賃貸住宅で住まいを探して賃貸借契約を結ぶ際に、賃貸人(大家)から家賃保証会社への加入を薦められるケースが増えています。
万が一家賃が支払えなくなったとき、家賃保証会社はどのような行動を取るのでしょうか。
家賃滞納をしてしまった借主は、家賃保証会社にどう対応すればよいのでしょうか。
この記事では、家賃保証会社とはどのようなものか、家賃滞納が発生した場合保証会社の対応、家賃滞納発生から強制退去までの流れ、家賃を支払えないときの対処法について解説します。
目次
家賃保証会社とは、賃貸住宅の借主が何らかの事情により家賃が払えなくなったとき、借主に代わって大家に家賃を立て替え払い(代位弁済)する会社です。
従来は、賃貸借契約を結ぶ際に親族などを連帯保証人に立てるケースが多く見られました。
しかし連帯保証に関するトラブルの増加もあり、近年では大家が借主に家賃保証会社の利用を推奨することが一般的となってきています。
家賃保証会社の保証料は会社によって異なりますが、相場は家賃の0.5~1カ月分程度です。
賃貸借契約時や更新契約時に借主から徴収することが多いでしょう。
借主が家賃滞納をすると、家賃保証会社は以下のような対処をとります。
家賃滞納時の保証会社の対応は、契約の種類によって異なります。
家賃保証会社の保証契約は「一般保証型」と「支払委託型」があります。
一般保証型は、家賃の滞納が発生した場合に大家が家賃保証会社に請求を行い、家賃保証会社が滞納分を立て替える保証契約です。
支払委託型は、借主は家賃保証会社に家賃を支払い、家賃保証会社が大家に毎月家賃を支払う保証契約です。
滞納が発生していても、家賃保証会社から大家に自動的に支払いが行われるしくみとなっています。
一般保証型の場合、大家または管理会社が家賃滞納の事実に気づいた時点で家賃保証会社に連絡し、家賃立て替えを求めます。
家賃保証会社が借主の家賃滞納を確認すると、大家に立て替え支払いを行います。
保証会社によって家賃の立て替え支払いが行われた後は、その金額を保証会社が滞納した借主に請求します。
滞納者の家賃が免除されるわけではありませんので、注意しましょう。
家賃保証会社は滞納した借主に対し、未払い通知や支払い請求といった書類を送付します。
また、電話による連絡も行います。
家賃保証会社からは「家賃支払いの期日が過ぎているが何か事情があるのか」や「いつ頃であれば支払いが可能なのか」と聞かれるでしょう。
この段階では、「すぐに支払ってほしい」という督促の電話連絡は来ません。
電話への応答がないと、借主の緊急連絡先や勤務先にも電話がかかってきます。
家賃保証会社からの電話連絡や郵便による通知を無視していると、保証会社から担当者が自宅に訪問してきます。
肉親などの緊急連絡先に電話しても本人との連絡が取れないとなると、入居者本人が死亡していたり、夜逃げしていたりといったケースも考えられるためです。
家賃保証会社からの電話や郵便、自宅訪問を滞納者がさらに無視し続けていると、法的措置による解決に進む流れとなります。
具体的には、以下のような流れで解決へと進みます。
家賃保証会社による代位弁済が実行されると、その事実が個人信用情報に記録されます。
いわゆる「ブラックリストに載る」という状態です。
正確には「ブラックリスト」という一覧表があるわけではなく、信用情報機関に記録されることになります。
信用情報機関に代位弁済の事実が記録されると、信用情報に事故情報が記載された状態になります。
そうすると、一定期間、以下の行為ができなくなります。
家賃滞納からさらに時間が経過すると、大家から賃貸借契約解除の催告書が届きます。
催告書は、配達証明付き内容証明郵便で送付されます。
配達証明付き内容証明郵便は、誰が誰に対して、いつどのような内容の文書を送付したかを日本郵便が証明するもので、法的措置を行う際の証拠になるものです。
大家からの催告書に借主が応対し、話し合いが持たれると裁判以外の解決方法(たとえば任意の明け渡し)もあり得ます。
しかし、借主側が応対しないと大家から明け渡し訴訟を提起され、裁判へと進みます。
明け渡し訴訟の提起から1~2カ月ほどで、第1回目の裁判が開かれます。
