家賃の支払いが難しく、滞納してしまうとどうなるのか、不安を抱えていませんか?
特に生活保護を受けている方にとって、家賃滞納が生活保護の打ち切りに繋がるかもしれないと考えると、心配は尽きません。
しかし、家賃滞納そのものがすぐに打ち切りを引き起こすわけではありません。
大切なのは、家賃が払えない時の正しい対処法を知り、早めに行動することです。
本記事では、家賃滞納時に取るべき具体的な対策と、今の生活を守るためのポイントをわかりやすく解説します。
目次
生活保護受給者は住宅扶助を受けているため、本来、家賃滞納は起こり得ません。
そのため、家賃滞納は住宅扶助を家賃以外に使用していると判断され、不正受給とみなされる恐れがあります。
また、家賃滞納が続くと強制退去(建物明け渡し)が行われます。
ここでは、家賃滞納した場合に起こる強制退去や生活保護受給での問題、生活保護が打ち切りになるかどうかについて詳しく解説します。
そもそも生活保護制度とはどのような制度でしょうか。
引用:生活保護制度は、生活に困窮する方に対し、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活を保障するとともに、自立を助長することを目的としています。
生活保護には生活扶助、医療扶助、葬祭扶助など8つの扶助があり、住宅扶助はその中の1つです。
住宅扶助は家賃、地代、補修費等の住宅維持費を給付します。
また、入居時の敷金礼金、契約更新料、火災保険料にも住宅扶助が使えます。
扶助を受ける上限額や条件については、事前に確認しておきましょう。
生活保護が打ち切りになる理由は、以下のようなものが挙げられます。
家賃滞納そのものは生活保護打ち切りの理由には該当しません。
ただ、住宅扶助を受けているにも関わらず家賃を滞納したのであれば、住宅扶助を家賃以外に使い込んだとみなされ、支出内訳によっては生活保護が打ち切りになるかもしれません。
生活保護受給者には、福祉事務所の指導に従う義務があります。
滞納分についてはケースワーカーや賃貸人とよく相談の上、返済計画を立てていかなくてはならないでしょう。
また使い込みの内容次第では使い込んだ保護費の返還命令が出るため、滞納家賃とともに返還しなければなりません。
大きな出費となるため、お金のコントロールがつかなくなったら早めにケースワーカーに相談するとよいでしょう。
家賃滞納が続くと、最終的には強制退去させられます。
家賃滞納から強制退去までの流れは次のとおりです。
家賃滞納から1~2カ月までは電話や手紙での督促が行われます。
大家(以下賃貸人)によっては、確実に督促するために内容証明郵便を使う方もいらっしゃいます。
家賃滞納が3カ月を過ぎると、一般的には信頼関係が破壊されたとして、契約解除通知書が送られます。
契約解除通知書は賃貸借契約を解除する賃貸人の意思表示で、裁判前の最終通告に近いと言えます。
契約解除通知書が送られても家賃滞納が続くと、賃貸人は民事裁判を提起し、建物明け渡し請求を行います。
また、滞納家賃・遅延損害金の支払い請求も同時に行います。
民事裁判が提起されると、裁判所で原告(賃貸人)・被告(入居者)としてお互いに意見を主張します。
賃貸人の主張が認められれば、建物明け渡し判決が下ります。
また、入居者側からの主張で有効なものがなければ、滞納家賃・遅延損害金の支払い請求も認められます。
判決が出ても滞納家賃を支払わなければ、賃貸人は強制執行手続きに入ります。
強制執行は裁判所の職員(執行官)が賃貸物件の荷物や家具を運び出し、部屋を空にして、玄関の鍵を交換します。
なお、運び出した荷物や家具は執行官の指定する場所で一定期限保管され、入居者は必要に応じて引き取りに行きます。
期限内に引き取られなかった荷物や家具は競売にかけられ、売却代金は滞納家賃に充当されます。
滞納家賃・遅延損害金の支払いが認められれば、財産の差押さえも可能です。
動産、不動産、預貯金などが差し押さえられます。
上記のとおり、家賃滞納から強制執行完了までは必要な手順があり、最低でも6~7カ月かかります。
しかし、強制執行まで進むと、家も財産もほとんど失ってしまいます。
この状態で新たな住居を探すにも、高額な初期費用が必要な上、強制退去させられていると入居審査も厳しい状況でしょう。
強制執行で家や財産を失って路頭に迷う前に、何らかの対処が必要です。
次の項目では、生活保護受給者が家賃滞納してしまったときの対処法を紹介します。
生活保護受給者が家賃滞納してしまった時の対処法は、福祉事務所への報告と賃貸人への対処がメインです。
まずは、滞納額を確認して現状を正確に把握します。
家賃を最後に支払った日、滞納している家賃が何カ月分か、滞納した月の家賃は何に使ったかを明確にします。
住宅扶助を家賃以外に使っていれば生活保護打ち切りの可能性も出てきます。
内容が悪質であれば保護費返還になるため、内訳を明確にし、手持ちの資金で滞納分の家賃が支払えるかどうか計算します。
家賃滞納をケースワーカー・福祉事務所に相談します。
家賃滞納に至った事情と、家賃扶助を何に使ったかをケースワーカーに伝えます。
嘘をついたり誤魔化したりすると、後でつじつまが合わなくなるため、正直に話しましょう。
滞納家賃の返済方法、これからの生活など、保護費返還も視野に入れて今後の方針を相談します。
賃貸人にも、滞納家賃の支払い方法について相談します。
賃貸人には以下の事項について、誠意をもって伝えます。
返済計画は短期で無理矢理返済するようなものではなく、何か突発的な出費に対応できるよう、実際に支払えるギリギリの金額より少し下の現実的な金額で立てましょう。
生活保護を受けていても、ついついお金を使いすぎて家賃滞納してしまう人のために、代理納付の制度があります。
代理納付制度とは、自治体の福祉事務所が生活保護受給者に代わり、賃貸人に住宅扶助(家賃)を納付する制度です。
通常、住宅扶助は他の生活扶助などと合わせて生活保護受給者に支払われます。
しかし、福祉事務所が自動的に支払ってくれるのであれば、住宅扶助を他の用途に使ってしまう心配がなくなり、受給者本人にとっても安心です。
また、賃貸人にとっても家賃滞納のリスクがなくなり、毎月確実に福祉事務所から家賃が振り込まれるため、安心して保護受給者に入居を継続してもらえます。
ただし、代理納付できる金額は地域ごとに設定された基準額内で福祉事務所長が決定した額です。
基準額を超えた部分と共益費などは生活保護受給者が自分で支払う点には注意が必要です。
代理納付制度は自治体の福祉事務局で申し込みが必要です。
また、申し込んだ月の家賃は手続きが間に合わない場合があるので、確認しましょう。
生活保護を受給中に家賃を滞納した場合、滞納そのものは生活保護打ち切りの理由にはなりません。
しかし、家賃扶助を家賃以外に使用していると判断されると、生活保護が打ち切られる可能性があります。
住宅扶助は代理納付制度を活用して家賃滞納を防ぎ、住居と安心できる生活を守りましょう。