最終更新日:2022/6/7
サラリーマンでも確定申告が必要なケースは?必要書類と合わせて解説
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- サラリーマンでも確定申告が必要となるケースがわかる
- 確定申告すると得するケースがわかる
- サラリーマンの確定申告に必要な書類がわかる
確定申告とは、1年間(1/1~12/31)の所得と所得税について、税務署へ申告を行い、所得税を納付する手続です。
サラリーマンの場合、通常は勤務先の会社が申告・納税を行ってくれるので、自分自身で確定申告を行う必要はありません。
所得税は会社に源泉徴収されますので、年末に「年末調整」行うくらいで、所得税の納税手続きが完了します。
ですから、ほとんどのサラリーマンは年末調整していれば、確定申告は必要ありませんが、一部のサラリーマンは確定申告が必要になるケースがあります。
ここでは、サラリーマンでも確定申告が必要になるケースと、確定申告のために必要となる書類にはどんなものがあるか解説していきたいと思います。
また、合わせて確定申告すると得するケースも紹介します。
サラリーマンで確定申告が必要なケースとは
通常の場合、サラリーマンは確定申告する必要はありません。
ですが、下記のようなケースに該当する場合、その年度の確定申告が必要となりますので、ご注意ください。
(1) 不動産を売却した場合
不動産を売却して利益を得た場合、譲渡所得として確定申告する必要があります。
不動産売却による譲渡所得は、分離課税の対象となります。
分離課税とは、他の所得と合算せずに、単独で税額を計算する課税方式です。
ですから、不動産売却で得た所得の他に赤字となった所得がある場合でも、損益通算することはできません。
ただし、複数の不動産を売却して、1つは黒字、他方は赤字となったような場合は、利益と損失を相殺することが可能です。
ちなみに、売却した不動産が自宅(住んでいた家や土地)であっても確定申告は必要ですが、譲渡益(売却した時の利益)が3千万円までは税金がかからないという特例を利用することができます。
(2) 相続した家を売却した場合
不動産を売却した時と同様ではありますが、売却した不動産が「相続した家や敷地」の場合、確定申告することによって特別控除を受けられる場合があります。
親などの被相続人(死亡した人)の居住用家屋または居住用家屋の敷地を相続した場合、平成28年4月1日から令和5年12月31日までの間に売却し、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得から最大で3千万円までの特別控除を受けることができます。
これを、「空き家(被相続人の居住用財産)に係る譲渡所得の特別控除の特例」といいます。
尚、期間に関しては延長されることもありますので、利用の際にはご確認ください。
(3) 株取引等で特定口座を指定していない場合
株取引によって得た利益の場合、分離課税され、サラリーマンの給料とは別に税金が課されます。
ですから、基本的に株取引で利益を得た場合は、確定申告が必要となりますが、特定口座を開設して取引している場合は、申告の必要がありません。
特定口座とは、株取引にかかる税金が証券会社によって源泉徴収される口座です。
逆に、源泉徴収されない口座は、簡易申告口座と呼ばれます。
株取引に際し、証券会社に特定口座を開設していない場合は、確定申告が必要となります。
(4) 投資信託を売却した場合
投資信託の売却を行った場合、ほとんどのケースで源泉徴収されますので、確定申告の必要はありませんが、「株式型」の場合、利益が出たときは20%の税金がかかりますので、確定申告が必要です。
ただし、源泉徴収ありの特定口座での取引の場合は、確定申告の必要はありません。
(5) 保険の満期金を受け取った場合
保険の満期によって受け取った保険金は、一時所得として確定申告が必要です。
所得税が課されるのは、保険料の負担者と保険金受取人が同じ場合です。
また、受け取った保険金すべてに課税されるわけではありませんので、払い込んだ保険料が多い場合などは、課税されないこともあります。
(6) 贈与を受けた場合
祖父母や親から1年間に110万円を超える金額を贈与された場合は、贈与税として確定申告が必要です。
