必要な許可です。
建設業許可には、「一般県建設業」と「特定建設業」の2つがあり、一定金額を超える高額な工事を請け負うときは建設業設業を取得しなければなりません。
また、特定建設業許可を得るには、一定以上の資格や実務経験などの要件を満たす必要があります。
この記事では、特定建設業許可が必要となるケースや取得するための要件、一般建設業との違いを詳しく説明します。
特定建設業とは
特定建設業許可とは、1件の建設工事(元請工事)につき合計額が4,000万円以上の工事を下請に出す場合に、取得が義務付けられている許可です。
特定建設業許可は、発注者から直接工事を請け負った際に限るほか、建築一式工事の場合は6,000万円以上の依頼が対象となっています。
建設工事の額は消費税を含みますが、元請人が提供する材料といった価格は含まれません。
特定建設業許可に必要な要件
建設業許可を取得するには、一般や特定に限らず、6つの要件を満たす必要があります。
必要な要件を詳しく解説します。
経営業務管理責任者がいる
本社や本店といった主たる営業所には、経営業務管理責任者がいなければいけません。
法人は役員、個人事業主の場合は本人または支配人が責任者に該当します。
さらに、一定の地位にいるだけでなく、以下のような一定の経験も必要です。
- 建設業に関し、5年以上の経営業務の管理責任者として経験がある
- 建設業に関し、5年以上の経営業務の管理責任者に準ずる地位にあり、経営業務を管理した経験がある
- 建設業に関し、6年以上経営業務管理責任者に準ずる地位にあり、経営業務の管理責任者を補佐した経験がある
専任技術者が営業所ごとにいる
特定建設業の専任技術者になるには、1級の国家資格者または技術士の資格が必要です。
例えば、土木建設業の一般建設業許可は、2級土木施工管理技士の資格があればよいですが、特定建設業許可を得るには1級の資格が求められます。
また、一般建設業の専任技術者要件+一定以上の実務経験がある場合も特定建設業の専任技術者になれます。
この場合に必要な「一定以上の実務経験」は、「元請として4,500万円以上の工事に関して2年以上指導監督的な実務経験」です。
誠実性がある
許可申請者について請負契約の締結やその履行について法律違反や不誠実な行為があった場合、建設業許可を取得できません。
法律違反とは、たとえば詐欺・脅迫・横領などです。
不誠実な行為とは、工事内容や工期等の約束に違反するような行為を指します。
財産的基礎がある
特定建設業許可を得るための財産的基礎の要件は以下の4つで、すべて満たさなければなりません。
基本的に、これらの要件は、特定許可申請を行う直前の決算により判断されます。
- 欠損の金額が資本金の20%を超えていない
- 資本金が2,000万円以上である
- 自己資本の金額が4,000万円以上である
- 流動比率が70%以上である
欠格要件に該当しない
欠格要件とは、以下の要件を指します。
- 暴力団の構成員ではない
- 破産者ではない
- 認知能力に問題がない
上記の内容を誓約書で証明する必要があります。
社会保険に加入している
2020年、改正建設業法が施行によって社会保険への加入が義務化され、社会保険に加入しなければ建設業許可の申請ができなくなりました。
ただし、事業者の規模や労働者の数・形態によって、対象となる社会保険の種類が異なります。
たとえば、従業員が4人までの個人事業主であれば、雇用保険への加入は義務ですが、社会保険の健康保険ではなく、国民健康保険への加入で問題ありません。
ただし、建設業許可は定期的な更新が必要であり、社会保険に未加入の場合は、事業継続が難しくなる可能性があります。
特定建設業許可を取得するメリット
特定建設業許可を取得するとさまざまなメリットがあります。
まず、取得するとより大きな案件を獲得できるようになるため、積極的に営業活動でさらなる事業の拡大を目指せるでしょう。
また、特定建設業には高い技術力や財務基盤が求められるため、取得すると社会的信用を得られます。
さらに、社会的信用が高まると、金融機関からの融資も受けやすくなるでしょう。
特定建設業者に課せられる義務
建設業の許可を受けた事業者は、大きな工事を受注できます。
その反面で、一般建設業と特定建設業で異なる義務が課せられます。
一般建設業に課せられる義務は、以下のとおりです。
- 変更の届出
- 標識の掲示
- 帳簿の備付・保存
- 営業に関する図書の保存
- 契約締結
- 工事現場の施工体制
- 一括下請の禁止
- 下請代金支払
特定建設業者は、一般建設業者に課せられる義務に加えて4つの義務が課せられます。
施工体制台帳の作成
特定建設業に該当する業者が仕事を下請に出すときは、施工体制台帳を作成し、工事現場ごとに置く必要があります。
施工体制台帳に記載する事項は以下のとおりです。
- 工事にかかわるすべての業者名
- 工事の内容
- 工期
下請負業者への指導
特定建設業者は、工事に関わるすべての下請業者に法令順守指導を実施する必要があります。
下請だけに関わらず、下請の下請である孫請業者にも指導しなければなりません。
法令に違反したときには違反の是正指導、是正されないときは許可行政庁への通報までの義務が課せられます。
特定建設業者の下請代金に関する特例
特定建設業者は下請代金を引渡し申し出があった日から50日以内に支払わなければなりません。
特定建設業者は、以下のどちらか早い期日で支払う必要があります。
- 発注者から請負代金の支払いがあった時から1カ月以内(一般建設業者の義務)
- 引渡しの申し出から50日以内(特定建設業者の特例)
監理技術者の設置義務
特定建設業に該当する場合、工事現場に施工管理を行う監理技術者を常駐させなければなりません。
特定建設業と一般建設業の違い
特定建設業と一般建設業との違いは、下請けに出す建設業者が発注者から直接工事を請け負っている「元請」であるか否かです。
発注者から注文を受けて自ら施工する場合は、一般・特定どちらでも制限はありません。
また、下請として請け負っている場合も特定建設業の許可を取得する必要はありません。
許可される工事の違い
では、一般建設業許可で実施可能な工事は、以下の通りです。
- 元請ではなく、下請で工事を請負う
- 元請で工事をするが、下請けに出さず自社ですべて施工する
- 元請であり、下請けに出す場合でも1件の工事代金が4,000万円未満(建築一式工事の場合は6,000万円未満)
許可要件や義務の違い
取りたい許可が一般建設業者か特定建設業者かによって、要件や取得後の義務にも違いがあります。
ここでは、特定建設業許可でみられる違いを表で確認してみましょう。
一般建設業許可 | 特定建設業許可 | |
---|---|---|
元請として請け負った工事を自社で施工 | 制限なし | 制限なし |
元請として請け負った工事を下請に出す場合の工事代金 | 4,000万円未満 (建築一式工事は6,000万円未満) |
制限なし |
専任技術者の要件 | 資格や経験などの要件 | 一般建設業より厳しく設定 |
財産的基礎要件 | 自己資本金額などの要件 | 一般建設業より厳しく設定 |
建設業者に課せられる義務 | 届出の義務等6つの義務 | 一般建設業者の義務+3つの義務 |
社会保険への加入義務 | 適切な社会保険に加入している | 適切な社会保険に加入している |
まとめ
特定建設業許可は要件が厳しい分、取得すると大規模工事を獲得できたり、社会的信用が向上したりするメリットがあります。
また、取得するにはさまざまな要件を満たす必要があり、内容も少し複雑です。
要件をきちんと満たしているか確認したい、手続きに不安があり代行してほしい方は、行政書士など専門家への相談をおすすめします。
適切なサポートを受けられ、よりスムーズに手続きを進められるでしょう。