この種の裁判では本人が裁判に出頭することはまれで、すべて弁護士が対応します。
滞納者側が反論の書面を提出することもめったにないため、第1回の期日から1週間ほどで判決の言い渡しになります。
審理が終了し、明け渡しの確定判決が出たら、借主は決められた退去期間中に当該物件から退去しなければなりません。
家賃滞納が始まってから明け渡し訴訟を起こされるまで、一般的には5~7カ月かかります。
明け渡し訴訟の確定判決が出されても借主が物件から退去しない場合、大家は強制執行の申立てを行います。
大家が強制執行の申立てを行うと、1~2カ月ほどで強制執行が行われます。
強制執行が行われると、借主の家財など室内にあるものはすべて撤去されます。
また、強制執行にかかった費用も後日大家から請求されることになります。
家賃滞納をし続けたままだと、最終的には強制執行によって家を失うでしょう。
個人信用情報への記載は、様々な社会的不利益にもつながります。
家賃を支払えないときには、以下の対処法を取るようにしましょう。
収入不足や資金繰りなどで一時的に家賃支払いが苦しくなった場合は、大家や管理会社、家賃保証会社に早めに相談しましょう。
事情によっては支払期日を延期してもらえる場合や、分割払いに応じてくれる場合があります。
相談に際しては、家賃支払いが苦しくなる事情と延期した期日には支払い可能な理由を明確に説明することをおすすめします。
家賃支払いが苦しいのが一時的な事情ではない場合は、根本的な解決を図る必要があります。
もし他に借金があって、家賃の支払いが苦しい場合には「債務整理」という法的手続きをとるようにしましょう。
債務整理には、自己破産、個人再生、任意整理の3つがあります。
自己破産とは、借金の返済ができなくなってしまった債務者が裁判所に申立てを行い、債務者の借金をゼロにして生活再建を確保する制度です。
債務者が一定の価値のある財産を所有していた場合は、財産は精算され債権者に公平に分配されます。
借金がゼロになるのは大きなメリットですが、官報に氏名が公告され、復権までの間弁護士や司法書士、税理士、などの資格が制限されるなどのデメリットがあります。
個人再生とは、債務者が裁判所に申し立てをして、借金を大幅に減額してもらう手続きです。
減額された借金は原則3年で分割して支払い、残りの借金については免除されます。
個人再生が認められるためには、以下の条件が必要です。
借金を5分の1に圧縮できるメリットがありますが、官報に氏名が公告されること、個人信用情報に事故記録が記載されることは免れません。
任意整理とは、債権者と交渉して借金を無理なく返済できるようにする手続きです。
金銭消費貸借契約時にさかのぼり、利息制限法の上限金利に金利を引き下げて再計算するため、利息の減額や元本の減額が見込める場合があります。
自己破産、個人再生に比べると手続きが簡単ですが、必ず減額されるものではないこと、個人信用情報に事故記録が記載されることは免れないことには注意が必要です。
自己破産、個人再生、任意整理にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、どの方法を選択するか弁護士など専門家に相談するようにしましょう。
国や自治体による救済制度を利用する方法もあります。
「住居確保給付金」は、離職や廃業後2年以内である場合や個人の収入が離職・廃業と同程度まで減少している場合、家賃相当額を原則3カ月間支給する制度です。対象要件や上限額が細かく定められています。
「生活福祉資金貸付制度」は、失業や収入の現象などにより生活が困窮している人に生活費や一時的な資金の貸し付けを行う制度です。
支給ではなく、融資なので返済義務がありますが、連帯保証人がいない場合でも年1.5%と低金利で、連帯保証人がいる場合や「緊急小口資金」「教育支援資金」の場合は無利子です。
家賃保証会社は、何らかの事情で家賃を払えなくなった際に借主に代わって家賃を立て替えてくれる、借主・大家双方にとってありがたい存在です。
離職や転職、事業の失敗、借金などの理由で家賃を滞納してしまう場合、金銭問題の根本的解決を図る必要があります。
早めに弁護士などの専門家に相談して、対処するようにしましょう。