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ベンチャーサポート不動産株式会社 > インタビュー > 価値住宅株式会社 髙橋正典様|「顧客それぞれに合った選択肢を提供したい」ウクライナショックによる資材の価格上昇ついても伺いました。

価値住宅株式会社 髙橋正典様|「顧客それぞれに合った選択肢を提供したい」ウクライナショックによる資材の価格上昇ついても伺いました。

髙橋正典様|「顧客それぞれに合った選択肢を提供したい」新築ばかりに偏った不動産市場への疑問から独自に進めてきた取り組みとは

目次

不動産売買仲介業を主軸に、全国へのフランチャイズ展開や、リノベーション後のイメージと合わせて物件が探せる情報サイト「さがつく」の運営など、多角的に不動産事業を展開する価値住宅株式会社。代表の髙橋正典様は、不動産に関してこれまでにいくつもの著書出版を通じて情報発信もされてきました。

十数年前にはめずらしかった中古住宅に保証をつける仕組みや、テクノロジーの導入が遅れていると言われている不動産業界で率先して取り組むDX化など、先進的かつ独自の取り組みを進める同社。髙橋様に、取り組み内容とそれにかける思い、さらには近年の不動産業界のトレンドについてもお聞きしました。

新築ばかりに偏った不動産業界に疑問。「新築、中古、それぞれに選択肢の持てる不動産市場」を志して創業

不動産業界に入られたきっかけと、価値住宅株式会社を設立された経緯をお聞かせください。

髙橋正典 様 価値住宅株式会社 代表取締役

学生時代に、情報システムやデータベースを作る不動産会社でアルバイトをしていたことをきっかけに不動産業界に興味を持ちました。卒業後は一度ほかの業界に就職しましたが、その後、不動産売買の仲介を手がける会社に入社し、現在、不動産業歴は27年になります。

いくつかの不動産会社で、新築の仲介業務や営業部の責任者などを経験したあと、前職では私を含め4人ほどのベンチャー企業に参画しました。業績は順調に伸びて60〜70人規模にまで成長していきましたが、2008年にリーマンショックのあおりを受けることに。ほとんど新築を専門に取り扱っていたこともあり、景気の影響をもろに受けることになりました。

会社はなんとか持ちこたえて現在では業績回復を果たしていますが、そのときの経験は当時の私に、不動産業界に対する疑問を残しました。新築ばかりが住居購入の選択肢となっているこの状況は果たして健全なのだろうかという疑問です。

実は、不動産物件がここまで新築ばかりに偏っているというのは日本特有の状況です。国が出しているあるデータでは、物件のうち新築が8割以上にものぼることが分かっています。新築中古それぞれにメリットデメリットがあって、私としてはどちらの方が優れているという考えはありませんが、少なくとも、新築ばかりが購入の選択肢になっている状況は偏っているように感じます。

購入者それぞれに合った選択ができるバランスのよい不動産市場を作っていこう。そのために、自分たちで新しい住宅流通の形を整えていこう」そうした思いで2008年に設立したのがこの価値住宅株式会社です。

実際に住宅流通の形を作っていく中でどのようなことを感じてきましたか?

新築、中古の両方を取り扱っていると、両者はビジネスとして考え方が大きく異なるように感じます。

手間や利益の面だけを見れば、多くの場合、新築の方が比較的メリットは大きいかもしれません。しかし一方で、物件を販売したらおしまいでお客様との関係性がストックされていかず、新しいお客様を次々と集客し続けていかなければならないビジネスモデルになりがちです。

反対に中古物件は、一度の利益などで見れば新築に及ばないところがありますが、定期的にリフォームをご案内をするなど、販売後もお客様との関わりを長期的に築きやすいというメリットがあります。お客様との接点と実績を会社の中に蓄積していきやすく、事業を長くやればやるほど事業が育っていく感覚があります。

業界に先駆けて中古住宅への保証体制を整えるなど、独自の取り組みを展開

提供されているサービスについてうかがいます。「カチッと!ハウスR」とはどのようなものか教えてください

価値住宅株式会社 カチッと!ハウスR
引用元:価値住宅株式会社

カチッと!ハウスR」とは簡単に言うと、中古住宅に対して、インスペクションや瑕疵保険、コールセンター対応、住宅履歴の記録などを一つにして付与するサービスのことです。

