最終更新日:2022/6/6
ふるさと納税のワンストップ特例制度とは?確定申告との違いと手続きの流れや期限
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- ふるさと納税を行った際のワンストップ特例制度について理解できる
- ワンストップ特例制度を利用するための手続きの流れが分かる
- ワンストップ特例制度を利用する場合の注意点について知ることができる
ふるさと納税をしてみたいと考える人にとって、大きな障害となっているのが、確定申告をしなければならないことです。
多くのサラリーマンの場合、年末調整で税金の計算が完結するため、もともと確定申告を行っていません。
そのため、ふるさと納税のために確定申告するのはとても手間だと感じてしまうのです。
そこで、知っておいてほしいのが「ワンストップ特例制度」です。
この制度を利用すれば、確定申告しなくてもふるさと納税による寄付金控除を受けられます。
はたして、ワンストップ特例制度とはどのような制度なのでしょうか。
また、ワンストップ特例制度を利用する際の注意点には何があるのでしょうか。
順番に確認していきましょう。
目次
ワンストップ特例とは?
ワンストップ特例制度とは、確定申告をしなくてもふるさと納税した金額を住民税から控除できるようにする制度です。
とは言っても、そもそもふるさと納税を行うとどのようなことが起こるのかが分からないと、この説明は無意味になってしまいます。
そこで、ふるさと納税をした際の税金計算について簡単に説明しましょう。
ふるさと納税すると税額が控除される
ふるさと納税とは、自分が応援したい自治体に寄付を行うことです。
多くの自治体では寄附金の額に応じて返礼品を送ることとしており、多くのふるさと納税を行っている人はこの返礼品から寄付する自治体と金額を決めています。
寄付した金額は、その人が負担する所得税や現在住んでいる自治体に納める住民税から控除することができます。
ただし、控除できる金額には一定の限度額が設けられており、最大で寄付金額のうち2000円を除く部分の金額を控除することができます。
つまり、言い方を変えれば、自己負担額2000円で様々な返礼品を入手することができる制度なのです。
なお、ふるさと納税による税額控除を受けるためには、原則として確定申告をしなければならないとされています。
ワンストップ特例制度が利用できる場合とは?
原則は確定申告が必要となるふるさと納税ですが、多くのサラリーマンは確定申告をする必要がありません。
そのため、ふるさと納税のために確定申告をするということには抵抗も大きく、ふるさと納税はそれほど利用されていませんでした。
そこで、ふるさと納税のためだけに確定申告しなくてもいいように設けられた制度がワンストップ特例制度です。
ワンストップ特例制度が利用できる条件は以下の2つに該当する人です。
- (1) 確定申告を行う必要のない給与所得者等であること
- (2) 年間に寄付した自治体の数が5団体以下であること
この両方の要件を満たした場合のみ、ワンストップ特例制度を利用することができます。
あくまでも、確定申告が必要なふるさと納税においては例外的な取り扱いのため、要件は厳しく決められています。
ワンストップ特例制度が利用できない人
上記の2つの要件に該当しない人は、ワンストップ特例制度を利用することはできません。
その結果、サラリーマンでも確定申告しなければならない場合があります。
確定申告するケースは数多くありますが、特にサラリーマンの方で注意が必要なのは以下のような場合です。
- (1) 年収が2000万円を超える場合
年収が2000万円を超える人は、もともと年末調整を行うことはできず、確定申告を行う必要があります。 - (2) メインとなる会社以外の給与収入が20万円以上ある
あまり多いケースではありませんが、副業解禁が広まった状況では、今後増えることが予想されます。 - (3) 給与所得以外の所得が20万円以上ある
(2)と同じく、副業からの所得が一定額を超えると確定申告が必要となり、ワンストップ特例制度は適用できません。 - (4) 医療費控除や住宅ローン控除のために確定申告する
