この記事でわかること
- 建建設業法が2022年から2024年にかけて改正されることがわかる
- 建設業法について企業や経営者として知っておくべきことがわかる
- 建設業法に違反した時の罰則について知ることができる
建設業法は、建設業に携わるすべての人に関わる、極めて重要な法律です。
この建設業法が2022年から2024年にかけて、いくつかの改正が行われます。
この改正は、多くの建設業者に直接関係するものであり、他人事ではない方も多くいます。
どのような改正が行われるのか、その内容について確認するとともに、違反した時の罰則についても知っておきましょう。
建設業法とは
建設業法とは、建設業に関わるあらゆるルールを定めた法律です。
建設業界に関わる問題は数多くあります。
違法建築、過重労働、人手不足、下請けへの圧力などはその典型的なものであり、他にも様々な問題が生じる可能性があります。
これらの問題は、どれか1つを解決すればいいというわけではなく、複合的に解決しなければなりません。
建設業法は、建設工事の適正な施工、発注者の保護、建設業の健全な発展といった目的があります。
そして、その目的を達成するために、様々なルールを定めています。
【2022~2024年】建設業法の改正内容
建設業界を取り巻く環境が日々変化する中で、2022年から2024年にかけて様々な改正が行われる予定となっています。
どのような改正が実施されるのか、その内容を確認しておきましょう。
電子帳簿保存法の施行
2022年に電子帳簿保存法が施行されました。
これまで書面でやり取りが行われていたものについて、新たに電子取引が導入されるきっかけとなることが予想されます。
電子帳簿保存法のポイントは、法人税や所得税、消費税などに関わるを電子的に保管しておくことが義務化されることです。
これまではメールなどで受領した請求書や領収書を、印刷した上で書面を保存しておくことが認められていました。
しかし、電子帳簿保存法が施行されると、メールで受け取ったデータはそのまま電子的に保存しておくことが求められます。
これまでほとんど電子取引を行っていなかった事業者も、今後は電子取引が増えることが予想されます。
そのため、電子帳簿の保存に対応できるような環境を整える必要があります。
インボイス制度の開始
インボイス制度が2023年10月から導入されます。
インボイス制度とは、適格請求書を発行する事業者から仕入を行わないと、仕入れ税額控除が受けられなくなる制度です。
仕入れ税額控除の適用が受けられない場合、消費税の負担が増えてしまいます。
1年間の売上高が1,000万円以下の小規模な事業者の場合、消費税の納税義務はありません。
インボイス制度が導入されても、引き続き消費税を納税しない選択をすることはできます。
ただしこの場合、適格請求書を発行する事業者になることはできないため、取引先の消費税は増えてしまいます。
そこで、取引先からインボイスの登録事業者になることを求められるケースも考えられます。
インボイス制度の導入は、これまで消費税の納税義務がなかった小規模な事業者の収益に直結する問題です。
インボイス制度の登録事業者になるかどうか、最終的には事業者自身で判断しなければなりません。
もし登録事業者になるのであれば準備も必要なため、並行して進めるようにしましょう。
時間外労働の割増率の引き上げ
2019年に働き方改革関連法が施行され、長時間労働の抑制や休日の確保といった課題への対応が進められています。
その中で、月60時間を超える時間外労働を行った場合、時間外手当として支給される割増賃金の率が引き上げられました。
それまでは、所定労働時間を超えた場合の割増率は、時間数にかかわらず一律25%とされていました。
しかし、一定の規模以上の大企業については、月60時間を超える時間外労働について50%に変更されました。
ただ、この段階で中小企業は適用が猶予され、以前と変わらず一律25%の割増率が適用されていました。
しかし、2023年3月に猶予措置が終了し、4月からは中小企業も月60時間を超える時間外労働は50%の割増率が適用されます。
この変更により、人件費の負担が増えることが予想されるため、対策を講じる必要があります。
時間外労働の上限規制
建設業は以前から、長時間労働や休日の取りづらさが問題とされていました。
働き方改革によりそれらを改善しようとする動きはありましたが、すぐには対応できないという実態もあります。
そこで、猶予措置により、建設業については時間外労働の上限が適用されてきませんでした。
