
VSG不動産株式会社(所在地:東京都渋谷区、代表取締役:内田和希)は、「マンションの管理費と修繕積立金の値上げ」に関する意識調査を実施しましたので、お知らせいたします。
<マンションの管理費と修繕積立金の値上げに関する調査結果トピックス>
<調査概要>
マンションを購入し、現在も居住中と回答した男女(23区在住:502名/23区外:251名/政令指定都市:251名)を対象に実施。

「マンションの築年数を教えてください」との質問に対して、以下の回答結果となった。
約7割の調査回答者が築10〜30年未満のマンションに居住しており、特に「20〜30年未満」が38.0%と最も多かったことが明らかになった。新築〜10年未満のマンションに住む居住者は12.1%と少数派となり、築年数が進んだ物件に住む層が多数派を占める結果となった。
築10〜30年のマンションは、エレベーターや配管、防水工事など、大規模な修繕が本格化する時期に差し掛かっている。そのため、管理費や修繕積立金の見直しが必要不可欠となる。調査結果において、この年数のマンションに住む居住者が多数派を占めていることから、修繕負担が家計にのしかかり始める時期に差し掛かっていることがうかがえる。
修繕積立金の不足や、急な値上げに対する不安が今後のマンション管理における重要な課題となるだろう。特に、管理費や修繕積立金の増額が家計に与える影響が大きくなる可能性があり、そのための早期対応が求められるだろう。

「物価高騰によって、過去3年以内にマンションの管理費または修繕積立金が値上げされたことはありますか?」という質問に対して、以下の回答が得られた。
過去3年以内に「管理費も修繕積立金も値上げされた」と回答したのは39.6%、さらに「管理費のみ」8.3%、「修繕積立金のみ」10.0%を合わせると、約6割の回答者が何らかの値上げを経験していることがわかった。また、「値上げはされていないが、今後の予告や議論があった」と回答したのは13.8%、つまり値上げの予兆や議論があったと感じている人は全体の7割を超えている。
一方で「値上げも予告もない」は28.3%にとどまり、物価高騰や人件費・資材高の影響が、管理費・修繕積立金のレベルにまで広く波及している実態がうかがえる。管理費・修繕積立金は「いつか上がるかもしれないもの」ではなく、「すでに上がり始めているもの」として、多くの居住者にとらえられていると言える。

「物価高騰の影響を実感した場面として、当てはまるものをすべて選んでください(複数回答可)」という質問に対して、以下の回答が得られた。
物価高騰を実感した場面として最も多かったのは「管理費・修繕積立金が値上げされた/値上げの予告があった」が56.3%で、過半数を占めた。次いで、「修繕工事や設備更新の実施時期が先送りになった」が17.0%、「管理人の勤務時間が短縮された」が14.4%となっている。
物価高騰がマンション住民に与える影響として、まず「値上げ」の実感が強く、特に管理費や修繕積立金の増額が家計に直接的な影響を与えていることがわかる。これにより、不安を感じる住民が多く、今後の値上げへの懸念が広がっている。一方で、「修繕工事の先送り」や「サービスの低下」といった「値上げ以外でのサービス縮小」も進行していることが確認された。
これらは管理組合がコスト上昇に対応するための手段として取っているが、長期的には建物の品質や住環境に悪影響を及ぼす可能性がある。今後、マンション管理においては、修繕計画やサービス維持のための適切な対応と、住民との透明なコミュニケーションが求められる。

「現在、マンションの管理費と修繕積立金をあわせて、毎月いくら支払っていますか?」という質問に対して、以下の回答が得られた。
管理費と修繕積立金の合計負担額は、「20,000円~30,000円未満」が35.4%、「30,000円~40,000円未満」が29.0%であり、2〜4万円のレンジが全体の6割超を占める結果となった。さらに、「10,000円~20,000円未満」も15.9%に上り、1〜4万円帯で約8割が該当する構図である。
この水準は、一般的な世帯の固定費の中でも無視できない比率を占める金額であり、数千円の値上げであっても年間ベースでは大きな負担増となる。もともとの支払額が2〜4万円帯に集中しているからこそ、追加値上げに対する心理的ハードルや、家計調整の必要性が高まりやすい状況にあると言える。

「マンションの修繕積立金について、不安に感じていることはありますか?(上位3つまで)」という質問に対して、以下の回答が得られた。
「特に不安は感じていない」と回答したのは27.7%にとどまり、約7割の住民が何らかの不安を抱えていることが明らかとなった。特に「修繕積立金の不足により、将来的な急な値上げが発生しそう」が42.4%、「将来の大規模修繕に必要な金額が確保できないのではないか」が38.0%と、将来の資金不足とそれに伴う大幅値上げへの懸念が上位を占めている。
また、「長期的な資金計画(収支計画)が不透明」、「空室や滞納者の増加により、一部の住民の負担が増えるのではないか」など、マンション全体の財政健全性や住民構成の変化に伴う負担増にも目が向いている。
この結果は、単に現在の負担額だけでなく、「将来どこまで上がるのか」「本当に足りているのか」という長期的な視点での不安が広く浸透していることを示しており、管理組合側の透明性と説明責任の重要性が浮き彫りになっている。

