最終更新日:2020/5/22
フリーランス(個人事業主)の節税対策は『8つの控除』と『3つの経費』で賢くお得に!
この記事でわかること
- 所得控除と必要経費の違いについて理解できる
- 確定申告の際に自分で節税対策ができる
フリーランスになると、自分で確定申告し、自分で税金を納めなければなりません。
サラリーマン時代には気にしていなかった税金計算の方法を意識し、税額の大きさを実感することになるかもしれません。
そこで、フリーランスの方が節税を行う際に重要な所得控除と必要経費について解説します。
目次
フリーランスの節税対策のキモは『控除』と『経費』
フリーランスの方は、1年間の所得金額と所得税額を計算するため、毎年確定申告をしなければなりません。
所得金額が少なくなれば所得税額も少なくなりますから、節税対策に重要なのが「控除」と「経費」の違いを理解して、正しくその金額を集計することです。
フリーランスの方の所得金額は、「収入金額-必要経費-青色申告特別控除-所得控除」により求められます。
このうち「収入金額-必要経費-青色申告特別控除」までの金額が、フリーランスの方の事業所得となります。
事業所得を計算する際に必要経費として計上する金額は、収入を得るために直接必要と考えられる経費をいいます。
税務署に提出する青色申告決算書には、消耗品費や通信費など項目ごとの金額を記載しますが、明細や領収書などは手元で保管しておきます。
収入を得るためにどのような支出が必要経費になるかは人によって違うため、経費の項目も人それぞれです。
項目名やその内容に制限はなく、収入を得るために必要な支出であることが説明できれば必要経費として認められます。
これに対して所得控除は、フリーランスに限らずサラリーマンでも認められるものです。
その項目が細かく定められているほか、所得控除を適用するために証明書などの書類を税務署に提出しなければならないものもあります。
所得控除を利用して節税対策を考える場合には、支出の目的とその節税効果についてあらかじめ知っておくことが重要なのです。
フリーランスが活用できる8つの控除
フリーランスの方が所得控除として利用できるものを挙げてみます。
中には、その内容を詳しく知らないものもあるかもしれませんので、まずは概要をつかんでおきましょう。
控除の種類 | 内容 | 控除できる金額 |
---|---|---|
基礎控除 | 令和元年分まではすべての人に適用されます。令和2年分以降は所得金額により変動します。 | 令和元年分までは一律38万円。令和2年分以降は最大48万円に変更されます。 |
配偶者控除・配偶者特別控除 | 一定の所得金額以下の配偶者がいると、申告書に記載することで適用されます。 | 納税者本人と配偶者の所得金額により変動し、最大38万円。 |
扶養控除 | 同一生計に所得金額38万円以下(令和2年分以降は48万円以下)の扶養親族(16歳以上)がいる場合に適用されます。 | 扶養親族の年齢や同居の有無により金額が変動し、38万円~63万円。 |
医療費控除 | 医療費や医薬品の購入費用から保険金などを受け取った金額を差し引き、10万円を超えれば適用されます。 | 支払った医療費によって異なります。(最大200万円) |
個人型確定拠出年金 (iDeCo) | iDeCoの加入者が1年間に支払った掛金の全額について適用されます。 | 掛金の額により異なります。(最大月68,000円) |
小規模企業共済 | 個人事業主や中小企業の役員などが加入できる小規模企業共済の掛金の全額について適用されます。 | 掛金の額により異なります。(最大月7万円) |
ふるさと納税 | ふるさと納税を行うと、その金額について寄附金控除が適用されます。 | 「寄付金額-2,000円」が寄附金控除の金額となります。 |
青色申告特別控除 | 青色申告を行うことについて税務署から承認を受ければ適用できます。 | 65万円 |
個人型確定拠出年金(iDeCo)とは
個人型確定拠出年金とは、自分で拠出した掛金を運用し、資産を形成する年金制度です。
60歳になるまで掛金を拠出し、60歳以降に老齢給付金を受け取ることができますが、逆に60歳になるまで運用している資産を引き出すことはできません。
個人型確定拠出年金の掛金を拠出すると、その掛金の全額が所得控除の対象となります。
掛金の上限額は加入者によって異なりますが、フリーランスの方が個人型確定拠出年金に加入した場合、その拠出限度額は月額68,000円、年額816,000円となります。
掛金は自分で設定することができるほか、途中で変更することも可能なため、それぞれのライフスタイルに合わせて決めるといいでしょう。
