

東京弁護士会所属。東京都出身。
弁護士になる前、私は公務員として自治体業務に携わってきました。その経験から、法的な正しさだけでなく、社会的な公平性や、一人ひとりの生活に寄り添うことの重要性を深く理解しています。
立ち退き問題は、住まいや事業所といった生活の根幹に関わる問題であり、そこには多大な不安やストレスが伴います。私は「弁護士は敷居が高い」というイメージを払拭し、何でも気軽に話せる相談相手であることを常に心がけています。
複雑な法律用語を分かりやすく整理し、今後の見通しを丁寧にご説明した上で、依頼者様が「相談して良かった」と心から思える解決を目指します。公務員時代から大切にしている「誠実に向き合う」姿勢を貫き、皆様の正当な権利を守るために全力で取り組んでまいります。

貸主が自己都合によって借主に賃貸物件からの退去を求めるとき、通常は発生する損害の代償として立ち退き料が支払われます。
借主が立ち退き料を受け取ったときは、所得とみなされて税金がかかる可能性があるため確定申告をしなければなりません[注1]。
確定申告をしない場合、無申告加算税や延滞税などのペナルティが課されるリスクがあるため注意しましょう。
納税額は、受け取った立ち退き料に税率を乗じて計算しますが、引っ越し代など退去にかかる費用は立ち退き料から差し引いて計算できます。
「一時所得の50万円控除」など、特例を利用すると税負担を軽減できるケースも多いため事前に確認しておきましょう。
ここでは、立ち退き料を受け取ったときの所得税の計算や確定申告の方法、節税のコツなどをご紹介します。
目次
以下のような立ち退きに伴う引っ越し費用は、所得税を計算するときに立ち退き料から控除できます。
立ち退き料は所得に該当するため、受け取った立ち退き料から引っ越し費用を控除し、残った金額に税金がかかります。
節税するためには、引っ越し費用を経費として控除できるかがポイントです。
引っ越し費用を支払ったときの領収書は、支払いを証明する資料として捨てずに保管しておきましょう。
個人が賃貸人(オーナー)から立ち退き料を受け取る場合は、所得税が発生します。
所得税は10種類の所得区分に分類されていますが、立ち退き料が該当するのは以下の3種類です。
| 所得区分 | 具体例 |
|---|---|
| 譲渡所得 | 借地権の対価など |
| 事業所得 | 営業補償や休業補償など |
| 一時所得 | 慰謝料や移転費用など |
分類を間違えると、利用できる控除額や税率が変わり、結果的に損失や納税漏れにつながるリスクがあるため注意しましょう。
所得区分ごとに概要や具体例、計算方法を解説します。
譲渡所得とは、不動産の売却や有価証券など資産の譲渡によって生じる所得です。
立ち退き料が譲渡所得に該当するのは、借地権等の権利が消滅する対価として立ち退き料を受け取った場合です。
たとえば、自分が借りているマンションを明け渡して立ち退き料を受け取ったなど、借地権の消滅にかかる対価は譲渡所得となります。
譲渡所得は、以下の計算式で求められます。
計算式
譲渡所得=立ち退き料(収入)-移転費用(経費)-特別控除額
特別控除は、以下の2パターンあります。
| 状況 | 金額 |
|---|---|
| 賃貸物件から立ち退きした | 50万円 |
| 所有していた土地や建物から立ち退きした | 1,000~5,000万円 |
立ち退き料が事業所得となる場合は、事業の休業による補填として立ち退き費用を受け取ったときです。
主に、立ち退き対象となった物件を店舗や事務所として利用していたケースが該当します。
事業所得は、以下の計算式で求められます。
計算式
事業所得=総収入額-必要経費
総収入額は「事業で得た利益+立ち退き料のうち事業の休業による補填として受け取った額」の合計です。
慰謝料のような意味合いで受け取った立ち退き料は、一時所得に該当します。
また、これまでに紹介した譲渡所得と事業所得どちらにも該当しない場合は一時所得として扱います。
一時所得を求めるときは、以下の計算式を活用してください。
計算式
一時所得=総収入額-収入を得るために支出した金額-特別控除額(最大50万円)
同年に立ち退き料の他にも一時所得の対象となる収入があった場合、総収入額にその金額を合算して算定します。
一時所得を計算するときに経費として認められるのは、「その収入を得るために直接要した費用」として認められる金銭です。
立ち退き料の場合、具体的には以下のような費用が経費として認められる可能性があるでしょう。
新居を契約するときの敷金は退去時に返還される予定の預け金であり、経費として控除できる項目からは除外する点に注意しましょう。
そのほか、新居の家賃そのものや、立ち退きに関連しない個人的な支出などは一時所得から控除するための経費として認められません。
税務署に必要経費として認めてもらうために、立ち退きによって発生した費用として関連性がわかる資料などを保存しておきましょう。
支払い内容の具体的な内訳がわかる領収書などは、立ち退きを原因として発生した経費であると証明するために有効です。
税務署は、資料にある請求明細や宛名、相場と比較した金額など、立ち退き合意書との整合性を重要なポイントとしてチェックします。
たとえば、引っ越し費用や不用品の処分費用が相場より高額すぎる場合は、理由の説明を求められる可能性があるでしょう。
資料を準備した上で、税務署から質問があったときに支払いの理由や立ち退きとの関連性も説明できるように準備しておきます。
きちんとした説明ができれば、立ち退き交渉を依頼するために支払った弁護士報酬も経費として認めてもらえる可能性があります。
原則、立ち退き料は所得として課税対象となるため確定申告が必要です。
確定申告をする前に、以下の点についてあらかじめ確認しておきましょう。
それぞれの項目について詳しく解説します。