「修繕積立金の不足を理由に値上げが行われることについてどのように感じますか?」という質問に対して、以下の回答が得られた。
「やむを得ないことだと思う(必要な修繕のためなら納得できる)」が37.5%、これに「仕方ないとは思うが、家計への負担が心配」23.4%、「ある程度は理解できるが、事前の情報共有や説明が不十分だと感じる」18.6%を加えると、約8割が値上げの「必要性自体は理解している」層であることがわかる。
修繕積立金の不足を理由とした値上げに対して、約8割の住民が「必要性は理解している」と答えていることから、マンションの維持管理に必要な費用負担は認識されている。しかし、同時に「家計への負担が心配」「事前の情報共有や説明が不十分」といった意見も多く、住民の完全な納得には至っていないことが明らかになった。
このギャップは、長期修繕計画や費用内訳の共有、複数案の提示など、合意形成プロセスの設計次第で縮小できる余地が大きいと言える。

「管理費や修繕積立金の値上げについて、どのような情報提供があれば納得しやすいと感じますか?(複数回答可)」という質問に対して、以下の回答が得られた。
「長期修繕計画と将来的な費用見通し」が53.2%で最も多く、次いで「修繕工事や管理サービスの具体的な内容・内訳」が46.7%で続いた。さらに、「他マンションとの比較(相場データなど)」が31.4%となっており、居住者は自分のマンションの状況を客観的に理解したいというニーズが強いことがわかる。
「特に必要ない/任せている」は16.3%と少数派であり、大半の居住者は「数字と計画に基づく説明」を求めている。値上げを単なる通知で済ませるのではなく、長期修繕計画と紐づけたストーリーとして示せるかどうかが、納得感を左右する決定要因になっていると考えられる。

「管理費・修繕積立金が値上げされる場合、どの程度までなら許容できますか?」という質問に対して、以下の回答が得られた。
<管理費>
<修繕積立金>
管理費の値上げ許容幅は、「月額1,000円未満」が25.5%、「月額1,000~3,000円未満」が35.4%で、合計すると6割超が「3,000円未満まで」を上限と考えている。修繕積立金も同様に、「月額1,000円未満」が19.5%、「月額1,000~3,000円未満」が31.4%で、3,000円未満が半数超のボリュームゾーンとなった。
管理費・修繕積立金の値上げに関して、居住者の許容範囲の中心は「月額3,000円未満」であり、全体の6割以上がこの範囲を上限として認識していることがわかる。一方で、「月額5,000円以上」を許容する層は少数派にとどまり、1割強〜2割弱に過ぎない。
もともとの負担額が2〜4万円帯に集中している中で、追加負担の心理的許容ラインは「数千円」が中心であり、5,000円を超える値上げは“家計インパクトの大きい決断”として受け止められやすいことがうかがえる。

「管理費・修繕積立金が許容範囲を超えて大幅に値上がりした場合、将来的にマンションの売却を検討しますか?」という質問に対して、以下の回答が得られた。
管理費・修繕積立金が許容範囲を超えて大幅に値上がりした場合、「売却を真剣に検討すると思う」が8.1%、「状況によっては売却を考える可能性がある」が17.2%、「できれば住み続けたいが、やむを得ない場合は売却も考える」が27.4%であり、合計すると約半数が将来的な売却の選択肢を意識している。
一方、「売却はまったく考えていない」も27.9%存在し、「わからない/判断できない」が19.4%と、態度を保留している層も少なくない。
この結果は、管理費・修繕積立金の水準が「マンションの資産価値」だけでなく、「住み続けるかどうか」というライフプランの意思決定にも直結していることを示している。過度な値上げは、長期居住意向の低下や、将来的な売却・住み替えニーズの顕在化につながるリスクをはらんでいると言える。

