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熱割れしたガラスの修理費用は自己負担?賃貸でも保険は使える?

この記事でわかること

  • 熱割れしたガラスの修理・交換費用は誰が払うかがわかる
  • 熱割れしたガラスの修理・交換費用を貸主が負うケースがわかる
  • 熱割れしたガラスの修理費で揉めた場合の対処法がわかる

窓ガラスが突然ひび割れ、「これって熱割れ?」「修理費は自分で払うの?」と心配になる方は多いです。とくに賃貸住宅では、入居者が負担すべきなのか、大家や管理会社が対応すべきなのか判断しにくく、費用をめぐってトラブルに発展するケースも少なくありません。

熱割れはガラスの性質や日射の影響など、入居者に原因がない状況でも起こる現象であり、適切に判断しないと、不必要な支払いにつながるおそれがあります。

この記事では、熱割れによるガラスの修理費用は誰が負担するのか、支払いで揉めたときの対処法などについて、弁護士がわかりやすく解説します。

ガラスが熱割れする原因は?

ガラスの「熱割れ」とは、温度差によってガラス内部に強い力(熱応力)が生じ、ひび割れる現象です。外から物が当たったわけではなく、環境によって自然に起こる点が特徴です。とくに冬場や日差しの強い日など、ガラスの一部だけが急激に温まったり冷えたりする状況では、熱割れの発生リスクが高まります。

熱割れが起こりやすくなる具体的な要因としては、次のようなものが挙げられます。

室内側と室外側の温度差が大きい
冬場の暖房で室内が急激に温かくなると、ガラスの内側だけ膨張し、外側との温度差が大きくなります。
カーテン・家具などでガラスの一部だけ温まりやすい状況
カーテン越しの直射日光、テレビやエアコンの熱風などで、ガラスの特定部分に熱が集中すると温度差が大きくなります。
ガラスの端に負荷がかかっている状態
サッシの固定位置が悪い、施工時のわずかなズレなどで、ふちだけに力がかかっていると熱割れを引き起こしやすくなります。
網入りガラスなど、性質上割れやすいガラスが使われている
網入りガラスは内部にワイヤーが入っており、温まり方が均一でないため、普通のガラスより熱割れしやすい傾向があります。

熱割れは入居者の過失がなくても発生するため、賃貸住宅では修理費の負担をめぐって誤解が起きやすいところです。

熱割れしたガラスの修理・交換費用は誰が払う?

ガラスが熱割れした場合、まず気になるのは修理費の負担です。とくに賃貸物件では「入居者が費用を払わなくてはいけないのか?」「大家に請求できるのか?」という疑問も多いです。

結論からいうと、熱割れは入居者の過失による破損ではないため、原則として貸主(大家・管理会社)が費
用を負担するケースが多いです。ガラスは経年劣化や温度差など外的要因により自然に割れることがあり、入居者がコントロールできない現象だからです。

以下では、その理由と具体的なケースを詳しく説明します。

賃貸物件では貸主負担が原則

賃貸物件におけるガラスの修理費は、入居者の故意・過失がない場合は「貸主負担」が原則です。これは、国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)」が根拠となっています。同ガイドラインでは、入居者に責任がない自然損耗や経年劣化は、原則として貸主が修繕するべきとされています。

熱割れは、気温差・直射日光・ガラスの材質・設置環境の問題といった自然要因で発生しやすく、入居者が意図的に壊したわけではありません。そのため、熱割れが確認された場合は、まず管理会社や大家に連絡し、修理対応について相談することが重要です。

窓ガラスの錆割れも貸主に請求できる

「錆割れ(さびわれ)」とは、網入りガラスに入っている金属ワイヤーが錆び、その膨張によってガラスが割れる現象です。これも入居者が防げるものではありません。

錆割れの特徴としては、「ワイヤー部分から不規則にヒビが広がる」「温度差が大きい冬場に起こりやすい」「交換には通常のガラスより高額な費用がかかる」などがあります。

しかし、錆割れも熱割れと同じく入居者の責任ではないため、貸主の負担で修理するのが一般的です。「ワイヤーの劣化」という建物側の問題であり、自然な経年劣化といえるためです。

