最終更新日:2023/2/10
共済組合で扶養に入るメリット・デメリット【加入条件や必要書類も紹介】
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- 共済組合で扶養に入るメリットとデメリットについてわかる
- 共済組合で扶養に入るための条件についてわかる
- 共済組合で扶養に入る手続きや必要書類についてわかる
共済組合という公務員を対象とした社会保険制度があります。
一般企業に勤めている方には聞きなじみのない言葉ですが、公務員として働いている方は自動的に加入している方も多いでしょう。
共済組合も一般的な社会保険同様に、親族を扶養に入れることで様々な恩恵を受けることができます。
今回は、共済組合で扶養に入るメリットやデメリット、加入までの流れについて分かりやすく解説していきます。
目次
共済組合とは
共済組合とは、国家公務員・地方公務員・私立学校職員等とその家族を対象とした公的保険制度です。
医療保険や年金等に関する運営をしており、一般業種における社会保険制度と同じ位置付けです。
共済組合には様々な種類があり、加入者の業種等によって異なります。
たとえば、常時勤務する国家公務員のための「国家公務員共済組合」や、私立学校の教職員のための「私立学校教職員共済」などがあります。
掛金は給与等の金額を基礎に計算され、その掛金に応じて基礎年金に上乗せされます。
そのため、共済組合の年金は、厚生年金よりも手厚く支給されるケースが多いです。
共済組合で扶養に入るメリット
共済組合は、親族を扶養として加入させることにより、様々な恩恵を受けることができます。
主なメリットとして以下のようなことが挙げられます。
健康保険料を負担しなくてよい
扶養に入っていない方は、個人で国民健康保険に加入するか、勤め先の会社で健康保険に加入しなければなりません。
その場合、健康保険料を各自で負担することになります
しかし、共済組合で扶養に入ることで健康保険料を支払うことなく、保険の適用を受けることができます。
毎月の負担が軽減するので大きなメリットといえるでしょう。
短期給付が受けられる
被扶養者の病気や怪我、災害等に対して給付を受けることができます。
この給付には、国家公務員共済組合法で定められた「法定給付」と、共済組合が独自で定めた「附加給付等」があります。
なお、被扶養者とは、組合員の配偶者、子、父母などのことを指し、主として組合員の収入によって生計を維持している者のことを指します。
また、この他に「長期給付」も受けられますが、こちらは一般企業における厚生年金と同等のものといえます。
扶養手当が受けられる
一定の条件を満たしている場合には、法律に基づいた扶養手当を受給できます。
各共済組合によって条件は若干異なりますが、概ね以下のいずれかの項目を満たす必要があります。
- 配偶者(事実婚を含む)
- 22歳に達する日以後最初の3月31日までの間にある子、孫、弟妹
- 60歳以上の父母及び祖父母
- 身体又は精神に苦しい障害のある者
※いずれの場合も、年収は130万円未満でなければなりません。
なお、給付金額についても各共済組合によって異なりますが、一般的には配偶者は13,000円程、その他の場合は6,500円程となっております。
税額控除が受けられる
税法の観点から、節税効果がメリットとして挙げられます。
被扶養者の年齢等に応じて控除可能額は変動します。
税額控除は、所得金額を減らす効果があるため、結果的に所得税、住民税の負担が軽減されます。
ただし、税法上の扶養控除の適用を受けるためには、被扶養者の年収が103万円以下でなければなりません。
共済組合で扶養に入るデメリット
共済組合で扶養に入る主なメリットを紹介しましたが、デメリットもいくつかあります。
扶養に入るべきか否かを見極めるためには、両方の側面を理解した上で判断する必要があります。
主なデメリットとして以下のようなことが挙げられます。
働き方や収入が制限される
扶養に入るには原則、年収130万円未満である必要があります。
主に配偶者を扶養に入れる際に直面する問題であり、被扶養者は基本的に正社員ではなくパートや派遣社員などとして働かなければなりません。
年収130万円を超えてしまうと扶養から外れてしまうため、勤務時間数などに制限が掛かってしまいます。
必ずしも扶養に入ることが最善とは限らないので、共働きによる世帯年収の底上げを検討するのもよいでしょう。
近年では働き方改革が促進され、育休や産休明け等の仕事復帰はしやすくなっていますが、パートや派遣社員になると正社員として復帰することが厳しいケースもあります。