どのような理由であっても、確定申告する場合にはワンストップ特例制度は適用できません。 - (5) 年間で6以上の自治体にふるさと納税を行った
ワンストップ特例制度の要件を満たさないため、確定申告しなければなりません。
ワンストップ特例制度を利用する場合と確定申告する場合の違い
ワンストップ特例制度を利用する場合と確定申告する場合には、どのような違いがあるのでしょうか。
ここではその違いについて確認していきます。
利用できる人の違い
利用できる人についてはすでに確認してきました。
ワンストップ特例制度を利用できる人は、確定申告の必要ない給与所得者等で、5以下の自治体に寄付した人です。
確定申告を行う必要のある人、6以上の自治体に寄付した人は確定申告を行わないと税額が控除されません。
手続きの違い
確定申告によりふるさと納税の額を控除する場合は、確定申告書の寄付金の欄に寄付した自治体と金額を記載するだけです。
また、提出する確定申告書に寄付金の受領証明書を添付し、申告書と一緒に税務署に提出します。
寄付金の受領証明書がないと寄付金控除の適用を受けることはできないことから、なくさないように保管しておく必要があります。
なお、寄付した都度、自治体から寄付金の受領証明書が送られてきますが、実際に使うのは確定申告を行う翌年2月~3月です。
紛失してしまうと再発行には時間がかかることから、なくさないように保管しておきましょう。
一方、ワンストップ特例制度の手続きの流れは後で詳しく説明しますが、自治体から書類が郵送されてきた都度、手続きを行います。
そのため、5か所に寄付を行った場合は5回手続きが必要となるのです。
しかし、その都度手続きを行えばいいため、書類を紛失するような心配はほとんどありません。
控除される金額の違い
ワンストップ特例制度は、確定申告の特例として設けられた制度です。
あくまで納税者の利便性に配慮して設けられた制度であり、税額の計算に影響がないようにされています。
ただ、手続きの違いから計算過程には違いがあります。
確定申告した場合は、まず所得税について寄付した金額について控除が適用され、還付を受ける場合もあります。
その後、住民税についての計算も行われ、寄付金額相当分の控除をした後の金額を住んでいる自治体に納税することとなります。
これに対して、ワンストップ特例制度を利用した場合は、所得税については控除されません。
全額を、住んでいる自治体に対して納める住民税から控除することとなります。
なお、自己負担を最小の2000円に抑えるためには、ふるさと納税を一定額以内に抑える必要があります。
このことは、確定申告した場合もワンストップ特例制度を利用した場合も変わりはありません。
ワンストップ特例制度申請の流れと期限
それでは、実際にワンストップ特例制度を利用するためには、どのような手続きが必要となるのでしょうか。
ふるさと納税を行うところから、その流れを確認していきましょう。
ふるさと納税する自治体と金額を決める
ふるさと納税を行う際には、多くの人はポータルサイトを利用するでしょう。
どの自治体に寄付を行いたいか、あるいはどのような返礼品がほしいかといった点から、買い物をするように選んで構いません。
この段階では、ワンストップ特例制度を利用するために注意しなければならない点もありません。
どの自治体に寄付を行っても、ワンストップ特例制度を利用することはできるからです。
ただ、ワンストップ特例制度が利用できるのは、年間で5自治体までとされていることには注意してください。
また、同一の自治体に複数回寄付を行った場合は、あくまで1自治体となるため、勘違いしないようにしましょう。
ワンストップ特例制度を利用することを申請する
多くのポータルサイトでは、ふるさと納税を行う際に、ワンストップ特例制度を利用するか否かを選択するようになっています。
これは、ワンストップ特例制度を利用するか、確定申告を行うかによって必要となる書類が異なるためです。
確定申告を行う際には、各自治体が発行した寄付金の受領証明書を確定申告書に添付しなければなりません。
そのため、寄付金を支払った後に受領証明書が送られてきます。
これに対して、ワンストップ特例制度を利用する場合には、寄付金の受領証明書を確定申告に使うことはありません。
その代わり、ワンストップ特例制度の申請書を各自治体に郵送することとされています。