経年劣化による汚損なども貸主の責任

熱割れや錆割れ以外にも、経年劣化が原因の汚損・破損は貸主側の修繕範囲です。経年劣化とは、使用していなくても時間の経過によって建物の部材や設備が古くなっていく状態を指します。

代表的な例は以下のとおりです。

  • 長期間使用したガラスの素材疲労
  • サッシ周りの金属疲労
  • ゴムパッキンの劣化による破損
  • 日光や気温変化による素材の劣化

これらは建物の「自然な消耗」であり、入居者の行為とは無関係です。そのため、ガラスが割れた原因が経年劣化であれば、修理費は貸主の負担となります。

熱割れしたガラスの修理・交換費用を借主が負うケース

熱割れは自然現象で起こることが多く、通常は貸主負担になります。しかし、状況によっては借主が修理費を負うケースも存在します。ポイントは「入居者の行動がガラスの破損につながったかどうか」です。

ここでは、借主負担となりやすい代表的なケースを整理します。

物をぶつけた・強い力を加えた場合
ガラスに物を当てたり、家具の移動時に衝撃を与えたことが原因で割れた場合は、入居者の過失と判断されます。「意図的ではない」「気づかないうちにぶつけた」場合でも、行為と破損の因果関係が認められれば借主負担になる可能性があります。
ガラス付近に高温の家電を置き、温度差を生じさせた場合
暖房器具やストーブ、ヒーターをガラスの近くに置くと、局所的な温度差が生まれて割れやすくなります。このように入居者の設備配置が原因で破損した場合は、借主負担と判断されやすくなります。
サッシまわりの清掃不足で異物が挟まり、負荷がかかった場合
サッシのレールに物が挟まっていたり、サッシがゆがむほど力を加えて開閉していた場合、その負荷がガラス割れにつながることがあります。この場合、適切な管理をしていなかったとして借主負担となる可能性があります。
ベランダの植木鉢や置物が台風によって飛ばされ、窓ガラスに当たった場合
強風による飛来であっても、ベランダの管理状況は入居者の責任とされます。台風時に固定していなかった植木鉢や装飾品が飛ばされて窓を破損した場合、管理不足と見なされて借主負担となるケースがあります。
契約書で「ガラス破損は借主負担」と定めている場合
賃貸借契約書や重要事項説明書に「ガラスの破損は借主負担」と明記されているケースがあります。この場合は契約内容が優先されるため、自然破損であっても借主負担とされる可能性があります。ただし、国のガイドラインとは矛盾する部分もあるため、不当と感じる場合は弁護士に相談するのが安心です。

原因が熱割れであるかどうかの見分け方

熱割れの場合には特徴的な割れ方があり、他の原因と見分けるためのポイントがあります。ここでは、代表的な判断基準を3つ紹介します。

何かをぶつけた形跡があるかどうか

物が当たって破損した場合、ガラス表面に「強い衝撃が加わった跡」が見られることが多くあります。具体的には次のような特徴が挙げられます。

  • 衝突した部分を中心に放射状のヒビが広がっている
  • ガラスが局所的に欠けている(えぐれたような形)
  • 割れ方に “飛び散るような形状” がある

このような衝撃の跡が確認できる場合、熱割れではなく、外部からの物理的な破損が原因と考えられるため、借主負担になる可能性が高くなります。

窓のふちから長いヒビが入っているかどうか

熱割れの最も典型的な特徴は、ガラスのふちからスーッと長く伸びるヒビです。熱割れは「ガラスの内部の温度差」によって生じるため、ガラスの縁に溜まった応力が原因となります。このため、ヒビはガラス中央ではなく、ふち付近から始まることがほとんどです。