どういう働き方を今後していきたいのかも含めて、一度ご家族で相談しましょう。
高額介護サービス費が高くなる可能性がある
高額介護サービス費とは、1ヶ月の間に介護サービスに対して支払った金額の合計額が自己負担限度額を超えたとき、その超過負担分につき払戻しがされる制度です。
自己負担の限度額を決定するために大きなポイントは、世帯の合計所得金額です。
合計所得金額が高ければ高いほど、介護費用の支払い負担能力が高いとみなされるため、自己負担の限度額も高く設定されています。
扶養に入るということは、同一世帯になるということです。
高額の介護費用が見込まれる父母や祖父母を扶養に入れようと考えている方は、介護費用の自己負担額が高くなる可能性がありますので、注意が必要です。
共済組合で扶養に入る条件
共済組合で扶養に入るための要件はいくつかあります。
被扶養者として認められるためには、組合員の親族で、組合員の収入によって生活していて、日本国内に住所を有している必要があります。
では、具体的に被扶養者の要件を見ていきましょう。
1.親族に該当すること
「親族」の範囲は以下のとおりです。
- 組合員の配偶者、子、父母、祖父母、兄弟姉妹
- 組合員と同一世帯にある3親等内の親族
- 組合員と同一世帯にある内縁の配偶者、その父母、子
「同一世帯にある」とは、生計を共にすることを指すため、必ずしも同居している必要はありません。
逆に、同居していても家計が切り離されているような状況では「同一世帯にある」と認められません。
また、75歳以上になると後期高齢者医療制度に加入することとなり、各々が被保険者となるため、被扶養者になることはできません。
2.年収130万円未満であること
収入要件として、年収が130万円未満である必要があります。
年収にはすべての収入が含まれます。
具体的には、以下のものが対象となります。
- 給与
- 公的年金
- 事業収入
- 不動産収入
- 各種手当金
- 各種給付金
なお、60歳以上の方であって、収入の全部または一部が公的年金等に係る収入である場合には、年収180万円未満が要件となります。
この要件には月額の収入限度額も設定されており、年額で130万円以上にならない場合であっても、3ヶ月平均で月収が108,334円以上だと収入要件を満たすことができません。
また、扶養に入れようとする方が収入要件を満たしていても、その年収が組合員の年収の二分の一を超える場合には被扶養者として認められないため、ご注意ください。
共済組合で扶養に入る手続きの流れ・必要書類
共済組合で扶養に入るためには、以下の書類を所属の共済組合に提出します。
なお、事由発生日(被扶養者の要件を備えるに至った日)から30日以内に申請した場合、認定日は事由発生日となります。
事由発生日から31日を過ぎて申請した場合の認定日は、所属所受付日となります。
認定区分 | 提出書類 |
---|---|
普通認定 |
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特別認定 |
|
※扶養認定を受けようとする家族が20歳以上60歳未満の配偶者の場合のみ添付
このように、2つの認定種別がありますが、これは以下のような条件が定められています。
普通認定 | 給与条例上の扶養手当の支給対象となっている方 |
---|---|
特別認定 | 給与条例上の扶養手当の支給対象となっていないものの、被扶養者としての要件を満たしている方 (例)60歳未満の父母、年間収入が130万円以上180万円未満の方など |
扶養の認定を受けた場合には、共済組合の被扶養者証が交付されます。
健康保険証と同様の効力を持つため、保険適用の際に必要になります。
なお、上記表は公立学校共済組合に加入する際の必要書類です。
各共済組合によって必要な書類が若干異なる可能性がありますので、扶養の加入を検討している方は、加入先の共済組合のHPなどで確認しましょう。
また、被扶養者として認定されている者については毎年調査が行われるため、被扶養者として認められなかった場合には、速やかに取消申告を行う必要があります。
まとめ
今回は、共済組合で扶養に入るメリットやデメリット、加入までの流れについて解説しました。
社会保険の負担が軽減されることや短期給付を受けられることに加えて、一定の扶養手当も受給できる可能性があるため、メリットは大きいといえるでしょう。
一方で、働き方や収入が制限されてしまうことや、介護費用などの思わぬ費用が増える可能性もありますので注意が必要です。
なお、共済組合は加入する組合によって内容や必要書類が若干異なる可能性がありますので、詳しくは組合HPなどを参照しましょう。