最終更新日:2022/10/28
不動産投資で減価償却を用いて節税する仕組み!税制改正でできなくなった?
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
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この記事でわかること
- 減価償却費の計算方法や節税となる仕組みがわかる
- 減価償却費を計上できる資産とできない資産の違いがわかる
- 税制改正により節税効果が大幅に減少した
不動産投資を行って、給与や事業などメインとなる収入とは別の収入を得る方がいます。
収入が増えると、必然的に税金の負担も増えてしまうのですが、不動産投資の場合は減価償却を利用した節税が可能です。
減価償却とはどのような計算の仕組みとなっているのでしょうか。
また、減価償却費の計算対象となる資産にはどのようなものがあるのでしょうか。
目次
減価償却による節税の仕組み
不動産投資において、減価償却費の計算は、経費の金額の中でも最も重要なものです。
それは、減価償却費の金額はトータルすると大きな金額となり、また長期間にわたって影響するからです。
減価償却とは
減価償却とは、時間の経過とともに資産価値が減少する建物や機械、車両などの資産について、その減少額を経費とすることです。
ただ、個々の資産がどれだけ資産価値が減少したのか、客観的に計算することはできません。
そこで税額計算上は、資産の種類に応じた法定耐用年数を用い、一定期間にわたって経費化していきます。
所得税に関する減価償却費の計算は、原則定額法により行います。
定額法による減価償却費の計算方法は、取得価額×法定償却率となっており、計算自体は非常にわかりやすくなっています。
たとえば、木造アパートを5,000万円で新築したとします。
この場合、木造の住宅用建物の法定耐用年数は22年とされています。
建物の減価償却費の計算は定額法で行い、22年の耐用年数の場合、その償却率は0.046とされています。
そのため、1年あたりの減価償却費は、5,000万円×0.046=230万円となります。
減価償却費が節税になる理由
減価償却費の計算は、資産の取得価額に法定償却率を乗じて行います。
法定償却率の年数は、実際にその資産をどれだけの期間使うのか、あるいは何年ローンを組んでいるのかとは関係ありません。
その資産の種類、建物の場合は構造などによって、法律で定められた年数にわたって償却を行うこととなります。
そのため、木造のアパートなどは、実際の使用年数に対してかなり短い22年という年数で償却計算を行います。
また、資産の取得価額は資産の取得時に支払った金額であり、2年目以降に資産購入のための支出は発生しません。
不動産を購入した場合はローンを利用することも多いのですが、ローンの支払いが減価償却費になるわけでもありません。
支出額とは関係のない減価償却費が必要経費に計上されることで、手元に資金を残したまま所得金額を圧縮することができます。
所得金額が少なくなれば、その分発生する税額も少なくなるという仕組みです。
減価償却できる資産・できない資産
原則として取得価額が10万円を超える資産を購入した場合、会計処理上必要経費として計上することはできず、資産に計上されます。
資産となったものに関しては、減価償却の計算を行うこととなります。
資産計上した資産の中には、減価償却できる資産と減価償却できない資産があります。
どのような資産が減価償却できるのでしょうか。
不動産投資に関係のある資産を中心に、確認していきましょう。
減価償却できる資産
不動産投資を行う際に購入する資産の中で、減価償却できる資産は以下のとおりです。
- 建物(アパートやマンション、貸家、貸店舗、貸倉庫など)
- 建物付属設備(電気設備、給排水・衛生設備など)
- 構築物(アスファルト舗装、立体駐車場など)
- 工具器具備品(エアコン、インターホン、パソコンなど)
この他、不動産投資に付随して購入することのあるもので、減価償却する資産には以下のようなものがあります。
- 車両運搬具
- 機械装置
- ソフトウェア
これ以外にも、減価償却することとされている資産として、特許権や商標権などがあります。
減価償却できない資産
不動産投資に関係のある資産の中で、経年劣化することがなく減価償却できない資産には、以下のようなものがあります。
- 土地
- 借地権
- 電話加入権
この他、遊休資産や未稼働の資産については、事業に使う時まで減価償却を行わないこととされています。
【注意】税制改正で減価償却による節税が難しくなった
不動産投資で節税効果を得られるのは、減価償却費として計上される金額があるためです。
減価償却費の計算方法は、税法のルールで定められています。
この税法が税制改正により変更されたため、節税効果が減少してしまったことが過去にあるのです。
実際にどのような変更が行われたのか、解説します。
平成19年度の改正
平成19年度に行われた税制改正では、償却可能限度額及び残存価額が廃止されました。
償却可能限度額とは、減価償却により償却できる金額のことで、取得価額の95%とされていました。
残存価額は取得価額の10%とされ、減価償却の計算上考慮されていたものです。
しかし、これらの金額が廃止され、帳簿価額が1円になるまで減価償却できるようになりました。
また、定率法による償却を行う際に用いる償却率が見直され、より早く減価償却費が計上できるようになりました。
これらの改正により、より多くの減価償却費を、より早期に計上できることとなったことが大きな変化でした。
平成28年度の改正
平成28年度に行われた税制改正では、建物以外に建物付属設備と構築物も定額法でしか償却できなくなりました。
この改正以前は、建物付属設備や構築物は定率法が選択でき、早期に多額の減価償却費を計上でき
しかし、この改正により定額法しか選択することができなくなり、。
その結果、投資開始直後の減価償却費の金額が少なくなり、節税効果が抑えられることとなりました。
まとめ
不動産投資を行う理由として、本業以外の収入を得たいという他に、節税をしたいということもあります。
しかし、節税に大きな意味を持つ減価償却費は税法により計算方法が決められるため、改正による影響を受ける可能性があります。
これから不動産投資を始める方は、減価償却の計算方法や減価償却しなければならない資産の決まりについて確認しておきましょう。
その上で、今後改正が行われたとしても、柔軟に対応できるようにしておく必要があります。