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最終更新日:2026/3/16

【相続判例】婚外子の相続分は「平等」へ。差別規定を違憲とした歴史的判決(最高裁大法廷 H25.9.4決定)

判決の要約

最高裁判所は、これまで合憲としてきた判断を覆し、「嫡出子(法律婚の子)と非嫡出子(婚外子)の法定相続分を差別する民法の規定は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反し、違憲である」という画期的な判断を下しました。
これにより、現在は婚外子であっても、法律婚の子と「同等の相続分」を受け取れるようになっています。

事件についての情報

裁判所
最高裁判所大法廷
判決日(決定日)
平成25年9月4日
事件番号
平成24年(ク)第984号・第985号
判決全文
PDFファイルを開く(裁判所ウェブサイト)

本件の経緯

本件は、ある男性(被相続人)が亡くなった後の遺産分割トラブルです。

  • 被相続人:男性A(かなりの資産家であったと推測されます)
  • 相続人①:法律上の妻との間の子(嫡出子)
  • 相続人②:妻以外の女性との間の子(非嫡出子/認知済み)

男性Aが亡くなった際、遺言書はありませんでした。

通常通り遺産分割協議を行おうとしましたが、当時の民法900条4号但書には「非嫡出子の相続分は、嫡出子の2分の1とする」という規定がありました。

これに対し、非嫡出子側が「今の時代に、生まれによって差別されるのはおかしい」として、平等な相続分割合を求めて裁判を起こしました。

争点

最大の争点は、「結婚していない男女間の子(非嫡出子)の相続分を低く設定している民法の規定は、憲法違反ではないか?」という点です。

法律婚の家族(相手方)の主張

法律婚という制度を保護するためには、正当な配偶者との子を優遇することは合理的である(これまでの最高裁も同様)

婚外子(抗告人)の主張

子は自ら親を選んで生まれてくることはできない。親が結婚しているかどうかという、子にはどうしようもない事柄で差別を受けるのは不当であり、憲法の『法の下の平等』に反する

最終的な判決

最高裁判所大法廷(裁判官14名全員一致)は、「違憲(憲法違反)」と断定しました。

判断の理由

昭和22年の民法改正当時は「法律婚の尊重」という価値観が強かったものの、現在は家族のあり方が多様化していること、諸外国でも差別撤廃が進んでいることを指摘。

「法律婚の保護は重要だが、そのために子個人の権利を犠牲にすることは、もはや合理的な根拠を失っている」として、過去の判例を変更しました。

この判決を受け、その後民法が改正され、現在は条文上も差別規定は削除されています。

本事例から学ぶ教訓と対策(税理士からのアドバイス)

すでに法改正がなされた現在において、この判例は「今さら関係ない」と思われるかもしれません。

しかし、ここには「法律(ルール)は時代とともに変わる」という、極めて重要な教訓が含まれています。

実は、1995年にも同様の訴訟がありましたが、当時の最高裁は「合憲」という判断を下していました(大法廷平成7年7月5日決定)。

それから18年を経て判断が覆った背景には、時代の変化に伴う「家族のあり方の多様化」や、社会通念の変容が深く関わっているといえるでしょう。

1. 遺言書がないと「法定相続分」がすべてになる

本件の争いの一因には、被相続人(父)が遺言書を残していなかったこともあります。

もし父親が、それぞれの取得分を明確に指定した遺言書を残していれば、少なくとも「民法の規定(法定相続分)が差別的かどうか」という点で、お互いが何年も裁判で争う事態は避けられた可能性があります。

2. 「配偶者や子への配慮」は遺言者自身の意思で決める必要がある

現在、法律上ではすべての子どもが「平等」です。

しかし現実には、「長年連れ添った妻との子」と「一度も会ったことのない愛人の子」が同じ権利を持つことに、納得できない思いを抱く遺族も少なくありません。

法律が平等になったからこそ、あえて個別の事情により差をつけたい場合(または将来の相続トラブルを未然に防ぎたい場合)は、自分の意思を法的な効力として残せる「遺言書」の作成が有効な手段となります。

3. 税務上の注意点(相続税への影響)

この判決により、非嫡出子の法定相続分が増えた結果、以下のような税務上の影響が出るケースがあります。

相続税の総額は変わらないが、各人の負担額が変わる
法定相続分が変わることで、各相続人が負担すべき税額の配分が変わります。
過去の相続への影響
この判決は平成25年9月5日以後の相続に適用されますが、それ以前の相続(平成13年7月1日以後に発生した相続に限ります)でも「遺産分割協議が終わっていない場合」には、同様に適用対象となります。

また、本判決の5年前である2008年には、婚外子の日本国籍取得をめぐる訴訟では、国籍法の規定が違憲とされています(婚外子国籍訴訟:最高裁平成20年6月4日)。

今回紹介した判例は、こうした「子どもの平等な権利を認め、不合理な差別をなくす」という時代の大きな流れの中に位置づけられるものです。

だからこそ、「うちは昔ながらの考えだから」と放置するのはリスクがあります。
現在の法制度と社会の潮流を理解し、遺言や生前贈与といった適切な相続対策を行っておくこと。

それこそが、残された家族をトラブルから守るための最善の方法です。

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