最終更新日:2023/4/21
親を扶養に入れるメリット・デメリット【加入条件や注意点とは?】
この記事でわかること
- 「扶養に入れる」とは税金の扶養と社会保険の扶養の2種類がある
- 親を扶養に入れるメリットとデメリットを知ることができる
- 親を扶養に入れる際に注意すべきポイントがわかる
親の収入が少ない人は、親を扶養に入れられることがあります。
親を扶養に入れることができれば、何らかのメリットがあると考えるかもしれませんが、実はデメリットもあります。
そこで、親を扶養に入れるメリットとデメリットについて確認しておきましょう。
また、親を扶養に入れる際の注意点を解説していきます。
目次
親を扶養に入れる条件
親を扶養に入れるという場合、税金に関する扶養と、社会保険に関する扶養の2種類があります。
この2種類の扶養は、それぞれ条件などが違うため、混同しないようにしなければなりません。
それぞれの扶養について確認しておきましょう。
税金の扶養
親が税金計算上の扶養に入るという場合、税金を計算する際に扶養控除の適用を受けることをいいます。
扶養控除の適用を受けるためには、扶養に入れてもらう人(被扶養者)の所得金額が一定金額以下であることが条件とされます。
扶養控除の適用を受けられるのは、親の所得金額が48万円以下の場合です。
所得金額が48万円以下となるには、給料を受け取っている人の場合、年収が103万円以下の場合に該当します。
103万円から経費となる給与所得控除額を差し引くと48万円になる計算です。
また、年金を受け取っている人の場合、65歳未満は108万円以下、65歳以上は158万円以下で扶養に入ることができます。
なお、給料と年金を両方受け取っている人は、その両方の金額で所得金額を計算する必要があることに注意しましょう。
社会保険の扶養
親が社会保険の扶養に入ると、親は自身で健康保険料を負担しなくても、健康保険の適用が受けられます。
親が社会保険の扶養に入る際も、親の収入要件としての金額が定められています。
収入要件は、原則として年間収入が130万円未満であることとされています。
また、60歳以上の人・障害厚生年金を受けられる程度の障害を有する人は、年間収入が180万円未満まで認められます。
その上で、被扶養者が扶養者と同居している場合は、収入が扶養者の半分未満でなければなりません。
また、被扶養者が扶養者と別居している場合は、収入が扶養者からの仕送り金額未満でなければなりません。
親の収入が少なくても、子供の収入もそれほど多くないのであれば、被扶養者とすることはできないということです。
親を扶養に入れるメリット
親を扶養に入れることに、メリットがあると考える方は多いでしょう。
ただ、どのようなメリットがあるのか、詳しく知っている方は少ないかもしれません。
そこで、親を扶養に入れるメリットについて確認しておきましょう。
扶養者の税金の負担が少なくなる
親を税金の扶養に入れると、扶養控除の適用が受けられるので、その分課税所得の金額が少なくなります。
課税所得の金額が少なくなれば、所得税や住民税の額は減ることとなります。
扶養控除は、扶養に入れた人の年齢や同居・別居の違いにより、その金額が定められています。
親を扶養に入れる際に関係する可能性があるのは、下記の区分の扶養控除額となります。
区分 | 所得税 | 住民税 |
---|---|---|
控除対象扶養親族(23歳以上70歳未満) | 38万円 | 33万円 |
老人扶養親族(70歳以上) | 48万円 | 38万円 |
老人扶養親族のうち同居老親等(70歳以上で本人か配偶者の直系尊属であり同居している) | 58万円 | 45万円 |
所得税では、親と同居している場合、最高で58万円の控除を受けられます。
一方、親と離れて暮らす場合は、最高48万円の控除額となります。
「扶養控除の額×所得税率」で計算される金額が、親を扶養に入れた場合の節税額となります。
たとえば、所得税率が20%で70歳以上の親と別居する場合、48万円の控除を受けられ、所得税の節税額は96,000円となります。
また、住民税は一律10%であるため、この場合38万円×10%=38,000円の節税となります。
そのため、所得税と住民税をあわせて134,000円の節税につながることとなります。
親の健康保険料の負担がなくなる
子供が協会けんぽなどの健康保険に加入している場合、追加の負担なしに被扶養者の人数を増やすことができます。
そのため、親を社会保険の扶養に入れると、親は健康保険料を一切負担する必要がなくなります。
また、高額医療費の計算を行う際に、月々の医療費の額を親と子で合算することができます。
