最終更新日:2019/12/20
事業計画書作成に必須!「損益計画」と「資金繰り計画」の違いを解説
事業計画書とは文字通り事業に関する計画を記載した書類のことです。
創業後に銀行などに融資申し込みをする際に提出が求められることが多く、融資審査の可否を左右する大切な書類です。
融資申し込みをしない場合でも、きちんとした事業計画をたてるのはおすすめです。
いくら才があっても、無計画では上手くいくものも上手くいきません。
事業計画をたてておけば、将来の見通しが立ちやすくなり、これからの経営をスムーズにしてくれます。
事業計画をたてるときには、「損益計画」と「資金繰り計画」の2つにわけて考えるとわかりやすいです。
事業計画書の作成に必須な「損益計画」と「資金繰り計画」の違いを、詳しく解説します。
事業計画書とは
事業計画書とは、事業の内容や経営戦略、収益の見込みなどの事業計画を説明するための書類です。
事業を立ち上げたり継続したりするには、銀行などの金融機関からの融資が欠かせません。
ほとんどの融資では事業計画書の提出が求められ、融資審査では特に重視されています。
審査に通って無事融資を受けられるかどうかは、事業計画書の出来で決まるといっても過言ではないほどです。
融資を受けない場合でも、事業計画書を作ってみることには大きな意義があります。
事業計画書を作ることで、事業を客観的に見つめなおし、改善点に気付くことができるのです。
事業計画書にはなにを書けばいいの?
事業計画書には、事業の内容や今後の見通しなどを詳細に記載します。
これまでの取引履歴などを参考にできる限り具体的な数字を使い、客観的に信用できる内容に仕上げることが大切です。
事業計画書はこれからの事業展開を示すものですから、熱意をもって書くことも重要です。
事業計画書には、基本的に次のような事項を記載します。
- ・創業者の経歴
- ・事業の概要
- ・理念
- ・自社の強みやアピールポイント
- ・市場の状況や同業他社との競合状況
- ・販売戦略
- ・仕入れ先や卸先などの取引状況
- ・生産方法
- ・収益の予想
- ・損益計算の予測
- ・必要な資金
金融機関の融資に際して事業計画書を作成する場合は、金融機関ごとにフォーマットがあるケースが多いのでそれに従って書きましょう。
損益計画とは
損益計画とは、これから行おうとしている事業による収益と費用と利益を計画することです。
予定している事業にはどのくらいの費用が必要で、どのくらいの収益が見込め、そのうち利益はどのくらいになるのかという計画と見通しは、健全な経営には欠かせません。
損益計画の考え方
損益計画では、売上高(収益)から税金を差し引いた後の利益までを計画します。
大きくわけて、次の3つの項目から構成して計画をたてていきます。
- ・収益:売上高
- ・費用:売上原価・販売費・一般管理費・営業外費用
- ・利益:売上総利益・営業利益・経常利益・営業外収益・税引後利益
それぞれの利益や収益が、次の計算式で求めることができます。
- ・売上総利益=売上高-売上原価(仕入れ値)
- ・営業利益=売上高-売上原価-(販売費+一般管理費)
- ・経常利益=売上高-売上原価-(販売費+一般管理費)-営業外損益
- ・税引後利益=売上高-売上原価-(販売費+一般管理費)-営業外損益-法人税等
なかでも、売上高・売上総利益・営業利益は適切な損益計画書を作る上にとても大切です。
3つの項目をひとつずつ詳しくみていきましょう。
売上高
売上高を正しく見込めるかどうかが、適切な事業計画をたてることができるかどうかのカギになります。
楽観的に計画すると資金繰りが不健全になります。
客観的な数字を参考に、注意してできるだけ正しい売上高見込みをだしましょう。
少なく保守的に見積もった方が、今後の経営は楽になります。
売上高を考えるときには、取引先ごとに細かく数字を積み上げていくのがおすすめです。
たとえば、大雑把に「これまで毎月10万円くらい売れているから、今後の成長を見越して15万円!」ではいけません。
