家賃滞納をしている入居者は、賃借人から明け渡し訴訟をされ、強制退去せざるを得ない状況にもなりかねません。
金銭的な事情によって家賃の支払いが困難となる方もいらっしゃいますが、どれくらいの期間で退去しなければいけないのでしょうか。
また、どれくらいの家賃滞納を行うと強制退去させられるのか、家賃滞納から強制退去までの流れはどう進むのか疑問に思う方も多いです。
本記事では、家賃滞納から強制退去までの期間と流れを紹介します。
目次
家賃を滞納してから明け渡し訴訟を起こされるまでの平均期間は、5~7カ月と言われています。
平均5~7カ月と言われている理由は、以下の強制退去の条件を満たす必要があるためです。
明け渡し訴訟をされるには、賃貸人と賃借人との信頼関係が壊れた事情が必要になります。
家賃を1カ月や2カ月滞納しただけで賃貸人と賃借人との信頼関係が壊れたと扱われるケースは、ほとんどありません。
一般的には、約3~6カ月家賃を滞納すると信頼関係が壊れたとみなされます。
そのため、家賃滞納をしてから約3~6カ月経過してから、賃貸人が明け渡し訴訟に向けて動き出す場合が多いです。
家賃滞納から強制退去までの流れは、以下の通りです。
家賃滞納から強制退去までの流れ
実際にどのような流れとなるのか、順を追ってみていきましょう。
家賃を滞納し始めたときには、まず口頭や文書で家賃の支払い督促通知がきます。
通知が届いたにもかかわらず、家賃を支払わない場合、次に賃貸人が賃借人の保証人に対して家賃の支払いを請求します。
家賃を滞納したときに来る口頭や文書での督促は、家賃滞納1カ月でも届くケースも珍しくありません。
家賃を2~3カ月滞納すると、保証人に連絡がいってしまいます。
保証人がいない場合や、保証人が家賃を支払わない場合は、内容証明郵便が届きます。
内容証明郵便が届くのは、約3~6カ月家賃を滞納した場合です。
内容証明郵便は、裁判所で重要な証拠として扱われる書類です。
郵便局がどのような内容の郵送物を、賃貸人がいつ送付して、いつ賃借人の手元に届いたかを証明する役割があります。
内容証明郵便で通知される内容は、以下の通りです。
内容証明郵便で通知される内容
内容証明郵便を受け取らなければ、支払いを遅らせると思う方がいる方がいるかもしれません。
ただし、内容証明郵便を受取拒否しても、内容が伝わったと差出人に推測されます。
内容証明郵便が届いてから1カ月前後で、明け渡し訴訟が起こされます。
明け渡し訴訟を起こされた場合の流れは、以下の通りです。
明け渡し訴訟の流れ
しかし、反論や和解案の提起をせずに賃借人が裁判を欠席すると、賃貸人の意思が正しいと認める形になります。
この場合、裁判はすぐに終了して明け渡しが認められ、早いと1~2カ月ほどで明け渡しの命令が裁判所より出されるでしょう。
明け渡し訴訟で反論あるいは和解案を交渉する場合は、その交渉期間の分だけ明け渡し訴訟の確定判決が出る期間が遅れていきます。
ここまでのスケジュールを簡単に見てみましょう。
【家賃滞納から明け渡し訴訟までの期間のまとめ】
家賃滞納開始
↓ 約1カ月
口頭や文書での家賃支払い督促通知が届く
↓ 約1カ月
保証人へ家賃支払い督促通知が届く
↓ 1~3カ月
内容証明郵便で賃貸借契約解除通知が届く
↓ 約1カ月
明け渡し訴訟が起こされる
↓ 1~2カ月
明け渡しが開始される
もし、明け渡し訴訟に対応する気持ちがある場合は、専門家である弁護士に相談しましょう。
家賃滞納をした場合は、「滞納分を分割払いにする」「住居確保給付金制度を利用する」の2つ方法があります。
滞納分の分割支払いは、賃借人と交渉しますが、管理不動産会社がいる場合は、不動産会社へ相談します。
