最終更新日:2022/6/6
扶養内で働くか扶養を外れるか【メリットデメリットで比較】どっちがお得?
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-tori
この記事でわかること
- 誰かの扶養に入ったまま働き続きけることの意味を知ることができる
- 扶養に入ったままで働くことのメリットとデメリットがわかる
- 扶養内で働くか扶養を外れるかを決めるポイントがわかる
結婚・出産を経て、専業主婦や主夫の方がもう一度働き始めることも増えてきました。
この時、夫や妻の扶養に入ったまま働き続けるという選択肢もあり、実際にそのような働き方をしている人も多くいます。
はたして、扶養に入ったまま働くメリットやデメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
また、働く際に扶養内にするか扶養を外れるかを決める際には、どのようなポイントがあるのでしょうか。
今回は、どちらが得になるのかも含めて、扶養内で働くことの意味について考えてみましょう。
目次
扶養内で働くとは
扶養内で働くという場合、税法上の扶養に入ることと、社会保険の扶養に入ることの2つの意味を持ちます。
税法上の扶養に入るとは、働いている人の控除対象者となることです。
たとえば、妻が夫の扶養に入り配偶者控除を受けるためには収入に上限が設けられています。
パートで働く妻の場合は、給与収入が年間103万円以内であることが配偶者控除を受けるための上限となります。
事業所得が発生する妻の場合は、年間38万円以内であることが上限となります。
なお、2018年からは夫の合計所得金額が1,000万円以下であることも、税法上の扶養に入る条件とされています。
また、配偶者特別控除を受けることもできます。
パートで働く人は年収201万円まで、事業所得の場合は年間123万円までとなります。
社会保険の扶養は、会社員や公務員として働く人の配偶者が対象となります。
妻が夫の扶養対象者となる場合、妻の年収が130万円以内であることが条件となります。
また、妻が自身で勤務先の社会保険に加入しなくてもよいことが条件となります。
従業員数501人以上の会社に勤務する場合、年収106万円以上となった場合は加入義務が発生するため、注意が必要です。
主婦・主夫が扶養内で働くメリット・デメリット
夫や妻の一方がメインとなる収入を得ており、もう一方の配偶者が条件を満たして扶養に入ることができる場合があります。
このような場合、どのようなメリットがあるのでしょうか。
逆に、扶養内で働くことにはどのようなデメリットがあるのでしょうか。
扶養内で働くメリット
扶養内で働くメリットには、税法上・社会保険上を含めて多くのものがあります。
たとえば妻が夫の扶養に入ることのメリットとして考えられるものは、以下のとおりです。
配偶者控除や配偶者特別控除を受けて税金が減る
収入を得ている夫は、税金を負担しなければなりません。
会社で勤務している場合は年末調整を受けますし、自身で事業を行う場合は確定申告を行います。
この年末調整や確定申告の計算を行う際に、妻を配偶者控除や配偶者特別控除の対象に含めることとなります。
配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受けることができれば、夫が負担する税金の額が減ります。
妻が自身で国民年金に加入しなくてもいい
妻が社会保険上の扶養に入ることができない場合、妻は自分で国民年金に加入しなければなりません。
自身で国民年金に加入することとなれば、その保険料を支払わなければなりません。
しかし、扶養に入ることができれば夫の年金保険料を支払っているだけで妻の国民年金保険料も支払っていることとされるのです。
なお、国民年金で配偶者がこのような取扱いを受けるのは、夫が給与所得者の場合だけです。
自営業者の場合はこのような取扱いがないため、注意しなければなりません。
妻が自身で健康保険に加入しなくてもいい
妻が社会保険上の扶養に入ることができない場合、年金だけでなく健康保険料も自身で加入しなければなりません。
そのため、健康保険料の負担が発生することとなるのです。
妻が夫の扶養に入ることができれば妻が健康保険料を負担しなくてもよくなります。
扶養内で働くデメリット
妻が夫の扶養に入ることによるデメリットも考えられます。
扶養に入った人の年金が少なくなる
扶養に入った配偶者は、自身の年金を支払わなくても国民年金を受けることができるようになります。
しかし、この方法で受給を受けられる年金は国民年金だけとなるため、その金額は非常に少なくなります。
扶養に入らない働き方をすれば、年金保険料の負担は発生しますが、厚生年金を受給することができるようになります。
そのため、将来の年金には大きな差が生じることとなるのです。
働き方が制限される
扶養に入るためには、年収などに大きな制限を受けることとなります。
そのため、働きながら扶養に入るためには、パートとして働く以外の選択肢はありません。
将来的に正社員になりたいと考えている人も、簡単にはいかない可能性があります。
特に、正社員を離れてパートや専業主婦・主夫になると、復帰が難しいという実状があります。
主婦・主夫が扶養を外れて働くメリット・デメリット