中古住宅に対する保証は現在でもまだあまり広がっていませんが、私たちが創業した平成20年には、そもそも「瑕疵保険」という制度すらなかったんです。新築物件に対しては平成21年に瑕疵保険の適用(もしくは供託)が義務化されましたが、中古物件については瑕疵保険の平成22年に作られたものの義務化されていませんでした。

その中で私たちは、中古物件向けの瑕疵保険が作られてすぐに中古住宅への瑕疵保険付与を社内で義務化しました。そうしたのはやはり創業時から抱いていた「適正な中古住宅流通市場を作りたい」という思いです。新築にあって中古に欠けているのは安心や保証であり、安心して中古住宅を購入できる仕組みを整えていく必要があると考えました。

中古住宅に保証を求めるという考え方は、いまだに十分には広がっていませんが、大切なお家を選ぶ上で保証や安心は当然大切な要素であるはずです。「中古物件にも保証や保険をつけて大切にするのが当然」といった考え方が広まっていくと同時に、「価値住宅で買えば、保険や検査を当たり前にやってくれる」という当社の差別化ポイントに価値を感じていただけるお客様が増えるといいなと思います。

全国で展開されている「売却の窓口」というサービスはどのようなものですか?また、どのようなお客様がご利用されているのか教えてください

価値住宅株式会社 売却の窓口
引用元:価値住宅株式会社

売却の窓口」とは、売主に向けた相談窓口を設けているサービスの名称です。現在、全国70数社の事業所とネットワークを結んで提供しています。

売却物件は、基本的に大手企業に集中しやすくなります。思い入れのお家を売却する上で、不動産会社を選ぶ選択基準として特に重視されるのが「信頼できる不動産会社か」という点です。「大手企業であること」は、不動産業界についてそこまで詳しくないお客様にとってもっとも分かりやすい信用材料の一つであると言えるでしょう。そのため、中古住宅が増えていく市場においては、物件がどんどんと大手に集中し、中小規模の不動会社は、大手から“おこぼれ”をもらって仲介をしていくしかないといった厳しい状況に向かっていきます。

我々中小としてはその状態が望ましいとはもちろん考えておりません。自分たち自身でも売却を受託していくことが必要です。そのための仕組みをつくろうという目的で組成したものが「売却の窓口」のネットワークです。

信用性を担保できるまっとうな不動産会社をつなぎ、全国に売却相談の窓口を展開。もちろん数を増やしただけでは不十分ですので、保険、検査、保証、査定について公正なサービスを提供できる体制を築いています。

当社で100、200と店舗を広げられればいいのかもしれませんが、現実には一社でできることには限りがあります。事業者ネットワークを結ぶことで、当社だけでは叶わなかっただろう規模、早さで受託の窓口を広げていくことができていると感じています。

今年4月に「DXマーク認証制度」の認定を取得されたのはどのような目的でしたか?

不動産業界はご存知の通り、デジタルツールやテクノロジーの導入に関してはまだまだ遅れています。全国の不動産会社とやりとりしていても、メールすら使わないという方がまだまだ多いですし、不動産テックなどという言葉が登場している一方で、実際の不動産売買の現場で活用されるという段階とはまだまだほど大きな隔たりがあるように感じます。

当社はフランチャイズ事業も手がけており、加盟店様相手に価格査定や、住宅の評価制度、管理などにおけるテクノロジー活用をサポートをしている立場です。DXに関しては我々自身が先頭に立って業界を引っ張っていけるぐらいの知見を持っていないと示しがつきません。そこで、業界の中での旗振り役となっていけるようにと取得したのが今回の「DXマーク認証制度」です。

DX認証マークは、「DX推進の準備が整っている」と認められる企業に対して国が認定を与える制度です。個人情報保護などについての内容を含むため消費者に向けたものでもありますが、当社の場合はどちらかというと業界内に向けて旗を振る意味合いが強いかと思います。テクノロジーに関して遅れていると言われる不動産業界の中で、DX推進のリーダーシップを発揮していきたいと思います。

※参考サイト:一般社団法人 中小企業個人情報セキュリティー推進協会

不動産業向け自動追客支援ツール「Oeruka」とは、どのようなものか教えてください

価値住宅株式会社 Oeruka
引用元:価値住宅株式会社

Oeruka」とは一言で言ってしまえば、接点を持っていただいたお客様を自動追跡できるシステムのことです。

家の売却は、ご相談から実際に家を売るまでに長い時間がかかる傾向があります。思い入れのある物件をすぐに「売ります」とはなかなかいきませんよね。そうなると、お客様と長期的に連絡を取りながら近況を追いかけていく必要があるのですが、お客様のご状況の把握と連絡を営業パーソンだけでやるというのはなかなか大変な作業です。そこで、それを補助するのが「Oeruka」の役割です。

