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最終更新日:2022/10/20

一般社団法人の社員とは?役割や権限・責任を解説【必要な資格はある?】

森 健太郎
この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

一般社団法人の社員とは?役割や権限・責任を解説【必要な資格はある?】

この記事でわかること

  • 一般社団法人の社員とはどのような人のことをなのかがわかる
  • 一般社団法人の設立に必要な社員数がわかる
  • 一般社団法人の社員の役割や責任、必要な資格などがわかる

一般社団法人という法人をご存知でしょうか。

一般社団法人という名称からすると、ものすごく公共性・公益性が強い特別な法人のように感じるかもしれませんが、実際は誰でも設立可能な法人です。

ここでは、設立にあたって疑問に感じる人の多い一般社団法人の社員について、役割や権限・責任、必要な資格などについて解説します

一般社団法人の社員とは

一般社団法人の社員とは、会社の従業員をいう場合の社員とは、その中身も役割もまったく異なるものです。

一般社団法人の社員とは、一般社団法人の構成員のことをいいます

株式会社の株主総会に相当する社員総会では、議案を提出したり、議決に参加したりして、法人の運営に関わっていきます。

株式会社で株主総会に参加するのは株主ですから、一般社団法人の社員は株式会社の株主に似た立場ともいえるでしょう。

しかし、一般社団法人の社員と株式会社の株主にはいくつか違いがあります。

詳しく確認していきましょう。

一般社団法人の社員と株式会社の株主の違い

一般社団法人の社員と、株式会社の株主はよく似ていますが、どのような点が異なるのでしょうか。

一般社団法人は配当ができない

一般社団法人は、事業活動により得た利益を社員に配当として還元することはできません

これは、一般社団法人は営利を目的としない法人であるためです。

一方、株式会社は営利を目的として設立された法人です。

そのため、剰余金を株主に配当することが可能ですし、そもそも配当することが株式会社の存在意義でもあります。

議決権の考え方が違う

一般社団法人の社員は、1人につき1個の議決権を有しています

議決権の数は、出資金額などには関係ありません。

一方、株式会社の株主は、多くの金額を出資した人ほど多くの議決権を有しています。

そのため、多額の出資をした人の意見が通りやすい状況にあります。

一般社団法人の設立時には社員が2名必要

一般社団法人を設立する際には、社員が2人以上必要です

また、一般社団法人を設立する者(発起人)のことを、一般社団法人の設立時社員といいます。

設立時社員の住所や氏名を、設立にあたって作成する定款に記載することとされています。

一般社団法人の社員には、個人だけでなく法人が就任することもできます。

そのため、法人の意思を一般社団法人の運営に反映させて、より幅広い活動を行うことも可能です。

また、既存の法人が新たに一般社団法人を設立し、現在の法人ではできない事業を行うこともあります。

一般社団法人の社員の役割・権限

一般社団法人の社員にはどのような役割があるのか確認していきましょう。

定款の作成

設立時社員は、その法人の設立にあたって定款を作成しなければなりません。

定款の作成は、設立時社員の大きな役割の1つです。

定款には、その一般社団法人の目的、名称、主たる事務所の所在地を記載します。

また、設立時社員の住所や氏名・名称を記載するとともに、社員の資格の取得に関する規定を設けなければなりません。

さらに公告方法や事業年度についての規定も記載する必要があります。

このほか、設立する法人に関する多くのことを定款に規定しておくことが可能です。

定款の作成を行い、その内容を決める役割を持つということは、法人の名称や所在地を決める役割を持つことを意味します。

定款の閲覧の請求

一般社団法人の設立前に、関係者から定款の閲覧を求められることがあります。

また、設立時社員は定款の閲覧を請求することができます。

設立前における定款の閲覧請求に対しては、設立時社員がすべて対応する必要があります

設立時役員の選任・解任

一般社団法人における役員とは、理事と監事のことをいいます。

このうち理事は、どの一般社団法人であっても必ず設置しなければなりません

一方、監事については必ず設置しなければならないわけではなく任意とされています。

理事とは、株式会社における取締役のような役割を持ち、法人の実際の運営や経営に関する業務を行います。

最低1名は理事に就任しなければなりません。

設立時に理事に就任する人を選任するのは、設立時社員の重要な役割の1つです。

また監事とは、株式会社における監査役のような役割を持ち、決算監査や法人の運営について法令違反がないかを監視します。

監事を置くかどうかは法人の任意とされていますが、監事を設置する場合は設立時社員がその人を選任することとなります。

さらに、設立時役員として選任した理事や監事について、何らかの事情により解任する場合も、設立時社員が行います。

社員総会における議決権

社員総会とは、株式会社における株主総会に相当するもので、一般社団法人の意思決定機関として機能しています。

社員総会では、定款の変更や役員(理事・監事)の選任・解任に関する決議を行い、役員報酬の決定や役員の責任一部免除の承認など、役員に対する強い権限を持っています。

さらに、一般社団法人の決算の承認や事業の譲渡・合併に関する承認など、法人の運営に関する意思決定を行います。

このように、社員総会は法人の経営や役員に関する強い権限を持っており、社員の役割は大変大きなものであるといえるのです。

社員総会で議決権を有するのは社員だけであるため、社員が法人の行く末を決めるといっても過言ではありません。

社員総会の社員提案権

一般社団法人の社員総会で、どのような議題について話し合い、何を議案とするかは理事会あるいは理事が決めるのが原則です。

