最終更新日:2024/2/6
法人投資信託で利益が出たときの税金処理方法まとめ
ベンチャーサポート税理士法人 税理士。
大学を卒業後、他業種で働きながら税理士を志し科目を取得。
その後大手税理士法人を経験し、現在に至る。
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この記事でわかること
- 法人が投資信託を購入する意義やねらいを知ることができる
- 法人が投資信託から利益を得た場合に発生する税金がわかる
- 法人が投資信託に投資した時に必要な会計処理を知ることができる
法人は手元の余裕資金を、安全な金融商品である定期預金などで運用するのが一般的です。
ただ、金融機関に預けていてもほとんど利息がつかないため、比較的安全な別の運用方法を探すケースも増えています。
そのような中で、投資信託に投資する法人が増えつつあります。
投資信託を購入して利益が出ると税金はどうなるのか、会計処理はどのように行うのか、解説していきます。
目次
法人投資信託とは
法人投資信託とは、法人が資産運用の手段として投資信託を購入することをいいます。
法人が資産運用を行うことについて、経営者の中には抵抗を持つ方もいるでしょう。
しかし、法人がより利益を得ることができ、そのリスクを最小限にとどめることができるのであれば、法人にとってメリットがあります。
投資信託は、多くの投資家から集めた資金を、運用の専門家が定めた方針に従って投資を行い、利益を得るものです。
どの投資信託に投資するかを決めるのは投資家自身ですが、その後は専門家にすべてを任せることができます。
投資家がどのような方針で運用商品を選定しているのかにより、その投資信託のリスクは変わります。
できるだけリスクの低い投資信託を選んで購入すれば、元本割れなどマイナスになる可能性を低くすることができるといえます。
投資信託は、日々その価格が変動します。
そのため、購入した時より売却した時の価格が上昇していれば、法人は利益を得ることができます。
また、投資信託の中には、定期的に獲得した利益を分配するものもあります。
この分配金を受け取ることでも、法人は利益を得ることができます。
法人投資信託で利益が出たときにかかる税金
法人が投資信託を購入して運用している場合、どのような利益が発生するのでしょうか。
また、その利益に対してはどのような税金がかかるのでしょうか。
譲渡した時に利益が出た場合
投資信託は、自由に購入や売却することができます。
そのため、投資信託の価格の変動を確認しながら、売却することがあります。
この時、購入時の価格より高い価格で売却することができれば、「売却価格-購入価格」で計算した金額が利益となります。
このような利益を得た法人は、投資信託以外に本業などから得た利益の額と合わせて税金計算を行います。
本業から得た利益と、投資信託を売却して得た利益を合わせて、その事業年度に得た利益を計算します。
トータルの利益に対して法人税率を乗じて、法人税額を求めます。
仮に本業が赤字となっている場合は、投資信託から得た利益と本業の赤字を相殺します。
その結果、トータルで利益が出ている場合には、その利益に法人税率を乗じます。
一方、トータルで赤字となった場合には、法人税額は発生しないため、申告だけ行います。
分配金を受け取った場合
購入した投資信託を保有している間に、分配金を受け取ることがあります。
分配金を受け取ると、その分配金も法人の利益となるため、法人税の計算に含めなければなりません。
ただ、分配金を受け取る時には、譲渡の場合と大きな違いがあります。
それは、分配金の額から15.315%の源泉所得税が徴収されていることです。
つまり、法人が受け取る分配金は、源泉所得税が差し引かれた後の金額ということになります。
分配金を受け取った法人も、法人税の申告を行う際には、その分配金を利益に含めなければなりません。
この時、分配金による利益の額は、源泉所得税徴収前の金額となることに注意が必要です。
分配金も含めたトータルの利益を求めたら、その利益に対して法人税率を乗じ、法人税額を求めます。
なお、法人税の計算を行う際に、「受取配当等の益金不算入」の適用を受けられる場合があります。
投資信託の内容によっては、分配金の金額の一部が法人税の計算対象になりません。
適用を受けられると、法人税の負担がその分軽減されますので、該当するかどうか確認しておきましょう。
その後、分配金受け取り時に源泉徴収されている税額を法人税額から控除します。
これは、分配金に対する税額が、受け取り時と法人税計算時の2回発生しており、二重課税にならないようにするためです。
もし本業と分配金による利益を合計して赤字となっている場合は、法人税額は発生しません。
この場合は、分配金から源泉徴収されていた税額は税務署から還付されます。
法人投資信託で会計処理が必要なとき
法人が投資信託に対する投資を行う場合、投資信託を購入・売却する時、あるいは分配金を受け取る時に会計処理が発生します。
そこで、法人が投資信託による運用を行う場合に発生する会計処理について、解説していきます。
なお、ここではおおまかな解説とし、別記事で会計処理の詳しい解説を掲載しています。
投資信託購入時
投資信託を購入した時には、「有価証券」あるいは「投資有価証券」で会計処理を行います。
このうち、資産運用など長期的に保有する場合には、投資有価証券の勘定科目を使うこととなります。
投資信託売却時
保有していた投資信託を売却する場合には、購入価格との差額を求める必要があります。
売却価格が購入価格を上回っている場合は、その差額を「有価証券売却益」として処理します。
一方、売却価格が購入価格を下回っている場合は、その差額を「有価証券売却損」として処理します。
分配金受取時
投資信託を保有している間に分配金を受け取った場合は、「受取配当金」を使って処理します。
また、受け取り時に源泉所得税を差し引かれているため、「仮払金」や「法人税等」などの科目で処理しておきます。
特別分配金受取時
定期的に分配金を受け取る場合に、その分配金が特別分配金と呼ばれることがあります。
この特別分配金は、購入した投資信託の元本の払戻しに該当し、法人の利益になる金額ではありません。
受け取った特別分配金は、「有価証券」あるいは「投資有価証券」のマイナスとして処理を行います。
また、特別分配金からは源泉所得税は徴収されないため、注意が必要です。
まとめ
普通預金や定期預金に資金を預けていても、利息はほとんどつかないため、別の運用方法を探している法人は多いでしょう。
そのような法人にとって、投資信託は有力な候補の1つとなることでしょう。
リスクがまったく無いわけではありませんが、リスクを抑えつつ、資産を増やすことが可能です。
投資信託の取引にかかる会計処理を適切に行い、法人税の納税を忘れないようにしましょう。