「今後の管理費・修繕積立金の値上げに備えて、どのような準備や対応を考えていますか?(複数回答可)」という質問に対して、以下の回答が得られた。
今後の管理費・修繕積立金の値上げに備えた対応として、「特に何もしていない・考えていない」が44.1%と最大であり、半数近くが具体的な対策に踏み出せていない状況が浮かび上がった。
一方で、「家計の見直し(節約・固定費削減など)」を挙げた人は30.2%、「値上げの理由や内訳を管理組合に確認したい」が19.3%、「管理会社や理事会に説明責任を求めたい」が16.9%、「管理費や修繕積立金の見直し(減額や見送り)を求めたい」が12.3%と、家計側の対策と管理側への働きかけの両面で動き始めている層も一定数存在する。
さらに「長期的に売却や住み替えを検討したい」が9.0%となっており、値上げ動向次第では住み替え戦略を視野に入れる人も少なくない。全体として、まだ「様子見」の態度が多数派である一方、今後の値上げ局面が進めば、家計調整・管理側への要求・住み替え検討といった行動が加速する可能性が高いと考えられる。
マンション購入者を対象とした今回の調査では、過去3年以内に「修繕積立金のみ」「管理費のみ」「両方とも」が値上げされたと回答した人が、合計で約6割にのぼりました。
そこで、今回はマンション修繕積立金について、基本的な役割から値上がりの背景、積立金が不足した場合の対応まで整理して解説します。
まずは、マンションの修繕積立金の役割と、管理費との違い、一般的な相場を確認しておきましょう。
管理費は「日々の運営・管理のための費用」で、修繕積立金は「将来の大規模修繕に備えるための費用」です。
管理費は、管理人の人件費や共用部の清掃・設備点検、水道光熱費など、その都度発生する支払いに充てられます。
これに対し、修繕積立金は外壁塗装や屋上防水、エレベーター・配管などの設備の更新といった大規模修繕に備えて、長期的に積み立てるための資金であり、マンションの安全性や資産価値を維持することを目的としています。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」によると、一戸あたりの修繕積立金の平均は約13,000円(管理費の平均は約11,000円)とされています。
今回の調査で「管理費と修繕積立金をあわせて2万円台」と回答した人が最も多かった結果とも整合的な水準となっています。
また、同調査では、1985年〜2014年に建築されたマンションの修繕積立金の平均額が13,000〜14,000円台であるのに対し、1984年以前および2015年以降のマンションではいずれも11,000円台となっており、築年数による違いも見られます。
(※いずれも駐車場使用料などからの充当額を除いた金額)
参考:「令和5年度マンション総合調査の結果について」(国土交通省)
修繕積立金が値上げ傾向にある背景には、主に次の4つの要因があります。
多くのマンションでは、新築時の販売価格を抑えるため、当初の修繕積立金を低めに設定し、その後、築年数の経過に合わせて段階的に引き上げる「段階増額積立方式」を採用しています。
国土交通省の調査でも、この方式を採用するマンションは全体の約半数に達しており、「時間の経過とともに修繕積立金が上がる」のは構造的な仕組みといえます。
2008年に、国土交通省がマンションの長期修繕計画と修繕積立金の設定に関するガイドラインを策定したことも大きな要因の一つです。
このガイドラインでは、おおむね5年ごとを目安に長期修繕計画と修繕積立金を見直すことが推奨されており、それに合わせて、当初の設定金額では不足すると判断されたマンションでは増額が行われてきました。
近年の物価上昇に伴い、人件費や資材価格が高騰しています。国土交通省のガイドラインでも、長期修繕計画の見直しにあたって「工事単価の変動」を織り込むことが求められており、同じ工事内容であっても、見積もりを取り直すと以前より高額になるケースも多くあります。
その結果、従来の積立水準では将来の大規模修繕に足りなくなり、修繕積立金を増額せざるを得ない事例が増えています。
販売時に月々のランニングコストを低く見せるため、修繕積立金が本来必要な水準よりも低く設定されているケースもあります。
加えて、想定より劣化が早く進行する、追加の工事が必要になるなどの事情が重なると、結果として修繕積立金が不足し、後から大幅な値上げに踏み切らざるを得ない状況も少なくありません。
修繕積立金が不足すると、当初の計画どおりに大規模修繕を実施できなくなるリスクが高まります。
対応としては、例えば次のような選択肢があります。
ただし、実施時期や規模を縮小すれば、建物の劣化が進み、結果として将来の修繕費用が増加したり、資産価値の低下を招いたりするおそれがあります。
しかし、積立金の増額や一時金徴収は住民の合意形成が難しく、借り入れは返済負担の長期化につながります。さらに、管理費削減を優先して単価の安い業者に切り替えると、サービス品質の低下を通じて住環境の悪化を招く可能性もあります。
このように、どの選択肢にもメリット・デメリットがあり、マンションの状況に応じた慎重な検討が欠かせません。
マンションの状況に合わせて適切に対処するには、専門家への相談がおすすめです。専門家に相談すると、専門的な知見を生かした客観的なアドバイスが受けられます。
修繕積立金は、マンションの安全性と資産価値を維持するうえで欠かせない費用であり、近年の物価高騰やガイドラインに基づく見直しの影響もあって、増額傾向にあります。
「今の積立額で本当に足りるのか」「これ以上の値上げに耐えられるのか」と不安を感じている場合は、早めに現状を棚卸しし、長期的な視点から対策を検討することが重要です。
不動産の査定や売却などに関することは、VSG不動産株式会社へお気軽にご相談ください。