  • ふちから一直線に割れが伸びている
  • ジグザグではなく比較的直線的な割れ方
  • 衝撃点(欠け)が見当たらない

こうした特徴が見られる場合、熱割れの可能性が高いと言えます。

室内外の温度差が大きい環境かどうか

熱割れは、ガラスの「温度差」が極端に大きいときに発生しやすい現象です。特に、季節や部屋の使い方によってガラス面の温度が不均一になっていると、ガラス内部の応力が高まり、ふちの部分からヒビが伸びることがあります。

たとえば次のような環境では、熱割れのリスクが高くなります。

  • 冬場に暖房を強く使用し、室内だけが急激に温まった場合
  • 夏場、直射日光がガラスの一部分だけに当たっている場合
  • エアコンの冷風が窓の片側に集中している場合
  • 部屋のレイアウトで家具が影をつくり、一部分だけ温度が高くなる場合

こうした状況に心当たりがある場合、温度差が原因で割れた可能性が高いと判断できます。

熱割れしたガラスの修理費で揉めた場合の対処法

熱割れのように衝撃の跡が残らないケースでは、誰が修理費を負うのかについて、管理会社や大家と意見が食い違うこともあります。ここでは、トラブルを防ぎつつ、適切な負担区分を判断するために行うべき対処法を整理します。

熱割れしたガラスの様子を撮影しておく

割れた直後の状態をスマートフォンで記録することは非常に重要です。割れ方の角度、ヒビの伸び方、ふちからの割れの有無など、熱割れ特有の特徴を写真に残しておくことで、後から原因を説明しやすくなります。

  • ガラス全体
  • 割れの起点(どこから割れているか)
  • サッシ・周辺環境
  • 室内外の温度状況(エアコン稼働、日当たりなど)

このような写真を残しておけば、管理会社側が誤解した場合でも根拠を提示できます。

原因・責任の切り分けを行う

熱割れかどうかを判断する際には、以下の点を確認します。

  • 衝撃点(欠け)があるかどうか
  • ヒビがガラスのふちから伸びているか
  • 室内外の温度差が大きい環境だったか
  • サッシのゆがみや錆の有無

これらをもとに、原因が自然現象なのか、入居者の管理不足なのかを整理し、主張すべき点を明確にしておきましょう。

管理会社や大家に状況を正確に説明する

連絡する際は、「いつ気付いたか」「どのように割れたか」「心当たりがある行動はあるか」などを丁寧に伝えます。曖昧な説明をすると、誤解によって入居者負担と判断されるリスクがあります。写真を添えて説明すれば、熱割れの可能性を理解してもらいやすくなり、不要なトラブルを避けられます。

修理費負担をめぐるトラブルは契約書を確認する

賃貸契約書や重要事項説明書には、ガラス破損についての負担区分が記載されている場合があります。「ガラス破損は借主負担」と明記されているケースもあるため、まず契約内容を確認しましょう。ただし、不合理な契約内容である場合には争える可能性もあるため、疑問があれば弁護士に相談するのが安心です。

火災保険(家財・借家人賠償)で補償できるか確認する

入居時に加入した火災保険の内容によっては、ガラス破損が補償対象になることがあります。

家財保険
入居者所有の物が原因の場合に補償
借家人賠償責任保険
建物に損害を与えた場合に補償

熱割れが入居者の過失でない場合でも、契約内容によっては保険が使える可能性があるため、補償範囲を確認しておくと安心できます。

第三者の専門業者に原因調査を依頼する

管理会社と意見が食い違う場合、ガラス修理業者や建物の専門家に調査を依頼すると、客観的な判断が得られます。専門業者の診断書があれば、どちらの負担が適切かを判断する材料になります。

調査費用は依頼した側が負担するのが原則です。ただし、熱割れ・経年劣化(錆割れを含む)・建物側の構造的問題など、貸主の管理責任に当たる事実が判明した場合 には、後から貸主が調査費を負担するケースもあります。

感情的に対応せず、文書・記録を残す

負担区分を正しく判断するためには、冷静な対応がとても重要です。やり取りは可能な限り「言った・言わない」を避けるために、記録として残すことを意識しましょう。

具体的には、次のような記録が役立ちます。

  • 管理会社へ連絡した日時・内容のメモ
  • メールやチャットでのやり取りのスクリーンショット
  • ガラスが割れたときの状況を記録した写真
  • 専門業者の見積書・診断書

