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神奈川県横浜市で事故物件をメインとした不動産売買を手がける「株式会社MARKS」。代表取締役の花原 浩二様は、事故物件、そして不動産業界に対するイメージを変えるために使命感を持って事業に取り組まれています。
今回は不動産業界に入られた経緯や事故物件売買におけるエピソード、また業界を取り巻くさまざまな現状についてお話伺いました。
不動産業界に飛び込んだのは、1995年の阪神淡路大震災を経験したためで「地震に負けない家を作りたい」と考えたことがきっかけです。そして、1999年に大和ハウス工業株式会社に入社しました。
就職して不動産業務に携わる中で、空き家問題に対する意識が高まりました。私が新入社員の時に売った家が空き家になっていたり、兵庫県の実家周辺にも空き家が増えたりなどの変化を目にしたためです。そして、空き家問題にコミットするために、2016年に独立しました。
なお、独立を決意する上で大きな出来事となったのは、独立2年前の父親の死でした。
身近な人間の死に接して、自分の残りの人生を考えた時に「このままではダメだ」と感じたのです。
父の葬儀を担当したお坊さんが説法で「父親は子供に対して教育するのが仕事です。この世で最後の教育は、自分の死というものを持って残されたご家族に対して、命とはどういうものなのか、限りがある命と向き合い、残された命をしっかりと大切に生きることが重要なんだ」とお話されていました。
このお話を聞いたことをきっかけに、残りの人生これからの生き方を見直すようになったのです。
また、大和ハウスの当時の会長であった樋口会長から「お金儲けのために仕事をするのではなく、世の中の役に立つこと、お困りごとを解決してあげることで、結果としてお金は後からついてくるもんだ」とご指導いただいていたこともあり、その想いも合わせて、独立を決意しました。
引用元:株式会社MARKS
株式会社MARKSは「成仏不動産」というウェブサイトを運営し、多数の事故物件を取り扱っています。インパクトの大きさからか、私自身、テレビ番組やさまざまなメディアから取材を受ける機会もあります。
引用元:成仏不動産
そんな弊社の事業は「成仏不動産」に関わる、事故物件の査定や特殊清掃をはじめ、他社がおこなっていない事業が多いですね。
一例としては、再建築不可物件(建替えのできない不動産)を各士業の専門家が助ける「負動産の総合病院事業」、業界初となる葬儀社様の不動産ビジネススタートのお手伝いをおこなう「葬儀社サポート事業」、遠距離の不動産売買を弊社がワンストップでおこなう「リモ売り不動産事業」、著名人向け紹介専門の不動産サービス作りを通じて、そのセカンドキャリアを応援する「御用達不動産事業」なども展開しています。
「事故物件なんて買う人はいない」「買う人は、経済的な理由で、我慢してる」というのが、多くの方のイメージかと思います。私も当初そう思っていましたが、全く違いましたね。
我慢以前に、事故物件でも平気な方は、意外に多いのです。例えば、お金に余裕のある節約家の方が、事故物件をお買い求めになったりします。
また、店舗利用の場合は、そこに住むわけではないので、気にしないケースも多いです。
さらに、視点を日本人のみならず外国の方まで拡大すれば、事故物件でも全く気にしない文化の方もいらっしゃいます。
相場より安く物件が手に入るという意味で、事故物件は「気にしない方にとってはむしろ狙い目」とさえ言えるかと思います。
持っていた物件が突然、事故物件となって「何とかして売りたい」という方の場合は、切実なケースが多いです。
例えば、孤独死が発生したマンションのオーナー様から「どうしても臭いがとれないから何とかしてくれ」と、半ば泣きながら依頼されたことがあります。すでに2回、特殊清掃を実施して、室内をコンクリートむき出しの状態にしても、臭いの原因がわからない。そこで、弊社が特殊な薬剤などを使用したところ、配管部分に体液が残っていることが判明しました。ほんの少しの体液ですが、それが臭いの元になっていたのです。
大変なのはここからで、すでに特殊清掃などで多額の費用がかかった上に、買取査定をしてもらったら「マイナス300万円(引き取りに300万円かかる)」だったのです。