「A社は月5万円、B社は月6万円。B社からは他の商品の見積もり依頼が来ていて新製品のプレゼンをする予定もあり、取引額も増えていくだろう。
A社は新店舗開店が控えてる。A社月6万円、B社月8万円、あわせて14万円の売上高が見込める。」という具合に、取引先ごとに計画するとより正確な損益計画になります。
小売業など特定の取引先がない場合には、まずは広告宣伝や販売ルートの新規開拓など、売上高アップのための行動計画を立て、それぞれの計画事に売上高を予測しましょう。
一般的に、開業1年目は知名度不足などにより売上高が伸び悩みます。
経営が順調なら2年目3年目と少しずつ売上高はアップするものですが、突然倍まで増えたりすることは稀です。
じわじわと右肩上がりで計算すると、現実的な売上高見込みになります。
売上総利益
売上総利益とは生じる利益のことで、仕入れ値と売値の差から算出します。
たとえば100円で仕入れた商品を200円で販売した場合、売上総利益は100円、利益率は50%となります。
損益計画で売上総利益を予測する際には、この利益率を売上見込み数にかけて求めます。
流行の移り変わりが激しい業界や競合相手が多い業界など、特に価格競争が激しい業界ではできるだけ抑え目に計画する方が現実的です。
途中で業界全体の相場価格が下落したりブームが去ってしまったりした場合、利益率が大きく下がり、計画がとん挫する可能性が高いです。
注意しましょう。
商品によって利益率が異なるかと思いますが、その場合は商品ごとに計画をたてます。
売上総利益がもっとも大きな商品を主力とした販売戦略をたてるのが合理的です。
営業利益
営業利益とは、売上総利益から諸経費を差し引いた利益のことを指します。
この諸経費とは販売費や一般管理費と呼ばれるものを意味し、人件費や家賃などは含みません。
また借入金の支払利息も経費には含まれず、営業利益から支払利息を差し引いたものが元金の返済財源となります。
そのため営業利益がマイナスだと借入金の返済が難しくなるため、営業利益は健全な経営の指標といえます。
営業利益がマイナスの場合、融資審査で併催見込みがないと判断されるおそれが高いです。
資金繰り計画とは
資金繰りとは会社に入ってくるお金を管理し、コントロールする計画ことです。
資金繰りをしっかり行う計画をたてることで事業資金の流れを把握し、支払いをスムーズに行うことができます。
資金繰りが滞ると、支払いのためのお金を用意できなくなって不渡りを出してしまったり、取引先の信用を失ったりします。
使えるお金がなければ事業を継続することも難しくなり、倒産のおそれもでてきます。
資金繰り計画は経営者にとってとても重要な業務であり、おろそかにすることは許されません。
資金繰りの考え方
「資金繰り計画はお金をコントロールする計画のこと」と簡単に言いましたが、会社が扱う金額は莫大です。
おこづかいならまだしも、大金を管理することはなかなかできません。
そこで、事業の資金繰り計画は次の3つに分けて考えるのがおすすめです。
- ・運転資金
- ・設備資金
- ・赤字資金
ひとつずつ詳しくみていきましょう。
運転資金
「運転資金」はなにかとよく耳にする言葉のため、よくわかっているという方も多いかと思います。
しかし突き詰めて考えてみるとぼんやりとしたイメージしか掴めていない場合もよくあるので、よくわかっている方もぜひ一緒におさらいしておきましょう。
運転資金とは事業を行うのに必要な資金のことです。
平たく言うと仕入れた商品を販売して現金化するまでに必要なお金のことです。
商品を仕入れて代金を支払うと、商品が売れてお客さんから代金をいただくまで手元の現金が減ります。
この仕入れから現金化までの間の資金となるのが運転資金です。
経営が軌道にのった後であれば、すでに現金化できたストックがあるため、運転資金を自己資金で賄うことができます。
しかし創業間もない会社や経営が傾いている会社の場合、自己資金では苦しいケースが珍しくありません。
そのような場合は金融機関からの融資を検討し、運転資金を確保することになります。
設備資金
運転資金と並んで、事業の継続と発展に欠かせないのがこの設備資金です。