こうした記録を残しておけば、後から誤解が生じた場合や交渉が難航した場合でも、事実に基づいて説明できます。冷静な対応と情報の整理が、無用なトラブルを避ける大きな助けになります。

法的トラブルに発展しそうな場合は弁護士へ相談する

管理会社や貸主と話し合っても解決しない場合には、早い段階で弁護士へ相談することを検討しましょう。弁護士は、以下のような点について専門的な判断を行えます。

  • 契約内容が適切かどうか(借主負担の条項が妥当か)
  • 破損原因と負担区分の法的評価
  • 管理会社・貸主への連絡方法や交渉方法
  • 不当請求への対処方法
  • 保険の活用の可否

特に、損害賠償を求められていたり、退去費用の精算で争いが発生している場合には、弁護士の介入によって状況が早く整理されることがあります。

熱割れは専門的な判断が必要なケースが多いため、「話がかみ合わない」「理不尽に感じる」という段階で相談することが安心につながります。

熱割れのガラス修理費に関するQ&A

熱割れの修理費を払ったあとでも返金を求められる?

もし修理費をいったん自己負担したあとに、調査によって熱割れや経年劣化であることが判明した場合、貸主に返金を求められる場合があります。ただし、返金を求めるには根拠となる資料が必要です。割れ方の写真、専門業者の診断書、管理会社とのやり取りの記録を残しておくとスムーズです。

退去時に熱割れガラスの修理費を請求されたらどうすればいい?

退去時の精算で修理費を請求された場合、まずは割れ方の特徴が熱割れに該当するかを確認します。ふちから伸びるヒビや衝撃点の欠如など、自然破損の特徴がある場合は、入居者負担とするのは不適切です。写真・記録が残っている場合は管理会社に提示し、負担区分の説明を求めましょう。それでも解決しない場合は、賃貸借契約書の内容と国土交通省の原状回復ガイドラインを基に、弁護士へ相談すると安心です。

熱割れしやすいガラスや環境はある?予防策は?

普通ガラス(フロートガラス)は温度差の影響を受けやすく、熱割れが起きやすい傾向があります。特に、冬場の暖房で室内だけが急に温まった場合や、夏場の西日がガラスの一部だけに集中する場合、温度差が大きくなりやすいです。予防策としては、カーテンやレースで直射日光を和らげる、窓付近に暖房器具を置かない、家具でガラスの一部が隠れないよう配置に注意するなどがあります。

熱割れしたガラスを放置するとどうなる?

熱割れは、割れ目が時間をかけてゆっくり進行する特徴があります。放置するとヒビが広がり、ガラス全体が突然崩れるリスクが高まります。また、割れた部分から風が入り、室温が不安定になるほか、防犯面でも危険です。さらに、破損状態を放置すると「入居者の管理不足」と判断され、修理費の負担区分に影響する可能性もあります。割れを発見した時点で早めに管理会社へ連絡することが重要です。

まとめ 熱割れしたガラスの修理費用で揉めたら弁護士に相談を

賃貸住宅でガラスの熱割れが疑われる場合には、まず割れた直後の写真を残し、破損状況や環境を正確に把握することが大切です。契約書の内容や火災保険の補償範囲を確認し、必要であれば専門業者の診断も検討しましょう。それでも話し合いがまとまらず、不当な負担を求められていると感じる場合には、法的な視点で助言できる弁護士への相談が効果的です。

弁護士は原因の整理、負担区分の判断、管理会社との交渉などをサポートできるため、早めに相談することでトラブルの長期化を防げます。熱割れは専門的な判断が必要なことも多いため、少しでも不安を感じたら、遠慮せず専門家の力を活用してください。

窓ガラスの修理費を含む賃貸物件のトラブルに困ったときは、「VSG弁護士法人」にぜひお気軽にご相談ください。

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