敷金なし物件に住んでいると、退去時の費用がいくらになるかわからず、不安を感じていませんか?
敷金がない分、初期費用は抑えられるものの、退去時に予想以上の出費を求められるケースも少なくありません。
この記事では、敷金なし物件における退去費用の相場や内訳を詳しく解説し、負担を軽減するための具体的な方法をお伝えします。
本記事を読むことで、トラブルを避け、無駄な費用を抑えるための確かな知識を身につけられるでしょう。
賃貸物件に入居する際の初期費用は、家賃の5カ月分前後が相場と言われています。
その内訳は、主に以下のようになっています。
ここでは、初期費用に必ず出てくる敷金について詳しく解説します。
敷金には、家賃保証と原状回復費用の担保の2つの役割があります。
家賃が滞った場合の補填や、部屋の床や壁の汚損に対する修繕費用に使われます。
敷金の相場は家賃1カ月がほとんどで、入居時に賃貸人に預けます。
家賃の滞納や修繕費用がかからなかった場合は、退去後に返金されます。
敷金は入居時に支払う初期費用ですが、他にも次のような名目でお金が必要です。
礼金は、入居者が賃貸人に納める謝礼金です。
相場は家賃の1~2カ月で、戦後に入居者が賃貸人にお礼として物品や金銭を渡していた慣習が由来と言われています。
礼金は謝礼金のため、退去時でも返金されません。
ただ、近年は礼金なしの物件も増えており、礼金を納める慣習は薄れているようです。
保証金は退去時の原状回復費用に充てられるお金で、残金は返金されます。
敷金とほぼ同様の目的のお金ですが、主に関西で使われています。
また、ほとんどの場合、保証金にはさらに敷引きという特約がついており、敷引きに当たる金額は返金されず、賃貸人のものになります。
実質、敷引きと礼金は同じものと考えてよいでしょう。
保証金の相場は家賃の3~5カ月分のため、敷金・礼金を合わせた家賃2~3カ月分よりも高くなります。
仲介手数料は不動産会社に支払う手数料で、相場は家賃の0.5~1カ月分です。
宅地建物取引業法で、仲介手数料は家賃の1カ月分までと決められています。
入居する月の家賃は、初期費用として支払います。
通常は1カ月分、月の途中で入居する場合の家賃は日割り計算となります。
物件の規模によって変わりますが、火災保険料は概ね2万円前後みておけばよいでしょう。
近年では、敷金なし物件が増えていますが、どういった背景があるのでしょうか。
近年、敷金や礼金が不要な物件や、仲介手数料が割引される物件が増えているのは、賃貸物件の供給過多が大きな原因です。
敷金なしの物件の場合、賃貸人は入居者の増加が見込める一方、家賃の滞納や退去時の修繕費用を確保できないリスクを抱えることになります。
そのため、最近では家賃保証会社を利用するケースが増えており、保証会社が家賃滞納のリスクをカバーしてくれています。
敷金なし物件の入居者にとってのメリットは、次のとおりです。
一方、敷金なし物件にはデメリットもあります。
初期費用と同様に、賃貸物件を退去する際の費用も気になります。
退去費用の内訳は原状回復費用とハウスクリーニング代で、概要や入居者が支払うべき範囲は次のとおりです。
賃貸物件を借りた場合、入居者には借りていた物件を元通りにして返すという「原状回復義務」が発生します。
入居者が退去時に支払うべき原状回復費用の範囲は、次のとおりです。
賃貸物件は、入居者が日常生活を送る拠点となります。
日頃の生活による傷み(通常損耗)や時間経過による不具合や故障(経年劣化)は想定されており、家賃に含まれています。
そのため、通常損耗や経年劣化による不具合や故障の修繕費用は賃貸人負担となります。
入居者の故意・過失による損耗は、入居者に責任があるため、修繕費用は入居者負担となります。
また、経年劣化による不具合(雨漏りなど)を放置して発生した損耗については、入居者の過失として修繕費用は入居者負担となります。
原状回復費用について特約があれば、特約の内容に従います。
国土交通省が作成した原状回復費用のガイドラインがありますが、法的拘束力がないため、特約が優先される点に注意が必要です。
ハウスクリーニング代は、退去後の部屋の清掃にかかる費用です。
ハウスクリーニングは入居者1人につき1度行うもので、次の入居者が気持ちよく使うために必要な作業です。
そのため、ハウスクリーニング代は入居者が入居前か退去後に1度支払います。
ガイドラインでは入居者が退去時に通常の清掃を行っていれば、ハウスクリーニングは次の入居者確保のためのものと考えられています。
そのため、契約書の特約などがなければ、ハウスクリーニング代は本来、賃貸人の負担となります。
しかし、多くの賃貸借契約では、入居者がハウスクリーニング代を負担するという特約を付けています。
敷金なし物件の退去費用は、高くなる傾向にあります。
敷金あり物件と比較して、高くなる理由、退去費用の相場を解説します。
敷金なし物件は、次の面から退去費用が高額になると考えられます。
敷金あり物件は、あらかじめ敷金を賃貸人に預けているため、退去費用から敷金を差し引いた残金だけ払います。
しかし、敷金なし物件は、敷金がないために退去費用全額を持ち出しで支払う必要があります。
入居時から考えると実際の支払額は変わりませんが、退去時だけで考えると、敷金の分だけ余分に支払っていることになります。
敷金なし物件の退去費用は、そのために高く感じてしまうのかもしれません。
敷金なし物件は、確実に請求できるよう、特に細かく退去費用の条件が決められています。
項目が多ければ高いと感じるかもしれませんが、退去費用の基準が明確になっているとも言えます。
敷金なし物件は、退去費用に関するトラブルが考えられます。
トラブルを回避して、退去費用を抑える方法は次のとおりです。
敷金なし物件を契約する場合は、特に下記の契約内容をチェックするようおすすめします。
原状回復費用について、入居者がどこまで負担するかの線引きラインを確認しましょう。
敷金なしという高いリスクがあるため、特に詳しく決められています。
ハウスクリーニング代の負担があるかどうか、入居時・退去時の2回支払う契約になっていないかを確認しましょう。
入居中はこまめに掃除をして、部屋をきれいに保ちましょう。
入居日の写真を撮っておくと、誰がつけた傷かで揉める心配がありません。
清掃をこまめに行うと、傷や汚損もすぐに発見でき、対処できることが期待できます。
原因がどうあれ、部屋の汚損、傷み、設備不良があれば賃貸人・仲介会社に報告します。
経年劣化などであれば賃貸人の負担で修理・交換してもらえるでしょう。
退去時は、管理会社と立ち合いを行い、傷や汚損があれば一緒に確認します。
入居前からのものであれば、入居時に撮った写真を見せて自分が原因でないと証明できるでしょう。
日頃から部屋をきれいにしていれば、退去費用を抑えられるかもしれません。
敷金なし物件の退去費用は、敷金がない分だけ持ち出しが必要なため、高額に感じるかもしれません。
敷金なし物件の契約内容は退去費用についても詳しく決められているケースが多く、費用負担の範囲が明確だといえます。
退去費用を抑えるためには、改めて契約内容を確認した上で、定期的に掃除を行い、室内設備を大切に使う、などを心がけましょう。
契約内容で気になる、あるいは不明な点があれば管理会社などに質問し、納得できない部分は弁護士などに相談しましょう。