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起業後の状況【起業の世界Vol.7】
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
起業後の状況
無事に起業できたとしても、起業はあくまでも手段であり、目的ではありません。起業後、いかに経営を軌道に乗せるかは大きな課題です。業況はもちろん、労働環境の変化を知り、来たるべき課題の対策を練っておきましょう。
調査時点の月商(1ヶ月あたりの売上高)
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※「調査時点」は開業時から平均14.6ヵ月経過した時点
調査時点の売上状況(2017年度)
6割近くの企業が増加傾向に
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※「調査時点」は開業時から平均14.6ヵ月経過した時点
※値は小数第2位を四捨五入しているため、合計100%にならない
調査時点の採算状況(2017年度)
黒字基調になるまでにかかった期間は平均6.6ヵ月
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
日本政策金融公庫総合研究所
※「調査時点」は開業時から平均14.6ヵ月経過した時点
小規模経営の増加で低月商の企業も増加
調査時点(開業時から平均14.6カ月後。以下同様)の月商の分布は、100万~500万円未満が43.9%と最も多く、100万円未満が40.9%で続いています。100万円未満の割合は2015年が35.3%、2016年が39.3%で、2年連続で増えており、月商が低い企業の割合が増加傾向にあることがうかがえます。
ただし、調査時点の売上状況は増加傾向が59.4%で、調査時点の採算状況は黒字基調が61.8%です。
このことから月商100万円未満の企業が増えたのは、経営状況が悪いのではなく、経営規模の小さい企業が増えたことが一因とも考えられます。
高齢起業家は月商を高く見積もりがち!?
予想月商達成率は、開業前に予想していた月商に対する調査時点の月商の割合で、100%以上ならば予想を上回る月商だったことを意味しています。
2017年度の達成率100%以上の企業は50.5%で、2015年度の49.5%、2016年度の47.3%を上回っています。月商分布と比較して、この結果からも企業の小規模化が進んでいると考えられます。
業種別に見ると、建設業や不動産業、情報通信業らが達成率100%以上が多い一方、製造業や飲食店・宿泊業は経営が厳しい企業が多いようです。
とくに製造業は、達成率50%未満の企業が27.3%もいるなか、125%以上の企業も23.6%と高く、売上の低い企業と高い企業、双方ともに多いという両極端な結果が出ています。
また、年代別に見ると、年代が上になるほど達成率100%以上の割合が減っています。高い年齢層が、予想月商を高く見積もってしまうのは興味深い結果といえるでしょう。
予想月商達成率(2017年度)
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※「予想月商達成率」=「調査時点(開業時から平均14.6ヵ月経過した時点)の月商」÷「開業前に予想していた月商×100」
通勤時間は短縮も労働時間が増加!
業況以外の変化を見ると、まず平均従業者数は開業時の平均3.1人から調査時点で平均4.5人となり、1.4人増加しています。
内訳では常勤役員・正社員が0.5人、パートタイマー・アルバイトが0.8人増加していて、多くの企業ではどちらか1人を新たに雇用するケースが多いようです。
通勤時間の変化は、自宅兼事業所の個人経営が多いため、開業前に比べて1分未満が大幅に増えています。それ以外でも、15分以上30分未満が減り、1分以上分15分未満が増えたことから、起業によって自宅から近い場所に事業所を用意する起業家が多いことがわかります。
ところが、労働時間(1週間)は開業前の平均49.4時間から53.5時間と4.1時間も増加です。労働時間の変化を見ると、開業前よりも減少した起業家が22.2%いますが、59.3%は増加したと回答。経営を軌道に乗せるための創業期、かつ小規模経営も多いことから開業者の仕事量が増えてしまうケースが多いようです。
おもな事業所までの通勤時間(2016年度)
開業によって職住近接が進む
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※「調査時点」は開業時から平均14.6ヵ月経過した時点
平均従業者数(2017年度)
開業時から1.4人増加
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※「調査時点」は開業時から平均14.6ヵ月経過した時点
値は小数第2位を四捨五入しているため、内訳の合計と平均人数が一致しない場合がある
開業者の1週間あたりの労働時間の変化(2017年度)
労働時間が減った開業者も3割存在
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
値は小数第2位を四捨五入しているため、合計100%にならない
開業者の1週間あたりの労働時間(2016年度)
開業前よりも約4時間増加
出典:『2017年度新規開業実態調査』日本政策金融公庫総合研究所
※「調査時点」は開業時から平均14.6ヵ月経過した時点
成長後の課題は資金面から人材面に
最後に、成長段階別に直面する課題を見てみましょう。
創業期の一番の課題は資金調達で、そのほかには家族の理解・協力や経営の知識など、創業期ならではの課題が目立っています。
ところが成長初期に入ると、依然として資金調達の割合は高いものの、人材や販路の確保に関わる課題も増加。特に成長するための人材を求めているようで、質と量、双方の人材が必要になるようです。
そして安定・拡大期では、資金調達の課題は落ち着きますが、代わりに人材確保に関わる課題が増え始め、企業の成長に応じた組織体制の見直しも必要となります。
小規模ならば開業者1人で従業員を管理することも可能ですが、経営規模が拡大して従業員が増えればそうもいきません。
管理職をどう用意するのか、起業のトップとして頭を悩ませる機会が増えるようです。
各成長段階で直面している課題(成長タイプ別)
①創業期の課題
②成長初期の課題
③安定・拡大期の課題
出典:『中小企業白書2017』中小企業庁
※複数回答のため合計は100%にならない
※「高成長型」は創業後の売上高伸び率が新興市場上場企業以上の企業。
「安定成長型」は創業時に比べて企業規模が拡大している企業。「持続成長型」は創業時に比べて企業規模が変化していないまたは縮小している企業
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