ただし、2024年4月からはこの猶予措置が撤廃されます。
すると、月100時間未満、年間720時間以内という上限が設けられることとなります。
この上限を超えて働かせることはできないので、何らかの対策が必要となります。
建設業法で企業・経営者が知っておくべきこと
改正の有無にかかわらず、建設業界に携わる方が知っておくべき建設業法の内容があります。
特に重要なポイントを確認しておきましょう。
建設業許可
建設業を営む場合、一定以上の規模の工事を行うには建設業許可が必要となります。
建設業法3条は、その建設業許可に関する規定となっています。
1件あたりの請負代金が500万円未満の工事については、軽微な工事として建設業許可がなくても請け負うことができます。
また、建築一式工事で請負代金が1,500万円未満、または延べ面積が150㎡未満の木造住宅工事も建設業許可は必要ありません。
これら以外の工事を行う場合は、建設業許可が必要です。
建設工事の請負契約の内容
建設業法19条には、建設工事にあたって対等な立場で請負契約を締結するとともに、その記載内容を定めています。
契約書の記載事項は、以下のとおりです。
- 工事内容
- 請負代金の額
- 工期
- 支払時期と支払方法
- 工事を施工しない日や時間の定め
- 損害賠償の定め
- 紛争の解決方法
建設工事の見積り
建設業法20条は、建設工事の請負契約を締結する際に、見積もりを行うように努めることを明記しています。
この見積りでは、工事の種別ごとに材料費や労務費、その他の経費の内訳を明らかにしなければなりません。
工事を発注する人は条件を提示し、見積りの作成に必要な時間を設けなければなりません。
また、見積もりを作成する事業者は、契約締結までに見積書を作成・交付しなければなりません。
主任技術者と監理技術者の設置
建設業者は、工事の技術管理を行うため、工事現場に必ず主任技術者を設置しなければなりません。
また、請負金額が一定金額以上となる場合には、監理技術者を設置する必要があります。
これらの規定は、建設業法26条に設けられています。
建設業法違反時の罰則
建設業法には、建設業者が守るべき様々なルールが定められています。
これらのルールを守らなかった場合には、罰則が設けられているものもあります。
具体的にどのような違反をすると、どのような罰則が科されるのか、確認しておきましょう。
無許可で建設業を営んだ場合
建設業法には、建設業許可を取得しなければならない建設工事についての規定が設けられています。
その規定に違反すると無許可で建設業を営んだものとされ、罰則が科されることとなります。
無許可で建設業を営んだ場合、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科されます。
無許可とは、もともと建設業許可を取得していなかった場合だけが該当するわけではありません。
以下のような場合にも、無許可となってしまうことがあります。
- 建設業許可の更新をしなかった場合
- 営業停止処分を受けた場合
- 建設業許可の業種が違う場合
提出した書類に虚偽があった場合
建設業許可を取得する際、様々な書類を作成し、国土交通大臣や都道府県知事に提出しなければなりません。
建設業許可を取得するためには様々な要件があるため、その要件を満たすことを明らかにする必要があります。
しかし、提出する書類の中に虚偽の内容があった場合、その提出者には罰則が科されます。
この場合、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることとなります。
必要な技術者を設置しなかった場合
建設工事の現場には、必ず主任技術者を配置することが定められています。
また、規模の大きな工事現場には、主任技術者の上位に位置する者として監理技術者を設置することが義務づけられています。
これらの技術者を設置しなかった場合、建設業法違反として罰則が科されます。
技術者を配置しなかった場合には、100万円以下の罰金とされています。
まとめ
建設業界は景気変動の影響を受けやすく、忙しい時に長時間労働になるのも仕方がないと考える方も依然多いでしょう。
しかし、働き方改革といった動きに対応しなければ、労働者を確保できないばかりか、法令違反が問われることも考えられます。
まずは、これからの法改正に対応することを最優先に進めていきましょう。
また、電子取引などを導入することで、より効率的な経営ができるため、そのための準備も行うことをおすすめします。