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【税理士が作った経営者の教科書】 会計編 第2回「利益があるのにお金がない理由」

森 健太郎

この記事の執筆者 税理士 森健太郎

ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。

PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック

今回は多くの起業家の方からご質問をうけた内容について、ご説明をさせていただきます。

「なぜ通帳の残高が少ないのに、会計上では利益があるの?」

こういった質問は起業家の方なら一度は必ず考える問題ではないでしょうか?

社長からすると通帳にお金が残っていなければ、利益も出ていないという感覚になるのが、当然ですね。

ですが、不思議なことにお金がないのに会計上は「利益が出ている」ということがあるのです。

その理由はたくさん考えられますが、主な要因を挙げますと次の4点が考えられます。

  • 在庫が増えている
  • 売掛金や未収入金が増えている
  • 建物や内装、社用車などの固定資産への支出がある
  • 役員借入金が減っている又は役員への貸付金が発生している

この4点に該当しますと、会社の通帳に残高が少なくても利益が残って、結果的に法人税などの税金が発生する可能性があります。

もう少し詳しく見ていきましょう。

在庫が増えている

まずは「在庫が増えている」という点についてです。

なぜ在庫が増えれば利益が増えるのでしょうか?

その理由は「会計のルール」にあります。

会計の世界で「経費に落ちる」というのは、実は正確には「売上に対応した支出は経費として落としてよい」という意味なのです。

つまり「仕入」をしただけでは、いくらお金を払っても経費にならないのです。

売れた商品に対応する仕入れの金額だけが経費になります。

ということは、売れていない「在庫」はまだ経費に落とすことができない、ということですよね。

お金は支払っているのに、売れ残っている商品の金額は経費にならない。

だから在庫が増えると利益が増えるのです。

これは今後在庫を持つ商売をする方には、絶対に知っておいていただきたいことです。

在庫商売の方にとって「在庫が多い」というのは、「品揃えが良い」という感覚で、どちらかというとプラスのイメージがあるかもしれません。

ですが会計上は違うのです。

多大な在庫を抱えると、キャッシュがないのに利益だけ出てしまいます。

とはいえ、在庫が少なすぎると商売になりません。

「多すぎず、少なすぎない在庫金額」という絶妙なバランスを保つことが非常に大事なのです。

売掛金や未収入金が増えている

次は「売掛金や未収入金が増えている」という点についてお伝えします。

そもそも会計では、売上を計上するタイミングは基本的には「サービスを提供したとき」や「商品を引き渡したとき」とされています。

つまり「入金のとき」や「請求書の日付」ではないのです。

ということは、「売上を計上するタイミング」と「入金のタイミング」にはタイムラグが生じます。

このタイムラグによって、未入金になっているものが「売掛金」です。

売掛金が多くなるということは、「会計では売上を計上していて、利益が増えているが。まだ未入金」ということですので、通帳の残高が少なくても利益が出るのです。

売掛金は通常のものであれば、まったく問題ありません。

しばらくすれば入金されるので、後は待っているだけです。

問題になるのは次のようなときです。

  • 期日が来ても入金されない売掛金
  • 会社の規模からして大きすぎる売掛金
  • 入金までの期日が長すぎる売掛金

期日になっても入金されない売掛金は最悪です。

税金だけかかって、お金が入ってこないことになります。

商売の基本ですが、期日になっても入金されないときは、しっかり督促をしてください。

建物や内装、社用車などの固定資産への支出がある

次は「建物や内装、社用車などの固定資産への支出がある」について考えてみます。

「なぜ固定資産へ投資をすると、利益とお金の残高が変わるか」と言いますと、「減価償却」というやっかいな仕組みがあるからです。

「減価償却」というのは、簡単に言いますと、車などの固定資産を買っても、1年では経費に落としてはいけない、という会計の制度なんです。

なぜ1年で落とせないかと言いますと、車などの固定資産は通常何年も使えますよね。

そうしますと、売上にも何年にもわたって貢献することになりますので、1年ではなく数年にわたって経費に落として下さいという考えがあるからなんです。

例えば車なら6年、内装なら10年のように、資産ごとに細かく国が決めています。

お金は購入したときに全額支払うのに、経費に落ちるのは何年もかかる。

これがお金と利益が変わる要因です。

借入金の返済がある

次は「借入金の返済がある」についてです。

銀行の借入は、いくら返したとしても経費になりません。

お金を借りたときに収益にならないので、その裏返しで考えると、返済をしても経費にならないというのはわかりやすいかと思います。

お金の貸し借りは、収益にもならない代わりに経費にもならないと思って下さい。

ですが、このことを頭にしっかり入れておかないと経営では非常に危険です。

なぜなら、銀行返済をしっかり意識しないと真綿で首を絞めるようにジワジワとキャッシュフローを圧迫することが非常に多いからです。

銀行からお金を借りて入金があると一時的にキャッシュが増えるので、仕入や投資へお金を廻します。

減るときは非常に早いものです。

融資との付き合いは経営上、必要なことです。

詳しくは別の回でご説明いたしますが、融資の返済は経費にならないので、利益とキャッシュのズレの要因になることは覚えておいてください。

今回は利益とキャッシュがなぜズレるかを考えてきました。

実はここでお話した以外にも色々な要素でズレが発生します。

そのズレた要因を知ることも重要ですが、もっと重要なことは「利益とキャッシュを別に管理する」ということです。

ぜひキャッシュの管理は強化してください。

 
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