ワンストップ特例制度の申請書は、寄付を受け付けた自治体から送られてくるため、正しく手続きするようにしましょう。
なお、送られてきたワンストップ特例制度の申請書については、必要書類とあわせて返送する必要があります。
この手続きについては後ほど詳しく解説していきます。
住民税の控除
ワンストップ特例制度を利用する場合は、寄付した自治体に申請書を提出すれば、自動的に住民税が計算されます。
そのため、特に何かの手続きが必要になることはありません。
寄付を行った年の翌年6月から翌々年5月までの間に納付する住民税の額は、ふるさと納税の額を考慮した金額となっています。
ふるさと納税を利用した人の中には、実際にどれだけ住民税が控除されたかを確認したいという人がいるかもしれません。
その場合は、住んでいる自治体から勤務先に送られてくる住民税課税決定通知書で確認することができます。
住民税課税決定通知書は、勤務先から6月から7月にかけて個人宛に交付されるため、その内容を確認してみましょう。
ワンストップ特例制度の申請の期限
ワンストップ特例制度を利用することを申請するには、期限を守らなければなりません。
その期限は、寄付を行った年の翌年1月10日となっています。
1月10日までにワンストップ特例制度の申請書と必要書類を寄付した自治体に郵送し、到着していなければなりません。
年末ギリギリに寄付を行った場合、ワンストップ特例制度の期限に間に合わない可能性もあります。
どうしても確定申告を行いたくない場合には、早めにふるさと納税を行うようにしましょう。
なお、ふるさと納税は1月1日から12月31日までに行った寄付金の支払額を集計し、税額の計算を行います。
クレジットカードの決済による支払の場合、実際に代金が銀行口座から引き落とされる日ではなく、カード決済した日となります。
どの日が支払った日となるか間違えないようにして、控除される限度額や申請の期限を確認しておきましょう。
ワンストップ特例制度に必要なもの
ワンストップ特例制度を利用するのに、特別難しい手続きはありません。
申請の際に必要なものを確認しておきましょう。
ワンストップ特例制度の申請書
ワンストップ特例制度を利用したいとする旨を申請するための書類です。
基本的には、寄付する際に自治体にワンストップ特例制度を利用することを希望すると、その申請書が送られてきます。
送られてきた申請書に必要事項を記載することとなります。
なお、ふるさと納税のポータルサイトによっては、ワンストップ特例制度の申請書をダウンロードで入手する場合もあります。
この場合もダウンロードした後に、必要な項目を記載するという流れとなります。
また、申請用紙を自分で入手し、記載するという方法もあります。
この場合は、住所や氏名などのほか、寄付を行った日や金額などを間違えずに記載する必要があります。
本人確認書類
ワンストップ特例制度を利用するためには、申請書に本人確認書類を添付しなければなりません。
本人確認書類として有効なものには、以下の2つのパターンがあります。
- (1) マイナンバーカードの両面の写し
- (2) マイナンバーの通知カードの写しもしくは個人番号の入った住民票の写し+運転免許証もしくはパスポートなど、写真付き身分証明書の写し
封筒、切手
申請書や必要な書類を郵送するため、封筒や切手を準備します。
郵便料金の不足とならないよう、必ず郵便局で確認してから送るようにしましょう。
ワンストップ特例制度を利用する場合の注意点・デメリット
ワンストップ特例制度を利用すれば、ふるさと納税を行った場合でも確定申告をする必要がないことが分かりました。
ところで、ワンストップ特例制度を利用する際には、どのような点に注意すべきなのでしょうか。
ワンストップ特例制度はふるさと納税だけに関する制度なので、確定申告を行う場合には特に注意しなければなりません。
ワンストップ特例制度と確定申告を併用することはできない
ワンストップ特例制度を利用することができるのは、1年間に寄付した自治体の数が5以下の場合です。
5つの自治体まではワンストップ特例制度を利用でき、それを超えた分は確定申告する必要があるということではありません。
例えば、5自治体を超えて8つの自治体にふるさと納税を行ったとします。