「Oeruka」を使うと、お客様の売り物件に合わせて、「ご近所でこんな売り物件が成約しました」といった関連情報を自動的に案内したり、売却における業者選びや価格付けのポイントなどのお役立ち情報をメルマガを送信したり、その上で、実際にどのようなメールが開封されているかについて計測したりということが自動的に可能になります。これまで営業パーソンが電話していた負担を減らしつつもお客様と接点を保ち続けられる支援ツールと言えます。

同様の追客システムはすでに世の中に存在していますが、実際にまちの不動産屋さんなどを多く見ているとオーバースペックとなっていると感じる部分もあります。他社では5~6万円以上かかるものを、機能をしぼって2〜3万円の安価で使えるという点が、ほかの追客ツールと「Oeruka」との違いです。

日本的な「スクラップ&ビルド」からの脱却、ウクライナショックでの資材価格高騰、空き家対策...。不動産業界の現状と今後をどう見るか

日本の不動産業界において「スクラップ&ビルド」と言える慣習が続いています。脱却できていない理由は何だと思いますか?

数年前と比べれば変化してきましたが、日本人は依然としてまだまだ家にお金をかける意識が希薄です。

家にお金をかけようとしない原因の一つには「きちんと管理すれば家が長持ちするということをそもそも知らないから」ということが言えるでしょう。定期的な点検やメンテナンスはせず、20年30年と経って甚大な損傷が明らかになったときに初めて「やばい。直さなきゃ」となるわけですが、そこまで放っておいてしまうとすぐ建て替えできなかったり、かなりの金額を払わなければならならかったりといった事態になってしまうんですね。

さらに、お金をかけない原因のもう一つとして、「中古住宅が適切に評価されて売買されるマーケットがないこと」も挙げられます。

新築ばかりが価値が高くて、その後は右肩下がりだという考え方が不動産市場全体に共通しています。中古になった時点で価値の下がっていってしまうものに、多くのお金をかけようという気にはなかなかなれませんよね。

同じ中古住宅であっても、きちんと手をかけてきたものとそれを怠ったもので状態に大きな差が生まれます。人間でも、ジムに通って一生懸命体を鍛えてきた人と、食べたいものだけ食べてお腹が出ている人では同じ50歳でもまったく状態が違いますよね。

住宅も同じはずなのですが、これまで「新築は価値が高くて中古は価値が落ちる」という見方ばかりされてきました。ちゃんと手入れがされていれば中古だって適正に価値が評価されるというような考え方がマーケットに根付いてくれば、「我が家でも家にお金をかけて家の価値を保っていこう」という、スクラップ&ビルドとは反対に考え方が広がっていくのではないかと思います。

不動産業界において、コロナ禍でどのような変化がありましたか?

髙橋正典 様 価値住宅株式会社 代表取締役

物件に関して言うと、「コロナに対応した間取りにしたい」といったご要望が一時期は多かったのですが、最近は落ち着いてきた印象ですね。

働き方の変化についてのあるデータによると、コロナ初期には多くの企業で進められたリモートワーク化は、今では大部分がオフィス出勤に戻ったと言われています。より正確に言えば、大企業では在宅勤務が依然続いている一方で、中小企業はほとんどが元通りになっている状況です。

日本では、労働者の7割が中小企業勤務と言われていますので、7割の方にとって「コロナに対応した間取り」は必要ない状況に戻ったという見方ができます。

ウクライナショックなどに続いている資材の価格上昇について、影響は出ていますか?また、今後どのように推移していくと思いますか?

価格上昇の影響は、業界にとっても当社にとっても明らかに出ているというのが正直なところです。特に新築ではここ2年ほどでコストがどんどん上がってきました。某大手ハウスメーカーが今年10月に再値上げを予定しているというようなニュースが先日ありましたね。

ただ、私たちのような中小企業に限って言えば、現状は膨らんだコストをうまく価格転嫁できているかなと思います。むしろ大手企業だと、1〜2%の値上げがもたらす影響は甚大で簡単に値上げするわけにはいかないでしょうが、年間数十棟ほどを手がける中小規模の会社であれば、たとえば2,300万を2,500万に値上げしたとしてもまだ大丈夫でしょう。中小企業の多くは、今のところ資材価格高騰のダメージを価格で吸収できているという印象です。

ただし、秋以降はまた状況が変化するかもしれません。木材関係については今後徐々に落ち着いていくのではないかと思うのですが、一度上がった価格が元通りに下がってくるまでには一定のタイムラグがあります。そこに加えて、秋以降は設備関連の値上げが控えていますので、ウッドショックで上がった価格が下がりきらないところにもう一段階値上がりが加わるのではないかというのが個人的な見立てです。

少子高齢化による空き家問題について、解決するためにはどのような取り組みが必要だと思いますか?

