最終更新日:2024/2/6
法人が投資信託取引で節税する方法3つ!個人での取引とどちらがお得?
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
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YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
この記事でわかること
- 法人が投資信託へ投資して節税する方法があることがわかる
- 法人と個人で投資信託への投資を行う際の違いを知ることができる
- 法人が投資信託を購入する際に注意すべき点がわかる
法人のオーナーの中には、投資信託の投資を行う際に、法人ですべきか個人ですべきか迷っている方もいるでしょう。
同じ商品を購入する際でも、法人と個人では税制上の取扱いがまったく異なり、そのことが損益に影響してきます。
そこで、法人が投資信託取引により節税する方法を解説します。
また、法人と個人での違いや、法人が投資信託を購入する際の注意点についてもご紹介していきます。
目次
法人が投資信託に投資して節税する方法3つ
法人が投資信託を購入することで、どのように節税につなげられるのでしょうか。
ここでは、どのようにして法人が投資信託取引で節税できるのか、ご紹介します。
法人の赤字と運用益を相殺する
投資信託取引では、主に2種類の利益が計上されます。
1つは投資信託を売却する際に発生する売却益、そしてもう1つは保有している間に受け取る分配金の利益です。
法人の場合、これらの利益はいずれも、法人が本業から計上する損益と相殺して税金を計算することとされています。
そこで、法人が本業で赤字を計上した年度で投資信託を売却して売却益を計上すると、その売却益に対する税額が圧縮されます。
たとえば、本業で100万円の赤字を計上し、投資信託の売却により200万円の利益を計上した場合を考えてみましょう。
この場合、本業のマイナス100万円と、投資信託の売却益200万円を相殺した後の金額100万円に対して税金計算が行われます。
本業で利益が出ている場合、投資信託の売却益200万円もすべて課税対象となりますが、本業が赤字であれば売却益が相殺されます。
その結果、投資信託の売却益から計算される税額を抑えることが可能となります。
法人の赤字の額や投資信託の売却益の額によっては、投資信託の売却益がすべて課税対象にならないことも考えられます。
売却時期によって課税される金額が大きく変わる結果となるため、注意が必要です。
法人の黒字と売却損を相殺する
本業から発生する損益と、投資信託の売買損益が相殺されることから、逆に投資信託の売却損を利用することもできます。
含み損を抱える投資信託がある場合、本業が好調の年度で売却し、法人が本業で計上した利益と投資信託の売却損を相殺します。
そうすることで、本業から発生する利益を減少させ、税負担を減らすことが可能となりいます。
たとえば、本業で500万円の利益、投資信託の売却で100万円の損失が発生したとします。
この場合、500万円のプラスと100万円の損失を相殺した後の400万円が課税対象となります。
その結果、法人が負担する税額を減少させることができるようになっています。
分配金について益金不算入の適用を受ける
投資信託を保有していると、定期的に分配金を受け取ることができます。
この分配金も課税対象となるものですが、法人税法上は全額が課税対象とならないケースがあります。
投資信託の種類によって、分配金の20%相当額が益金不算入として課税されないケースです。
益金不算入となる金額も分配金として受け取ることができるため、税金のかからない収益を得ることができます。
分配金の金額が大きくなるほど無税となる部分の金額が大きくなるので、投資信託の投資が増えるほどメリットは大きくなります。
投資信託は法人と個人どちらの方がお得?
投資信託を法人で購入した場合と個人で購入した場合で、どのような違いがあるのでしょうか。
税務上のルールに違いがあるため、いずれが有利なのか、よく考慮しておく必要があります。
まず、利益が発生した場合の税率に違いがあります。
法人の場合、投資信託から発生する利益に対して、実効税率である約35%の税額を負担しなければなりません。
これに対して個人の場合、投資信託の運用益に対しては約20%の税負担となります。
このように、法人で投資信託の投資を行う方が税負担は大きくなる可能性があります。
ただその一方で、法人の場合は発生した損失を最大10年間繰り越すことができます。
この繰越損失は、投資信託の売却損だけでなく、本業も含めたすべての損失が対象となっています。
また、繰り越された損失は、翌年以降に発生したあらゆる利益と相殺することができます。
これに対し、個人に発生した投資信託の売却損は、最大3年間までしか繰り越すことができません。
さらに、翌年以降に発生した株式取引の利益としか相殺できず、給与所得や事業所得との相殺は不可能です。
そのため、損失が発生した場合には、法人の方が大きなメリットがあります。
こうしてみると、法人で取引することにも、個人で取引することにも一長一短があるように思われるでしょう。
では、どのような場合に法人で投資信託を行うといいのでしょうか。
- 法人に繰越損失がある場合
繰越損失があれば、投資信託で得た利益も繰越損失と相殺されるため、課税されることはありません。
繰越損失を利用して、効率的な資金運用を行うことが可能となります。
- 本業の収益状況が好調な場合
本業で利益が生じているのであれば、リスクのある投資信託への投資を行っても、本業に悪影響が出ることはありません。
仮に売却損が生じても、本業の利益が圧縮されて節税効果が得られるため、デメリットにはならないでしょう
法人が投資信託取引をするときの注意点
法人が投資信託取引を行うといいケースが、いくつかあります。
このようなケースに該当しても、法人として投資信託を購入する際には注意点があります。
この注意点について、解説していきます。
特定口座を開設できない
個人の方が株式や投資信託を購入する場合、特定口座と一般口座を選択することができます。
特定口座を開設すれば、投資により発生する損益は、すべて証券会社が計算してくれます。
しかし、法人が投資信託を行うために口座を開設する際には、特定口座を選択することができません。
投資信託の損益計算はすべて法人が行わなければならず、法人に損益計算の負担が発生することとなります。
NISAやつみたてNISAを利用できない
個人で投資信託を購入する場合、NISAやつみたてNISAを利用することができます。
これらの制度を利用して投資信託を購入すると、運用益が非課税となります。
しかし、法人ではNISAやつみたてNISAを利用することはできません。
そのため、本業でも投資信託への投資でも利益が発生すれば、必ず税負担が発生することとなります。
保有しているだけで課税されることがある
投資信託を売買目的有価証券として購入すると、その投資信託は毎年決算期末における評価額に計上し直さなければなりません。
その結果、含み益が発生した場合には、その含み益が課税対象となってしまいます。
売却した場合とは違い、投資信託を保有しているだけで課税されることもあるので、注意が必要です。
まとめ
法人が余裕資金を普通預金に預けている場合、超低金利となっていることから運用益を得ることが難しい状況になっています。
そこで、投資信託などを購入して新たな資産運用の手段を検討している方もいるでしょう。
法人で購入する場合、個人で購入する場合とは違い税率が高くなりますが、本業からの利益と相殺できるメリットがあります。
個人の場合とは違い、特定口座やNISA・つみたてNISAを利用することはできない点も考慮し、利用を検討しましょう。