110万円というのは、基礎控除額です。
ですから、年間110万円以内の贈与の場合、贈与税はかかりません。
また、一時に多額の贈与を受ける場合は、「相続時精算課税制度」を利用することができます。
この場合、贈与時点では2,500万円まで贈与税は非課税となり、相続時に贈与された金額が相続税の課税額に加算されます。
(7) 副業所得が20万円を超えた場合
副業禁止の会社もありますが、サラリーマンで副業による所得がある場合は、確定申告が必要です。
所得税は、勤務している会社の給与所得だけではなく、合計所得額に対して課税されるためです。
ただ副業所得が年間20万円以内となる場合、確定申告は必要ありません。
確定申告をすると得になるケースも
ここでは、確定申告することで控除を受けられ、得となるケースをご紹介します。
(1) 年末調整で控除書類を出せなかった場合
会社では年末調整の書類提出期限があります。
この提出期限に、書類の発行が間に合わなかったり、提出を忘れてしまったりした場合でも、自分で確定申告すれば、控除を受けられます。
確定申告の際には、会社から受け取った源泉徴収票に記載の源泉徴収額を把握し、控除書類を添付することが必要です。
(2) 年末調整の後に結婚した場合
会社の年末調整の締め切り後に結婚した場合は、扶養控除や配偶者控除を受けられる可能性があります。
ただし結婚相手が、扶養控除の対象にならなければいけませんので、給与所得が130万円以上とならないことが条件となります。
このような場合の確定申告の際には、特に書類を準備する必要はありません。
(3) 住宅ローンを組んだ場合
住宅ローン控除を受けられる可能性があります。
確定申告する場合は、住宅ローンに関する各種書類が必要となりますので、準備しましょう。
また、住宅ローン控除を受けるための確定申告は、1年目に行えば2年目以降は年末調整の対象となりますので、自身で確定申告する必要はありません。
(4) 住宅を売却して損をした場合
住宅を売却しても、ローンが残って損をしたというようなときは、控除を受けられる可能性がありますが、控除を受けるためには、以下の条件を満たす必要があります。
- ・住宅の所有期間が5年以上である
- ・10年以上の住宅ローンが残っている
- ・住宅の売却相手が親族ではないこと
- ・合計所得が3千万円以下である
確定申告の際には、準備に時間がかかる書類も添付する必要がありますので、計画的に準備しましょう。
(5) ふるさと納税が5自治体を超える場合
ふるさと納税を行う場合、「ワンストップ特例制度」を利用すれば、確定申告せずに控除が受けられます。
しかし、1年間に5自治体を超えてふるさと納税した場合、この特例制度を利用できません。
ですから、控除を受けるためには、確定申告が必要となります。
確定申告の際には、自治体から送付される「寄付金受領証明書」が必要となります。
確定申告すれば、寄付金の一部が所得税から還付され、住民税が減額されますので、忘れずに申告しましょう。
(6) 家族に自営業やフリーランスの人がいる場合
あらかじめ会社側に確認が必要ですが、家族が自営業やフリーランスの場合、所得変動が大きいことが多く、会社が年末調整時に配偶者控除などを行ってくれない場合があります。
そのような場合、確定申告しないと本来受けられるはずの控除を受けられません。
年末調整の際は、しっかりと確認を行いましょう。
なお、家族の収入が130万円以上となる場合は、控除は受けられませんので、ご注意ください。
確定申告のための必要書類
確定申告するには、「共通で必要となる書類」と「ケース別で必要となる書類」の2種類の書類を準備する必要があります。
サラリーマンが確定申告する場合に必要な書類は、以下のようなものです。
共通で必要となる書類
確定申告をする際に、必ず用意する書類です。
確定申告書AまたはB
申告書には、AとBの2種類がありますが、サラリーマンの場合は確定申告書Aを使います。
確定申告書Bは、個人事業主の場合に使用するものですが、その他にも不動産や株式を売却した人も使用します。
書類は、税務署で入手できますが、国税庁のホームページで作成・プリントアウトすることもできます。
また、電子証明書が必要ですが、e-Tax国税電子申告・納税システムを利用することも可能です。
本人確認書類
