記事の要約
- 雑種地かどうかの判定は、登記上の地目ではなく「現況(現在の利用状況)」で行う
- 評価額の計算は、その土地が「倍率地域」か「路線価地域」かによって計算式が異なる
- 「しんしゃく割合」や「宅地造成費」などの減額要素を適用することで、評価額を下げられる
親から引き継いだ土地や、亡くなった方が所有していた土地の中に、「駐車場」や「資材置き場」、「空き地」などは含まれていませんか?
これらは相続税の計算上、「宅地」や「農地」ではなく「雑種地(ざっしゅち)」として扱われます。
雑種地は、宅地などに比べて評価(計算)のルールが複雑で、評価方法を正しく理解していないと、本来適用できるはずの減額補正を見逃し、相続税を払いすぎてしまうリスクもあります。
そこでこの記事では、雑種地の相続税評価について以下のポイントを分かりやすく解説します。
- 雑種地の判定基準(登記ではなく現況主義)
- 評価額を算出する前に確認すべき5つの事項
- 地域別の雑種地の計算方法
- 市街化調整区域の雑種地に適用できる「しんしゃく割合」とは
- 【重要】評価額を下げるための5つの減額要素
ご自身の土地が「雑種地」に当たるのかを確認し、適正な評価額を知るためのガイドとしてお役立てください。
目次
そもそも「雑種地」とは?相続税評価の基本ルール
土地には、その用途によって宅地や田、畑、山林など様々な「地目(ちもく)」が定められています。
上記のような特定の地目に当てはまらない土地のことを、総称して「雑種地(ざっしゅち)」と呼びます。
「雑種」という名前から、「価値が低い土地」というイメージを持たれがちですが、それは大きな誤解です。実際には宅地並みに高く評価されるケースも多く、相続税の負担が重くなりやすい要注意な土地といえます。
まずは、どのような土地が雑種地になるのか、基本的なルールを押さえておきましょう。
雑種地かどうかは「登記の地目」ではなく、現況で判断する
相続税の土地評価において最も重要なルールは、登記簿上の地目ではなく、「課税時期(亡くなった日)の現況」で判断するということです。
例えば、登記簿の地目が「山林」や「原野」となっていたとしても、実際にはアスファルトを敷いて「駐車場」として使っていれば、その土地は「雑種地」として評価されます。
- 登記簿:山林・原野・畑 など
- 今の状態:駐車場・資材置き場 など
- 相続税の扱い:「雑種地」(評価額が高くなる可能性大!)
「登記簿には山林と書いてあるから大丈夫」と油断していると、相続税の申告時に思わぬ高額評価となり、資金計画が狂ってしまうことがあるため注意が必要です。
代表的な雑種地の例(自分の土地が当てはまるか確認)
「特定の地目に当てはまらない土地」といってもイメージしにくいかもしれません。実務上よく見られる、代表的な雑種地の例を挙げます。ご自身の土地がこれらに該当しないか確認してみてください。
- 駐車場・コインパーキング(最も多いケース)
- 資材置き場
- 太陽光発電設備(ソーラーパネル)の設置場所
- ゴルフ場・ゴルフ練習場
- 鉄塔の敷地
- 宅地とはいえない空き地(建物が建つ見込みがない、管理されていない土地など)
特に、先祖代々の土地で、現在は使っていないが「更地(さらち)」になっているような場合、宅地として扱われるか、雑種地として扱われるかは、周囲の状況や利用可能性によって判断が分かれます。
評価単位の基本ルール(どこまでを“ひとかたまり”として評価するか)
雑種地の評価額を計算する前に、「土地をどの範囲で区切って評価するか(評価単位)」を決める必要があります。
原則として、雑種地は「利用の単位となっている一団の土地」ごとに評価します。
少し複雑ですが、以下の2つのルールをイメージしてください。
- 2筆でも一体利用していれば「1つ」とみなす
例えば、2筆(2つの登記)の土地があり、両方を一体として「1つのゴルフ練習場」として使っている場合、その2筆をまとめて「1つの雑種地」として評価します。 - 登記が1つでも、用途が違えば「別々」にみなす
逆に、1筆の土地の中に「自宅の敷地(宅地)」と「賃貸駐車場(雑種地)」が混在している場合、これらは用途が異なるため、それぞれ別の土地として分けて評価を行います。
この「評価単位の分け方」を間違えると、評価額が大きく変わってしまったり、小規模宅地等の特例などが使えなくなったりする恐れがあります。まずは今の使い方がどうなっているかを地図上で確認することから始めましょう。
- ※
- 市街化調整区域以外の都市計画区域で市街地的形態を形成する地域で、資材置き場や駐車場等として使用されている雑種地は、2つの土地の形状、地積の大小、位置等から見て、その地域で標準的な宅地に類似する場合には、利用単位ではなくその一団の雑種地ごとに評価する