そこで弊社は、こちらの事故物件を「好きにDIYできるスケルトン物件」として「成仏不動産」で売り出しました。結果、弊社の仲介で、70万円で売却できました。ちなみにこちらの物件を買った方は、自らDIYして、賃貸物件にリノベーションされ、良い利回りとなったそうです。
これと似た事例は、弊社にはたくさんあります。「他で断られてどうしようもなかった物件をどうにかした」というケースは、本当に多いです。
引用元:負動産の総合病院
独立時に、自分の人生を見つめ直した際「世のため、人のために、困りごとの解決に全力を尽くしたい」と考えたからです。
事故物件、あるいは再建築不可物件は、当事者にとって切実なお困り事です。
そのような「負動産(マイナスの資産)」を「富動産(プラスの資産)」に変えたいと模索する中で、自然と「不動産の可能性を追求する」必要性が生じました。
つまり「不動産の可能性を追求して、世の中の困りごとを解決すること」が私の存在意義であり、弊社のミッションであると思っています。
展開されるさまざまな事業も、このミッションが軸になっています。
確かに前例がなく、大変な取り組みも多いです。
ですが、すぐに断ったり、諦めたりしないことが大切だと私自身考えており、社員たちにも伝えています。実際に、ご依頼は原則断らないという方針です。
弊社の行動指針の1つに「できる方法を考え尽くす」というのがありまして、さまざまな角度から問題・課題に光を当てながら、アイデアを出して、解決を目指します。
不動産取引量がコロナ前よりも増えたり、不動産自体が売れるようになったりといったケースも多いです。不動産価格が急に上がったこともありましたし、日本国内に関しては、好影響を感じる不動産業者も多いかもしれません。
なお、コロナ禍で弊社が扱う事故物件も増えました。人と会う頻度が減ったことで孤独死が増えましたし、都会に出てきた若い方が孤独を感じて自殺された、などという話も聞きます。
全国の総数でいうと自殺が21,000件という年間のデータがありまして、月あたり千数百件となります。孤独死は年間で約30,000件といわれてますが、実際に自宅でお亡くなりになるケースは24,000件くらいかと思います。
▲お役様との商談風景
一昨年くらいまで大きな影響を心配していましたが、コロナ禍で不動産が注目を浴びている影響もあり、結果的にバランスがとれた状態になっていると思います。
生産緑地の2022年問題については「土地や新築物件が過剰供給となり、地価が下落する」と不安視されていました。しかし、宅地化されずに残る農地も多いです。
生産緑地2022年問題の影響が多少出るとしても、今、多くのお客様が求めるような物件は足りていないので、過剰供給になる心配もあまりないのではないか、と思います。
前提として少子高齢化が進み続けていて、家の数と人口が合っていませんね。
前に市議会議員の方から「地域の空き家問題、何とかならないですか」といわれました。しかし、1つの地域の空き家が解決すると、別の地域で空き家が発生することになります。限られた人口が移動するだけの、ゼロサムゲームの構造になっているのです。
現状は「人口が減っているのに、どんどん家を建てている」という状態です。国内の年間着工戸数は80万戸だったかと思いますが、空き家問題の視点から見れば多すぎるということになります。
家の新築には相続税などの節税対策、もしくは景気を支えるという側面はもちろんありますが、空き家問題の根本的な解決を考えるのであれば、制度も変わっていかなくてはなりません。空き家の増加は、自治体破綻(かつての夕張市破綻のような事態)のバロメーターとなりますし、非常に憂えています。
現実的には「空き家問題の完全解決は難しく、緩和措置を講じるより他ない」というのが、現在の私の考えです。
空き家問題については、今後弊社も本腰を入れて取り組みたいと考えています。
過渡期であり、答えが出ていない部分もありますが、確実に大きな変化をもたらしたと感じています。
不動産業界は、知識や情報の格差によって、不動産業者にしか分からないことがたくさんありました。私はこれを、不動産業界における「ブラックボックス」と呼んでいます。例えば、不動産売買価格などは、ブラックボックスの典型です。