私たちも空き家対策に携わる場面などがありますが、全国一律で方策を考えるのは難しいだろうというのが実感です。各地にそれぞれ強い地域性と事情があるため、各自治体に合った方策を考えていく必要があるというのが議論の前提だと思います。

その上で具体的に何を考えるべきかと言うと、「法整備」と「民間企業がメリットを得られる仕組み作り」の2点です。

まず1つ目の法整備についてですが、「この空き家をどうするか」と考えたときのゴールは、端的に言ってしまえば「利活用する」か「壊す」の二択ですよね。特に地方ではもう物理的に利活用が困難で、明らかに壊すしかないという空き家もありますが、そのときに難しいのが、解体費用を誰が負担するのかということや、そのままにしておきたいという要望がある場合にどこまでそれを認めるのかという議論です。そこに関しては、やはりある程度法律による規定が必要だと思います。

また、2つ目の「民間企業がメリットを得られる仕組み作り」についてですが、空き家は放っておくだけで行政コストがかかっているという観点は、空き家問題を考える上で非常に重要です。行政コストとは具体的には、建物の調査費用や空き家バンクの運用費用などですね。それらは年々、自治体財政を圧迫しています。

髙橋正典 様 価値住宅株式会社 代表取締役

そこで、これまで行政がおこなってきた空き家の管理運用を民間に委託するのはどうかという議論が登場してきました。民間の不動産会社などが空き家を管理運用し、本来地方財政から支払っていた行政コストから浮いた金額を成果報酬として支払うといった仕組みです。

現在、健康促進などの領域ではそういった民間委託の仕組みが「PFS(成果連動型民間委託契約方式)」などという呼ばれ方で広がっています。住民の健康維持につながる取り組みを民間業者に委託して、健康診断を受ける人が増えるなど、病気リスクや保健指導などに本来かかっていただろう行政コストを減らすことに貢献できた分だけ成功報酬を支払うといった仕組みです。

空き家対策においてもこれと似たことができると考えています。行政が空き家にかけているコストのうち、民間企業の努力やノウハウによって改善できた効果を成果報酬として支払うという仕組みです。

現在、空き家物件を不動産会社が扱う場合には、たとえば500万円の物件を売って数十万円の手数料をもらうといった小規模の利益しか得られません。PFSのような仕組みを作れれば不動産会社としてもビジネスに算入するメリットが出てきて、空き家対策を加速させられます。民間にとってのメリットを作って民間会社を入れていくというのが、空き家対策の一つの理想型だろうと個人的には思います。

リノベをイメージしながら物件情報が探せる情報サイト“さがつく”に手応え。今後さらに利用拡大に注力

今後はどのような取り組みにチャレンジしていきたいですか?

当社が運営するサイト「さがつく」への反響が増えています。「さがつく」は、リノベーション後のイメージ画像とリノベ費用も合わせて、中古物件を見比べられる情報サイトです。リノベーションについて具体的なイメージを見ながら住宅を選ぶという探し方は、これまでありそうでありませんでした。

不動産会社がリノベーションまでを一括してパッケージとして売るような中古住宅売却の形は、おそらく今後広がっていくでしょう。実際に、「さがつく」経由での契約は大きく増加しており、お客様からも物件情報とリノベーションの情報を同時に探したいというニーズがあることが分かってきました。今後も「さがつく」の利用拡大に注力していきたいと思います。

髙橋正典 様 価値住宅株式会社 代表取締役

髙橋正典 様
価値住宅株式会社 代表取締役

■ 企業プロフィール
社名:価値住宅株式会社
所在地(本社):東京都渋谷区代々木3丁目28番6号 いちご西参道ビル2階

事業内容:不動産事業、住宅・リフォーム事業、住宅管理事業、フランチャイズ事業

TEL:03-3375-1250

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