雑種地を評価する前に確認すべき事項
雑種地の評価額の計算は非常に複雑です。
その土地が「どこにあって」「周りがどんな状況か」によって、計算のアプローチが全く異なります。
いきなり電卓を叩き始める前に、まずはご自身の土地の状況を整理しましょう。以下の5つの要素を確認するだけで、どの計算パターンを使えばいいかが見えてきます。
地目と現況・利用状況
まず確認するのは登記簿上の地目ではなく、今、何に使われているか(現況)です。
例えば登記上は「畑」や「山林」であっても、実際には「駐車場」や「資材置き場」として使っていれば、雑種地としての評価になります。
また、自分で使っているか、人に貸しているかも重要です。賃貸している土地は、利用制限がある分、評価額を減額できる可能性があります。
都市計画区域(市街化区域・調整区域など)
次に、その土地があるエリアの「都市計画法上の区分」を確認します。
- 市街化区域:街を活性化するエリア。宅地と同様に高く評価されやすい。
- 市街化調整区域:建築が制限されるエリア。評価額が下がる要素(しんしゃく割合)がある。
- 非線引き区域・その他:上記以外のエリア。
確認方法
路線価地域か倍率地域か
土地の相続税評価額の計算には、大きく分けて「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあります。どちらの方式を用いるかは土地が所在するエリアによって異なります。
- 路線価地域(路線価方式):道路に「路線価(1㎡あたりの価額)」が定められている地域。(主に市街地)
- 倍率地域(倍率方式):路線価が定められていない地域。固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算する。(主に郊外や農村部)
確認方法
近傍地(宅地・農地・山林など)の判定
ここが雑種地評価の最大のポイントです。
雑種地は、独立して評価するのではなく、「その土地の周囲が何であるか(近傍地)」に合わせて評価します。
- 近傍宅地:周囲が宅地である(宅地比準方式を使う)
- 近傍山林・原野:周囲が山林や原野である(山林比準・原野比準を使う)
多くの雑種地(駐車場など)は、周囲に家が建っていることが多いため、基本的には「宅地(近傍宅地)ベース」で計算が進むことが多いと考えてください。
造成費や建築制限などの個別事情
最後に、その土地特有の「マイナス要因」がないかを確認します。これらは評価額を下げる重要な要素になります。
- 宅地造成費:今の状態から宅地にするために、整地や土盛りがいくらかかるか?(費用分をマイナスできる)
- 建築制限:高圧線の下にある、セットバックが必要など、利用上の制限はあるか?
【パターン別】雑種地の相続税評価の方法
雑種地の評価方法は、その土地が「倍率地域」にあるか「路線価地域」にあるかによって計算式がガラリと変わります。
倍率地域にある雑種地(地方・郊外に多いケース)
「倍率地域」にある雑種地は、評価する土地の周囲が宅地であれば、それに比準して評価します。
近傍地を宅地とする場合は、国税庁の評価倍率表の「宅地」欄に記載された「〇〇倍」(倍率)を固定資産税評価額に乗じたあとさらに、普通住宅地区に定められている、各種画地補正率(奥行価格補正率など)を乗じます。
計算式
- ※1
- 市区町村で固定資産税評価証明書を発行してもらうときに、備考欄などにその雑種地が所在する付近の標準的な宅地1㎡当たりの固定資産税評価額を記載してもらいます。
- ※2
- 国税庁の「評価倍率表」の宅地の欄を確認します。
路線価地域にある雑種地
市街地(路線価地域)にある雑種地は路線価方式で評価し、土地の状態によっては宅地造成費を控除します。
計算式
- ※1
- その土地に接している道路の路線価を使い、宅地と同じように計算します。
- ※2
- 整地、伐採・抜根、地盤改良、土盛りなどにかかる標準的な費用(国税庁が定めた単価)を引きます。
つまり、「宅地として使えるポテンシャルはあるけれど、工事が必要な分だけ安くしますよ」という計算方法です。駐車場のようにすでに舗装されている平坦な土地であれば、造成費はほとんど引けないため、宅地とほぼ変わらない評価額になります。
市街化調整区域の雑種地と「しんしゃく割合」とは
雑種地の評価において、最も節税効果が大きく、かつ判断が難しいのが「市街化調整区域」にある土地です。
ここには、「しんしゃく割合(斟酌割合)」という独自の減額ルールが存在します。
「しんしゃく」とは、「事情を汲み取る」という意味。つまり、「家を建ててはいけないエリアだから、その不便さを考慮して、評価額を安くしてあげましょう」という制度です。
市街化調整区域とは?相続税評価でなぜ重要なのか