インターネット環境の拡充によって、多くの方が不動産業界の情報に触れられるようになったことで、ブラックボックスに光が当てられる状態になっているかと思います。
つまり、デジタル化が進めば進むほど、一般の方が不動産業者と同等の知識を簡単に得ることができるようになります。また、AIの普及で、最適な不動産売買のタイミングもわかるようになるかもしれません。
それは、ただ単に「不動産売買がラクになる」という以上に「誰でも不動産のことが分かる/業者に近しいレベルになる」という巨大な変化です。
このような時代にあっては「物件情報を持っている」という、これまでの不動産業者の優位性は消滅します。そして、弊社はそのような変化を見越した上で、積極的に事業展開させています。
デジタル化の進行もあり、不動産マッチング(人をつなぐこと)はさらに容易になるかと思います。つまり、不動産取引それ自体には、価値がなくなるでしょう。
そこで価値が生じてくるのは、私個人としては「不動産にまつわる困りごとの解決・サポート」かと思います。不動産業界は今後、取り組み方を変えることになってくる、変えざるを得ないと予測してます。
また不動産業界が取り組み方を変える際は、そのイメージを変えることも重要です。ブラックボックスが多く、透明性に欠けるため、不動産業界に悪いイメージを持っている人も少なくないと思います。
いずれにせよ不動産業界には、より価値のあるサービス提供によって、業界そのものの価値や信頼を高めることも求められるでしょう。
1つめは「不動産業界のブラックボックスの透明化」に寄与することです。
悲しいことに、特に事故物件などの扱いづらい物件では、買い叩きのようなケースも存在します。所有した人が冷静な判断ができないタイミングに、適正価格ではない言い値が出てくる事態に対しては「何とかしたい」という気持ちが強いです。
そのために、弊社では、正しい査定に基づいた価値ある売却実績を蓄積することで、世の中の事故物件のイメージそのものを変えたいと思っています。
2つめは、先ほども言った通り「不動産の可能性の追求」に寄与することです。
不動産業界は、業界のイメージや、情報がブラックボックスになりがちな点など、改善すべき点が多い反面「逆に伸びしろがある」と考えています。
だからこそ、不動産業界に多くの可能性が眠っているし、一番面白い業界であると私は思っています。
弊社へ一番最初に入社した社員のことは、忘れることができません。
私の独立は2016年10月で、その社員には同年12月に入社してもらいました。私より年上でしたが、一生懸命頑張ってくれました。そんな彼の入社からちょうど1年目、奥様から電話があって「今朝方、心筋梗塞で主人が亡くなりました」と伝えられたのです。
実は前日に、今年・来年の計画や数年後の売上目標を話して「このメンバーだったら絶対行けますよ」などと明るく語り合ったばかりでした。
ショックも大きく、悲しかったですが「本当に良い会社を作っていかないといけない」と、改めて決意しました。
ですから業務において、私はいつも、背中を押される感じがありますし、毎年ちゃんとお墓参りをして、その都度「良い報告をしたいな」と思っていますね。
▲「世の中の困りごと」解決に全力を尽くす同社社員
不動産業界の内外から多くの方が参入して、業界の改善・イメージアップが進み、業界が盛り上がることが私の夢です。
その結果「売主様・買主様・不動産にまつわる関係者」の全員が幸せになる状況を望みたいですね。その流れの一助となることが弊社の展望ですが、そのためには規模拡大も必要かと思います。
弊社は、2022年3月に福岡と大阪へ進出しましたが、全国各地の事業所・支店設置を目指したいです。不動産のお困りごとは日本全国に存在しているので、さらに多くを解決していきたいのです。
そこで、今後どんどん人を採用していく予定ですが「不動産のブラックボックスを透明化することに熱い思いを持ってくれるような人」にこそ、弊社に来て頂きたいですね。そんな社員達、そしてお客様と共に、より良い会社を作っていきたいと思います。
■ 企業プロフィール
社名:株式会社MARKS(MARKS INC.)
所在地:横浜市中区山手町 246-1 カーネルスコーナーマンション 1F
事業内容:不動産売買、賃貸、投資用不動産、建築、リノベーション
TEL:045-277-3222(代表)