専業主婦・主夫であった人が、扶養内で働くのをやめ、扶養から外れて働く場合にはどのようなポイントがあるでしょうか。
扶養を外れて働くことについてもメリットとデメリットを確認していきます。
扶養を外れて働くメリット
扶養を外れて働くようになると、それまでパートやアルバイトに制限されていた人も、様々な働き方ができるようになります。
また、働き方だけでなく、働く時間についての制限を受けることもありません。
そのため、様々な業種や職種の中から、自分が希望する働き方を選択できるようになります。
また、扶養に入るための上限金額を超えて収入を得ている場合、社会保険料を自分で負担することとなります。
社会保険料を支払うことになれば、その分手取金額は減ってしまいます。
ただし、厚生年金保険料を自分で負担している場合、将来的に厚生年金を受け取ることができるようになります。
扶養を外れて働くデメリット
扶養を外れて働くということは、税務上や社会保険の上限を超えて収入を得ることを意味します。
社会保険料の負担が発生するため、毎月一定の社会保険料を支払わなければなりません。
収入が増えるため、社会保険料を負担してもそれほど影響はないと考える方もいるかもしれません。
しかし、実際は社会保険料の負担は大きいため、その保険料を支払うことは簡単なことではないのです。
そればかりか、社会保険料を負担するようになるとかえって手取金額が減ってしまう場合もあるのです。
税務上の扶養を外れれば、扶養者となっていた人の税金が増えてしまいます。
配偶者控除の適用を受けなくなると、多い人では1年で10万円を超える税額増となるのです。
扶養内で働くか決める際に考えたいこと
扶養内で働くことにも、扶養を外れて働くことにも、それぞれメリットとデメリットがあります。
扶養に入るのか、扶養を外れるのかは、その家族の今後の生き方にも影響を与える大きなテーマです。
どのような観点から扶養内で働くのか、扶養を外れるのかを決めるといいのでしょうか。
どのような生活スタイルを求めているのか
扶養内で働くという場合、通常はパートやアルバイトとして年収103万円以内という働き方を選択することとなります。
このような働き方をすれば、子どもが小さくできるだけ長い時間、そばにいてあげたいという親の希望が叶えられます。
ただ、得られる収入は限られてしまうため、働くことにより得られる経済的なメリットは少ないといえます。
一方、扶養を外れて働く場合は、正社員として働くことが多いでしょう。
子どもが小さくても一緒にいられる時間は短くなり、家事や子育てにあてられる時間は限られてしまう可能性は否めません。
一方で、収入は夫婦ともに得られるため、経済的には大きなメリットがあります。
子どもだけでなく、夫婦間の関係や友人などとのかかわり方、趣味など多くの要素があります。
どのような生活スタイルを理想と考えているのかにより、働き方の選択は大きく変わることとなるでしょう。
手取り収入が減っても将来の備えを厚くしておきたいか
社会保険の扶養内で働いていた人が、扶養から外れて130万円の壁を超えても手取りの収入はすぐには増えません。
年収が増えて扶養を外れることになれば、社会保険料の負担が発生し、給料からその額が天引きされるためです。
社会保険料の負担をしても、もとの収入を確保するためには最低でも年収160万円以上は必要です。
ただ、それまで扶養に入っていた人が自分で社会保険に加入することには、大きなメリットがあります。
それは、将来、老後に受給することのできる年金の額が大きく増えることです。
厚生年金の受給額の計算は、現役時代の月々の給与の額と厚生年金への加入期間で決まります。
厚生年金の加入期間が長いほど、そして月々の給料が大きいほど、将来の年金受給額が増加するのです。
年収が増えても手取りの収入が減ってしまったのでは何も意味がないと思うのであれば、扶養から外れないようにすべきです。
逆に、将来に備えておきたいと考えるのであれば、扶養から外れて自分で厚生年金に加入する選択をしましょう。
家族像をどのように思い描いているのか
母親だから、あるいは子育て中だから仕事に制限をかけるという生き方は、今の世の中の流れに逆行していると考える人もいるかもしれません。
むしろ、育児や子育ての経験も活かして仕事に取り組む、キャリアアップを図るという生き方が男女問わず重要視されるのが近年の主流な考え方です。
パートナーの扶養に入るのではなく自分の仕事に励むという夫婦像が見えているのであれば、そのような生き方を選択すべきです。
一方で、子どもとの時間を大切にしたいという生き方もまた、素晴らしい生き方といえます。
特に子どもの成長は早く、あっという間に大きくなってしまいます。
長い人生の中で、子どもと一緒に過ごす時間はわずかですから、その間は子どもとしっかり向き合いたいと考えるのも当然です。
扶養に入る・外れるという選択は、どのような家族像を思い描いているのか、夫婦で話をして考えるいい機会になるのではないでしょうか。
まとめ
扶養に入るか扶養から外れるかは、これからの働き方や収入の問題です。
ただ、実際はそれだけではなく、どのような家族像を思い描いているのか、どのような老後を迎えたいのかにも直結します。
ただ単に扶養に入るのが得と考えるのではなく、どのようなメリットとデメリットがあるのかをよく考えてみましょう。
そして、夫婦間でどのように考えているのかを話し合って、働き方を選択するようにしましょう。