設備資金とは新しい機械や店舗の改修など、事業に必要な設備を購入するための資金のことです。
技術の発展は日進月歩で、新しい機械にかえるだけで生産効率が格段にアップすることもあります。
生産効率が上がれば人件費など経費を削減することができ、より多くの利益を生み出せるかもしれません。
事業を継続し、ゆくゆくは発展させたいのなら、設備資金も十分に確保すべきです。
しかし、あまり設備にばかりお金を割くのもよくありません。
新しい設備を導入する前に、費用対効果をよく検討しましょう。
赤字資金
赤字資金とは、赤字を補填するための資金ことです。
赤字のときには、この赤字資金から事業に必要なお金をだしていくことになります。
ときどき、「これまでずっと黒字だから赤字資金は少なくていい」という男気溢れる経営者の方がいます。
たしかにずっと黒字経営を続けているのなら赤字資金が無駄に思えるものわかりますし、これからも黒字が続くのが理想です。
しかし、経営にはなにがあるかわからないもの。
ある日大きな地震が来て社屋が倒壊し、建て直しの費用がかさむかもしれません。
突然大口の取引先が倒産し、仕事が入ってこなくなるかもしれません。
事業を行っている以上、赤字の可能性も常に頭におき、赤字資金をしっかりと確保しておきましょう。
運転資金・設備資金・赤字資金は財源が違う
ここまでのお話しで、わざわざ分けて計画をたてなくても、運転資金と設備資金と赤字資金の3つを賄えるだけのお金を用意できる計画であればそれでいいのではないかと思った方もいるかもしれません。
しかし、それでは適切な経営はできません。
なぜなら、運転資金・設備資金・赤字資金はそれぞれ財源が異なるのです。
運転資金は事業を行う上で必要な資金ですから、金融機関からの融資と返済を繰り返し、安定させていくことになります。
これに対し、設備資金と赤字資金は将来の利益から返済していく借入金のようなものです。
財源の異なる3つを常に確保するためには、設備資金と赤字資金がいくら必要で、事業からどのくらいの利益が見込め、どのくらいの返済額ならやっていけるのかを認識できるような計画をたてる必要があるのです。
その上で、状況に応じた運転資金の融資を受ける必要があります。
損益計画と資金繰りの違い
簡単に言えば、損益計画はこれからの利益の見込みであり、資金繰りは今後の資金の計画です。
損益計画と資金繰りはまったく違うもののため、2つの結果も異なる場合がよくあります。
たとえば損益計画では1,000万円の利益が見込める計画なのに、資金繰りではその仕入れのお金が足りないというように、計画を実行するだけの資金が手元にないことなどがあるのです。
この差異を回避するためには、在庫・売掛金・買掛金を上手く考える必要があります。
在庫の考え方
在庫は正確に把握し、決算書に正しく反映させましょう。
在庫は現金化できていない商品のため、多くの在庫を抱えるのは得策ではありません。
倉庫などの保管にかかる経費がかさみますし、古い在庫は破棄せざるを得ないこともあります。
また在庫が多いということは無駄な発注が多いということでもあります。
在庫を正確に把握することで、経費の削減と無駄のない発注が可能になり、現金化までの期間を短くすることができます。
売掛金の考え方
売掛金の未回収残高も、正確に把握することが大切です。
本来はすでに現金化できている売上が手元に入っていないのは、健全ではありません。
場合によっては弁護士などの専門家を入れて請求し、きちんと回収するように努めましょう。
買掛金の考え方
買掛金の債務は運転資金を圧迫します。
できるだけ売掛金の回収時期と買掛金の支払い時期を合わせることで、運転資金を少なくすることができます。
まとめ
事業計画書を作る際には、損益計画と資金繰り計画をたてる必要があります。
この2つは事業を継続し発展させていくためにとても重要です。
損益計画とは、これから行おうとしている事業による収益と費用と利益がどのくらいのものなのかを計画することです。
一方、資金繰りとは会社に入ってくるお金を管理し、コントロールする計画ことです。
2つはまったく違うものなので、別々に計画をたてましょう。