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他社に過半数出資している株主の確認
この記事の執筆者 税理士 森健太郎
ベンチャーサポート税理士法人 大阪オフィス代表税理士。
近畿税理士会 北支部所属(登録番号:121535)
1977年生まれ、奈良県奈良市出身。
起業・会社設立に役立つYouTubeチャンネルを運営。
PROFILE:https://vs-group.jp/tax/startup/profile_writing/#p-mori
YouTube:会社設立サポートチャンネル【税理士 森健太郎】
書籍:プロが教える! 失敗しない起業・会社設立のすべて (COSMIC MOOK) ムック
▼目次
会社を設立する際には、「誰が株主となるのか」については慎重に判断する必要があります。
というのも、株主の属性によっては特別な税金の負担をしなくてはならないケースがあるためです。
ここでは株主構成が設立後の会社の税金負担に影響を与える可能性があるケースとして、次の4つの事例について解説させていただきます。
- 1. 消費税の免税事業者となるための要件(特定新規設立法人)
- 2. 役員個人の所得税申告の問題
- 3. 同族間取引の事前確認
- 4. グループ法人税制の確認
1. 特定新規設立法人に該当するかどうかの判定
これまで個人事業主として活動してきた人が法人化するメリットとして、法人設立から最初の2期は消費税の免税事業者となれることがあげられます。
ただし、平成26年4月以降はこの新規設立法人が消費税の免税事業者となるための要件が厳しくなっていることに注意しておく必要があります。
具体的には、新規に設立する法人が「特定新規設立法人」に該当しないかをチェックしておかなくてはなりません(特定新規設立法人に該当する場合には消費税免税事業者となることができません)。
特定新規設立法人とは?
特定新規設立法人とは、ごく簡単にいうと「大きな企業が自社のグループ会社として子会社を設立したようなケース」といえます。
具体的な基準としては、「課税売上高が5億円を超える法人が、50%を超える出資をして設立した子会社等」というものがあります。
特定新規設立法人のルールは、これまで法人税などに適用されてきたグループ法人課税が、消費税に関しても適用されるようになった例とみることができます。
すでに事業の実態がある人や会社が、自社の事業を切り離す形で新法人を設立するようなケースでは、消費税の免税事業者となることが今後は難しくなるものと思われます。
2. その株主が役員の場合、他社の役員報酬の有無を確認する。
法人の役員報酬の金額を決めるときには、役員である個人が負担する所得税の負担金額が大きくならないようにしなくてはなりません。
役員報酬の金額を大きくすれば会社にとっては経費が増えることになりますから法人税の負担は小さくなりますが、その一方で、役員報酬を受け取る個人が負担する所得税は大きくなる可能性があるためです。
特に、新しく設立する法人の役員となる人が、別の法人の役員となっているようなケースでは、その他の会社から受け取っている役員報酬も合算して所得税の計算を行うことになります。
日本の所得税は所得の金額が大きくなるほど税率が高くなる仕組み(超過累進税率といいます)となっていますから、役員報酬の金額を決めるときには慎重にシミュレーションを行う必要があります。
3. 同族間取引の事前確認
いわゆる「同族間取引」についても、税務調査などで指摘されてしまわないようにルール作りを事前に行っておかなくてはなりません。
同族間取引というのは、例えば親会社Aと子会社Bがあったとして、Aが儲かっているときにはBからの仕入れ金額を大きくしたりする行為を規制するための一連のルールのことをいいます。
このような行為が行われると、グループ会社間で利益の調整を行うことで税金の負担を小さくすることができてしまい、税法の脱法行為とされてしまう可能性があります。
もちろん、同族間の取引であっても適正な市場価格に基づいて行うのであれば問題はありません。
しかし、一般的な市場価格と比較して著しく異なる金額で取引が行われた場合には、税金計算上は市場価格で取引が行われたものとして修正申告を求められる可能性があります。
同族となる会社を新たに設立するような場合には、恣意的に取引金額を調整するような行為を避けるとともに、エビデンス(税務調査を受けたときに証拠書類となるもの)をしっかりと残す社内のルールを事前に構築しておくことが大切になります。
4. グループ法人税制の確認
平成22年以降、いわゆる「グループ法人税制」に関するルールが中小企業に対しても適用されることとなりました。
グループ法人税制というのは、一つの企業グループ(互いに出資関係のある会社)の間で取引が行われる際に適用されるさまざまなルールのことをいいます。
例えば、株主となるA(法人、個人問いません)が法人Bと法人Cを100%出資で設立した場合、法人Bと法人Cの取引についてはこのグループ法人税制が適用されます。
グループ法人税制の具体的な内容としては、以下のようなものがあります。
- 寄付金や受贈益の益金不算入
- 受取配当等の益金不算入
- 資産の譲渡損益の繰延べ
ごく簡単にいうと、グループ間で利益の金額を調整するような形で、寄付金や配当金を出し合うような取引ができなくなるということを意味します。
まとめ
今回は、会社を設立する際に「誰が株主になるか」によって生じる税金負担の違いについて解説させていただきました。
近年は企業グループに属する会社を全体として税金負担社として把握しようとする動きが強まっているのに注意しておく必要があります。
これまで会社として行ってきた1つの事業を独立採算制にするために別法人として切り離すようなケースでは本文で紹介させていただいた種々の規制が適用される可能性がありますので注意しておきましょう。
▼ 起業前に確認したい48項目徹底検討
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