小規模企業共済とは
小規模企業共済とは、小規模な企業の経営者・役員や個人事業主が、将来の退職時や廃業時に備えて積み立てを行うものです。
また、15年以上加入した場合は65歳以上になると老齢給付を選択することもできるため、退職後・老後の備えとして利用されています。
小規模企業共済の掛金を拠出すると、その掛金の全額が所得控除の対象となります。
掛金の月額は1,000円から7万円までの範囲内(500円単位)で自由に設定することができますし、途中で変更することもできます。
また、掛金の納付方法も月払い、半年払い、年払いから選択することができます。
掛金の額によって、将来受け取ることのできる金額が決まるため、将来の備えをどの程度しておく必要があるか考えながら掛金を決めるといいでしょう。
忘れず経費化したい3つの主な経費
必要経費となる支出の内容は人によって異なるため、所得控除のように具体例をあげて説明することは困難です。
しかし、「収入を得るために直接必要な経費」という原則を正しく理解して、漏れのないように計算を行うことが、結果的に節税につながります。
物品購入により発生する必要経費
必要経費になるもので一番分かりやすいのが、物品を購入した時の支出です。
仕事のためだけに使うものすべてが必要経費になります。
実際には、パソコンやソフトウェア、文房具などの事務用品などがあります。
また、仕事上の情報を得るための書籍や雑誌、車で移動した際のガソリン代や高速代、さらに打ち合わせを行った際のコーヒー代や食事代も必要経費です。
気をつけなければいけないのが、1台あたり10万円を超えるようなパソコンや車両を購入した場合です。
10万円未満の資産であれば購入金額の全額が購入した年の必要経費となりますが、10万円を超える資産については原則として固定資産に計上したうえで、定められた年数で減価償却を行う必要があります。
固定資産に計上した資産は、固定資産台帳に登録することも忘れてはいけません。
また、物品購入に限らずサービスの提供を受けるための支払いも必要経費になります。
広告掲載料やパソコンの保守料・通信費、セミナーの受講料や郵送料など、事業に関係するものであれば必要経費となるため、漏れのないように集計していきましょう。
なお、決算書を作成する際にどの勘定科目に含めればいいか分からないと悩むかもしれませんが、税務署が勘定科目を決めるわけではありません。
その支出の内容と勘定科目の名称があっていれば問題はないため、深く悩む必要はありません。
開業費も必要経費になる
事業を始める前の支出については必要経費になるのでしょうか。
実は開業準備の段階で支払った費用についても、事業のための支出と認められるため、必要経費と認められます。
フリーランスとして活動するために受講したセミナーの費用や書籍の購入費、市場調査や打ち合わせを行った際の交通費・飲食費、広告費用や名刺代などは開業前に支払われることの多いものです。
どれくらい前までに支払った開業費を必要経費に入れることができるのか、はっきりとした決まりはありません。
ただ、確定申告をするのは実際にフリーランスになって収入を得るようになってからであるため、事業との関連性を説明できるように整理しておく必要があります。
また、支出の時期が前になるほど必要経費と認められない可能性が出てくるため、開業より1年以上前の支出については、はっきり事業に関係していると言えるものだけを開業費とするようにしましょう。
家事按分により必要経費となる金額を計算する
個人事業主の場合、プライベートな支出と事業に関係する支出が同一名義の口座から支払われることになります。
また、実際に自宅で仕事をしたり、車両をプライベートにも事業にも使用したりするため、完全にどちらかの支出と区分することができません。
そこで、プライベートと事業の両方に関係する支出については、その支出を按分して必要経費に入れる部分と入れない部分の金額を計算します。
このことを家事按分といいます。
自宅で仕事をする際の家賃や光熱費・通信費、車両のガソリン代や保険料など、家事按分により必要経費とすることのできる支出は意外に多くあります。
家事按分する際の比率について、その根拠があいまいなケースは問題とされるため、必ず客観的なデータに基づいた根拠を作成するようにしましょう。
まとめ
サラリーマン時代は、会社で年末調整を受けるため自分で税金計算を行う必要はなく、節税を意識することも少なかったのではないでしょうか。
そのため、フリーランスになって自分で確定申告を行うと、その税額の大きさに驚く人が多いと思います。
ここに書いた節税対策を利用して、少しでも税額が少なくなるような方法を考えてみましょう。