そして、5つの自治体についてはワンストップ特例制度の申請書を郵送し、残りの3つの自治体については確定申告したとします。
この場合、確定申告をしているためワンストップ特例制度の申請を行った5つの自治体については無効となります。
しかし、確定申告に記載したのは3つの自治体だけですから、無効となった5つの自治体については税額控除の対象となりません。
6以上の自治体に寄付を行い確定申告が必要となった場合には、必ずすべての自治体について確定申告を行いましょう。
なお、当初は5自治体までに抑えるつもりで、ワンストップ特例制度の申請をしていることがあります。
しかし、その後寄付した自治体の数が増えて、6以上となってしまうことも考えられます。
このような場合は、先に行ったワンストップ特例制度の申請についてはそのまま放置しておいて問題ありません。
ただ、確定申告を行う際には、必ずすべての自治体について申告を行うようにしましょう。
もし、寄付金の受領証明書を捨ててしまった場合には、早めに再発行を依頼するとよいでしょう。
医療費控除の適用を受ける場合
医療費控除の適用を受けるためには、年末調整ではなく確定申告を行わなければなりません。
また、医療費控除を適用するためには、原則として1年間に支払った医療費の額が10万円を超えなければなりません。
1月や2月の時点では医療費控除が適用できないと考えて、ワンストップ特例制度を利用している人もいるでしょう。
しかし、その後医療費の支払いが予想より多くなり、1年間で10万円を超えた場合には、医療費控除が適用できるのです。
ただ、医療費控除を適用するために確定申告を行う場合には、ワンストップ特例制度は利用できなくなります。
そのため、提出済のワンストップ特例制度の申請書はそのまま、医療費控除の確定申告を行う際に寄付金についても申告しましょう。
住宅ローン控除を適用する場合
住宅の建築・購入やリフォームのために、住宅ローン控除を利用する場合があります。
この住宅ローン控除の適用を受けるためには、必ず確定申告をしなければなりません。
金融機関の残高証明書や契約書などの必要書類を、確定申告書に添付して提出する必要があります。
なお、住宅ローン控除については最大10年間適用を受けることができます。
しかし、確定申告が必要になるのは、最初の1年目だけです。
残りの9年間については、必要書類を勤務先に提出したうえで、年末調整で適用を受けることができるのです。
したがって、ふるさと納税を行った際にワンストップ特例制度が利用できないのは、住宅ローン控除適用1年目だけです。
適用2年目以降はワンストップ特例制度が利用できるため、確定申告が面倒な場合はワンストップ特例制度を利用しましょう。
株式の取引を行っている人が確定申告する場合
サラリーマンが確定申告しなければならない場合の中に、給与所得以外の所得が20万円以上ある場合というものがあります。
これは、副業などを行っている人や不動産所得がある人がおもなターゲットとなるものです。
一方、株式の取引を行っている人は、損失が出た場合に確定申告することがあります。
これは、譲渡損失を翌年以降3年間繰り越して、翌年以降の利益と相殺するためです。
このような時にも、確定申告を行う場合にはワンストップ特例制度を利用することはできません。
株式の取引を行っている人の場合、確定申告するかしないかの判断は年明けまで分からないこともあります。
最終的にどちらになってもいいように、ふるさと納税を行った都度ワンストップ特例制度を利用するのもよいでしょう。
あるいは、最初からワンストップ特例制度を利用しないものとして、確定申告する準備をするのもよいでしょう。
まとめ
ふるさと納税を行って税額控除を適用するためには、確定申告を行うことが原則とされています。
しかし、サラリーマンで確定申告を行う必要のない人は、ふるさと納税のためだけに確定申告を行う必要はありません。
その代わり、ワンストップ特例制度を利用して住民税から控除を受けることができるのです。
ワンストップ特例制度を利用するためには、確定申告を行う必要があるかどうかの判断が重要となります。
もし確定申告を行う場合には、ワンストップ特例制度が利用できなくなるので、すべての寄付について確定申告しましょう。