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最終更新日:2023/4/21

障害者扶養共済制度とは?メリット・デメリットや掛け金について

社会保険労務士 西村兆潔
この記事の執筆者社会保険労務士 西村兆潔

ベンチャーサポート社労士法人 社会保険労務士。
大学を卒業後に、都内にある社会保険労務士事務所での勤務経験を経て、ベンチャーサポートに入社。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-nishi

この記事でわかること

  • 障害者扶養共済制度とはどのような制度か知ることができる
  • 障害者扶養共済制度に加入するための要件を知ることができる
  • 障害者扶養共済制度を利用するメリットとデメリットがわかる

子供が障害者の場合、その親は経済的な負担や精神的な不安をより大きく感じやすいといえます。

そこで、少しでもそのような不安を和らげるため、「障害者扶養共済制度」を利用することができます。

この制度を利用することで、将来の不安を少しでも解消し、安心して生活を送ることが期待できます。

どのような加入要件があるのか、メリットやデメリットには何があるのか、確認していきます。

障害者扶養共済制度とは

障害者扶養共済制度とは、都道府県や政令指定都市が実施している障害者の子とその親のための保険制度です。

様々な加入要件については後ほど詳しく解説しますが、基本的には障害のある人を扶養している扶養者が加入します。

加入した後は、毎月一定金額の掛け金を支払って納めていくので、民間の保険会社に保険料を支払う納めるのとイメージは同じです。

扶養者自身に不慮の事故があった場合、扶養していた障害のある人に対して、年金が支給されます。

扶養していた子供の面倒を見られなくなった時に、その子供が困らないようにするための制度となっています。

障害者扶養共済制度の加入要件

障害者扶養共済制度に加入するには、いくつかの要件をクリアしなければなりません。

どのような要件が定められているのか、確認しておきましょう。

①加入する人(扶養者)の要件

障害者扶養共済制度に加入するのは、障害者を扶養している人です。

加入者については、以下のような要件が定められています。

  • 障害のある人を扶養する保護者である
  • 加入する年度の4月1日現在の年齢が65歳未満である
  • 特別の疾病や障害がなく、生命保険契約に加入できる健康状態である
  • 障害者1人に対し、加入できる扶養者は1人だけである

