敷金ゼロ物件は、入居者の初期費用を抑えられるメリットがある一方で、退去費用が高額になる可能性も高く、驚く方も多いです。
退去時にかかる費用は敷金と相殺されるのが一般的ですが、敷金ゼロの物件では必ずといえるほど請求されます。
事前に退去費用の相場を把握し、費用を抑える方法を理解しておく必要があるでしょう。
この記事では敷金ゼロ物件の退去費用相場と、退去費用を抑える方法、高額請求されたときの対処法を紹介します。
目次
退去時にかかる費用は、原状回復費用とハウスクリーニング費用です。
さらに退去時期によっては、違約金が発生する場合もあります。
退去に際してかかる費用は本来敷金から相殺されますが、敷金ゼロの物件では、退去時に支払わなければいけません。
ここでは、退去時にかかる3つの費用の内容と相場を紹介します。
原状回復費用とは、借りた部屋を入居前のきれいな状態まで回復させるためにかかる費用を指します。
借主が不注意で付けた傷や汚れなどは、借主の費用負担で修繕しなければいけない原状回復義務があります。
原状回復義務の範囲は、国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)で定められています。
おおよその費用相場は、約4〜8万円が目安ですが、部屋の広さや破損状況によって前後します。
借主が原状回復しなければいけない範囲の例を挙げると、主に以下の項目が該当します。
上記の他にも様々な範囲が原状回復に該当します。
一方で、日差しによってフローリングが色褪せた場合やクロスの変色などは、通常消耗という扱いとなり、原状回復する必要がありません。
普段から丁寧に使用しておけば、原状回復費を請求される可能性は低くなるでしょう。
賃貸借契約事項の特約に、原状回復義務とは別に、貸主負担となる項目が記載されているケースもあります。
たとえば、エアコンや給湯器などは、想定された耐用年数が経過した状態でも十分使用できる場合もあります。
本来耐用年数が経過した設備が破損した場合、貸主負担で修理・交換しなければいけません。
しかし、借主が故意などによって破損させてしまった場合、借主の費用負担で修理しなければいけないと記載されている場合があります。
エアコンや給湯器などの破損の原因は、入居者から出ないとわからない可能性が高いです。
そのため、貸主と借主でどちらに責任の所在があったのか、トラブルになる場合もあります。
そのような事態を避けるため、特約事項に設備関係の修理費用負担先が記載されているケースもあります。
ハウスクリーニング費用とは、部屋の中を専門業者が清掃する費用です。
次の入居者に貸し出すためにも、部屋を一度きれいな状態にします。
床や水回り、キッチンやクロス、窓などあらゆる箇所を清掃するための費用は、退去時に請求されるしくみです。
原状回復との違いは、ハウスクリーニングは部屋の清掃を指しますが、原状回復はリフォームを指します。
原状回復費用とハウスクリーニングは費用の2つを請求される場合も多いため、どちらかひとつだけ支払えばよいと勘違いしないようにしましょう。
原状回復としてクロスの張替えをすれば、クロスのハウスクリーニングは不要と思われがちです。
しかし、すべてのクロスを張替えるケースは少ないため、結局ハウスクリーニング費用がかかります。
張替えよりハウスクリーニングの方が安く済むため、どの箇所を張り替えるのかを退去時に確認しておきましょう。
ハウスクリーニング費用は、間取りによって異なりますが、おおよそ「1万5,000円〜6万円程度」です。
原状回復費用と同様、部屋が広い場合や、汚れている箇所が多いほど、割高になります。
賃貸借契約期間中に契約を解除して退去する場合、違約金が発生します。
一般的な賃貸借契約期間は2年間ですが、更新タイミング以外で解約すると、家賃の1カ月ほどの違約金を支払う必要があります。
賃貸借契約期間と違約金の額は、各賃貸物件によって異なるため、事前に賃貸借契約書の条項を確認しておきましょう。
以下の表は、間取り別の原状回復費用とハウスクリーニング費用の相場をまとめたものです。
間取り | 原状回復費用 | ハウスクリーニング費用 |
---|---|---|
1R・1K | 5万円前後 | 1万5,000円~3万円 |
1LDK・2LDK | 8万円前後 | 3万円~4万円5,000円 |
3LDK・4LDK | 9万円以上 | 4万円~6万円以上 |
もちろん建物の損傷や汚れ具合によって費用は異なるため、あくまで目安として認識しておきましょう。