マイナンバーカードがあれば、それ1枚で、ない場合は、マイナンバー通知カードもしくはマイナンバーの記載のある住民票と身元確認書類のセットが必要です。
身元確認書類は、運転免許証、健康保険の被保険者証、パスポートなどです。
源泉徴収票
添付や提出は必要ありませんが、源泉徴収された所得税額などが記載された源泉徴収票を手元に準備して、申告書を作成しましょう。
ケース別で必要となる書類
ケースごとに準備する必要がある書類をまとめました。
該当する各項目を参照してください。
住宅ローン控除を受けたい場合
- ・住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- ・住民票の写し
- ・金融機関からの借入金残高証明書
- ・全部事項証明書(建物・土地それぞれ必要です)
- ・売買契約書の写しなど
サラリーマンの場合、2年目以降は年末調整の対象となります。
不動産売却益がある場合
- ・確定申告書B
- ・譲渡所得の内訳書(国税庁ホームページから入手できます)
- ・売買契約書の写し
- ・取得費及び譲渡費用等の領収証の写し(買った値段がわかる書類)
ふるさと納税した場合
- ・寄付金受領証明書(寄付した自治体から届きます)
ただし、1年間にふるさと納税した自治体が5つ以内の場合は、ワンストップ特例制度を利用して確定申告を省くことができます。
この特例を利用したい場合は、自治体から届く「寄付金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記載して返送します。
自然災害や盗難被害にあった場合
自然災害や火災、さらには盗難などによって経済的な被害を受けた場合、確定申告で雑損控除を受けることが可能です。
確定申告の際には、以下の書類の添付が必要です。
- ・災害関連支出についての領収書
- ・損害金額の明細
仕事関連の経費を多く使っている場合
資格取得やスキルアップのための研修費、仕事に使用するスーツ、カバンなど仕事に関連した必要経費が多くかかっている場合、特定支出控除を受けられる可能性があります。
このような特定支出の合計額が、給与所得控除額の2分の1(最高125万円)を超える場合、超過分を給与所得の金額の計算上控除することができます。
確定申告の際に必要となる書類は以下のものです。
- ・会社からの証明書
- ・経費金額を証明できる明細書、領収書など
年末調整で控除書類を提出できなかった場合
会社の年末調整で提出できなかった控除書類がある場合、確定申告で添付すれば控除が受けられます。
サラリーマンでも年末調整が行われない人も
一般的にはサラリーマンの場合、年末調整が行われます。
ですが、一部の条件に該当する場合は、年末調整が行われませんので、自分自身で確定申告をする必要があります。
給与が2千万円を超える人
給与が2千万円を超える場合、会社での年末調整は行われず、自分で確定申告しなければなりません。
通常は年末調整で、社会保険料控除や配偶者控除、扶養控除といった申告が行われますが、これらを自身の確定申告で行う必要があります。
この確定申告をする場合は、20万円以下の副業収入も含めて全ての所得の申告が必要です。
2ヵ所以上からの収入がある人
2ヵ所以上から給料をもらっている場合など、複数の収入がある場合、それらを合算して確定申告する必要があります。
メインとなる会社以外からの収入が20万円以下の場合は、申告の必要がありません。
転職して源泉徴収票を提出しなかった人
年度の途中で転職した場合、前の会社の源泉徴収票を新しく入社した会社に提出すれば、合算して年末調整してもらえます。
ですが、この源泉徴収票を提出しない場合は、年末調整が行われません。
年末調整されなかった時は、自分で確定申告する必要があります。
まとめ
サラリーマンは、基本的には所得税は源泉徴収され、年末調整によって控除も受けられますので、自身で確定申告する必要はありません。
ですが、不動産を売却した場合や贈与を受けた場合など、確定申告が必要になるケースもあります。
また、住宅ローンを組んだ時やふるさと納税を行った場合など、確定申告することによって控除を受けられるケースもありますので、サラリーマンでも確定申告することもあります。
ケースによりますが、申告に必要な書類も少なく、簡単に申告できることも多いので、忘れずに確定申告し、節税対策しましょう。