立ち退き料を含む総収入額が50万円以下であれば課税されないのは、一時所得に50万円という特別控除が設けられているためです。
一時所得の特別控除50万円では、立ち退き料や他の一時所得の合計が50万円以下のときは課税対象額が0円になり、原則として確定申告を行う必要はありません。
一時所得で所得税の確定申告が対象外となった場合でも、一時所得が1円以上あるなら住民税の申告は必要です。
一方で確定申告をしたときは自動的に税務署から自治体へ送付されるため、別で住民税を申請する必要はありません。
ただし、一時所得が20万円以下で、住民税のみを申告する場合には市区町村の窓口で申告する必要があります。
一時所得の確定申告をするときは、以下のステップで行いましょう。
必要な手続きを事前に調べておくと、申告期間までに余裕をもって準備できます。
それぞれの項目ごとに詳しく解説します。
確定申告の期間は、受け取った翌年の2月16日~3月15日までの1カ月です。
ただし、初日と最終日が土曜・日曜・祝日の場合は、翌日に繰り上げされます。
万が一この期間内に申告が間に合わなければ、加算税が課せられます。
期限までに納付しなかった場合は延滞税がかかる可能性があるため注意しましょう。
確定申告を行う際は、以下の書類が必要になります。
給与所得者、個人事業主共通で必要な書類は以下の通りです。
次に、給与所得者と個人事業主それぞれが必要な書類は以下の通りです。
| 税務上の取り扱い | 必要書類 | |
|---|---|---|
| 給与所得者 | 源泉徴収票 | |
| 個人事業主 | 白色申告 | 収支内訳書 |
| 青色申告 | 青色申告決算書 | |
給与所得者の場合、年末調整を行うため確定申告は必要ありません。
年末調整で控除できない寄付金控除や雑損控除、および医療費控除の申請をする場合には確定申告が必要です。
一時所得を申告する際は、確定申告書に以下の内容を記入しましょう。
| 書類 | 記入内容・書き方 |
|---|---|
| 確定申告書第一表 | ・住所や個人番号、氏名、生年月日を記入する ・「収入金額等」の枠内「一時(サ)」の欄に1年間で得た一時所得の合計を記入する ・「所得金額等」の枠内「一時」の欄に金額を記入する |
| 確定申告書第二表 | 「所得の内訳」「総合課税の譲渡所得、一時所得に関する事項」に記入する |
確定申告書は国税庁のホームページの確定申告書等作成コーナーでの作成もできます。
国税庁 確定申告書等作成コーナー
確定申告書の提出方法は、以下の3種類です。
税務署によっては期間中かなり混雑するため、e-Tax(電子申請)を利用した申告がおすすめです。
e-Taxを利用すれば、所得金額や税金の計算はすべて国税庁のサイト内で行われるため、計算ミスのリスクが低減できます。
参考:国税庁電子申告・納税システム 「e-Tax」
「混雑を避けたい」「平日仕事を休めない」「パソコンが苦手」という方は、郵送での申告を検討しましょう。
確定申告書に不備があると、再度提出する手間がかかります。
確定申告書を提出する前に、以下の点を確認しておきましょう。
必ず期間内に申告できるよう早めに準備を進めておきましょう。
立ち退き料について悩みがあるときは、弁護士への相談がおすすめです。
立ち退き料の増額交渉をしたいとき
貸主や管理会社はプロであるため、個人が交渉しようとしても不当に低い立ち退き料を提示されるケースもあります。
弁護士が介入すると、法的な根拠をもって交渉を行うため、大幅に増額できるケースもあるでしょう。
負担を軽減したいとき
貸主との立ち退き料の交渉について代行してもらえるため、労力や精神的な負担が大幅に軽減されます。
税務メリットも含めて相談したいとき
立ち退き料は、補償金や移転費用など、名目によって税務上の扱いが変わります。
税金対策に考慮した合意書の作成など、交渉段階から弁護士が介入してアドバイスを受けるのがおすすめです。
引っ越しと立ち退きに関するよくある質問は、以下のとおりです。
それぞれの質問に回答します。
立ち退き料を受け取ったときは、通常、一時所得として税金がかかります。
たとえば、立ち退き料100万円を受け取ったときに税金を計算するときのシミュレーションは以下の通りです。
具体的な計算は個別のケースによって異なるため、正確な金額を確認したいときは専門家に依頼しましょう。
立ち退き料を受け取ったにもかかわらず確定申告をしないと、税務署からの指摘やペナルティを受ける恐れがあります。
具体的には、本来納める税金に加えて延滞税や加算税が課され、特別控除などの特例を適用できなくなる可能性があるでしょう。
特に意図的に隠したなど悪質性が問われるケースではペナルティも重くなる傾向にあるため注意しなければなりません。
税務署は、貸主が提出した支払調書などから立ち退き料を把握しているため、隠しても見つかってしまう可能性が高いです。
結果的には、正しく確定申告を行う方が節税に繋がるでしょう。
貸主から突然立ち退きを求められた場合、どのように対応してよいかわからず困ってしまう方もいるかもしれません。
立ち退きを求められたときは、まずは焦らずに状況を整理し、今後の生活を再建するための立ち退き料について確認しましょう。
立ち退き料の請求は借主にとって正当な権利ですが、一時所得として税金がかかるため確定申告をしなければなりません。
確定申告はいわば家計簿の報告であり、収入と支出を精算して税金を納めるための手続きです。
立ち退き要求への対処や税金の計算などで困ったときは、不動産トラブルについて専門的な知見を有するVSG弁護士法人に相談しましょう。