ここでは、敷金ゼロ物件でも退去費用を抑える方法を3つ紹介します。
普段からきれいに部屋を使えば、退去費用を抑えられます。
原状回復費やハウスクリーニング費用は、部屋の一部でも破損や汚損していれば、高くなります。
一方、部屋がきれいな状態であれば、費用も最小限に済むでしょう。
特に床をフローリングのままにしておくと、傷や汚れが付きやすくなり、原状回復費も嵩みます。
絨毯などを敷いておけば、傷やシミが付くのを防げるでしょう。
また水回りなどはカビやサビが発生しやすく、時間が経つにつれて落ちにくくなります。
日常的に掃除を行い、常にきれいな部屋を保つようにするに心がけましょう。
賃貸物件を退去する際の立会いを怠らず、しっかりハウスクリーニングや原状回復する箇所を確認するのも大切です。
退去立会いでは、不動産会社がどの箇所が入居時と異なるのか、また汚れている箇所はどこなのかを確認します。
立会いを怠ると、不動産会社の言い分を承諾したと判断され、本来貸主負担の修繕箇所も、退去費用に含まれてしまう可能性もあります。
正しい退去費用を見積もりしてもらうためにも、退去立ち合いに参加し、異なる点はしっかり伝えるようにしましょう。
小さな穴や傷など、自分で修理できる程度であれば、退去前に直しておくと退去費用を抑えられます。
ホームセンターやネット通販では補修キットが数千円程度で販売されています。
部屋の修理経験がある方であれば、多少の傷などは修復できるでしょう。
ただし、修理がうまくいかなかった場合、本来一部の修理で済むものが全体修理になる可能性もあります。
余計に費用がかかる可能性もあるため、初心者の方は控えるようにしましょう。
退去立ち合いに参加しても、退去費用に納得がいかない場合も考えられます。
そのようなケースに備え、事前に対処法を理解しておきましょう。
退去費用の見積もりが届いたら、見積もり項目を原状回復のガイドラインと照らし合わせて確認しましょう。
見積もりの中に経年劣化に関する修繕費用が含まれていた場合、当然ながら貸主が負担しなければいけません。
しかし、誤って見積もりに計上されている可能性もあります。
見積もりが高いという理由だけでは賃貸人も納得してくれないため、しっかりガイドラインに沿って交渉しましょう。
入居時に見つけた部屋の傷や汚れを、写真などで記録しておくと、貸主負担の修繕費用が含まれるケースもなくなります。
原状回復の範囲は、ガイドラインで定められていたとしても、いつ付いた傷なのかが分からず、退去費用に含まれる場合があります。
間違った費用であると証明するためには、入居時からあった傷であると証明するための写真が必要です。
記録をきちんと取っておくことで、「自分に原因のない箇所の修理費用が退去費用に含まれている」と伝えられるでしょう。
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版)には、チェックリストが添付されています。
ぜひ入居時に活用してみましょう。
退去費用に納得いかないときは、専門家に相談してみるのもおすすめの方法です。
明らかに相場価格より退去費用が高い場合、不動産会社が修繕費用に利益を上乗せしている可能性も考えられます。
「この退去費用が通常価格です」と言われてしまえば、安くしてほしいとは伝えにくく、誰に相談すればよいかわからなくなります。
その際相談できるのが、以下の窓口です。
相談先 | 連絡先 |
---|---|
国民生活センター | 国と消費生活センターをつなぐ中核的機関 |
消費者ホットライン | 商品トラブルなどの相談を行える地方自治体の窓口 |
日本消費者協会 | 消費者問題に対応する公益法人 |
不動産適正取引推進機構 | 不動産取引に関する紛争の未然防止などを行っている法人 |
日本賃貸住宅管理協会 | 賃貸住宅の運営・管理の適正化、市場整備などを目的とする公益財団法人 |
上記の相談先は、高額な退去費用を含めた賃貸トラブルの無料相談を行っています。
退去費用に困っている方はぜひ相談してみましょう。
敷金ゼロ物件の物件を退去する際は、原状回復費とハウスクリーニング費用、違約金の3つがかかる可能性があります。
普段からきれいに部屋を使用し、定期的に清掃を行っておけば、退去費用を安く済ませられます。
ただし、退去費用は賃貸人と不動産会社が見積もりを取って決まるため、高額請求される場合も少なくありません。
そのような場合に備え、あらかじめ入居時にあった傷や汚れの記録や、専門家への相談の活用を検討しておきましょう。