そもそも市街化調整区域とは、都市計画法で市街化を抑制すべき区域と定められたエリアです。原則として、新しい建物を建てたり、増築したりすることが厳しく制限されています。
通常の宅地(市街化区域)であれば、好きに家を建て替えたり、アパートを建てて活用したりできます。しかし、市街化調整区域の土地では自由な活用ができない可能性が高いです。
「自由に使えない土地」なのに、「普通の宅地」と同じ高い税金をかけるのは不公平です。そのため、この区域にある雑種地は、建築制限の厳しさに応じて評価額を割り引くことが認められているのです。
しんしゃく割合(50%・30%・0%)のざっくりとしたイメージ
では、具体的にどれくらい安くなるのでしょうか。
しんしゃく割合は、建築制限の厳しさに応じて、以下の3段階に設定されています。
- 50%(大幅減額)
- 建物の建築が全くできない土地。(例:資材置き場や青空駐車場としてしか使えず、将来も家が建つ見込みがない)
- 30%(中程度の減額)
- 店舗や事業所など、特定の用途なら建築できる土地。または、開発許可を受ければ建築できる可能性がある土地。(例:沿道サービス施設、分家住宅など)
- 0%(減額なし)
- 市街化調整区域内でも、宅地と同じように建築できる土地。(例:既存宅地としての権利がある、地区計画で建築が認められているなど)
「市街化調整区域だから必ず安くなる」とは限りません。0%(減額なし)のケースもあるため、慎重な調査が必要です。
パターン別|市街化調整区域の雑種地の評価イメージ
このしんしゃく割合を雑種地の相続税評価額に適用すると、そのインパクトが一目瞭然です。
例えば、「もし普通の宅地だったら1,000万円の価値がある土地」(造成費は無視)で考えてみましょう。建築制限、建物の種類の制限などは市区町村に確認したほうがよいでしょう。
| 状況(建築制限の厳しさ) | 適用されるしんしゃく割合 | 評価額のイメージ |
|---|---|---|
| 制限なし(宅地並み) | 0% | 1,000万円(減額なし) |
| 一部制限あり | 30% | 700万円(300万円減!) |
| 建築不可(厳しい制限) | 50% | 500万円(なんと半額!) |
このように、しんしゃく割合が適用できるかどうかで、相続税の金額が数百万円、数千万円単位で変わることがあります。
なお、判断には、役所の建築指導課などでの詳細な調査(その土地に家が建つかどうか)が不可欠です。
【重要】雑種地の相続税評価額を下げる5つの減額要素
雑種地の評価額計算において、基本の計算式と同じくらい重要なのが、これから紹介する「減額要素(補正)」です。
土地には一つとして同じものはありません。「形がいびつ」「高低差がある」「人に貸している」といった個別の事情(使いにくさ)を価格に反映させることで、評価額を適正に下げることができます。
見落としがちな5つのポイントをチェックしましょう。
①宅地造成費の控除(傾斜・高低差・凸凹の補正)
現状が「雑種地」であるということは、宅地として使うには何らかの工事が必要なケースが多いためです。
- 傾斜地・高低差:道路よりも土地が低い、あるいは高い場合、土留めや土盛りの費用を引くことができます。
- 凸凹・未整地:雑草が生い茂っていたり、地面がデコボコだったりする場合、整地費用や伐採・抜根費用を引くことができます。
このように工事をしないと家が建てられない状態であれば、その工事見込み額を評価額からマイナスできます。
②建築制限がある土地の減額(市街化調整区域などのしんしゃく割合)
前の章で解説した「しんしゃく割合(30%・50%減額)」の他にも、建築制限による減額があります。
- 都市計画道路予定地:将来的に道路になる計画がある土地は、建築制限がかかるため補正が入ります。
- セットバック:接する道路が狭く、建物を建てる際に敷地を後退させなければならない場合、その部分は評価が下がります。
③土地の形状による補正(不整形地・間口狭小など)
綺麗な長方形(整形地)に比べて、使い勝手が悪い土地は評価が下がります。
- 不整形地:三角形の土地や、L字型の土地など。
- 間口狭小・奥行長大:道路に接する幅(間口)が極端に狭い、または奥行きが長すぎる「うなぎの寝床」のような土地。
- がけ地等を有する宅地:敷地の一部が崖になっている場合。
これらは「不整形地補正率」などの決められた数値を掛けることで減額されます。
④賃借権・貸付状況による減額(人に貸している雑種地)
土地を自分で使っている(自用地)のではなく、他人に貸して地代をもらっている場合、評価額が下がります。
「貸している=オーナーでも自由に使えない」という制約があるためです。
- 賃借権(ちんしゃくけん):建物を建てる目的で土地を貸している場合