そのため、これまで高額医療費の適用を受けられなかった人も、受けられる可能性が出てきます。
その結果、実際に負担しなければならない医療費の額を抑えられるケースがあり得ます。
なお、親を社会保険の扶養に入れることができるのは、親の年齢が74歳までです。
親の年齢が75歳になると、後期高齢者医療保険への加入が義務付けられ、子供の健康保険に加入することはできなくなります。
親を扶養に入れるデメリット
親を扶養に入れることで、金銭的なメリットがあることがわかりました。
それでは、親を扶養に入れるデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
医療費の負担が増える可能性がある
親を社会保険の扶養に入れると、子供と親は同一の家計にあるものとみなされます。
そのため、高額医療費の計算を行う際には、子供と親の医療費を合算して計算することとされます。
このこと自体はメリットになるとして、すでに紹介しました。
ただ、子供と親の家計が同一になることで、高額医療費適用後の自己負担限度額が大きくなることが予想されます。
これは、所得区分がこれまでの親だけの金額から、子供と親を合算した金額となるためです。
たとえば、70歳未満で住民税の非課税者に該当する場合、医療費の自己負担限度額は月額35,400円となります。
ところが、給料の標準報酬月額が28万~50万円、つまり年収336万円~600万円に該当すると、自己負担限度額は80,100円以上となります。
医療費の負担が大きい人で高額医療費の制度を毎月利用しているような方は、そのデメリットをよく考えておく必要があります。
介護保険料の負担が増えてしまう
親を社会保険の扶養に入れると、健康保険料の負担を軽減することができます。
しかし、親の年齢が65歳を超えると、親は介護保険料を負担しなければならなくなります。
この介護保険料の金額は、世帯の収入金額により求めることとされています。
親が子供の扶養に入り、かつ同世帯で暮らしている場合、世帯収入は子供の収入を合算した金額となります。
そのため、親が負担する介護保険料の金額は、子供の扶養に入らなかった場合より大きな金額となります。
様々なケースが想定されますが、介護保険料の金額が倍以上に増えてしまうこともあるので、注意が必要です。
介護サービスの利用料の負担が増える
親を社会保険の扶養に入れ、かつ同世帯で暮らしていると、介護サービスの利用料が増えます。
こちらも、扶養に入る前は親の収入だけで判定していたのが、子供の収入も含めて判定することとなるためです。
高額医療費の負担限度額が増えるのと同じことが、介護サービスの利用料でも起こることとなります。
親を扶養に入れる際の注意点
親を扶養に入れることで、大きなメリットを受けられる一方、デメリットが生じることもわかりました。
それでは、実際に親を扶養に入れようとした場合、どのような点に注意する必要があるのでしょうか。
税金と社会保険の扶養の手続きは別に行う
親を税金の扶養に入れるのと、社会保険の手続きに入れるのは、それぞれ別の手続きが必要です。
税金の扶養に入れる場合は、子供が勤務先の年末調整を受ける際に、扶養控除等申告書に親の氏名や所得金額などを記載します。
一方、社会保険の扶養に入れる場合は、まず勤務先にその旨を申し出て、勤務先から協会けんぽなどへの手続きを行います。
いずれかの手続きだけで、税金と社会保険の双方の扶養に入ることはできません。
それぞれの手続きを行うようにしましょう。
税金だけ、社会保険だけ扶養に入ることもできる
親を扶養に入れる場合、税金だけ、あるいは社会保険だけ扶養に入れることもできます。
親を扶養に入れる条件がそれぞれ異なるため、いずれか一方しか扶養に入れないケースはあります。
特に多いのは、税金だけ扶養に入れ、社会保険は扶養に入れないというパターンです。
これは、税金の扶養に入れることはほぼデメリットがないのに対し、社会保険の扶養に入れるとデメリットもあるためです。
いずれか一方だけ扶養に入れることもできるので、よりデメリットの少ない方法を選択するようにしましょう。
まとめ
扶養家族という場合、配偶者や子供のことだけを思い浮かべる方が多いかもしれませんが、親も扶養に入れることができます。
ただ、誰でも扶養に入れるというわけではなく、扶養に入ることができる人には条件があります。
条件自体は難しいものではないので、当てはまるかどうかを確認しておくといいでしょう。
また、扶養に入れることでデメリットが生じるケースもあることから、実際に扶養に入れるかどうかはよく考える必要があります。