この記事でわかること
- 労働安全書類(グリーンファイル)とは何か
- 関係会社や人員に関する書類の内容
- 機材等に関する書類の書き方
建設業を営む会社は、さまざまな書類の作成を義務付けられます。
そのような書類の1つとして挙げられるのが、グリーンファイルです。
グリーンファイルは、下請会社から元請会社へ提出する必要があり、建設工事を行うにあたって非常に重要な書類です。
この記事では、グリーンファイルについて紹介します。
グリーンファイルの概要や書類の種類、グリーンサイトとの違いなども詳しく解説するためぜひ参考にしてください。
労務安全書類(グリーンファイル)とは
グリーンファイルとは、建設工事を行うにあたって、下請会社から元請会社へ提出する労務安全書類の一式です。
建設現場では多くの下請業者が作業を行うため、元請会社は、建設現場の安全管理体制を構築しなければなりません。
つまり、元請会社は、下請会社の安全管理に関する内容や作業内容、作業員の体制などをしっかり把握しておく必要があります。
そのため建設業法では、上記を証するグリーンファイルの作成と提出が義務付けられています。
グリーンファイルはどの建設現場でも着工前に提出が必要で、仮に着工後に書類内容に差異が生じた際は、作り直して再提出が必要です。
また、グリーンファイルを作成した業者は、5年間の保管が義務付けられています。
グリーンサイトとグリーンファイルの違いは?
グリーンファイルと似た言葉に「グリーンサイト」があります。
グリーンファイルは労務安全書類ですが、グリーンサイトはグリーンファイルをインターネット上で作成・提出・確認できるシステムです。
グリーンサイトを利用すると、インターネット環境があればどこでも書類を作成・提出でき、元請会社もどこでも受領や確認ができます。
また、グリーンサイトは書類印刷が不要なため、コストを低減でき、作業効率の向上を実現できます。
関係会社・人員に関する4つの安全書類
まずは下請業者などの関係会社や、現場で働く人に関する以下の書類を紹介します。
- 再下請負通知書
- 下請負業者編成表
- 作業員名簿
- 外国人建設就労者現場入場届出書
それぞれの書類の書き方や、提出先について解説します。
再下請負通知書
再下請負通知書は、一次下請以下の下請契約について、元請業者に報告する書類です。
元請業者が工事に関わるすべての下請業者や、どのような工事が行われているのかを把握するために、再下請負通知書は必要です。
資材や材料の仕入業者や、測量業者などの項目は記載する必要がありません。
下請業者は、現場ごとに作成するケースが一般的です。
なお、自社より下位の下請業者との契約をしない場合には、作成する必要はありません。
下請業者との契約を締結したら、工事着工前に元請業者に提出します。
二次下請に対する一次下請のように契約をした上位事業者に提出する場合や、その工事の元請業者に提出する場合があります。
元請事業者や上位事業者に確認して、提出先を間違えないようにしましょう。
下請負業者編成表
下請負業者編成表は、工事に関わる全ての会社や事業者を一覧にした表です。
一次下請の事業者が、二次下請以下の事業者についてすべて記載し、元請業者に提出します。
したがって、二次下請以下の会社はこの書類を作成する必要はありません。
また、一次下請にあたる場合でも、二次下請以下の業者がいなければ、作成せずに済みます。
すべての下請業者が作成しなければならない「再下請負通知書」に書かれた内容を見ながら作成すれば、問題なく作成できるでしょう。
そのため、再下請負通知書は早めに提出してもらい、元請業者に直接提出せずに一次下請で取りまとめてください。
作業員名簿
作業員名簿は、元請業者が作業員の雇用状況の管理を把握するために必要な書類です。
工事現場に従事する作業員の氏名や住所、雇入された日などを、作業員名簿に記載します。
一次下請以下のすべての事業者が作業員名簿を作成し、元請業者に提出しなければなりません。
添付する書類は、記載した内容を証明する資格証明書や免許のコピーです。
また、18歳未満を作業員としている場合、年齢証明書を添付する必要があります。
なお、作業員が後日追加になった場合、増えた人だけを記載した作業員名簿を作成し、提出してください。
外国人建設就労者現場入場届出書
外国人建設就労者現場入場届出書は、外国人建設就労者が現場に入場するために必要な書類です。
外国人建設就労者とは、もともと技能実習生として日本に来て、技能実習に従事した経験のある人を指します。
たとえば、技能実習後にそのまま日本に残って建設業務にあたる人や、いったん帰国した後に再び日本で建設業務にあたる人です。
なお、現在技能実習生に該当する人や、日本に永住している外国人は、外国人建設就労者ではありません。
