賃貸物件から退去するときは、室内をクリーニングして借りる前の状態に戻すための退去費用が必要になります。
建物の経年劣化による修繕などは貸主負担ですが、汚れの放置など故意や過失で生じた損耗は借主が負担しなければなりません。
室内の汚れは放置していた期間が長いほど落ちにくくなり、状態が悪化するほど退去費用が高額になります。
退去費用を抑えるためには、退去前に掃除や換気を行い、汚れのない状態で引き渡せるようにすることが必要です。
ここでは、退去費用の相場や掃除方法、高額な退去費用の請求があった場合の対処方法などを解説します。
目次
賃貸物件を退去するとき、一般的には掃除をして明け渡すのがマナーと考える人が多いでしょう。
一方で、退去時にまったく掃除や片付けをしないまま退去してしまうケースも珍しくありません。
普段から掃除をしていない場合や、家賃滞納などトラブルを抱えており、片付けをしないまま退去してしまうケースがあります。
掃除をしないまま退去した場合、室内の汚れの状態によっては高額な退去費用を請求される可能性があります。
法律上、借主は退去するときに掃除をしなければならない義務はありません。
ただし、借主には退去時に物件を借りたときの状態に戻して返還する原状回復義務があります。
通常の使用による損耗や経年劣化は貸主に修繕義務があるため、借主の原状回復義務の対象とはなりません。
借主が負担するのは、故意や過失による汚れのクリーニング費用や修繕費用などです。
退去時に室内が汚れたままの場合、故意や過失で室内の汚れを放置したと判断され、退去費用が高額になる恐れがあります。
退去費用は、汚れの状態や掃除が必要な箇所によって異なります。
掃除場所と、おおよその費用相場は以下の通りです。
部屋全体の消臭や除菌をするため、ハウスクリーニング費用がかかります。
費用は間取りによって変わりますが、おおよその費用相場は以下の通りです。
間取り | 費用相場 |
---|---|
1K | 1万円~2万円 |
1LDK | 2万円~3万円 |
2LDK | 3万円~4万円 |
3LDK | 4万円~5万円 |
キッチンなどの水回りや窓枠などにはカビが発生しやすく、退去するときは除菌などが必要です。
カビの除去するための費用は1㎡あたり約2,000円~3,000円で、掃除場所ごとの相場は以下の通りです。
掃除場所 | 費用相場 |
---|---|
洗面所 | 8,000円~1万円 |
トイレ | 1万円~2万円 |
エアコン | 1万円~2万円 |
キッチン | 1万円~3万円 |
浴室 | 2万円~3万円 |
壁にペットの爪とぎなどによる傷があると、クロスの張替えが必要になります。
クロスの張替え費用は、1㎡あたり約1,000円~1,500円が必要です。
また、床に傷や家具によるへこみなどがあり、状態が悪いときは床材の張替えが必要です。
床材の張替えには、数千円~数万円ほどの費用がかかります。
退去時に請求される費用を抑えるためには、事前に借主側で掃除をしておくとよいでしょう。
ここからは、退去前に掃除をしておきたい場所や掃除方法をご紹介します。
キッチンのコンロは油汚れがつきやすく、汚れが目立つために退去時のチェックで確認されやすい場所です。
シンクは水垢の除去だけでなく、排水口の詰まりや悪臭の発生がないかなども確認しておきましょう。
コンロの汚れは、バーナーキャップを外した後に重曹を溶かした水を吹きかけ、歯ブラシなどでこすって落とします。
シンクは、クエン酸を溶かした水をスプレーして約30分放置した後、スポンジなどで水垢をこすり落とすとよいでしょう。
壁や床に埃などが付着したままだと、掃除が不十分とみなされるため、拭き掃除をしておきましょう。
掃除機でゴミを吸い取った後に市販のクリーニング材などで拭き掃除を行い、壁や床にある黒ずみなども除去します。
壁の穴は、画鋲やピンなどのサイズであれば原則として通常の損耗の範囲内であり、借主に修繕義務はありません。
釘やネジなど、少し大きな穴があるときは修繕費用が発生する可能性があります。
浴室や洗面所は、排水口に詰まりやカビの発生がないか確認しておきましょう。
カビが発生しているときは、塩素系のスプレーを吹きかけて30分ほど放置した後、水で洗い流します。
塩素系のスプレーを使用するときは、薬液が皮膚や目につかないよう、ゴム手袋や保護メガネなどを着用しましょう。
退去前に掃除をして室内の汚れを除去した場合、敷金の範囲内で退去費用を抑えられるケースがほとんどです。
もし高額な退去費用を請求された場合は、以下の方法で対処しましょう。
高額な退去費用を請求された場合、まずは費用の内訳について説明を求めましょう。
内訳では、清掃が必要になった場所や清掃内容、発生した費用などを具体的に記載してもらいます。
内訳に借主の原状回復義務を超える修繕などがある場合、借主が負担する必要はありません。
費用が相場より高い場合、不当に費用を上乗せされている可能性があるため、交渉をして減額を求めましょう。
消費者生活センターは、国民の消費生活についての相談や情報提供などを行う行政機関です。
退去費用のトラブルについても、「消費者ホットライン」や各都道府県の消費者センターなどで無料相談を実施しています。
悪質な退去費用の請求であると判断された場合、事業者との交渉や話し合いの仲介を行ってもらえるケースもあります。
貸主との話し合いが難しい場合、弁護士に依頼するのもよい方法です。
弁護士に依頼した場合、依頼人の利益を最大化するために第三者として介入し、貸主との交渉や調停、訴訟などの手続きを代行してもらえます。
弁護士は交渉のプロフェッショナルであるため、貸主との交渉がスムーズに進む可能性が高くなるでしょう。
退去費用を抑えたい場合、退去前に借主ができるだけ室内の掃除をしておくのがおすすめです。
退去費用は、貸主との交渉により減額できる可能性があります。
貸主との交渉が難しい場合、消費者相談センターや弁護士などに相談し、早期解決をめざしましょう。