普段から一般社団法人の運営に深く携わっている理事の考えが社員総会にも反映されます。

しかし、一方では社員の考えは社員総会に反映しにくくなるというデメリットが考えられます。

そこで、一般社団法人の社員が議題や議案を提案できる権利を与えられており、これを社員提案権といいます。

社員として一般社団法人の運営に関わるうえで大きな権限の1つであり、積極的にこの権利を活用することが求められています。

役員の責任追及等

一般社団法人の役員である理事や監事が不正を行ったり不祥事を起こしたりした場合、理事や監事の責任を追及することができるのは社員です。

役員の解任を行うためには社員総会での決議が必要となり、社員総会で決議された場合はその役員を解任することができます。

また、社員総会での決議があればいつでも解任することができるため、臨時の社員総会を招集することも可能です。

設立時社員が負う責任

設立時社員は、設立に際していくつもの責任を負うことが定められています。

特に設立時社員に対する責任は、設立後に社員になった人が負う責任とは異なる部分があり、注意が必要です。

そして、これらの内容に抵触する場合は、個人として責任を問われる可能性があります。

任務懈怠にもとづく損害賠償責任

任務懈怠責任とは、その人が任務を怠ったために生じた損害について、賠償する責任のことをいいます。

一般社団法人の設立時社員が、その設立に関する任務を怠ったために損害が生じた場合、その損害を賠償しなければなりません

「任務を怠った」とはたとえば、法令違反行為をした場合は任務懈怠とされるのが原則です。

また、他の設立時社員や設立時役員を監視する義務を怠ったために損害が生じた場合も、任務懈怠とされる可能性があります。

第三者に対する損害賠償責任

職務を行ったものの、悪意または重大な過失により第三者への損害が発生した場合、その損害を賠償しなければなりません

法人不成立に対する責任

設立時社員が設立しようとしている一般社団法人の設立ができなかった場合でも、それまでに費用を支出していると考えられます。

設立に関して支払った費用については、設立時社員が連帯して負担しなければならないとされています。

賠償責任が免除される場合がある

任務懈怠や第三者に対する損害賠償責任については、すべての社員の同意により免除してもらうことが可能です。

あくまで損害賠償責任を設立時社員が負うのが原則であり、免除するためには高いハードルが設けられています。

一般社団法人の社員になるのに必要な資格

一般社団法人を設立する際に作成する定款には、設立後に社員となるための資格や入社手続きについて定めておく必要があります。

この時、実際にどのような内容の規定にするかは、その法人の自由です。

一般社団法人の社員に関して、その条件や資格に関する法律の規定はないため、法人が自由にその条件などを決めることができます

また、特段の条件や資格を設けないことも考えられます。

実際に条件や資格についての規定を設ける場合には、どのようなものが考えられるでしょうか。

条件・資格の例
同業者団体の法人を設立する場合その業種の事業を営んでいる者やその業種の会社に勤務する者
同窓会などの団体で一般社団法人を設立する場合その学校の卒業生であること
医療に関する一般社団法を設立する場合医師や看護師、あるいはそのほかの医療系の資格を保有している人

このほかにも様々な形で条件を設けて、特定の人が社員に就任するようにしておくことができます。

一般社団法人の社員が資格を失うとき

一般社団法人の社員となった人は、いつまでも社員であり続けるわけではありません。

時には、強制的に社員を外されてしまうケースも考えられます

ここでは、社員が資格を失う時として考えられる3つのケースをそれぞれご紹介します。

任意退社の場合

一般社団法人の社員は、定款にどのような規定を設けている場合でも、やむを得ない事由がある場合はいつでも退社できます。

このことを任意退社といいます。

自分の意思で、辞めたい時に社員を辞めることが可能です。

法定退社の場合

一般社団法人法では、本人の意思による退社以外に、自動的に退社することとなる事由を定めています

この事由に該当する場合は、本人の意思に関係なく社員の資格を失い退社しなければなりません。

法定退社の事由として定められているのは、以下の場合です。

  • (1)定款で定めた事由の発生
    たとえば、社員になる人は特定の業種に携わっている人に限るとしている場合で、その人が仕事を辞めた場合などが該当します。
    また、会費を一定期間以上滞納した場合には、社員資格を喪失するという規定を設けるケースがあります。
  • (2)総社員の同意
    すべての社員が退社させることに同意している場合、本人の意思に関係なく退社させられることになります。
  • (3)死亡または解散
    個人が死亡した場合、それ以後社員であることはできないため、社員の資格を失います。
    また、法人が社員になっている場合でその法人が解散した場合も、同じように自動的に社員ではなくなります。

除名の場合

除名とは、正当な事由がある場合に、社員総会の決議により社員を退社させることをいいます。

除名の対象となった社員に対しては、社員総会の一週間前までにその旨を通知する必要があります。

また、その社員に弁明の機会を与える必要があるため、一方的な決議で除名することはできません。

まとめ

一般社団法人は誰でも設立可能な法人ですが、社員の役割や責任について他の法人とは違う点が多くあります。

社員総会で議決権を有するのは社員だけで、社員総会は法人の経営や役員に関する強い権限を持っているため、社員の役割は大変大きなものといえます。

また、設立時社員の責任は、設立後に社員になった人が負う責任とは異なる部分があり、個人として責任を問われる可能性があるため注意が必要です。

一般社団法人を設立する際は、他の法人との違いや社員の役割・責任をなどをしっかり確認しておきましょう。

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