一次下請以下のすべての業者が、外国人建設就労者現場入場届出書を作成する必要があります。
外国人建設就労者現場入場届出書は、直接請負契約を締結している元請業者に提出します。
機材等に関する5つの安全書類
建設業を営む会社や事業者は、工事現場で使用する機材・道具の安全管理に関わる以下の書類を作成しなければなりません。
- 持込機械等(移動式クレーン・車両建設機械等)使用届
- 工事・通勤用車両届
- 火気使用届
- 持込機械等(電気工具・電気溶接機等)使用届
- 安全衛生計画書
それぞれの書類の書き方や、提出先について解説します。
持込機械等(移動式クレーン・車両建設機械等)使用届
持込機械等(移動式クレーン・車両建設機械等)使用届は、工事現場で使用する移動式クレーンや、建設機械などの重機を管理するための書類です。
重機を使用する事業者が、それぞれ自社の状況を記載します。
他のグリーンファイルとは異なり、持込機械等(移動式クレーン・車両建設機械等)使用届は、重機を使用するたびに提出しなければなりません。
また、車検証や検査票、任意保険証などのコピーを添付する必要があります。
工事・通勤用車両届
工事・通勤用車両届は、工事現場に出入りする車両の使用者を明らかにするための書類です。
持込機械等(移動式クレーン・車両建設機械等)使用届に記載する車両と異なる部分には、通勤用や資材運搬の車両を記載します。
工事・通勤用車両届は、現場以外の行動で事故が発生した場合に、責任の所在を明らかにする役割があります。
記載する内容は、車両の運転者の氏名や住所、免許の種類、車両の番号や車検の期間などです。
通勤や現場への出入りに使う車両はすべて1台ごとに作成しなければなりません。
それぞれの下請業者が作成し、元請業者に提出します。
火気使用届
火気使用届は、工事現場での溶接や溶断といった火気についての書類です。
溶接や溶断、圧接など火を使って行われる工事は危険性が高く、より高度な安全管理が求められるためです。
なお、工事に使うだけでなく、暖房や炊事などに火気を使う場合も、同じように安全管理が必要です。
二次下請、三次下請の場合は、作成した書類を一次下請の会社に提出します。
その後、一次下請の会社がまとめて元請業者に提出します。
持込機械等(電気工具・電気溶接機等)使用届
持込機械等(電気工具・電気溶接機等)使用届は、機械の使用者と点検について記載する書類です。
一次下請以下の事業者が電動工具を使用する場合、使用届に使用する機械を1台ずつ記載します。
仮に機械を借りている場合も、機械の使用者が届け出なければなりません。
各下請業者がそれぞれの内容を記載し、元請業者に提出します。
安全衛生計画書
安全衛生計画書は、工事現場での安全管理を行うための目標や、どのような安全指導を行っていくのか、スケジュールなどを記載した書類です。
安全衛生目標は具体的な数値を記載し、安全に対する取り組みを明確にしましょう。
多くの下請業者が同じ現場で作業する場合、一次下請の業者が作成するケースが一般的です。
とはいえ、元請業者が各下請業者に作成を求める場合もあります。
作成を求められた場合、各下請業者が別々に作成し、元請業者に提出します。
引用元:国土交通省
その他の安全書類
その他の安全書類と概要は、以下の通りです。
安全書類 | 概要 |
---|---|
安全ミーティング報告書 | 建設現場で起こり得る危険を洗い出し、対策をまとめた書類 |
新規入場時等教育実施報告書 | 建設現場に入る作業員が安全衛生教育を受けた旨を報告する書類 |
有機溶剤・特定化学物質等持込使用届 | 有機溶剤などの危険物や有害物を使用する際に提出する書類 |
年少者就労報告書 | 18歳未満の作業員が建設現場で就労する際に提出する書類 |
高齢者就労報告書 | 高齢者(60歳または65歳以上)の作業員が建設現場で就労する際に提出する書類 |
労務・安全衛生管理事項引受確約 | 元請会社の指示に従う旨を確約するための書類 |
労働基準監督署提出書類報告書 | 労働基準監督署へ必要書類の提出が完了した旨を証明するための書類 |
安全帯使用の確約書 | 高所作業がある場合に安全帯を使用する旨を約束するための書類 |
脚立単独使用の確約書 | 脚立の単独使用がある場合に作業員に指導を行ったうえで使用する旨を約束するための書類 |
有資格者一覧 | 建設現場に入る作業員の資格をまとめた書類 |
建設現場によっては他の安全書類が必要になるため、必要に応じて作成し提出します。
まとめ
現場での作業だけでなく、元請業者などへの書類の作成も、建設業を営む事業者の仕事です。
労務安全書類の作成を怠ると、工事現場への出入りができなくなったり、今後の仕事ができなくなったりします。
その結果、今後の事業の継続が難しくなる恐れがあります。
現場での作業だけでなく、書類の作成にも時間と労力をかけましょう。