- 貸し付けられている雑種地:コインパーキングや資材置き場として貸している場合
契約内容や権利の強さに応じて評価額から一定割合を差し引くことができます。
⑤小規模宅地等の特例の適用可否を確認する
最後に確認すべきなのが、相続税の節税において最強のカードと言われる「小規模宅地等の特例」です。
これは通常、自宅の敷地などに使われますが、一定の条件を満たせば雑種地にも適用できる可能性があります。
- 貸付事業用宅地等:アスファルト舗装された駐車場や、自転車置き場として「事業」として貸している場合、200㎡まで評価額が50%減額になる可能性があります。
ただし、「単に空き地を貸しているだけ(青空駐車場)」の場合は適用外となることが多く、構築物(アスファルトやフェンスなど)の有無が分かれ目になります。これは減額効果が非常に大きいため、必ず専門家に適用の可否を相談すべきポイントです。
雑種地の評価を確認するための書類・情報チェックリスト
雑種地の評価額を正確に出すためには、机上の計算だけでなく、多くの客観的な資料が必要です。
「なんとなく駐車場として使っている」という記憶だけでなく、書類で裏付けを取ることで、税務署にも認められる適正な評価(減額)が可能になります。
まずは手元にある書類を探すところから始めましょう。
最低限そろえておきたい書類
これらがないと、計算のスタートラインに立てない必須の書類です。
- 固定資産税の課税明細書
- 毎年4〜6月頃に役所から届く納税通知書に同封されています。「評価額」や「課税地目(現況地目)」が記載されており、計算の基礎データとなります。
- 登記事項証明書(登記簿謄本)
- 土地の正確な面積(地積)や所有者、権利関係を確認できる書類で、法務局で取得します。
- 公図(こうず)
- 土地の形状や、隣の土地との位置関係、道路にどう接しているかが分かる地図です。「不整形地」などの補正を行うために必要になります。登記事項証明書と同様、法務局で取得できます。
インターネットで確認できる情報
わざわざ役所に行かなくても、自宅のパソコンやスマホで予備調査が可能です。
- 路線価図・評価倍率表(国税庁サイト)
- 自分の土地が「路線価地域」なのか「倍率地域」なのか、倍率はいくらなのかを確認します。
- 都市計画図(自治体サイトなど)
- 「〇〇市 都市計画図」で検索。「市街化区域」か「市街化調整区域」かを確認します。これにより評価方法が大きく変わります。
- Googleマップ・ストリートビュー
- 現地の状況を俯瞰で確認します。特に遠方の土地の場合、パソコン上で周囲の状況(周りが家なのか、山なのか)を把握するのに役立ちます。
専門家に依頼する場合にあった方がいい資料
もし税理士などの専門家に相談する場合、以下の資料があると、より精度の高い「減額の提案」を受けやすくなります。
- 地積測量図(ちせきそくりょうず)
- 過去に測量を行っている場合、法務局に保管されています。公図よりも正確な寸法や形状が分かります。
- 賃貸借契約書(土地を貸している場合)
- 駐車場や資材置き場として人に貸している場合、契約書があれば「賃借権」や「貸付地」としての減額が可能か判断できます。
- 現地の写真
- スマホで撮ったもので構わないので、「傾斜がある」「形がいびつ」「高圧線が通っている」など、マイナスポイントが分かる写真があると、評価減の大きな材料になります。
- 建築計画概要書(市街化調整区域の場合)
- もし過去に建物を建てようとして申請した記録などがあれば、建築制限の内容を把握する手がかりになります。
まとめ|雑種地の相続税評価は「パターン把握+専門家に相談」が近道
雑種地の相続税評価は、現金や普通の宅地に比べて、非常に奥が深く複雑です。
しかし、その複雑さゆえに、正しく評価すれば、大幅に税金を安くできる余地が大きい財産でもあります。
最後に、本記事の重要ポイントを振り返ります。
- 登記よりも「現況」:登記簿上の地目にとらわれず、「今どう使っているか」で評価が決まります。
- 減額要素がカギ:造成費の控除、しんしゃく割合、不整形地補正など、土地のマイナス要因を漏らさず拾い上げることが節税への近道です。
雑種地の評価は、現地を見て「高低差があるか」を確認したり、役所で「建築制限の内容」を調査したりと、不動産の知識と税務の知識の両方が求められます。
VSG相続税理士法人では、相続専門の税理士だけでなく、土地の測量や権利関係に精通した専門家とも連携し、ワンストップでサポートが可能です。
「この土地、雑種地になるのかな?」「評価額がいくらになるか不安だ」と感じたら、まずは一度ご相談ください。適正な評価を行い、無駄な税金を払わないためのベストなプランをご提案いたします。