一方、失業などによって収入が減少した理由で家賃が支払えない場合、住居確保給付金制度を利用するのも一つの方法です。
住居確保給付金制度とは、離職や廃業などで家賃の支払いが困難となってしまった方を対象とした、国の助成制度です。
支給額は、市区町村ごとに定める額を上限に、実際の家賃額を原則3カ月間まで(延長は2回まで最大9カ月)支払ってくれます。
もちろん、本制度を利用するためには、以下の要件を満たす必要があるため注意しましょう。
制度の利用条件
家賃を滞納した場合のデメリットは、以下の通りです。
家賃滞納のデメリット
それぞれのデメリットを解説します。
家賃滞納をすると、滞納分に対して遅延損害金を請求される恐れがあります。
遅延損害金とは、期日までに家賃を支払わなかった場合、賃借人から賃貸人へ損害賠償として請求できる金銭を指します。
遅延損害金の金額は、賃貸借契約書に明記されており、一般的には、年(365日あたり)14.6%を上限としている不動産会社が多いです。
遅延損害金は、以下の計算式で算出され、実際は、5%〜6%などの法定利率で請求されます。
遅延損害金の計算方法
例えば10万円の家賃を2カ月(60日)滞納していた場合、「10万円×6%×60日÷365日=986円」となります。
もちろん、滞納分の家賃に加えて支払う金銭であるため、早期に支払う必要があります。
家賃延滞損害金は支払期日の翌日から発生し、延滞した日数分を支払わなければなりません。
滞納日数と家賃に比例して遅延損害金も大きくなるため、滞納した後は即座に家賃を支払いましょう。
家賃を滞納すると、個人信用情報に傷がつきます。
個人信用情報は、いわゆる「ブラックリスト」と呼ばれる存在です。
ローンの契約やクレジットなどに関する情報を指し、主に金融機関が顧客の信用を判断する際に使用します。
クレジットカード会社や信販会社などは、入居審査の際、個人の信用情報を参照します。
家賃の滞納履歴はもちろん、カードローンや自動車ローンなどの履歴も確認できます。
俗にいう「ブラックリストに載る」とは、個人信用情報に支払いの遅延や破産などの事故情報が掲載された状態です。
ブラックリストに載った方は、金融機関の融資が受けられなかったり、連帯保証人になれなかったりします。
賃貸物件においては、信販会社の保証会社を利用している賃貸物件の家賃を滞納すると登録されるケースが多いです。
滞納を頻繁に繰り返すと、2カ月の滞納でもブラックリストに載り、基本的には5年〜10年は登録されたままです。
今の物件を退去しても、次の物件の入居審査が通らず、住む場所が見つからないリスクが伴うデメリットがあります。
家賃滞納から強制退去までの平均期間は5〜7カ月です。
滞納したからといってすぐに退去するわけではありませんが、支払いの催促が届き、内容証明郵便で賃貸借契約解除通知が届くといよいよ訴訟が近づきます。
明け渡し訴訟が提訴され、強制執行されると賃貸物件から退去しなければいけません。
賃借人が裁判に欠席すると、賃貸人の意思が正しいと認める形となり、強制執行から1~2カ月ほどで退去となります。
そのため、家賃の支払いが困難となった方は、事前に賃借人か不動産会社へ相談し、分割支払いの交渉を行いましょう。
失業などによって収入が減少している方は、住居確保支給金制度の利用が可能ですが、誰でも使えるわけではありません。
支払い督促通知が届いた時に、無視したままにすると明け渡し訴訟だけでなく、遅延損害金が請求され、個人信用情報にも傷がついてしまいます。
次の引っ越し先の入居審査にも大きな影響を及ぼすため、家賃滞納になりそうなタイミングで、貸主へ相談してみましょう。