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出資、融資、補助金・助成金の違い【起業の世界Vol.10】
この記事の執筆者社会保険労務士 西村兆潔
ベンチャーサポート社労士法人 社会保険労務士。
大学を卒業後に、都内にある社会保険労務士事務所での勤務経験を経て、ベンチャーサポートに入社。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-nishi
- ■ 出資、補助金・助成金は「会社が得たお金」
- ■ 融資は会社向けの「ローン(借金)」
慎重に選びたい利益以外での資金の得方
会社の資金は、もちろん業務利益によって得られるのが一番です。しかし、起業直後の運転資金や、取引先の倒産といったトラブル、不景気など、企業努力だけではどうにもならないことも多々あります。資金繰りに困ったとき、資金を得る方法として考えられるのが、「出資を募る」「融資を受ける」「補助金・助成金を利用する」の3つになります。
それぞれの特徴は後述するとして、この3つをさらに大きく割ると、返済が「必要」か「否」か、そして「民間」か「公的機関」かに分けられます。
まず「返済」についてですが、出資と補助金・助成金は“返済不要”です。
出資は企業の将来性を見込んだ「投資」、補助金・助成金は企業の目的達成のための、文字どおり“補助・助成”のためのものだからです。対して「融資」は、いわば“ローン”。利子もつけて返済していかなければならず、出資と同じように考えると痛い目を見ることになります。
次に、「民間」か「公的機関」かについてです。
利用するなら「公的機関」を断然お薦めします。中小企業でも審査が通りやすく、金利や担保の面でも利用しやすいものが多くあります。ただし公的機関であるが故か、事業目的や申請にかなりの条件がつくことも多いです。本店所在地によっては利用できなかったり、特定の雇用をしなければいけなかったりと、業種によっては煩わしく感じるものもあるでしょう。そういう意味では「民間」は事業実績や担保、保証人などがしっかりしていればそういった条件はなく、利用しやすいといえます。その分利益主義でもありますので、突然の貸しはがしや出資打ち切りなども起きないとは言い切れません。
事業以外でどのようにして資金を得るか。自社に合ったものはどれか。なければならないものだからこそ、慎重に選んでいきたいものです。
出資
- ・返さなくていいお金
- ・株主や出資者などから得た「会社への投資」
投資者や投資ファンドなどを募り、会社に投資してもらうことです。株式会社であれば起業前は「発起人」、起業後は「株主」と呼ばれ、1口いくらで株券を購入してもらう形で資金を集めます。株主は資金を投じた見返りに「利益配当請求権」と「株主総会における議決権(経営権)」を得て、株の保有数によっては会社の経営に強く干渉することも可能になります。
個人投資家の他、団体での投資を行うのが「投資ファンド」です。個人投資家から資金を集めて運用し利益を出すもののため、民間の投資ファンドは高い利益目標を要求してくる場合があります。公的機関が出資するファンドもありますが、業種や利用条件が限られてくることが多いです。
投資者を募るには、まず「どのような会社なのか」を知ってもらう必要があります。プレスリリースサイトでの情報発信や、セミナーや交流会への参加、また最近では小口投資が可能なクラウドファンディングも広まっています。
届出で必要になる費用一覧
融資
- ・返さなくてはならないお金
- ・金融機関などから借りる「ローン」
融資とは公的機関や金融機関から“借りる”お金で、個人で家などを買う際に組むローンと同じものと考えて差し支えありません。借りたからには返済をしていく義務があります。
融資というとまず銀行が思い浮かびますが、はじめは日本政策金融金庫や地方自治体の企業向け融資を調べてみると良いでしょう。無担保・無保証や、信用保証協会を利用した低金利での借り入れが可能です。これらの融資条件はある一定の基準があるので、この審査に通らない場合はむしろ経営状態の見直しが必要と考えたほうがよいでしょう。
融資の危険な面として、一度借りてしまうと「投資」と勘違いしてどんどん追加融資を受けてしまう傾向があります。結果、融資ありきの経営になってしまい、貸し渋りが起きたとたん行き詰ってしまうわけです。
融資は“麻薬”と呼ばれることもあるほどです。「その融資は本当に必要か?」「きちんと返していけるか?」、融資を検討する際、よくよく考えてみてください。トラブルなどで火急の資金が必要、ということでなければ、出資や補助金・助成金の利用をまず考えるようにしましょう。
補助金・助成金
- ・返さなくていいお金
- ・国や地方自治体から支給される
国や地方自治体によるもので、条件さえクリアすれば返済義務なしで受け取ることのできるお金です。経済産業省、厚生労働省、農林水産省を始めとする省庁、そのほかの政府機関、地方公共団体などが、地域復興や特定分野の発展などを目的にした募集を随時200以上行っています。助成金は要件さえ満たせば原則受給できるもので、補助金は審査と使用報告が必要になってきます。「返済不要」となると魅力的ですが、受給の条件には特定設備の購入や能力者の雇用など、後々固定費として経営を圧迫するものもあります。自社の業種にあった条件であればいいですが、「補助金・助成金を受けるため」に条件を満たさねばならないようならば避けたほうがよいでしょう。
補助金や助成金には、会社のホームページ作成やセキュリティーに関する技術・設備投資、さらには従業員の技術教育資金など、会社の質を上げる目的のものもあります。単に資金繰りのためだけではなく、ステップアップのための支援も行っているのです。
経営に余裕があるときにこそ利用すべき補助金・助成金があることも覚えておきましょう。
借金を資本金にできる?
出資を除き、融資や補助金・助成金は原則「企業」に対して行われるので、起業時の資本金に充てることはできません。ならば個人で融資を受けて、それを資本金にすれば……というわけにもいきません。資本金は原則「自己資金」でなくてはならず、融資はすべて「借入金」として計上されます。資本金が足りない場合は、発起人を募るか、お金が貯まるまで待つか、資本金を減らすしかありません。
▼ 起業の世界
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