②年金を受け取る人(被扶養者)の要件

障害者扶養共済制度で、将来、年金を受け取ることができる人の要件も定められています。

以下の要件のいずれかを満みたす必要があります。

  • 知的障害がある
  • 身体障害者手帳を所持し、1級~3級に該当する
  • 精神または身体に永続的な障害があり、その障害の程度が上記と同等と認められる

また、上記3つの要件のいずれかに該当した上で、将来的に独立して自活することが困難であると認められることが要件となっています。

障害者扶養共済制度のメリット

障害者扶養共済制度に加入すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。

障害者である子だけでなく親にとってもメリットがあるので、その内容を確認しておきます。

親が亡くなると子が年金を受け取れる

障害者扶養共済制度に加入する目的は、障害者を扶養する親が亡くなった時に、一定の収入を得られるようにすることです。

障害者である子の中には、将来安定した収入を得られるか不安を抱える人も多く、親の収入に頼らざるを得ないケースもあります。

このような子の親が亡くなると、親の遺産とわずかな収入しかないことも多く、普通の生活を送ることもできなくなってしまいます。

障害者扶養共済制度に20年加入すれば、親が亡くなった後に年金を受け取ることができます

年金の額は、障害者扶養共済制度に1口加入していた場合は毎月2万円、2口加入していた場合は毎月4万円となります。

この年金だけで生活していくことは難しいでしょうが、他の収入に年金が上乗せされれば、大きなメリットを受けられます。

扶養者である親の税負担が軽減される

障害者扶養共済制度に加入すると、障害者の扶養者である親は、毎月掛金を支払う納付することとなります。

支払う納付する掛金の額は、小規模企業共済等掛金控除の対象となるため、所得税・住民税の計算上、所得控除の対象となります。

所得控除の対象となるため、所得税・住民税あわせて、支払った掛金の15%%~55%%の節税効果が期待できます

なお、小規模企業共済等掛金控除の区分で所得控除の計算が行われると、支払った掛金がそのままの金額で全額が控除されます。

生命保険料控除のように、掛金の額に一定の率を乗じる必要はありません。

また、小規模企業共済等掛金控除は、控除額に上限がありません

iDeCoに加入している人など、すでに適用を受けている人も、さらに控除額を増やすことができます。

障害者扶養共済制度のデメリット

ここまで障害者扶養共済制度のメリットを見てきましたが、デメリットもあります。

3つのデメリットをご紹介します。

途中で解約した場合に戻ってくる金額がわずか

障害者扶養共済制度は、実質的に掛け捨ての保険と同じです。

途中で解約した場合、掛金として支払った金額のごくわずかしか返金されません

年金の受給要件を満たす前に解約した場合、脱退一時金が支払われます。

この金額は加入期間に応じて、以下のように定められています。

  • 5年以上10年未満の場合、75,000円
  • 10年以上20年未満の場合、125,000円
  • 20年以上の場合、250,000円

加入時の保護者の年齢が40歳の場合、掛金の額は月額14,300円となります。

この場合、年間171,600円の掛金を支払っていることとなります。

この人が20年加入した後に解約した場合、掛金の総額3,432,000円に対し、脱退一時金は250,000円となります。

掛金のわずか7%%強しか返還されないので、よほどのことがない限り解約しないようにしなければなりません。

掛金が引き上げられるリスクがある

障害者扶養共済制度は、都道府県などによって運営されている公的な制度です。

その特徴の1つに、掛金の金額が定期的に改定されていることがあります。

民間の保険に加入する場合も、同一の保険商品に同様の条件の人が加入する場合、加入時期によって保険料が変わることはあります。

ただ、障害者扶養共済制度は掛金の上げ幅が大きく、過去には倍以上の金額に引き上げられたこともありました。

たとえば、2008年4月に行われた第4次改正では、加入者の年齢が35歳未満の場合、3,500円から9,300円へ大幅に引き上げられています。

掛金の引き上げは、すでに加入している人だけに影響を与えるものではありません。

すでに加入している人が毎月支払う掛金についても、引き上げられることがあります。

見直しが行われる時期は特に決められていないので、まったく予測することができません。

掛金引き上げの情報には、常に注意する必要があります。

掛金総額より年金受給額の方が少なくなることも

途中解約せずに、掛金の納付が免除されるまで掛金を支払っても、年金の額が掛金を上回る保証はありません

掛金の納付が免除されるのは、以下の2つの要件をともに満たした場合です。

  • 加入者(保護者)の年齢が65歳に達した
  • 加入してから20年が経過した

たとえば40歳で加入した場合、65歳に達するまでの25年間、掛金を支払い続ける必要があります。

この場合、掛金の総額は14,300円×12か月×25年=429万円となります。

年金の額は月2万円、年間24万円であるため、この場合は18年以上受給しなければ、年金の総額は掛金を上回りません。

掛金の額は、加入者の年齢によって異なり、掛金の納付期間も変わってきます。

また加入時期をいつにするのか、事前によく検討しておく必要があります。

障害者扶養共済制度の掛け金・加入方法

障害者扶養共済制度への加入を検討する方は、掛金の金額や加入方法が気になっていることでしょう。

そこで、これらについて解説していきます。

掛金の金額

障害者扶養共済制度の掛金の額は、加入者の年齢によって、以下のように定められています。

加入者の加入時の年齢1口あたりの掛金の月額
35歳未満9,300円
35歳以上40歳未満11,400円
40歳以上45歳未満14,300円
45歳以上50歳未満17,300円
50歳以上55歳未満20,700円
55歳以上60歳未満20,700円
60歳以上65歳未満23,300円

(引用元:独立行政法人医療福祉機構

加入時の年齢が若いほど掛金は低くなりますが、その分掛金の納付期間が長くなります。

加入手続き

障害者扶養共済制度の加入手続きは、市町村役場で行います

加入等申込書に必要事項を記載し、窓口で提出します。

またこの時、以下の書類もあわせて提出する必要があります。

  • 住民票(加入者と障害者の双方必要)
  • 申込者(被保険者)告知書
  • 障害の種類及び程度を証明する書類(身体障害者福祉手帳、療育手帳、年金証書など)
  • 年金管理者指定届書(障害者が年金の管理をできない場合)

申し込み手続きの前に、市町村役場に必要な書類について確認をしておくと、二度手間にならずに済みます。

まとめ

障害者扶養共済制度は、障害を持つ子の親が障害者である子のために加入する保険のようなものです。

不慮の事故が発生した場合、子に年金が支給されるという安心感があり、自身の税負担も軽減されます。

一方で、加入した後に解約してしまうと、大きなマイナスとなってしまいます。

加入する場合は、事前に掛金の総額や解約した場合の取り扱いなどについて検討しておくようにしましょう

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